2018年12月19日水曜日

消費者庁8月に「WILL」立入検査 テレビ電話レンタル商法を海外展開 ジャパンライフと同様の被害また、繰り返すのか



消費者庁 8月に「WILL」立入検査

テレビ電話レンタル商法を海外展開



 甚大な消費者被害をもたらしたジャパンライフと酷似した手法で、 テレビ電話のレンタルオーナー商法を海外展開する 「WILL ㈱ (ウィル、 本社・東京都渋谷区恵比寿、 中井良昇社長)」 に対し、 消費者庁が8月末に立入検査に入っていたことが 12 月7日、 同社の複数の社員、 元社員らへの取材で確認できた。 テレビ電話8台を約 60 万円で購入してレンタルすると、 3年間毎月2万円のレンタル料が入り 72 万円になると、 マルチ商法で高齢者らから高額な資産を集めている。 国内の需要はさほどないが、 海外の需要は大きいなどと説明し、 2000 人規模のハワイ招待旅行や、 温泉旅館で開催される全国大会、 全国各地で開催されるセミナーなどで巧みに信用させている。 芸能人や有名人らがかかわっている点もジャパンライフに酷似している。 「ジャパンライフ元社員が流入して売り上げが月約 50 億円に伸びているが、 海外にも需要はなく、 レンタル料を新規契約で賄う自転車操業。 大きな消費者被害が出る」 という複数の内部告発が本紙に行われている。 消費者庁はジャパンライフの教訓を生かし、 早々に法律を改正しておくべきではなかったのか。 登録制を導入し常に預託による財務状況を監視できるよう見直さなければ、 第2、 第3のジャパンライフ被害が繰り返される。 迅速かつ厳正な行政処分ができるのか。(相川優子)


ジャパンライフと同様の被害
国内向け「WILL」社のテレビ電話
「willfon」の宣伝チラシ

また、繰り返されるのか


60万円が3年で72万円
数千万、億を超える契約も
 同社の契約者の話によると、 同社のテレビ電話 「willfon (ウイルフォン)」 8台分を 59 6160円で購入すると、 同社からライセンスパックと呼ばれる、 携帯電話の SIM カードのようなカードが送られてくる。 これを送り返すと3カ月後の 22 日から毎月2万円が 36 回振り込まれる。 4セット購入すると 226 万円に割引になるという。 マルチ商法で、 人を1人紹介すると4万円、 さらにその人が1人紹介すると1万円が入り、 紹介料は翌月に振り込まれる。 月に 10 人紹介するとマネージャーになり、 特別なボーナスも得られる。 実績に応じて昇格し、 「月収 300 万円以上、 年収が 5000 万円を超えるプラチナ会員もいる」 と目を輝かせる。 数千万円、 億を超えるお金をつぎ込んでいる人もいるという。
では、 本当にテレビ電話は、 レンタルされているのか。 レンタルオーナー数とユーザー数の説明は一切されないというが、 「3~5万円程度で参加できるハワイの招待旅行に行けば、 あなたも分かる。 来年はクルーザーを貸し切ると説明していたのでぜひ行こう。 国内の全国大会もある。 まずはセミナーに参加して」 と誘う。

