2013年12月15日日曜日

食品表示法新基準 栄養5成分を表示義務付け、 7年後に世界最低水準でいいのか


食品表示法の新基準 
栄養成分表示の義務化 7年後実施で世界の最低水準

 
「エネルギー」「炭水化物」「タンパク質」「脂質」「ナトリウム」の5成分
ナトリウムは消費者に分かりやすく「食塩相当量」で表記

「飽和脂肪酸」「食物繊維」は、『推奨』表示



 内閣府消費者委員会の栄養表示調査会は124日、食品表示法で加工食品に表示を義務付ける栄養成分を「エネルギー」「炭水化物」「タンパク質」「脂質」「ナトリウム」の5成分に決めた。ナトリウムは消費者に分かりやすく「食塩相当量」で表記する。「飽和脂肪酸」と「食物繊維」は、『推奨』表示とした。栄養成分の義務化は156月までに施行される同法の目玉で、施行後5年以内の実現を目指す。「世界の最低ルールを今から作るのはいかがか」「米国や韓国にできて、なぜ日本はできないのか」「事業者の実行可能性より消費者の必要性を」などの意見が、議決権のないオブザーバー(食品表示部会委員)から出ている。

消費者の必要性、事業者の実行可能性、国際整合性 3要件満たせば「義務」

同調査会は、消費者委食品表示部会の3つの下部組織の1つ。同日、1回目の審議を行い、消費者庁が提示した案を原案通り了承した。

消費者庁は、①消費者の表示の必要性②事業者の実行可能性③国際整合性―の3つすべてを満たすものを「義務」とする考え方を示した。①を満たす案を「推奨」(任意ではあるが積極的に表示)、①を満たさない場合を「任意」としている。

飽和脂肪酸 過剰摂取3割 不足2割

「飽和脂肪酸」は、多くても少なくても生活習慣病のリスクを高めるといわれている。乳製品や肉などの動物性脂肪やココナツ油、ヤシ油、パーム油など熱帯植物油脂に多く含まれる。18歳以上の1日の摂取目標量は4.5g以上7.0g未満だが、19.4%の人が目標量を下回り、33.8%が上回る。目標量の範囲で摂取できている人は32.4%にとどまっている(05年~09年の国民傾向栄養調査を分析、18歳未満14.4)
消費者への表示の必要性は高いが、事業者の実行可能性の面で、要件満たしていないと消費者庁は説明した。文部科学省が作成している「日本食品標準成分表2010」の数値掲載率が65(義務対象5成分は100)にとどまり、合理的な推計を行うための書籍や文献が充実していないことをその理由に挙げている。

食物繊維 国民の6割で不足

「食物繊維」は、不足すると生活習慣病(特に心筋梗塞)を引き起こすと報告されている。目標量は18歳以上で男性が119g以上、女性は17g以上だが、全年齢の平均摂取量は137(20歳以上の平均141)と低い。目標量を摂取できている人は24.5%にとどまり、61%の人が不足している(18歳未満144)
表示の必要性は高いはずだが、消費者庁は、コーデックス委員会の必須表示事項ではなく、諸外国で義務とされている国が少ない、事業者の実行可能性の面でも「日本食品標準成分表2010」の数値掲載率が95%と100%ではない。①の条件しか満たしていないとした。
消費者庁は「推奨」は、条件が整えば、「将来的に義務化を考える」方針を示した。

「糖類」「トランス脂肪酸」 は 任意表示のまま
一方、「糖類」「トランス脂肪酸」は任意表示のまま。「糖類」は「日本人の摂取量が十分把握されておらず、摂取基準が示されていない」「日本食品標準成分表2010の数値掲載率が0%で、合理的な推計を行うための書籍、文献が充実していない」ため、①②を満たしていないと説明。
「トランス脂肪酸」は、日本人の大多数がWHO(世界保健機構)の目標値(総エネルギー摂取量の1%未満)を下回っていることから①を満たしていないとしている。
コレステロールやビタミン・ミネラル類も3要件ともに満たしていないとして、任意表示とした。
この提案に対し、池原裕二委員(食品産業センター企画調査部次長)は、「飽和脂肪酸と食物繊維について消費者から1件も問い合わせはなく、ニーズがあるか疑問」と発言。「流通部門から要請されればやらざるを得ず、推奨は実質義務になる。推奨はやめてほしい」と、任意表示とすることを求めた。

