2017年12月28日木曜日

ジャパンライフ事実上破産 記者らにメモ投げ走り去った男性は社員?

「倒産しています」「弁護士にも申請、故意に発表遅らせる?」
26日朝9時15分頃、ジャパンライフ前で取材している記者らにメモを投げつけ走り去った男性がいた。開いてみると、マジックでこんな内容が書かれていた。時を同じくして、倒産情報誌TSR(商工リサーチ)が、ジャパンライフが2回目の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受けたことを報じた。事実上破産。とうとう来るべき時が来てしまった。

 逃亡を許すな!
 一般社員は、怒ってる
   家族は、泣いてるぞ  

 赤いマジックで強調して書かれている。
   
   29日午前、成田から香港へ〇〇と逃亡か
   銀行口座凍結前に大金を引き出しか
   
とも、なぐり書きされている。

思い余って投げたこの紙に書かれている内容は、社員や被害者の共通の思いではないか。
早急に銀行口座を凍結し、刑事事件として立件することを望んでいる。
捜査関係者が、この内容を把握してくれていると信じたい。

負債総額は2405億円
安愚楽牧場に次ぐ被害か

消費者庁の指導で同社が9月11日付けで顧客に通知した文書では、2016年度末時点の純資産は約338億円の赤字、契約残高は1843億円、預託者の数は2017年7月末時点で6855人としていた。

この根拠になる数字は、公認会計士による「合意手続報告書」(仕訳の根拠を示すことができない仕訳を取り消し修正された報告書)に記載され、それによると、2017年3月末時点の負債総額は2405億円に上る。

ジャパンライフと同様の現物まがい商法で2011年8月に破綻した安愚楽牧場の被害総額は4300億円(7万3000人)で、戦後最大の被害になった。1987年の豊田商事は2000億円(3万人)。2009年に破綻したL&G(円天)は1260億円(3万7000人)。合意手続報告書は正式な会計監査報告書ではないが、安愚楽牧場に次いで、戦後2番目の大きな被害になる可能性が出てきた。

桁外れに高額な老後の資金
70歳以上の高齢女性がほとんど

ただし、債権者の人数と額を比較してみると、契約者1人の契約金額が桁外れに大きいことが分かる。地方の1人暮らしの高齢女性らに、桁外れに高額な老後の資金をつぎ込ませているのが、ジャパンライフの特徴といえる。悪質性が極めて高い。

消費生活センターなどに相談した人の平均契約金額は1860万円、最高額は5億円(消費者庁が4回目の処分時に公表、12月5日までの過去3年間)だった。


農協や郵便局の定期預金、保険を解約させて契約させているケースも少なくない。
年末から年始にかけて帰省する人も多い。ジャパンライフと契約をしていないか確認し、契約していた場合も責めたり叱ったりせず、しっかり寄り添って丁寧に話を聞き、消費生活センターや弁護団、警察に相談してほしい。

「事実を伝えて、泣き寝入りしない」。「少しでも被害を回復してやるぞ」。「騙した方が悪い。悪いものは悪い」。そう考えて電話をしてほしい。

12月29日 ~ 1月3日 まで
国民生活センターに「ジャパンライフ専用ダイヤル」

☎ 03-5793-4110

   (10時~16時)

国民生活センターは以下を助言している

◇1人で悩まず家族や周りの人に相談する

◇飛び交うさまざまな情報に振り回されず、契約書類を整理し、契約内容を確認する

◇契約者を責めず、契約の内容など状況の把握に協力する

◇ジャパンライフにこれから入金を予定している人は、支払わず、状況を確認する
 解約を希望する人は、解約の意思を示す書面を作って事業者に送付する。
 その際、書面の写しを保存しておく