「ハワイ日本人の7割がレンタル」とうそ
ハワイ招待旅行や芸能人のショーも
 9月初旬に行われたハワイの招待旅行には約 2000 人が 11 月に三重県の温泉旅館で開催された全国大会には、 約 1500 人が参加したという。 このほかにも、 全国各地で頻繁に PRP セミナーやビジネスセミナー (マルチ商法で勧誘する会員のセミナー) などが開かれている。
参加し、 高額契約者の表彰式や説明会に出席し、 ハワイ支社の見学、 観光などをしてきた。 3月には、 千葉県浦安市で東日本大会が、 兵庫県神戸市で西日本大会が開かれ、 芸能人のショーが行われた。
 PRP セミナーに参加した人のメモによると、
ハワイ支社のハワイ在住日本人向けの
宣伝チラシ
PRP
は、 同社会長の大倉満氏が考案した 「パーソナルレンタルプロフィットシステム」 で、 「かかわった人に損をさせない仕組み」 と説明されている。 購入してもらったテレビ電話を月 2000 円から 3980 円でレンタルし、 アフターケアやサービスは同社が実施し、 投資するだけでレンタル料が還元される。 日本での需要はあまりないが、 十数社の海外支社があり、 海外の需要がある。 テレビ電話だけでなく、 ネットショッピングやカラオケ、 海外で自国のテレビ番組が見られる機能が搭載され、 海外ではカラオケや自国のテレビ番組を見る需要が大きいことなどが映像なども用いて報告されたという。 「ハワイに住んでいる日本人の7~8割が使ってくれている」 とも説明されている。
 これらのセミナーは、 紹介者がいなければ入れず、 時間や場所も口頭で伝えられる。 上位勧誘者も同行し、 グループで参加するケースも多いという。 「ウイルは人生が変わる。 無一文だった人が、 年収1億円取る人が2人、 3人出ている」 「すごい企業に成長している。 紹介者がいて、 ここに来た。 縁があった人は運がいい」 などと勧誘されると、 1人契約しないと取り残されるような気になるとも話していた。
 紹介者を通じてしか参加できない閉鎖的な空間で口コミで着実に勧誘している点、 レンタルユーザーを契約者には見えにくい海外に求めている点は、 ジャパンライフの手法を、 さらに強化しているように見える。

複数の元社員、社員ら内部告発
「海外も需要なく、自転車操業」
 しかし、 本紙には 「老人など弱者から数百、
ニューヨーク支社の米国在住日本人向けの
宣伝チラシ
数千億円のお金を搾取する社会的犯罪は見逃せない。 情報提供したい」 という内部告発が、 社員や元社員らから相次いでいる。
  「会長はジャパンライフ元社員で、 この数年ジャパンライフのクローザー(紹介した人を確実に契約させる人)が入ってきたことで、 4月に月 20 億円程度だった売り上げが、 9月には 50 億円程度に急激に伸びている」 「海外支社はハワイ支社は 10 人程度いるが、 他の海外支社は支社長のほか、 事務員が1~2人に過ぎない」 「海外でも、 テレビ電話の willfonM の需要はない。 レンタルされているのは、 日本のテレビ番組が見られる willfonK だが、 日本のレンタルオーナー (投資家) が購入したwillfon の台数に対して、 実際は、 1~数%程度 (6000 台程度) しかレンタルされていない」 「日本のテレビ番組を見るには番組を流している各社とライセンス契約が必要だが、 契約しておらず、 違法」 「自転車操業で、 大きな消費者被害が出る」 「消費者庁から行政処分が下った時点で、 計画倒産をし、 逃げる可能性も有り得る」 などの情報が、 複数の同社関係者から寄せられている。
 口々に 「弱い立場の高齢者をだますのは許せない」 「国の行政機関は、 怪しげな匂いがするものに即立ち向かい、 威厳をもって処分する気概が欲しい」 「このような大型詐欺集団をのさばらせない法制度が必要」 などと訴えている。

