2016年7月30日土曜日

消費者庁移転問題、「新未来創造オフィス」創設で検討3年間引きずる無謀

 河野太郎消費者相は7月29日、新たな消費者政策を研究・分析をするための「消費者行政新未来創造オフィス」(仮称)を徳島県庁内に設置すると発表した。従来業務ではなく新たな消費者行政を創造する場として、実証試験や研究・分析に取り組みながら、3年後をメドに霞ヶ関の情報通信システムや国会、交通の利便性の変化を踏まえ、移転できる業務を見直すという。現時点で移転できる業務がないと判断したのであれば、移転は断念知りのが筋。国民生活センターの商品テストや研修は一部移転するという根拠は何ら示されていない。これだけの試行の費用と職員への負担を強いた大臣と徳島県知事の対面を保つための案にしか見えない。 

同日の大臣会見から以下の項目を抽出しておく

「消費者行政新未来創造オフィス」とはどういうものか

位置づけ・業務内容

実証に基づいた政策の分析研究の中心となる新しい消費者行政の創造の場、発展の場

・新しい消費者のための政策を作っていく場としての拠点
 新しい消費者行政を作っていく

徳島県、近畿圏のさまざまなネットワークを活用して分析研究・実証実験ができる

人員

7月の試行と同程度、最大で40人。30人くらい。

・消費者庁から行ってもらう人もいるし、常駐する人もいるし、創造的な業務をやるときに行ってもらう人、徳島県から出してもらう人、関係連から出してもらう人。地域のリソースも含めた様々な人的リソースを使いながら新しいことをやっていくオフィスにしていきたい。

・消費者庁の人間、徳島県、大学、関西の企業からも人を出してもらえばいい。県庁のオフィスにろんな人にきてもらう

新しい施策の具体例

・不招請勧誘について徳島県をフィールドとして使わせていただいて、そこでの成果を
 全国的に展開をする

フィンテック(情報通信を活用した金融サービス)、ブロックチェーン(仮想通貨の根幹となる技術)のような新しい消費者のための技術に関するさまざまな政策。
 東京でなくてもできる。むしろ、いかに世界とつながるかということを考えれば、
 新しい創造的な政策を作る場としては、徳島県は非常にいいのではないか

・シェアリングエコノミー(インターネットを通じて、モノやサービスを個人間で貸し借りする仕組み)

消費者教育、倫理的消費、
  
予算・定員

国家公務員制度担当大臣と消費者行政担当大臣がよく議論しないといけない
両方とも私

増やさなくて済むということにはならないと思う。新しく創造的に何かをやろうとすれば増える可能性は否定しない。新しい消費者行政の創造的なものにつながっていくならば議論の余地がある。地方創生に資する点から十分議論できる。規模間はさまざまな議論が必要


設置時期と概算要求

・これから相談する

・来年度の概算要求にしっかり入れていく

国民生活センターの商品テスト

商品テストと研修は持って行く

徳島でやれるものはやる。いままでで相模原でできなかったような先駆的なテストを徳島県でやるというのは非常に意味があると思う

国民生活センターの研修

研修は北海道や東北からはとても遠いので、拠点としては関西を中心に最初のうちは限られた拠点になる関西を中心に限られたものになる。

研修も東北や北海道から行くのは大変だということでなかなか来てもらえなかった。
今後、航空路が開拓されれば行けるようになるだろうと思う。
 
消費者委員会

消費者委員会については、テストはできなかったが、拠点ができれば、関係の会合をやることも考えられると思っている。

上記方向で、これからまち・ひと・しごと創生本部に申し入れる


大臣の考え方

冒頭発言

後、例えば航空路はじめ交通が整備されたらどうなるのか
国会答弁テレビ会議でもいいですよとなったらどうなるのか
霞ヶ関の情報システムがさらに完備されたらどうなるのかという
可能性が残っているものの、現時点でなかなか環境が整備されていない部分もあるので

まず、消費者行政新未来創造オフィスを設けて、東京でやれない、やっていないような
新しい消費者行政を作りだすということをやりながら、3年程度をめどに今後周りの環境を含めどうなっているのか見直していくことをやっていきたいと思っている。