◇「被害を回復する」「優先的に返金する」「被害回復のために調査する」などといって
 お金を払わせる話を絶対信じない。2次被害を防ごう

◇国民生活センター、消費者庁から情報を発信する最新の情報を入手する





2017年12月25日月曜日

ジャパンライフ本社社員だれも来ず、中部弁護団「店舗代表者も提訴」へ

 12月25日、ジャパンライフ本社(東京都千代田区)には、朝から社員は誰も来なかった。
いよいよ来るべき時が来てしまった。「営業停止」「1回目の資金ショート」などの報道が続く中で、老後の高額な資金をつぎ込んでいる1人暮らしの高齢者が、お正月を前にどれほど不安なときを過ごしているか、心配でならない。ジャパンライフ被害対策中部弁護団が実施した同日の110番には、全国各地から54件の相談が寄せられた。杉浦英樹弁護団長は「自殺者が出ることを恐れている。少しでも希望を持ってもらえるよう、私たちは、山口会長親娘とともに店舗の代表者も共同不法行為者として提訴することを検討している」と話している。

ジャパンライフ本社、朝から社員だれも来ず
債権者が中をのぞいて、帰っていく


ジャパンライフ本社ビルを売却したという倒産情報誌TSR(東京商工リサーチ)の報道を知り、22日夕方以降本社に電話しても、電話はつながらない。
ジャパンライフ本社前で取材する記者たち

25日朝、8時半ころ本社前を訪ねると、調査会社の人や見慣れた消費者庁記者クラブの記者らが数人玄関前にいた。「この時間に社員が来ないのはおかしいと掃除のおじさんが話している」と、その1人が教えてくれた。

営業時間の9時を過ぎても、社員は誰も来ない。

宅配業者がインターホンを押しても中から反応はなく、帰っていく。いつも通り生け花を届けたという花屋さんも、帰って
夜になると自動的に灯りがつくが、誰もいない
行った。同社の山口隆祥会長は10時ころに来るというが、その時間を過ぎても会社の関係者は誰1人来ない。時折、債権者がやってきて、インターホンを押し、中をのぞきこんで帰っていく。埼玉の工場まで行ってみると話す債権者もいた。銀行、自動車リース会社、派遣会社、情報システムなどさまざまだ。派遣社員が訪れ、いつもなら朝には入っている給与が入っておらず、様子を見に来たという。

電話がつながらない巣鴨店も見てきた。とげぬき地蔵通りに面したビルの1階、2階にあるが、
ジャパンライフ巣鴨店は、先週金曜日から営業していない
休業中の紙が貼られ、閉まっている。「刑事告発のニュースが流れた次の日、先週の金曜日から閉まっている」と、商店街理事長。「地元の人は問題があることはよく知っている。韓国や地方からのツアーの客が多く来ていた」という。ビルの持ち主は、「何も聞いていない。わからない」と話した。

夕方、再度本社前を訪れると、ずっと玄関前で取材を続けている調査会社の記者さんが「訪れた債権者は10組程度」と教えてくれた。

12月7日、8日には返金滞る
業務中止まで、わずか2週間

ジャパンライフからの返金は毎月10日に行われているが、12月はこの日が日曜ということもあり、12月7日、8日には、お金が入っていなかったという情報が把握できた。

「7日に入金がなく、次に入金すると言われた1週間後にも入金がなかった」「8日に振り込まれるはずのお金が、振り込まれていなかった」「資金繰りに時間が要するので3カ月先になるといわれた」など。

消費者庁取引対策課元課長補佐の同社への天下りを昨年の正月号で明らかにして以降、消費者庁の後手後手の対応のまずさを指摘し続けてきた。

①この課長補佐はなぜ行政指導で済ませたか ②立入検査が遅れたのではないか ③立入検査で、現物まがい商法で自転車操業であることが分かっていたはずではないのか ④1回目の処分は遅く不適切 ②2回目の処分も甘く公表に問題がある ③3回目の処分は、業務停止命令違反を放置し、事業者の主張通りレンタルオーナー商法ではなくモニター商法で違反を認定したのでは遅い ④4回目の処分は、違反事例4事例のうち3事例は3回目と同じで2回に分けたのは疑問 ⑤3回目、4回目の処分時には、ジャパンライフは同様の取引を「リース債権譲渡販売」として拡販しており、被害拡大を結局止められていないーなど。