ハワイのレンタル500台程度
違法に日本のテレビ番組を視聴
海外で実際にレンタルされている「willfon K
日本のテレビ番組を見るためにレンタルされているが、
日本の各放送局とライセンス契約はされておらず違法。
レンタルオーナーが購入したテレビ電話の1%程度
しかレンタルされていないと告発されている
ハワイで willfonK のレンタル契約をしているある女性は、 最初無料のサービスを受けたことをきっかけに 「半年契約で月 22㌦」 でレンタルして日本のテレビ番組を見ている。
  「半年契約で1カ月無料、 1年契約で2カ月無料のサービスがある」 と話す。 「NHK、 民放、 CS BS、 映画チャンネル、 CNN 等、 46 チャンネルが見られる」 という。 ハワイ支社の日本人向けチラシでは、 日本の民放、 BS CS など 45 チャンネルの過去2週間の番組視聴可とうたっている。 ハワイでも日本と同様に、 テレビ電話の需要はないという。
 外務省によると、 3カ月以上ハワイに在住している日本人の数は2万 2975 人 (2017 10 月時点調査)。 「外務省に届け出ていない人や学生を含めるとハワイ在住の日本人は4万から5万人いるが、 『ハワイ在住日本人の7~8割が willfon をレンタルで利用している』 という WILL の説明は、 虚偽。 誇大過ぎて、 あり得ない」 「レンタルされている機器は、 日本のテレビ番組を見ることができる willfonK で、 せいぜい 500 台程度ではないか。 しかも違法」 と、 同社の複数の関係者が同様の証言をしている。
 日本の著作権保護を目的とする団体によると、 加盟している日本の放送局各社と同社とのライセンス契約は結ばれていないことが確認されている。
 WILL は、 本紙の取材には応じない。 何度電話をしても担当者から電話すると回答するが、 担当者からは何の連絡もないままだ。

すでに被害拡大か
厳正処分は急務
 ジャパンライフは 2017 12 月末に2度の 30 億円、 8月の売上が約 40 億円だった。 WILL の月額売上はこの数字を上回っている。 内部告発通りであれば、 甚大な消費者被害が想定される。
不渡りを出して事実上破綻したが、 顧客に通知していた文書では同年3月の売上が約
 消費者庁取引対策課には、 行政処分について、 事案への着手から公表まで原則7カ月という内部ルールがある。 立入検査に入って以降は、 3カ月程度で処分・公表となっているが、 いまだに行政処分は行われていない。 今回も、 ジャパンライフのときのような後手後手の対応を繰り返すのか。 既に被害は拡大してしまっているが、 まずは、 さらなる被害拡大を防ぐための厳正な行政処分が急務だ。
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テレビ電話レンタル WILL(ウィル)問題

国会で消費者庁に緊急対応を要請
参議院消費者特委で大門実紀史氏

 12 月5日の参議院消費者問題特別委員会で、WILL (ウィル)」 のテレビ電話レンタル商法を取り上げ、 消費者庁に緊急に対応することを求めた。 ジャパンライフ問題について、 「資産が隠され、 結果的にお金が返ってこないお年寄りを大量に生んでしまった」 と、 その対応の遅さを批判。 「一番に被害の拡大防止を、 次に資産を移動させないように、 あらゆる手段を尽くして躊躇しないでやることだ」 と苦言を呈した。 「もっと厳しくレンタル商法に網をかけられる法改正も必要」 と述べた。

第2のジャパンライフになるおそれ
海外展開で“上手”行くレンタル商法
 
 大門氏は、 WILL に対する告発が複数きているとし、 同社の勧誘手法は、 ジャパンライフの磁気治療器がテレビ電話に替わっただけだと指摘した。 高齢者をターゲットに、 マルチ商法で契約を拡大させている点、 ジャパンライフに呼ばれた有名芸能人が同社のショーに呼ばれ、 集会で集団催眠のような勧誘が行われている点、 政治家が広告塔としてかかわっている点などは、 ジャパンライフと同様だと説明した。
 ただし、 購入者が預託したテレビ電話が実際にレンタルされているのかどうかを確認しにくいように、 海外展開している点は、 ジャパンライフの上手を行くレンタル商法だと話した。
  「テレビ電話をレンタルして収益を上げているという説明が本当なのか、 早急に確かめなければ大変なことになる」 と、 消費者担当相に緊急な対応を要請した。
 これに対し、 宮腰光寛消費者相は、 個別事案の調査については、 「答えは差し控える」 と答弁。 一般論として 「法違反行為に対しては可能な限り迅速かつ厳正に対処して早急な対応をしていきたい」 との回答にとどめている。
 大門氏は、 消費者庁にも国民生活センターにも告発、 情報提供があるとし、 「ジャパンライフと同様に契約者はお年寄りがほとんど。 ごっそり老後の資金を奪われると自ら命を絶つ人が出かねない状況がある」 と、 早急な対応と資産を押さえることの重要性を指摘している。