記者との質疑応答

Q 移転は断念したのか
A 全然。全く

Q この拠点は移転が前提か。3年後に移転判断するのか
A 3年後に見ていきたい

Q 来年度の概算に入れていくか
A しっかり概算要求に入れていきたい。

Q この予算は特別枠の予算か
A そこはしっかり財務当局、地方創生とも相談しながらやっていく。

Q 現時点では、業務の移転は難しいと判断した上で今回の構想を立ち上げるのか。
A 研修や商品テストはもっていこうと思う

Q 可能性として他の地域で拠点を増やしていくのか。

A 増やすかどうかどうかは別として、
3年の間で霞ヶ関も変わる、国会との関係も働き方改革で変わる、情報通信システムも変わってくる。なかなか徳島に行きづらい現実も3年間で変わると思うので、変わってくればいろんな業務を足したり、いろんなものが移転できたり、プラスアルファ―したり、新たなものが生みだされるものもある。3年後に見直してどうしようか考える。

Q なぜ、徳島なのか、全国の消費者行政にどんなメリットがあるのかきちんと示さないと公平性に欠けるのではないか。きちんと示していくのか。具体的なメリットについて徳島県から提案はあったのか。

A 移転について手を挙げているのは徳島のみだったので、公平性に欠けることはない。
新たな拠点で新しいものを作るのは全国にとって大変なメリットだと思っている。
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今回、消費者庁の業務移転は、行わないとした判断は評価できるが、
なぜ、新たなオフィスを設置してさらに3年も検討する必要があるのか。

何を根拠に国民生活センターの商品テストと研修を一部移転するのか
以下問題点を列挙する。


3年で、交通の便が良くなるのか
各省庁や国会に専用回線で結ばれたテレビ会議システムが整備されるのか。

何の見通しもない中で3年もかけて見直すなど税金のムダ。

◆そもそも、消費者団体や日弁連は、

 「消費者庁の政策を快く思っていない他省庁や政党、国会議員、業界団体などの折衝は
テレビ会議では無理だ」と主張してきた。その試行は行っていない。

 
 テレビ会議システム等が整えば移転できるという論理展開は、矛盾に満ちている。

予算の肥大化を認めないとする基本方針を覆し、新たな取り組みのための人員や予算が確保できるのか。でなければ機能の後退につながる。

なぜ、徳島なのか。他の都道府県が納得できる理由は、何ら示されていない。徳島からも全国の消費者行政のどんなメリットがあるか示されていない。

不招請勧誘禁止規制は、すでに取り組みを始めた自治体がほかにある
 実証フィールドとして他にふさわしい地がある。なぜ徳島なのか。

フィンテック、ブロックチェーン、シェアリングエコノミー
 これが、消費者行政の施策なのか

世界につながることを考えると、徳島がいい」 その理由は?

商品テストも研修も、試行の結果の詳細をまず公表せよ。
 何を理由に一部移転を決めたのか。


商品テストは、もともと徳島県は実施すらしていない。
 相模原でやっていない先駆的な商品テストとは何なのか。本当にあるのか。
 徳島でしかできないのか。施設を新たに作るのか。予算規模は、どこが作るのか。
 
 完備された施設がある中で税金のムダではないか。
 職員の負担が増えるだけで従来機能が低下しないか。
 相模原でやればいいのではないのか。

研修も、徳島で全国の範になるどのような研修が行われたというのか。
 県外からの参加者は極端に少ない。
 関西圏で一カ所設置するのであれば、ほかにふさわしい場所があるのではないか
 
 再開された相模原研修施設の稼働率が減り、行革で問題にされないか
 交通の便は、いつよくなるのか。見通しが示せていない。

◆他の自治体は、消費者庁の役割を十分に認識しているからこそ、消費者庁の移転に手を挙げていないのではないのか。徳島県の提案には大物政治家が関与したとされているが、本当だとすれば、あまりに消費者行政を知らない。
 オフィスの設置で「全国にとって大変なメリットがある」と大臣は明言したが、それは何なのか。後で政策評価ができるように具体的な内容を示すべき。