糖類は推奨とすべき 4人に1人が糖尿病予備軍 板倉委員
 これに対し、板倉ゆか子委員(消費生活アナリスト)は、食物繊維は大手ではすでに表示され、大量のサプリメントが出回っていることから「義務化の方向で、せめて推奨」とすることを求めた。また、飽和脂肪酸についても、現在、飽和脂肪酸が多いヤシ油やパーム油などが「植物油」「植物油脂」なの一括的な名称で表示されることから、「推奨」とする必要性を指摘。飽和脂肪酸が減れば、逆にトランス脂肪酸が増える関係にあることから、片方だけ推奨表示とすることに疑問を投げかけた。
このほか、「糖類」についても、糖尿病予備軍が増えている現状から、急激に血糖値を増減させる糖(砂糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖など)について「推奨」表示に加えることを提起。機能性おやつが市場で増える中で、添加された栄養成分のみが強調され糖類が表示されないのでは、ミスリードになると警鐘を鳴らした。
糖尿病が強く疑われる人や可能性を否定できない糖尿病「予備軍」は、27.1%と推計され、成人の4人に1人以上あることが「11年国民健康・栄養調査報告」で明らかにされている。厚生労働省の11年患者調査の概況によると糖尿病患者の数は1270万人に達している。
河野康子委員(全国消費者団体連絡会事務局長)も「糖類は捨てがたい。糖類ゼロの商品が発売されるなど、糖類への消費者の関心は高い」として、「国民全体の利益にかなう方向で前向きに考えてほしい」と推奨とすることを求めた。

なぜ日本はできないのか 事業者の実行可能性より必要性を 石川氏、立石氏
 
 議決権がないオブザーバーとして参加している石川直基弁護士は、「米国、カナダ、韓国で義務化が進む中で、なぜ日本ができないのか疑問」とし、「GDP(国内総生産)世界第三位の日本が、世界の最低ルールを今から作ろうとしているのはいかがなものか」と指摘した。消費者の視点、世界の競争政策の視点から「世界を率先するルール」が必要とし、義務化の範囲拡大を求めた。
栗山眞理子委員(アレルギー児を支える全国ネット「アラジーポット」専務理事)は、「オリンピックで多くの外国人が来る中で、自国で見られたものが見られず、日本はどうなっているのかと思われないように」と、国際水準の食品表示を求めた。
オブザーバー参加の立石幸一・JA全農食品品質・表示管理部長は、「米国や韓国は義務化でき、日本ができないというのは日本の企業が遅れているということ」と、「事業者の実行可能性より、消費者が必要な情報を提供する観点に立つべき」と訴えた。「米国や韓国が必要とする情報となぜ違うのか。やりたくないでは、大事なことが抜け落ちる」と義務化の拡大を要請。これに対し、澁谷いづみ座長(愛知県豊川保健所長)は、「世界で一番健康的な食生活をしているのは日本だといっても過言ではない。その国の特徴に合わせた情報提供をするべきではないか」と発言。立石氏が「若者はどんどん欧米型になっている。先に手を打つ視点が必要」と反論する一幕もあった。
6人の委員のうち池原委員が反対し、5人の賛成多数で原案通り了承された。

食品表示部会は16人の委員で構成され、その下に①栄養表示②生鮮食品・業務用食品③加工食品―の3つの調査会が設置された。16人の委員がほぼ2つの調査会の委員(1つの調査会の委員にしか選任されていない委員もいる)に選任されているが、池原委員のみ3つの調査会で委員に選任されている。

調査会の委員以外でも部会委員はオブザーバーとして参加することができるが、議決権はない。同日は今は議決中としてオブザーバーの発言を認めず後回しにする場面も見られた。調査会の議決は部会の議決に代えることはできないことが確認されている。

初回の議論は、わずか2時間。6人の委員の意見で重要な新基準がほぼ決定されてしまった。
これまで2期委員を務めていた主婦連合会の山根会長は、第3次食品表示部会に選任されなかった。消費者代表の以下のような意見は、全く食品表示部会に反映されない状況がある。実に問題だと感じる。