                      日本消費経済新聞12月15日号から
          
     ※  日本消費経済新聞のHPに特設ページを開設しました。
       http://web.nc-news.com/index.php?page_id=142&_layoutmode=on
          
           磁気治療器のレンタルオ―ナー商法を展開し、
           東京地裁から破産開始手続決定を受けた「ジャパンライフ」
           (千代田区、山口隆祥会長、負債総額2400億円)と同様に、
           契約者のほとんどが高齢者と見られます。
           ネットでは高齢者に情報が十分に届きません。
           身近な高齢者の方々に少しでもこの情報を届けていだきたく、
           よろしくお願い申し上げます。

2018年2月10日土曜日

ジャパンライフ被害弁護団連絡会、9日東京地裁に破産申立

 全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会は2月9日午前9時、東京地裁に破産申立を行った。
同日午前10時、東京地裁から、保全管理命令と包括的取立禁止命令が発令され、午後2時には
ジャパンライフ本社に、上記2つの命令が執行官より送達された。

 弁護団連絡会は、データ隠匿や破棄の懸念があることから公表を控えていた。本紙も情報提供は控えてきたが、本日記者会見を開く。

2018年2月8日木曜日

ジャパンライフ、首相、二階幹事長、大手マスコミ解説委員らも広告塔に

http://web.nc-news.com/index.php?page_id=132#_540

日本消費経済新聞のホームページに
「ジャパンライフ問題特設ページ」が開設されました。

記事はこちらでご覧いただけるようになりました。

最新号に掲載された記事は
「ジャパンライフ元社員から宣伝用資料入手
首相桜を見る会、二階幹事長も広告塔
―著名ジャーナリストや大手マスコミ解説委員らも-」です。

2018年1月26日金曜日

ジャパンライフ元社員が証言 債務超過の通知、顧客に届かぬよう工作

 ジャパンライフは消費者庁の措置命令に従わず、債務超過であることを解約のおそれがある顧客に通知しないよう、わざと間違った住所に送ったり、会社に協力的な活動者にまとめて送るよう本社が指示していたことが、元社員の証言で明らかになった。高齢者の顧客が読めないように、わざと一番薄いモードでコピーをして送付し、消費者庁の指摘で再度印刷し直して再発送していたことも確認できた。解約を阻止するよう本社が求め、解約阻止額を各店舗の入金実績として競わせ、返金阻止額の1%の報奨金を出す社内規定も整備されていた。

本社が指示、間違った住所に送付

読めないよう薄く印刷


 消費者庁は同社に対し4度の業務停止命令を出しているが、2017316日に2度目の業務停止命令を出した際に、預託法に基づき「レンタルしているはずの一部商品が大幅に不足しているにもかかわらず、故意に告げていなかった」「2014年度の賃借対照表で負債額を過少に記載していた」違反を認定。①違反認定の内容をすべての預託者に通知し、その結果を417日までに消費者庁長官に文書で報告する②公認会計士による監査を受けその結果を51日までに消費者庁長官に文書で報告する③監査結果を預託者全員に速やかに書面で通知し、通知した結果を5月31日までに報告する―などの措置命令を出していた。

これに対し、ジャパンライフ331日付で送付したのは、消費者庁が認定した違反事実が誤りであるかのような措置命令とは真逆の内容の文書。513日付で送付されたのは、「3月度は初の月間売上30億円達成できました」「4月度はさらに売り上げを更新」などと説明する驚くべき内容の文書だった。一覧表に赤字で「3月度売上実績30558万円」「4月度355849万円」などと記載されていた。