本来は、厳正な処分に基づき、預託法違反、特商法違反と詐欺、業務停止命令違反で刑事告発し、早急に決着させるべき案件だった。

消費者庁の後手後手の対応が被害を拡大させてきたことは、紛れもないが、
返金されなくなってから、同社と連絡が取れなくなるまでの期間が、あまりに短かった。

高齢な女性に悪質性が周知され始めた段階で、もう、取引から退出できる状況がなかった。預託取引は破たんするまで被害が顕在化しない点が、本当に恐ろしい。

老後の資金、契約額が桁違いに高額
「戻らなかったら、首くくるしかない」

契約者の4分の3が70歳以上で、ほとんどが女性。契約金額は平均1860万円(12月15日時点)と、消費者被害の中でも桁違いに高額だ。

5月に都内のホテルで開催された国際大会では、2億円以上契約したミレニアム会員24人が紹介され、表彰された。顧客に宣伝用に通知されているミレニアム会員名簿では、1億円以上の契約者が300人を超え、最高額は12億円。どこまで本当かは定かではないが、農協や郵便局の定期預金、保険を解約させて契約させているケースも少なくない。老後の大切な資金をつぎ込まされている。

「お金が戻らなかったら、首をくくるしかない」。そんな悲痛な叫びも聞こえてくる。
高額な契約をした高齢女性が、これから正月に向け、どれほど不安な思いで日々を過ごしているのか、心配でならない。

ジャパンライフ110番に54件
平均額4500万円、最高契約額3億円

ジャパンライフ被害対策中部弁護団が同日実施した110番には、全国各地から54件の相談が寄せられた。

1人暮らしの80歳代の女性は、家族を含めて約3億円の契約をさせられ、解約を求めて店舗を訪れると鍵がかかって中に入れなかった。保険を解約させられたり、全財産をつぎ込んだという人もいた。

「自殺者が出ないか恐れている」
「希望持ってもらえるよう提訴の検討急ぐ」

「本日以降、被害者の方の不安が高まっている。お正月に向け自殺者が出ないか心配している。多少なりとも希望をもって緊張感を維持してもらえるよう、提訴の検討を急ぐ」と杉浦弁護団長。「本社への損害賠償請求とは別に、同社山口隆祥会長、山口ひろみ元社長親子と店舗の代表者も共同不法行為者として、2月にも提訴したい」と話している。


2017年12月23日土曜日

「ジャパンライフ被害対策110番」12月25日、中部弁護団 + 神奈川弁護団発足

ジャパンライフ被害対策中部弁護団(杉浦英樹団長)1225日、「ジャパンライフ被害対策110番」を実施する。3回線で、弁護士11人が無料で電話相談に応じる。12月以降、ジャパンライフからの返金が行われていないという事例が、多く把握され、相談者は不安を抱えながら不安定な状況に陥っている。全国の消費生活センターなどに相談した人の平均契約金額は1860万円、最高額5億円(1215日時点)と高額で、その多くが70歳以上の高齢女性を占めているためだ。孤独や将来の金銭的な不安、健康への不安など心の隙間を巧妙についた勧誘が行われてきた。叱ったり責めたりは決してせず、家族や身近な人がしっかり寄り添って、身近な消費生活センターや警察、弁護団などに相談することを勧めたい。

叱ったり責めたりせず
家族がしっかり寄り添って相談を

 購入代金の年6%の見返りをうたって100万円から600万円もの磁気ネックレスや磁気ベストなどを販売してきた「ジャパンライフ」(東京都千代田区)。消費者庁から4度目の行政処分を受けてもなお、『リース債権譲渡販売』として同様の取引を続けてきた。セミナーでリース債権譲渡販売の説明をされ、その日のうちに契約してしまった事例を同弁護団は把握している。被害の拡大が止まらないことから1220日、同弁護団は、同社と経営者親子を愛知県警に刑事告発した。