 菅官房長官「結論は8月末」
「機能低下、予算増では、移転せず」


菅官房長官に聞いた

 Q 消費者庁の移転問題について、河野太郎消費者担当相は、本日「消費者行政新未来創造オフィス」を徳島県庁内に設置し、新しい消費者行政を作りながら、3年後に見直すと発言した。

大臣は、交通網が整備されてらどうなるか、国会もテレビ会議でいいですよとなったらどうなるか、現時点での環境が整備されていないと話しているが、政府はこれらを変えていくつもりがあるのか。3年もかけて見直す必要があるのか。税金の無駄ではないか。
                                                                                        
A 3月の政府関係機関移転計画では、8月末までに結論を得ることを目標にしている。
本日試行が終了することを受けて、河野大臣が目指す方向を示されたと思う。いずれにせよ政府全体が目指す方向に向けて、結論を出していきたい。


Q 手を挙げたところにお土産をあげて、知事と大臣の体面を保つ施策、現場無視の施策などの批判が出ている。
 予算の肥大化はしないとされていたが、新しい消費者行政を創設する新たな仕事をするには、予算や人員が純増されなければ、後退につながる。政府として人、予算を増員することができるのか。

A 機能が低下したり、予算が余分にかかったりしたらやらないというのは当たり前じゃないか。
少なくとも現在と同等の機能が発揮できるか。費用、地方創生の費用を総合的に考えて、判断をする。

Q 先駆的な商品テストをやると言っているが、新たな商品テスト施設をつくる考えはあるのか。予算はどのくらいの規模を考え、それはどこが負担するのか。

A 機能低下になったり予算が余分にかかると趣旨と全く違うので、移転することはない。

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7月27日 板東久美子・消費者庁長官会見からを追加
 
徳島県からの最後の会見になるため、試行の結果について概要を報告している。
8月1日には、異例の長官会見が設定され、さらに詳細が報告される。

←修正:8月1予定されていた長官会見は、午前11時の段階で取りやめになった。消費者庁広報室は「今後の対応について、大臣の発言した以上の内容がないため」と説明している。
迅速な対応や関係者との調整など重要な業務では難しさを感じた。
・課長が急きょ帰京したケース(消費者基本計画改定案の説明)や、やむを得ず在京の代理者が対応したケースあり。

迅速性や業務の質の低下、関係者との日常的な関係の構築の面では課題を感じた

消費者教育、倫理的教育については
学生、事業者、教育・学術機関などとの継続的な協力を得られれば、新たな施策を創出できる可能性も強く感じた。

●働き方改革の点については、
テレビ会議は、庁内での打ち合わせについては今後、有効と考えられた。ペーパーレス化の推進と併せて業務改革に発展させられる可能性を感じた。
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Q 難しさを感じたのは、具体的にどんな場面か
A 消費者制度課長が、消費者基本計画改定の前段階での調整、各省、国会等、国会議員の説明のため、急きょ帰った
   (消費者委員会が諮問に対する答申をしたのは612日、全閣僚で組織する消費者政策会議決定は720日だった)
 
関係省庁との会議、課長が出席するところを代理が出席したこともあった。
当面はできるが、常にというのは難しいと感じた。

消費者庁自体がいろいろな関係省庁の調整をする必要があるので、
事務局として主催する会議については、
各省庁と共通するシステムを含めて今後の課題である。

Q 関係省庁との対応の難しさは特定の課か。全体に共通しているのか。
A 特定の課ということではなく、消費者庁全体として、消費者行政、消費者政策の視点に立って、ある意味横串を差しながら司令塔機能を発揮するところで、関係省庁と連携しなくては進まないものはたくさんある。
各省の行政の中にも、消費者政策に積極的に関与していかなければならないところが多くある。各省との調整は全般に必要になってくる。自己完結的に仕事ができる部分は少なく、連携のところは、調整は消費者行政の中でも、重要な要素だと思っている。

Q 移転の可能性についてはどうか。
A 今までやっていた施策については、関係者や部外者との調整が必要になってくる部分とか、迅速な対応が求められる部分は、課題はあると感じた。
消費者庁はいろんな業務をしているので、オール・オア・ナッシングではなく、例えば、新しい、開発的なこともある、調査分析とか、その中で、どういうことができるかいろいろなところを見せていただいた。全体を総括することになっていない。