その後、消費者庁の指導で、ようやく828日付で「2015年度末時点の純資産額が約266億円の赤字」であること、911日付で「2016年度末時点の純資産額が約338億円の赤字」であることが通知されるが、この通知を顧客に届かないよう本社が指示していたことが分かった。

これらの通知が届くと解約のおそれがある、不安を感じるおそれがある顧客の住所を、社員の住所など別の住所に差し替えて、戻ってくるようにした。さらに、会社に協力的な活動者のところに、解約のおそれがある顧客の通知も何通かまとめて送って、直接本人に届かないようにした。「消費者庁にばれないよう、少人数に分けて活動者に送った」と元社員は証言する。

通知の内容が読めないよう、コピー機の一番薄いモードで通知文書をコピーして発送したこともあった。「顧客から『読めない』『全く見えない』などのクレームが入り、消費者庁からも突っ込まれ、結局再印刷して再発送し、2度手間だった」と元社員は振り返った。

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解約阻止を本社が指示

金券で解約思いとどまらせる


債務超過の通知が顧客に届き、解約希望が出始めると、解約を阻止するよう会社から指示が出ていたことも、社員の証言で明らかになった。1カ月解約を遅らせた場合に、100万円につき1万円の金券(ジャパンライフの商品を購入できる)を出した。1000万円の解約を1カ月ずらすと顧客は10万円分の金券がもらえる仕組みだ。社員に対しても、返金を取り下げるとその額の1%の報奨金がでる社内規定もあった。


社員に返金阻止額1%の報奨金
社内規定で明記

「勝手に報道しているだけで、ジャパンライフは悪くない」「今まで問題なくやってきたから大丈夫」-。何度も顧客宅に足を運び、こう説得した。返金を阻止すれば、その返金阻止額が店舗の入金実績になった。報奨金も出る。社内規定の名称は、「返金取下げ継続奨励金支給規定」。返金取り下げに協力したチームリーダーやチームメンバーに、返金を取り下げた額の1%を報酬として支払われる。3000万円をチーム5人が協力して返金を取り下げさせた場合は、全員に6万円ずつ計30万円が支給されることが明記されていた。

「内心、センターに駆け込んでほしい」
弁護士、センター介入で解約できた

しかし、「毎日ストレスを感じながらも、消費生活センターに駆け込んでほしいと願っていた」とも元社員は本音をあかす。消費生活センターがあっせんに入る、あるいは、弁護士に解約を依頼した場合は、すべて担当が本社に変わり店舗では対応できなくなる。その場合は、ほとんど解約に応じていたのではないかと元社員は話した。

20171215日、消費者庁が4回目の業務停止命令を出したときの会見で、「返金取下げ継続奨励金支給規定」の存在が明らかにされた。日付は722日付、926日付。20171117日に3回目の業務停止命令を出したときに迷惑解除妨害の違反を認定しているが、本来はこのときに公表すべき資料だった。

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天下りで対応後手

消費者庁の責任大きい


2回目(2017316日)の業務停止命令の違反認定は、本来は1回目(20161216日)に行なわれてしかるべき内容だ。そもそも、消費者庁は粉飾決裁だと自らの処分の中で指摘しておきながら、このような事業者に対し、措置命令で、公認会計士等による監査を受け報告を求めたこと自体に問題があった。粉飾決済を消費者庁自ら違反認定し、現物まがい商法でレンタルオーナーとレンタルユーザーの数が大幅に見合っていないことを公表して分かりやすく周知していれば、これほど被害を拡大させることはなかったはずだ。


2015910日の立入検査時に消費者庁取引対策課に在籍していた公認会計士が20167月に契約の任期が切れて退職しているが、せめて、この間に厳正な行政処分を行うべきだった。消費者庁取引対策課元課長補佐や複数の大物官僚OBが同社の顧問に天下ったことで、この事案への立入検査自体が遅れ、それ以降の行政処分も遅れた可能性を本紙は指摘し続けてきた。安愚楽牧場の破たんを受けて、政省令を改正した直後からしっかり取り組み、厳正処分、業務停止命令違反による刑事告発を早急に行うべき案件だった。
 