1222日には、倒産情報誌TSR(東京商工リサーチ)が、1212日にジャパンライフが本社不動産を売却し、娘の山口ひろみ社長が15日付で取締役(会長は父親の山口隆祥氏で、2人で代表取締役を務めていた)を辞任していたことを報じた。さらに、1221日午後になり、ジャパンライフと連絡が取れなくなった。22日朝には同社と取引していた取引先からも「連絡が取れない」という問い合わせが急増し、債権者10人が本社にたたずんでいたなどの取材ルポがネット上に流れたことで、一気に緊迫した状況になっている。
TSRは、本社不動産の売却先は、千代田区の不動産会社とし、「根抵当権の極度額は当初の12億円から今年630日に6億円に変更されたばかりだった」とも報じている。

消費者庁は、同社が破綻した場合の想定被害額をこれまでも明らかにしてこなかったが、消費者庁が指導をして911日付で同社から顧客に通知された文書では、2016年度末時点の純資産額は約338億円の赤字、契約残高は1843億円、預託者の数は20177月時点で6855人としていた。
豊田商事や安愚楽牧場の破綻で、甚大な被害が出た預託商法は、破綻するまで被害が顕在化しにくいという大きな特徴があり、恐ろしい点でもある。

これまで記事を書き続けてきたが、残念ながら、12月に入ってからは、消費者への返金が滞っている。消費生活センターでの返金交渉は困難と思われるが、解約の意思表示をすることをあきらめず、これまでの契約内容を整理する上でも、まずは身近な消費生活センターに相談することを勧めたい。

そして、解約に応じてもらえなかった場合は、警察ジャパンライフ被害対策弁護団に相談しよう。現時点では、中部と神奈川弁護団の2つだが、全国各地で立ち上げの検討が進んでいる。

被害財産の散逸を防止するための仮差押えや、消費者被害の集団的被害回復訴訟を提起できる特定適格消費者団体「消費者機構日本」にも、その情報を伝えてほしい。

◇最寄りの消費生活センター 「188

◇ジャパンライフ被害対策中部弁護団の「110番」
12月25日(月)10時~16
0564-64-1880
 弁護団の事務局は、☎0566-73-0770 
https://japanlifehigai-chubu.amebaownd.com/

◇特定適格消費者団体「消費者機構日本」
情報提供は、当機構ウェブサイトへの書き込み http://www.coj.gr.jp/consumers/higai.html 
☎03-5212-3066 ファックス03-5216-6077

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ジャパンライフ被害対策神奈川弁護団発足
「資産隠しは犯罪になることを警告せよ」
 
 ジャパンライフ被害対策神奈川弁護団(石戸谷豊弁護団長)1220日、発足した。ジャパンライフ被害者の救済、被害の拡大防止のための活動に取り組む。
 石戸谷豊弁護団長は、「消費者庁は、資産隠しは犯罪になることを警告するとともに、預託法・特商法の指示処分は返金措置を含め広範囲な内容が可能となっているため、この指示処分を活用すべきだ」と話している。

ジャパンライフには横浜店があり、神奈川県内でも営業活動を展開してきた。被害者の多くが高齢者で、よく理解しないまま契約している人がほとんどと考えられ、被害が顕在化しにくい状況があることから、神奈川県弁護士会の有志らが弁護団を組織した。ジャパンライフ被害対策中部弁護団とともに、全国各県での弁護団の立ち上げを働きかけ、連携して活動していく方針だ。

石戸谷弁護団長は、「預託法は、豊田商事のような事件の再発防止を掲げて立法されたが、安愚楽牧場、ジャパンライフと大型の消費者被害を続発させており、被害防止のためには根本的に見直しが必要」とも指摘している。
 
 石戸谷豊弁護団長 港共同法律事務所 ☎045-212-3517

「東京投資被害弁護士研究会」でもジャパンライフの相談窓口が設置されている

 ☎03-3556-3607(相談受付窓口:佐藤千弥弁護士)