Q 徳島に滞在しての、移転した場合の生活面についてはどういうことを感じたか。
A 生活面は、ホテルやウイークリーマンション住まいで、通常の生活とは切り離されていたこともあり、そういった点で、試行はできなかった。子育て、親の介護であったりと、2週間以上の試行は難しい職員がいたのは事実。たとえば、これからの問題として、子供がいる。結婚していれば、夫婦そろってこちら仕事をすることができるか、個々のワークライフバランスの問題、生活の問題がある。試行の中でできる形でやらせていただいたことはある。

Q 機密性の高い情報はやり取りをしていない。これらの業務の試行はどうすれば行うことができるか。
A 法執行は、セキュリティー面だけが決め手ではなく、法執行の現場は大きい。
執行担当職員を実際に徳島に来させて執行の試行をできないわけではないが、どうせ、出張せざるを得ない。調査した物証をいちいちこちらに運んでやるわけにはいかない。明らかに非効率である。こちらのメリットがないことをセキュリティーの心配をしながらするというのは、試行に向かないということを言った。
  課長がこちらにいるので、執行にかかわる相談、段取りをつけるなどは当然連絡しながらやっていくというのはあるが、具体的な取り締まりを行うのはむしろ非効率。試行するかどうかにかかわりなく明らか。

2016年7月24日日曜日

国民生活センター商品テスト、徳島移転の問題点を検証

国民生活センター商品テストの試行が徳島で行われている。国民生活センター相模原事務所には、3つの商品テスト棟、自動車走行試験路、家庭内事故解析棟などが完備され、自らの設備や機器を改造しならがら生活実態に合せた商品テストを年間約200件もこなしている状況下で、なぜ、徳島県に移転する必要があるのか。76日、河野太郎消費者担当相の徳島県立工業技術センター視察に同行したが、その疑問はぬぐい去れないままだ。商品テストは、その結果をリコール(商品回収や無償交換など)やJIS規格の策定・改変、制度改正・法改正などにつなげてきた実績がある。テスト結果を専門家に分析・評価してもらい、それを武器に事業者を呼んで交渉し、事業者団体を説得し、関係省庁と折衝・調整することが不可欠だ。同じ設備が徳島にあればいいという問題ではない。商品テスト機能の後退は、消費者の安全・安心な暮らしを脅かすことを知っておいてほしい。


商品テスト、徳島移転の問題点

    自前の施設、設備、機器がある中でなぜ、徳島県の施設を借りて実施するのか。
提案自体、合理性を欠く

    生活実態に合わせ、設備や機器を改造しながら実施する国民生活センターの商品テストは、借り物の機器では無理

    民間企業も借りることができる機器の使用は、秘密保持の点で問題あり
  国民生活センターは、事故品を原則、事業者に渡さない

    専門家がテスト結果を評価・分析し、それを武器に事業者を呼んでいる。
  徳島で専門家を確保できるのか

    事業者にテスト結果を見せ、納得してもらう必要があるが、徳島に事業者を呼べるのか

    製品改善や基準づくり、法改正につなげるためには、各省庁との対面での説得や調整が必要。直接会うことが不可欠

国民生活センター相模原事務所の商品テスト施設


商品テスト1号棟 (食品・化学・衣料品) 3060.10㎡
商品テスト2号棟 (電気・機械等) 1670.67㎡
商品テスト3号棟 (自動車・自転車等) 710.41㎡
その他、家庭内事故解析棟、自動車走行試験路(直線走行路・旋回試験路)、テスト用住宅等
が完備されている。

45000㎡の敷地の中に、上記商品テスト施設と、宿泊ができる研修施設がある。

国民生活センター商品テストの実績
       2014年度 2015年度
①苦情相談解決のためのテスト 204件 187件
 (各地の消費生活センターなどから依頼) 425商品 368商品
②注意喚起のためのテスト  13件 10件
 (新商品やトラブルが多い商品) 163商品 272商品