行政処分は時期、内容、周知が適切であって初めて意味をなすが、消費者庁は帳尻を合わせるかのような後手後手の対応に終始してきた。ここまで被害を拡大させた消費者庁の責任は大きい。

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消費者庁の行政指導、機能しているのか


「的はずれな消費者庁の業務停止命令」

⇒指導後「中部弁護団の的なずれな間違った発表」に


消費者庁は112日付で、ジャパンライフに対し行政処分の内容等について正確な説明を行うよう指導したことを明らかにしたが、その後の説明会で配布された山口会長のお詫び文は、「『たび重なる的はずれな消費者庁の業務停止命令』に本当に苦しみました」としていた部分が『たび重なる中部弁護団の的はずれの当該業務に対する間違った発表』に変更されたにすぎなかった。

117日の消費者庁長官会見で、岡村和美長官は12日に①行政処分の内容、認定された会社の商品の保有状況や財務状況等に関する事実について正確な説明を行うこと②顧客からの解約返金請求について法令に従い適切に対応すること―を指導したことを明らかにした。

16日、17日の説明会で配布された文章では、消費者庁の表記は「消費者庁からのたび重なる嫌がらせ」も含めて削除されたが、「たび重なる業務停止命令や報道など、風評被害がいろいろあった」などの表現もそのまま残っていた。説明の中でも、一部社員が陥れたために事実上倒産に追い込まれたという内容はなくなったものの、消費者庁の職員が天下ってからおかしくなった、分かっているマスコミはいい商品で顧客が満足していることを分かっているなど、これまでと同様の説明を繰り返していたという。

117日の長官会見で同様の文書が配布されていることが指摘され、120日以降の説明会からこれらの表記が削除されたお詫び文に修正されている。

消費者庁の行政処分や指導が機能していない。説明会では、これまで新しい会社を作るとしてきたが、新たな会社の登記は行わず、販売組合として加盟店が商品を販売する内容に変更されてきている。

同社は、これまでも、営業を継続したり、顧客に虚偽の通知をするなどの命令に反する行為を繰り返してきた。法律に基づき罰則もある行政処分ですら機能しているとはいえず、任意の要請である行政指導が機能するのか。本紙は、会計監査など同社任せにする消費者庁の姿勢が事態の泥沼化を招いていると指摘してきたが、事実上倒産となった今でも、泥沼化は続いている。この事態に、消費者庁が次に打つ手はあるのか。

2018年1月22日月曜日

「全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会」発足、被害者による破産申し立てへ 石戸谷豊代表が警告

 消費者庁から4度の業務停止命令を受け、事実上倒産状態にあるジャパンライフ(千代田区、山口隆祥会長)による被害救済に取り組むための全国組織「全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会」(石戸谷豊代表)120日、立ち上がった。被害回復のための資産の散逸防止には破産申告が最も有効として、被害者による破産申し立てに向け、全国で足並みをそろえて行動していくことを決めた。全国各地での弁護団の立ち上げを進め、当面は弁護団連絡会と先物取引被害全国研究会が連携しながら、資産の散逸防止や責任追及のための検討を急ぐ。

内容を追加しました。

石戸谷豊・全国弁護団連絡会代表の話
「悪質な資産の散逸は犯罪」

大変深刻な相談が多い。老後の資産をすべてつぎ込み生活費がない、どうしていいかわからない、落ち込んで会話もできない、もう死ぬしかないなどの訴えに、長時間対応し説得している。被害額も非常に高額で、高齢者がほとんど。生きる望みを失って、愕然としている。
ぜひ、立ち上がって、相談してほしい。家族や周りの人は責めるのではなく、本人が置かれた状況を支援する側に立って、相談につなげてほしい。
本来被害者に帰属すべきものを勝手に売却したり、横流しすることは、許されるものではない。ジャパンライフに対しては「極めて悪質な財産の処分行為は犯罪になる恐れがある」ことを警告しておく。