消費者庁天下り問題⑰ ジャパンライフを「詐欺」で刑事告発  被害対策中部弁護団

ジャパンライフ被害対策中部弁護団は1220日、「ジャパンライフ」(東京都千代田区、山口隆祥会長、山口ひろみ社長)が行った一連のレンタルオーナー商法と業務提供誘引販売は、預託法違反、特定商取引法違反、出資法違反のみならず、詐欺に該当するとして、同社と経営者親子に対する刑事告発状を愛知県警に提出した。
杉浦英樹弁護団長は「消費者庁は、取引対策課課長補佐の同社への天下り問題などで的確な処分を行えず、4回の処分が繰り返されても、なお、被害の拡大が止まらない。財産の隠匿と散逸を食い止め、被害の拡大を防ぐために、消費者庁に代わって刑事告発に踏み切った。警察の早急な捜査と厳正な処分を求めたい」と話している。

4回の処分でも、被害拡大止まらず
消費者庁に代わって、刑事処分求める

告訴状によると、告発事実に、①レンタルするとしていた磁気ネックレスが大幅に不足し、負債額が過少に計上されているなどの「預託法違反」(消費者庁が違反を認定)②2016年度末時点で338億円の赤字だったにもかかわらず、事実を故意に告げずに契約をした「特定商取引法違反」()③元本と年率6%の利回りを保証すると説明し、不特定多数の人から、磁気治療器の販売代金名目で、業として預かり金を受け取った「出資法違反」大幅な債務超過で、契約残高が1843億円(2016年度末)に上り、同社の事業自体継続性がなくいずれ破綻が必至という状況で、レンタル―オーナー契約や業務提供誘引販売契約の代金を支払わせる「詐欺」-を挙げている。

911日付で、同社が消費者庁からの指導を受けて顧客に送付した通知によると、2016年度末時点の純資産額は約338億円の赤字、契約残高は1843億円、預託者の数は、20177月時点で6855人としていた。

愛知県内の70歳代の男性は今年1015日、同社が主催するセミナーで、同社の山口隆祥会長、山口ひろみ社長から、「生命保険を解約してジャパンライフの商品を購入した方が有利だ」と説明された。1030日には、同社従業員から「資産がたくさんあるので、活動費(年率6)の支払いは大丈夫だ」と言われ、同社の財産状態には問題がないと誤認して1031日に業務提供誘引販売取引契約をし、2680万円を支払った。

愛知県警は、1人の被害者では会社ぐるみで違反行為が行われたか定かではないなどを理由に、現時点では告発状を受理していない。
 
 杉浦団長は、「ジャパンライフは、消費者庁から4回の業務停止命令を受けてもなお『リース債権譲渡』などと名称を変更して顧客から金銭を募る活動をやめようとしておらず、被害を防止し拡大を防ぐには、警察による実態解明と厳正な刑事処分が必要」と訴えている。
 消費者庁の岡村和美長官は同日、「被害者が全国多数にわたる重大案件で、さまざまな方たちが被害防止拡大救済のために動いてくださることは行政としても大変ありがたいと思っている」と話している。
 
 しかし、本来は、刑事告発は消費者庁のなすべき仕事ではないのか。1214日には「先物取引被害全国研究会」が消費者庁にジャパンライフへの刑事告発を申し入れているが、消費者庁には、ジャパンライフを刑事告発する義務がある。4回も行政処分をしなければならないこと自体問題があるが、4回処分をしても、今なお、被害が拡大している現状がある。

 消費者庁は同社への立入検査を行っており、刑事告発のための材料をどこよりも入手し、被害事例も弁護団より持っているはずだ。消費者庁自ら現場レベルでの勧誘行為の「故意性」まで認定しておきながら、放置することはできまい。
 
 なぜ、消費者庁は刑事告発をしないのか。消費者庁取引対策課では、「個別事案については捜査の支障になる恐れがあるため、告発をしているかどうかも含め明らかにしない」としか回答しない。

 これまでも5月の東京国際大会など業務停止命令違反の可能性を指摘してきた。遅ればせながら4回目の行政処分は、業務停止命令違反の状態だと消費者庁自ら認めた内容に他ならない。これで告発していないのであれば、あまりに情けない。過去、国の事案に関して刑事告発の事実を公表した例は複数ある。刑事処分にも時間を要する。刑事告発を行うことは当然として、消費者庁が告発したという事実を速やかに公表することが不可欠ではないのか。