消費生活センターなどからの商品・技
   
術に関する問い合わせ・相談 1399件 1308件
   ※商品テスト分析・評価委員 30 34人
   ※事業者との対面での交渉 33 25回
   ※専門家へのヒアリング 26回 27回

生活実態に合せ、事故原因を究明
設備や施設も自ら改造

家庭内の事故は、使っているのと同じ状態で再現することが必要だ。

例えば、首浮き輪による溺水事故は、事故が起きた家庭の状況が再現できるよう風呂場のバスタブ、洗い場の高さが自由に変えられる家庭用事故解析棟で商品テストが行われた。

着衣着火のテストは、ガスコンロの高さを変えて実施された。

家庭用事故解析棟では、ガスレンジの高さ、風呂場のバスタブの高さ、洗い場の高さのほか、リビングの広さなども自由に変えることができる。生活実態に合せて試験ができる設備が必要だ。

さらに、機器を改造することも少なくない。商品を丸ごと試験するために産業用ロボットのアームはその都度、対象に合せて作ったり、これまでに作ったものを使い分けたりしている。テスト用住宅の壁を壊して窓枠を取り付け、防犯用ガラスのテストをしたこともある。自前の機器や設備でなければ改造することは困難だ。

規格基準づくりや法改正へ
関係省庁との折衝不可欠

同じ設備が徳島県にあればいいというわけではない。

同種の製品で同様の事故が想定されないかさまざまな店舗で販売している商品を試買してテストを行っている。これには首都圏が有利だ。

また、独立行政法人である国民生活センターには、法律に基づく権限はない。専門家34人に委嘱してテスト結果を分析・評価してもらい、これを武器に事業者を呼び、納得してもらう必要がある。多忙な専門家がその都度徳島に来てくれるのか。あるいは徳島で確保できるのか。徳島に事業者を呼べるのかという問題もある。

なにより、

商品テストの結果がリコールや製品改善、安全な製品の基準づくり、法改正につながっていることを忘れてはならない。

1月に公表されたセラミックファンヒーターは、同センターの商品テストで製造工程に問題があり4件同じ現象で発火事故が起きていることが確認された。重大事故として2件が公表されていた段階では、リコールは行われていなかったが、商品が無償交換されることになった。

緊急脱出用ハンマーは、自動車のガラスを割ることができない商品があった。同センターの公表を契機に、JIS(日本工業)規格が作られることになった。自転車の幼児座席は、もともと取り付けること自体想定されていなかったが、自転車の荷台の強度に関するJIS規格が変更された。まつ毛エクステンションでは、業界の基準が作られた。おしゃれ用カラーコンタクトレンズは当初は雑貨扱いだったが、同センターの商品テストをきっかけに最終的には、医療機器として扱われることになった。

商品テスト結果をもって、事業者と交渉して、製品を改善し、基準や法律改正を実現している。JIS規格の策定や改変、制度改正、法改正には関係省庁との折衝・調整が不可欠だ。これが徳島でできるのか。答えは否だ。

試行で、これらの検証は何ら行われていないことは特筆しておく。


秘密保持にも懸念
相談者特定、風評被害の恐れ
秘密保持の問題もある。国民生活センターは、原則として事故品を事業者に提供しない。消費者の視点で国民生活センターが自らテストし、原因を究明している。消費者から信頼されているゆえんだ。
どのような商品がテストされているか事前に分かると、相談者が特定される、あるいは、結果が出ない段階で風評被害につながるおそれがある。公表に影響が出ることも懸念される。今回、試行でどんな商品をテストするか公表されていないのもそのためだ。

徳島県で借りることになっている試験場の機器は、民間の企業も借りて使うことができるものが多い。さまざまな人が自由に出入りできる状況下で、国民生活センターの商品テストを行うこと自体に、問題がある。
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商品テストの徳島での試行
4施設の機器を借りて実施