 預託法は、豊田商事事件を契機に制定されたが、安愚楽牧場に次いで、ジャパンライフと2度も豊田商事を上回る大規模被害をもたらした。被害防止に機能していない。被害救済に向けた当面の作業が終わった段階で、預託法見直しを真剣に検討していく。

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資産の散逸防止、責任追及
全国で連携して対応検討

ジャパンライフは、100万円から600万円の磁気治療器のレンタルオーナー商法(預託商法)を展開し、販売価格の年6%を還元するとして、高齢者らから多額の資金を集めてきた。レンタルしているはずの商品が大幅に不足しているとして、消費者庁から業務停止命令を受けた後も、商品を試着して宣伝する活動手当、リース債権譲渡などに年6%の名目を次々変更し、同様の契約を繰り返してきた。

ジャパンライフ被害対策弁護団は、中部、神奈川、福井、秋田、岡山、広島、兵庫、東京の8つが組織されている。弁護団がない地域でも悪質投資被害の救済に取り組む「先物取引被害全国研究会」(大植伸代表幹事)の弁護士が、相談窓口機能を担っている。

同日、ジャパンライフ被害対策中部弁護団(杉浦英樹団長)の呼びかけで、ジャパンライフによる被害の救済に取り組む全国の弁護士約20人が名古屋市内で、会議を開いた。

杉浦団長は、昨年8月に実施した110番では相談が1件に過ぎなかったが、9月末に弁護団を立ち上げてホームページで呼びかけ、1220日に異例の刑事告発に踏み切ったことで、1225日の110番は電話が鳴りっぱなしで対応しきれない状況になったと、報告した。各地の弁護団や先物取引被害全国研究会が実施したジャパンライフ全国一斉110番には、679件の相談が寄せられ、ようやく深刻な被害実態が表面化してきた(前の投稿参照)。

「老後の資金、生活費ない」「死にたい」
深刻な被害実態ようやく表面化

「預金や保険を解約して老後の資金をすべてつぎ込み、生活費がなくてどうしていいかわからないなど、深刻な相談が多い」「中間勧誘者がどうしてくれるんだ、金を返せと責められ、昨日お風呂で亡くなっていたという悲惨な状況もある」「ジャパンライフに勤務するシングルマザーは給与のほとんどをジャパンライフにつぎ込まされ、何度も死にたいと繰り返し、長時間説得した」など、深刻な相談内容が報告された。

契約額も最高額は6億円と高額。70歳、80歳代の高齢者がほとんどで、90歳を超える人の相談も寄せられている。わずか半年で1000万円を超える契約をさせる、4度目の業務停止命令を受けた1215日に契約をさせているケースもあった。

東京弁護団には多くの相談が寄せられているが、地方からの相談がほとんどで、被害者を直接抱える状況に至っていない。被害者が多い地域が偏り、各地の弁護団で取り組みに差があることから、全国組織は弁護団連絡会とした。情報を共有し矛盾がないようかじ取りをしていく。
 
 破産申し立ては、ジャパンライフ本社がある東京地裁に行うことになるが、破産を申し立てる被害者をどう募り、東京地裁が決定する予納金をどう確保するかが課題だ。

2009年に破綻したL&G(円天)は被害総額1260億円、債権者数約37000人だったが、会社に対する破産申し立てのための予納金は2000万円(別に個人に対する破産申し立ても行われその予納金は1000万円)とされた。ワールド・オーシャン・ファーム(08年、被害総額849億円、1500万円、近未来通信(07年、被害総額400億円、3000)1000万円だった。