消費者庁天下り問題⑯ 消費者庁ジャパンライフ4回処分しても、まだ被害拡大止められず

消費者庁が1215日に行ったジャパンライフ(東京都千代田区)への4回目の行政処分のポイントを整理しておく。預託取引(レンタルオーナー商法)、連鎖販売取引(マルチ商法)に再度1年間の業務停止命令を出したことで、レンタルオーナー商法とマルチ商法、モニター商法(1117日に1年間の業務停止命令)を押さえた。ただし、同社は111日から「リース債権譲渡販売」に移行させているため、4回処分をかけてもまだ被害の拡大は止めらない状況がある。4回も処分しなければならないこと自体、過去の処分時期や内容、公表に問題があったことを露呈しており、本来は業務停止命令違反、刑事告発で決着させるべき事案といえる。事業者側のさまざまな準備に、十分すぎる時間を与えてしまった。

「リース債権譲渡販売」放置されたまま

今回の処分は、4回も処分をしてもなお、同様の業務が継続できる点が最大の課題といえる。ジャパンライフが今年11月から開始したと自ら広報する「リース債権譲渡販売」は、例えば、これまで100万円で販売してきた磁気ネックレスを70万円で販売し、これまでと同様の販売価格の6%を5年間で30万円を支払うという内容だ。

どれほど、現金を必要としているかがわかる契約内容になっている。

同社のセミナーで説明され、その日のうちに契約してしまったという相談事例が、ジャパンライフ被害対策中部弁護団に寄せられている。
ジャパンライフは4回目の処分のあと、自社のホームページで「2年以上も前にやめた業務に対しての停止処分ですから、現在の業務には一切関係ありません」と、山口隆祥会長名で反論しているが、これまでと同様の契約を、名称を変えて継続できる状況をまた残してしまった。
  
業務停止命令の流れ
  2回目 2017年 316日 訪問販売・連鎖販売取引・預託取引     9カ月
  3回目 20171117日 業務提供誘引販売取引(預託取引から移行)  1年間
  4回目 20171215日 連鎖販売取引・預託取引          1年間
  <解説>
1217日から訪問販売は再開できるが、実質的に連鎖・預託・業務提供
誘引販売は停止されているため、単純に布団などを販売することしかできない。
   ※100万円から600万円の磁気ネックレスや磁気ベストを、年利6%で売る商法
     預託取引(レンタルオーナー商法)→業務提供誘引販売(モニター商法)
     →「リース債権譲渡販売」ここは手付かず放置
3回目に処分したモニター商法はマルチでもあった
   ※4回目の処分は、モニタ―商法と
    してきたものにマルチ商法が含ま
    れてきたとして、連鎖販売(マルチ商法)に業務停止命令1年を出した。ただし、違反認定事実5事例のうち4事例が3回目と全く同じ。預託法の備え置き書面はこれまでは債務の過少計上、今回は公正と認められる書類を備え置いていない違反を認定したとして業務停止命令1年を出している。3回目の処分と4回目の処分を分ける必要があったのかどうか。また、そもそもなぜ業務停止命令違反だと認定・公表しないのか、疑問がある。
 
 同様の現物まがい商法で破綻した安愚楽牧場は、元社長
200万円で販売されている磁気ベスト
と元役員が預託法の故意の不実告知で実刑判決を受けている。ジャパンライフも、消費者庁から預託法と特商法で直罰が規定されている違反の認定を受けている。業務停止命令違反も含め、本来は刑事告発をして公表すべき。消費者庁は「個別案件について捜査に支障があり、告発しているかどうかを含め明らかにしない」と説明しているが、刑事告発を公表している前例はあり、この対応自体に疑問がある。ジャパンライフを行政指導した消費者庁取引対策課の元課長補佐の同社への天下り問題以降、消費者庁は後手後手の対応で被害を拡大させてきた。


 ジャパンライフ社は今回の行政処分について「真摯に受け止めるが、違反事実に該当するものがない。違反認定事実は3回目と全く同じ内容で、であれば、同時にご指導いただければと思う。預託法の備え置き書面についても、消費者庁の指導に基づき正式なものは6月末でなければ出せないという文書を出したが、処分をされた」と話している。