あまりにお粗末 世界水準の義務化を 
山根香織・主婦連合会会長の話
外国に大きく遅れをとっている栄養表示の義務化を無理なく広げるために、環境整備として誤差の許容範囲を大きく認め、移行期間もたっぷりと取ったのではなかったのか。にもかかわらず、7年後の実施に向け、外国にまたもや大きく遅れる制度で良しとするのは、あまりにお粗末。日本の食を海外に強く売り込もうとしているのであれば、当然外国並みの栄養成分表示とする必要がある。必要性と消費者のニーズについてもっと議論をしてほしい。現在でも日本の企業は海外向けの商品には対応しているはずで、今こそ世界水準の義務化をきっちり進めるべき。

世界に劣る 最低限「糖類」「食物繊維」「全脂肪」「飽和脂肪」義務に
藤田哲技術士(農学博士)の話
 アフリカ、北朝鮮、ラオスを除く世界の国の食品表示を調査した。東アジアでも、インド、インドネシア、ベトナム、タイ、マレーシアなどすべての国(北朝鮮、ラオス除く)が、すでに栄養成分表示を義務化している。日本ほど遅れた国はない。
新基準も世界に劣る最低水準。糖類の中の砂糖、ブドウ糖、果糖は簡単に分析ができ、加工食品の処方を入力すると計算される仕組みもできている。すべての国でやっていることを、GDP世界3位の日本がなぜできないのか。炭水化物の中の「糖類」(砂糖、ブドウ糖、果糖)と「食物繊維」、不飽和脂肪の量が把握できるよう「全脂肪」と「飽和脂肪」は最低限義務化すべき。



参考資料は以下http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/e131204_shiryou1.pdf
資料1、栄養成分の対象成分について16ページ

各国の義務化の状況

米国、カナダ 
エネルギー、炭水化物、たんぱく質、脂質、ナトリウム、飽和脂肪酸、糖類、トランス脂肪酸、コレステロール、食物繊維、ビタミンA、ビタミンC、カルシウム、鉄

韓国 
エネルギー、炭水化物、たんぱく質、脂質、ナトリウム、飽和脂肪酸、糖類、トランス脂肪酸、コレステロール

アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル
エネルギー、炭水化物、たんぱく質、脂質、ナトリウム、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、食物繊維

香港
エネルギー、炭水化物、たんぱく質、脂質、ナトリウム、飽和脂肪酸、糖類、トランス脂肪酸

台湾
エネルギー、炭水化物、たんぱく質、脂質、ナトリウム、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸

オーストラリア、ニュージーランド、EU(15年まで義務化の猶予期間中)
エネルギー、炭水化物、たんぱく質、脂質、ナトリウム、飽和脂肪酸、糖類

中国
エネルギー、炭水化物、たんぱく質、脂質、ナトリウム、トランス脂肪酸(水素添加した油脂を使った食品)

日本
エネルギー、炭水化物、たんぱく質、脂質、ナトリウム

消費生活相談員国家資格制度、現3資格保有者はそのまま相談員として働くこと可

消費生活相談員の国家資格制度  意見交換会の最終報告は


◇「消費生活相談員」職
    地方公共団体で消費生活相談等を行う者として法律に位置付け

◇一定の要件を満たし、内閣総理大臣の登録を受ければ、複数の団体がそれぞれ試験を実施できるようにする(登録試験機関制度)
               →この資格試験を消費生活相談員資格とし、国家資格とする
 消費者問題に関する民間の活動に係る資格であっても、要件を満たすものであれば積極的に認める

◇資格試験は、筆記試験・実技試験等で消費生活相談員として活動するに足る知識と技術を有することを確認する
  
 実技試験は、現段階では現実的には面接が考えられると消費者庁担当者は説明している。
 

◇市町村に対する助言や共同処理等の援助を行うための(「特定消費生活相談員(仮称)」)を都道府県に設ける



3資格保有者
(消費生活専門相談員)    →登録試験機関の試験合格→国家資格保有者に
(消費生活アドバイザー)    →合格しなくても→そのまま相談員として働くこと可
(消費生活コンサルタント)   

それ以外
資格ない現職相談員     →登録試験機関の試験合格→国家資格保有者として相談員
資格がない人          →合格者と同等の知識・技術があると認めれれる者
                                          →相談員


「特定消費生活相談員(仮称)」     ← 市町村へ助言や共同処理等の援助担当
職として都道府県に1人以上の必置義務付け  

消費生活相談員資格試験(登録試験機関の試験)に合格し、一定の実務経験年数を有する者の中から都道府県が任用

当該都道府県ですでに任用されている者に限らず、他の都道府県や市町村の消費生活相談員からも任用可能とする


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報告案は12月6日ではまとまらず、12月13日までずれ込んだ。