商品テストの徳島県での試行は、徳島県の4カ所の施設の機器を借りて、実施することとされている。

①工業技術センター②中央テクノスクール③保険製薬環境センター④農林水産総合技術支援センター-の4つ。

数件の試験が行われるとみられるが、何を試験するかは公表されていない。

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徳島県立工業技術センター
LED全光束測定装置を配備

徳島県立工業技術センター
徳島県立工業技術センターは、19918月に開設された。31600㎡の敷地に、延べ床面積16419㎡の鉄骨鉄筋3階建の施設がある。
同施設の目玉は、LED製品から出る光の総量や色を測定するための直径3メートルの全光束測定装置。スーパーや事務所などに設置されている長さ2.4メートル(JIS規格の最大)の蛍光灯も測定できる。20124月、日本で3番目に配備された。この大きさの測定装置があるのは日本の公設試験機関ではここだけだという。
このほか、光の広がりを測定できる配光測定装置、他の製品や人体へ影響を及ぼす安全性能を評価するためのシステム、落雷や振動などから悪影響を受けないための環境性能を評価するためのシス
直径3メートルの全光束測定装置
テムなども整っている。

直径3メートル、公設施設では最大
LED製品開発の拠点

 徳島県では、200512月に「LEDを利用する光(照明)産業の集積」を目指し「LEDバレイ構想」を策定。工場・研究所等を集積させ、高度技術者の育成や先端技術の研究開発を行う拠点づくりに取り組んできた。徳島県立工業技術センターは、「LEDトータルサポート拠点」に位置付けられ、LED応用製品の開発などを支援している。  
公設の試験機関では最大
20126月には国際規格IS0/IEC17025に適合するLED測光試験所に登録されている。全国各地の企業から、開発した製品が国際規格基準に適合しているか検査の依頼がくるという。
2010年には、「LED関連企業100社集積」の目標を達成し、現在は132社に上っている。

県内製造業をサポート
試験機器を民間企業に解放
このほか、県内の中小企業、製造業をサポートするために、作った製品を分析し、JIS規格に適合しているかを試験分析できる機器がそろえられている。食品・応用生物、機械、電子技術、生活科学、材料技術、軽量・計測など、LED関連機器を含め約260種類の機器がある。これらは、県内の民間企業に開放され、2015年度は約1600件利用されている。試験の依頼は全光束測定装置を含め同年度約4500件の実績がある。
県外からの依頼は料金が2倍になるが、全光速測定装置による試験依頼は2015年度に68件あり、このうち27件が県外からだった。

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テストの目的やアプローチ、大きく異なる

徳島県立工業技術センターは、LED製品から出る光の総量や色を測定するための直径3メートルの全光束測定装置が目玉だが、国民生活センターの商品テストでは、今までに必要になったことはない。

県内工業の振興を目的に、機器を貸し出したり、試験の依頼を受けたりして、企業が開発した製品がJIS規格に適合しているかなど試験方法が決まった定形的な試験を主に実施している。試験方法が決まっていないものを、試行錯誤しながら事故原因を究明する国民生活センターの商品テストとは、目的やアプローチのし方が大きく異なっていた。

原因究明のための自前の機器
1カ所にあることが重要

例えば、LED関連で国民生活センターに持ち込まれる苦情相談は、破裂した、寿命が長いと言われていたがすぐに切れてしまったなどの相談だ。
これらの原因分析には、全光速測定装置や配光測定装置は必要ない。LED製品を含め、どの製品の性能がいいのかという性能の比較テストは行っていない。万が一、性能を測定する必要が出ても、家庭用の蛍光灯には大きな測定装置は必要ない。

細かな部分に異常がないか確認する拡大モニター、異常な発熱をしないか丸ごと製品の発熱状態を確認するための熱画像装置 、通電して電気回路の作動を確認するための安定化電源など、原因究明のための機器が必要だ。
家電製品が焦げた場合などは、加えて、非破壊のまま内部の状態を3次元で観察できるXCT、製品にジュースなどをこぼしていないか電子基板の上にある元素の分布を分析する機器なども必要になる。
徳島県立工業技術センターにこれらの機器が全くないわけではないが、数は少ない。性能も十分でないものもある。何より、何が原因か分からず、試験方法も定まっていない中で、総合病院のように同時進行でさまざまな試験を駆使しながらテストをするには、自前の機器が一カ所にあることが不可欠だ

民間企業が出入りする施設で、民間企業が使っている機器を、時間借りで行えるようなテストではない。