解約阻止すると報奨金 社内に「返金取下げ継続奨励金支給規定」

同日の処分時の会見で、新たに明らかにされたのは、契約者から解約の申し出があった場合に、解約を阻止して返金を取り下げさせると、その額の1%の報奨金を出すという社内規定の存在だ。

「返金取下げ継続奨励金支給規定」と銘打ち、
解約を阻止した場合の報奨金規定
返金取り下げに協力したチームリーダーやチームメンバーに、返金を取り下げた額の1%を報酬として支払うことが明記されている。

3000万円をチーム5人が協力して返金を取り下げさせた場合は、全員に6万円ずつ計30万円を支給することなどが明記されている。短期レンタルオーナー契約は、いつでも解約できることを契約書にうたっており、経営状況がかなり緊迫していたことがうかがえる。

公表された文書は2つで、その日付は722日付、926日付と、3回目の行政処分よりもかなり以前に出されている。本来なら3回目の処分でいち早く公表し、消費者に伝えるべきではなかったのか。

消費者庁天下り問題⑮ 全国先物研 消費者庁にジャパンライフの刑事告発申し入れ


悪質投資被害の救済に取り組む弁護士らで組織される「先物取引被害全国研究会」(代表幹事、大植伸弁護士)は1214日、消費者庁に対し、行政処分を繰り返すだけでは被害の拡大を防ぐことができないとして、ジャパンライフ(東京都千代田区)に対し、刑事告発を求める申し入れを行った。「ジャパンライフは消費者庁から行政処分を受けているにもかかわらず、『リース債権販売』と称して営業活動を継続し、現在も日々被害者が増大している。到底放置することはできず、刑事告発が必要」と指摘している。

行政処分では被害止められず
破綻まで被害顕在化しにくい

この時点で、消費者庁は同社に対し3回の業務停止命令を出しているが、違反認定をした預託法の故意による事実不告知や書面交付義務違反、特定商取引法の故意による事実不告知などには、刑事罰が直接規定されている。また、行政処分に従わなかった場合も刑事罰が規定されている。
 
 先物研では、刑事訴訟法239条2項は「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない」と定めており、消費者庁は告発する義務を負っていると指摘。
刑事告発が必要な理由に、①ジャパンライフに対しては、行政処分を行っても効果がないこと②被害が顕在化しにくいこと③現在も被害が続いている―の3つを挙げている。

    訪問販売、預託取引、連鎖販売の業務停止命令期間中の2016516日に、都内のホテルで約1000人を集めこれまでと同様の勧誘を行っていたことが国会審議で明らかにされ、消費者庁も「訪問販売に入り得る該当する」と答弁している。ジャパンライフに対しては、業務停止命令等の行政処分は効果がないことが明らかというべき

    ジャパンライフは、顧客を拡大することで既存の顧客に対し、経済上の利益供与を継続する商法を取っているため、破綻するまで被害が顕在化しにくい。弁護士が介入し、代金の返還を求めると、守秘義務条項を付けて和解(返金)に応じることから、大きな問題になりにくい

    行政処分を受けても、同社はホームページで違反認定事実を否定し、業務改善の姿勢が全く見られない。今年1114日付の広告チラシでは、111日から「リース債権販売」を開始したとするなど、行政処分を巧みにかわすような方法で営業活動の継続を図っている―としている。

1215日には、消費者庁は同社への4回目の行政処分を行い、預託取引と連鎖販売取引に再度1年の業務停止命令を出したが、「リース債権販売」は、継続して営業されている現状がある。

預託法違反では、安愚楽牧場の元社長が懲役26カ月、経理や顧客管理などを補佐していた元役員が懲役2年の実刑判決を受けている(20141016日東京高裁判決)。ジャパンライフと同様に、現物まがい商法で、預託法の故意による事実不告知が認められて処罰された事案であることも紹介している。


この申し入れに対し、消費者庁取引対策課は、「個別事案については捜査の支障になる恐れがあるため、刑事告発をしているかどうかも含め明らかにしない」とコメントしている。