6日の時点の変更点

3資格保有者の国家資格への移行は認めないことに変更
 登録試験機関の試験合格者のみを国家資格保有者とする

特定消費生活相談員の認定要件に新資格試験合格を求める


13日時点の追加点

特定消費生活相談員は、他の都道府県や市町村の相談員からも任用可



13日の意見交換会は、前日の報道に誤解を招く内容が含まれていたことから、大荒れ。
厳しい質問や意見が飛び交う中、了承を取り付けた。


しかし、法改正に必要な部分で無理やり了承を取り付けたという印象はぬぐえない。
詳細、肝心なところが、今後の検討に委ねられているため、不透明な部分が多い。

法改正のあり方としては、いかがなものかと感じる。
内閣総理大臣が登録する一定の要件や試験科目や詳細な内容が重要だが
その説明部分は前回報道の通り。それ以上のことは現段階では不透明。


全く議論されず根拠として示された相談員資格検討の中間報告(昨年8月)は、
国民生活センターが消費者庁の中に移行し、消費生活専門相談員資格を付与できなくなるという前提条件で検討されてきた状況があり、これが最終報告のように扱われている点も疑問。

しかも、検討会ではなく単なる意見交換会のわずか4回の報告。相談員資格については1回目の会議でほとんど何の議論もないまま2回目で骨格が提示されたことも問題。

ただし、基本計画には次期通常国会へ提出を目指すことが明記されて閣議決定済み
相談員資格の法定化は急ぐ必要がある。

ほとんどが非常勤で、2割に雇い止めがある消費生活相談員を
希望をすれば、何とか1人で生活ができていける(例えば母子家庭でも子どもが育てられる、男性も職として希望できる)給与水準、待遇に引き上げるような国家資格にできないかとささやかな希望を持っていたが

この案では、やはりほど遠い。

消費者庁は12月20日に、都道府県、政令市の担当者を呼び説明会を開く。
その後も地方のブロックごとに説明会を開催し、意見を聞くと話している。
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報告書の記載に以下の内容あり。以下のうちの一部のみが分かりやすい表現に丸められて報道され、誤解を招いたと見られる。

◇消費者に分かりやすく、必要な知識、技術等を十分に担保する新たな資格を創設し法律に位置付け

◇消費生活相談員は、消費生活相談員資格試験に合格した者またはこれと同等以上の専門的な知識・技術を有する者から任用

◇消費生活相談員資格試験の内容等を法令上明らかにする

◇現在の3資格は任用要件として規定し、資格保有者が引き続き消費生活相談業務を担えるよう必要な措置を講じる

2013年12月7日土曜日

消費者被害集団回復裁判特例法、4日成立。消費者に被害回復の道。損害賠償請求で悲願の原告資格。

「消費者被害集団的回復裁判手続特例法案」は124日、参議院本会議で全会一致で可決され、成立した。

12月11日に公布された。

7年の歳月をかけ消費者団体はようやく損害賠償で悲願の原告資格を手に入れた。

これによりこれまで個人では裁判に踏み切れなかった消費者に、被害回復の道が開かれることになる。

施行は公布した日から3年以内。

裁判に参加しやすく 費用や時間も節約
消費者が2段階目に裁判に加わるための費用は1000円
(特定適格消費者団体への手数料が別途必要)

消費者団体が起こすことができる裁判には、消費者が参加しやすい画期的な仕組みが盛り込まれている。

裁判が2回に分けて行われるのが大きな特徴。

【1段階目】

内閣総理大臣が認定・監督する「特定適格消費者団体」が、独自の判断で裁判を起こす。

事業者に損害を賠償する責任があるかどうかを争う。

      ↓
    勝った場合のみ
         
         ↓
 
【2段階目】


消費者が自らの判断で裁判に参加する。

参加するための費用は1000円(裁判所に支払う金額)
特定適格消費者団体への手数料、通知公告費用、弁護士費用
などが、払い戻される被害額から差し引かれることになる

簡単な手続きで被害額が戻ってくる。


一定の見通しが立った段階で裁判に加わるかどうか決めることができる。
このため、これまでに比べ飛躍的に裁判を利用しやすくなる。
お金と時間も飛躍的に節約できる。


濫訴防止へ慎重設計 
食材偽装は対象、カネボウの白斑問題は化粧品代のみ

ただし、乱訴の恐れがないように慎重に設計され、対象になる範囲が限定されている。


具体例でみると

食材偽装は、この裁判の対象になる。

勝訴した場合は、表示されていた食材と実際に食べた食材の価格差を戻してもらうことができるとみられる。

カネボウの白斑問題も対象にはなるが、
損害賠償請求ができるのは、支払った化粧品の代金のみ。

治療費や仕事を休んでしまった場合の補償、精神的な苦痛を受けたことによる慰謝料などは対象にならない。


施行前の契約は適用除外 (不法行為のみ加害行為)

経済界の要請で、施行前の契約には適用しない規定が入った。

3年後にこの法律が施行されても、これまでに起きた食材偽装問題やカネボウ白斑問題では損害賠償の請求ができないということになる。

今後、同じような問題が起きて裁判が提起された場合、施行日以後に買った化粧品の代金は対象だが、施行前に買った化粧品の代金は対象にならないという奇妙なことになる。

同一事案で対象にならない被害は

国民生活センターのADR(裁判外紛争解決)
消費生活センターのあっせん        で、対応することになる。



ちょっと専門的だが、

不法行為のみ 施行日前に行われた加害行為が適用除外

例:家を建てる契約をした後、建築会社が倒産することが分かっているにもかかわらずうそを言って追加の代金を支払わせた場合。

追加代金を支払わせた行為が加害行為だ。
加害行為が施行日以後に行われれば、契約が施行前でも対象になる。


適格消費者団体わずか11団体
特定適格団体への支援が課題


特定適格消費者団体は、施行後、内閣総理大臣が認定する。

要件は

適格消費者団体として2年程度、消費者の消費者被害防止への活動実績が必要。

適格消費者団体=消費者契約法で無効や取り消しの対象になる契約、
       特定商取引法、景品表示法、食品表示法(施行は16年6月まで)に違反す        る悪質な勧誘行為や虚偽表示を差し止める裁判をする。

       裁判の前に、事業者に改善を要請する。

       この活動をちゃんとやってないと特定適格消費者団体にはなれない。


さらに、経理的基礎などの新たな認定要件が付加される。

        (詳細は今後検討され、ガイドラインで示される。
         併せて濫訴防止のため、報酬や費用の額算定方法なども)

でも、まだこの適格消費者団体が全国に11団体しかない。
   四国や東北には、1つもない。

弁護士や消費生活相談員などがボランティアでかかわっている団体がほとんど。
ほとんど会費で賄っている状況で、お金がない。

1段階目の裁判で勝ったことを消費者に知らせるお金は消費者団体持ちだが、
HPに載せただけではなかなか知ってもらえない。

財政支援や情報面での支援を検討することが衆議院の修正で追加されている。


知って、使って。対象範囲拡大へ

長年かけてようやく実現するこの画期的な制度を知って、

積極的に活用し、

さらにより多くの消費者被害を回復できるよう、対象となる範囲を広げていくことが期待されている。(衆議院の修正で施行後3年で対象範囲の見直しが盛り込まれた)

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参議院消費者問題特別委員会の審議日程で、動きがあったのは2日午前中。

特定秘密保護法案にかかりきりの森消費者相の日程が翌日確保できる見通しがついた。

理事懇談会が開かれたのは、2日午後5時半だった。

参議院消費者問題特別委員会は3日午前10時から1時間45分の審議を行い、
全会一致で法案を採決した。

衆議院消費者問題特別委員会は同日午後1時30分から4時間、
食材偽装問題で集中審議を行った。

議員から質問が出そろったのは、2日深夜。消費者庁の担当職員は皆、徹夜だった。

皆様、本当にお疲れ様でした。





2013年12月1日日曜日

消費生活相談員3資格 そのまま国家資格化で質向上につながるのか。消費者安全法改正案で骨格。

消費者安全法改正へ骨格

相談員資格試験機関に登録制
都道府県に「特定消費生活相談員」

 来年通常国会への提出を目指す「消費者安全法改正案」の骨格が1120日、
明らかになった。

 「消費生活相談員」を法律に明記し、一定の要件を満たす資格試験機関を内閣総理大臣が登録する登録制を導入。要件を満たせば複数の団体の登録を認める方針で、現在ある3資格はそのまま国家資格に移行する。

 都道府県の役割に、消費生活相談、市町村への助言・援助、市町村の相談事務の代替を追加。都道府県に一定の実務経験を積んだ「特定消費生活相談員(仮称)」を配置する。


 これに対し「現場にはまったく知らされておらず、やり方が乱暴」「現在ある資格の上位の国家資格でなければ、質の向上、待遇改善につながるとは考えられない」「特定消費生活相談員は経験年数では判断できない。だれがどういう基準で選ぶのか」などの意見が出ている。

 消費者庁の地域体制のあり方意見交換会が10月22日に発足。ほとんど議論の深まりはないまま、相談員資格については何一つ議論されないまま、2回目の会議で骨格案が提示された。

 12月6日、最終案がまとまる。

 地方自治体はこの骨格について知らないところがほとんどだったが、
現場の声は反映されているのか。

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 消費者安全法改正案 骨格

【消費生活相談員を法律に位置付け】
「消費生活相談員」を法律に明記
・地方自治体で消費生活相談を行う専門職として法律上位置付け
・消費生活相談員に求められる知識・技術を判定する資格試験制度を設ける
・資格試験の合格者または同等以上の知識・技術を有する者を消費生活相談員として任用
 登録試験機関制度を導入
  ・要件を満たす試験機関を内閣総理大臣が登録する
  ・実施科目、実施することができる試験機関の要件を列挙
  都道府県に「特定消費生活相談員(仮称)
  ・都道府県に、一定の実務経験を積んだ「特定消費生活相談員(仮称)」を配置

【都道府県、国、国民生活センターの役割明確化】
  都道府県の役割に市町村への助言・援助、市町村の代替相談
  ・都道府県は、消費生活相談や裁判外紛争解決手続(ADR)等の実施、管内市町村に対する助言・援助、広域連携の推進、市町村の相談事務を代替を明記
  国・国民生活センターの役割を追加
国の役割に、制度的な枠組みの整備、関係省庁間の連携確保を追加。財政面での支援等の援助が盛り込めるか検討中
・国民生活センターのADRを追加
◇民間委託に守秘義務
  ・消費生活相談等の民間委託を行う場合は、適切な受託団体を選定し、質を確保、守秘義務を課す

【地域ネットワークの法的根拠に地域協議会】
  「地域協議会(仮称)」設置を法律に明記
  ・地域ネットワークの法的根拠規定として、地域協議会(仮称)の設置を法律に明記
・地方消費者行政を多面的にサポートする「協力員」や「協力団体」も規定
  守秘義務、情報管理措置を規定
・消費者関連情報を「地域ネットワーク」に適切に提供できるよう、相談業務に携わる人(行政職員含む)、地域協議会に参加する人に守秘義務を規定
  ・個人情報を見守りの目的以外に使わないなどの情報管理措置を整備


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相談の質向上と矛盾しないか
現場に知らされず、やり方乱暴
 
この案に対し以下の意見が出ている。

吉川萬里子・全国消費生活相談員協会理事長

「相談の質を向上させるというのであれば、一定の試験が必要。いろんな機関が実施する試験で認定することが本当にいいのか。相談員の質を向上させるということと、裾野を広げ多くの団体の資格を認めていくことは矛盾する」

「特定消費生活相談員は職員と同等の位置づけになるのか。市町村で実務経験を積んだ相談員とのバランスをどう考えるのか。慎重な検討が必要。

池本誠司弁護士

「高い水準の質を確保するというのは正論だが、その一方で、3つの資格のいずれも持っていない人が25%いるという現実論の問題がある。継続的な研修や更新制度を国の制度としてきちんと位置付けていくことが需要ではないか」

青山理恵子日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会副会長

「意見交換会でしかも何の議論もないままに、このような案を提示してくるのは乱暴もはなはだしい。現場の相談員らにはまったく知らされておらず、混乱を招く。現状維持のまますべてを国家資格にするという内容で、質の向上が図れるのか。相談員の待遇改善につながるとも考えられない。都道府県の一定の実務経験者を特定消費生活相談員にするというが、だれがどのような基準で選ぶのか。基準の明確化は困難で、過去の失敗の轍を踏まないでほしい」

地方の消費者行政担当職員

「消費者安全法改正案の骨格が示されたことを全く知らない」
「相談員の待遇改善は、上位の国家資格を創設し必置義務にしなければ難しい」
「特定消費生活相談員は、経験年数を積めばいいというわけではない」
「地方自治体に予算がつく仕組みを検討してほしい」
「都道府県の市町村支援、垂直支援を法制化するということか」

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この骨格案について情報を入手したのは、10月中旬。

現在3つある相談員資格をそのまま国家資格にする。都道府県の相談員のうち、5年程度の実務経験者から特定消費生活相談員を選定する。そんな内容だった。

確かPIO-NETも法律に位置付けたいという話もあった。

この案が本当に骨格案として出てくるのか。
案として出るまでに消える可能性が高い。そう感じた。

 しかし、現実に、表舞台では何の議論もなされないまま骨格案が出てきた。
では、水面下での調整が図られたのか。
実はこれもなされている様子がない。

 各団体に消費者庁が詳細な説明に回ったのは18日。委員に骨格案が提示されたのはその1日か2日前というのが取材で把握した内容だ。18日夜あわてて各団体に取材したが、「納得などしていない。内容がよくわからない」などの声が多かった。

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相談員資格の問題は、各団体の利害が関係するため、合意を図るのは容易ではない。

消費生活相談員には、現在、
①消費生活専門相談員
②消費生活アドバイザー
③消費生活コンサルタント の3つの資格がある。

このほかに、北海道では、北海道消費者協会が独自に相談員を養成している。

①②は、試験と面接があり、合格率は4分の1程度。試験の内容は異なる。
③は、最初に適性を判断されるが、講習を受けレポートなど簡易な確認でほぼ受講者  全員が資格を取得できる。
北海道消費者協会の養成も、難しい試験があるという話は聞かない。

地方消費者行政活性化基金を活用して、地方自治体で消費生活相談員が養成されたが、地方自治体にとってありがたい仕組みは確実に有資格相談員を養成できる③だった。

消費生活相談員は増え、3391人になったが
そのうちの822人は、3資格のいずれの資格も持っていない。

未だに4割の市町村に相談員がいない。
過疎の市町村は7割が相談員がいない。
高齢者が4割を超える市町村では、8割弱が相談員がいない。
もっとも必要とされているところに相談員がいない現状がある。

さらに、相談員のほとんどが非常勤で、1年ごとの更新契約
3年から5年の雇い止めがある自治体が2割ある。

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今回提起された骨格案だと、

一定の要件に基づき、③もその他の団体も登録機関となる場合は、試験や面接は行うことになるだろうが、試験内容はマチマチ。①や②が現状よりやさしくなる可能性すらある。

それですべてを国家資格とするという案だが、これでは、図書館司書の二の舞になることは目に見えている

過去の試験合格者はそのままスライドすることになるだろう。本来試験をすべきだが、何のメリットもないものに負担のみ増えるとの批判が出るのも目に見えている。

格差を埋め、質を向上させるどころか、一定のレベルに達していない相談員を国家資格保有者にしてしまうことになる。


特定消費生活相談員も、2重行政が問題視される中で、都道府県の役割に市町村支援を追加し、その人材として配置するという説明は理解できる。

しかし、現実には都道府県の方が雇い止めを実施しているところが多い。市町村に優秀なベテラン相談員がいる。試験や明確な選定基準なしに特定消費生活相談員を選定しても処遇改善に結びつくとは思えない。どう雇い止めを解消するのか方策も示されていない。


結局大ナタはふるうことができず、

一番文句が少なそうで、簡単にできそうな案を選択したと言わざるを得ない。

現場の意見を真摯に聞くことなく
時間がないとして短時間で結論を急がせる。

やらないよりはましということか。
あるいは、やったことにしなければならないということか。

消費者庁はいつから上意下達になったのか。
決まってから地方自治体に報告するのか。


消費者庁及び消費者委員会設置法付則4項が求めた内容には程遠い。


消費者庁及び消費者委員会設置法付則4項
政府は、消費者庁関連三法の施行後三年以内に、消費生活センター(消費者安全法第十条第三項に規定する消費生活センターをいう。)の法制上の位置付け並びにその適正な配置及び人員の確保、消費生活相談員の待遇の改善その他の地方公共団体の消費者政策の実施に対し国が行う支援の在り方について所要の法改正を含む全般的な検討を加え、必要な措置を講ずるものとする。

消費生活相談員の国家資格制度  意見交換会の最終報告は15日のブログに