ジャパンライフは負債総額約2400万円超とされ、予納金は数千万円になると見られる。国が費用を立て替える「国庫仮支弁」の制度もあるが、この制度が適用された先例は、現金・預金の差し押さえがはっきりしていた1件にとどまる。
 
 ジャパンライフの不動産は、税務署や厚生労働省などの差し押さえが進んでいるが、その直前に会社名義の不動産を売却し、親族の別会社に所有権を移転させている情報なども弁護団に寄せられている。
 
 事務局長を務める大迫恵美子弁護士は、「被害者の受け皿になることを最優先で進めるが、財産の散逸をどれだけ防ぐことができるのか。どうやって、真の責任者の責任を追及できるのかが最大の課題。被害者が一番納得できる最適な方法を検討していきたい」と話している。

                        日本消費経済新聞1月25日から

全国弁護団連絡会は、早急な破産申し立てに向け、精力的に動いている。
被害者はぜひ、弁護団に連絡をしてほしい。

現時点で結成されているジャパンライフ被害対策弁護団と、全国先物研の相談窓口

中部弁護団(杉浦英樹団長)
   事務局長永田有香弁護士0566-73-0770  
★神奈川弁護団(石戸谷豊団長)
   石戸谷豊弁護士   ☎045-212-3517
★福井弁護団
   野条泰永事務局長 0776238840 
岡山弁護団(河田英正団長)
   原田隆事務局長  ☎086-224-2628 
秋田弁護団(近江直人団長)
事務局山本尚子弁護士018-888-0621
東京弁護団(塚田裕二団長、1月19日)
   事務局佐藤千弥弁護士0335563607
兵庫弁護団(津久井進団長、1月19日)
   吉田哲也事務局長   ☎079-556-5741 
   2月12日午後、豊岡市内で被害者説明会を予定
広島弁護団(三崎和也団長)
   三崎和也弁護士    ☎082-962-8188 
千葉弁護団(準備中)
   相談受付事務局 清田友洋弁護士 0434414400  

〇北海道(札幌)
竹之内洋人弁護士 011-222-2922
〇宮城県 仙台投資被害弁護団
千葉晃平弁護士  022-713-7791
〇新潟県
江花史郎弁護士   025-211-4777
〇埼玉県
武藤洋善弁護士  048-650-5002 
〇富山県
橋爪健一郎弁護士 076-420-4880
〇石川県
金沢弁護士会がジャパンライフ問題PT弁護士を紹介 076-221-0242
静岡県
   静岡県弁護士会が弁護士を紹介 静岡 054-252-0008

      沼津支部 055-931-1848 浜松支部 053-455-3009

〇滋賀県
黒田啓介弁護士 077-510-5758
〇京都府
若宮隆幸弁護士 075-231-1014
〇大阪府
向来俊彦弁護士 06-4300-3390
〇奈良県(北和)
深水麻里弁護士 0742-23-8710
〇奈良県(中南和)
竹内大敬弁護士 0745-25-1660
〇山口県
佐伯奉文弁護士 083-941-5587
〇香川県
石井研也弁護士 0877-21-1333
〇福岡県
桑原義浩弁護士 0944-74-5533
〇沖縄県
平良卓也弁護士 098-858-2120

2018年1月21日日曜日

ジャパンライフ全国一斉110番に679件、「老後の資金すべてつぎ込み生活できない」「死にたい」110番富山22日、山形26日、北海道27日

 119日を中心に実施されたジャパンライフ全国一斉110番に、679件の相談(22日まで実施分)が寄せられた。最高契約額は6億円。地方の相談が圧倒的に多く、定期預金や保険を解約した、あるいは不動産を売却して老後の資産をすべてつぎ込んだ、生活費が一切なくどうしていいかわからない、何度も死にたいと口にするなど、非常に深刻な相談が寄せられている。ようやく被害の実態が明らかになりつつあるが、いまだに、家族や周りの人に知られたくないという相談も少なくない。

更新しました
定期預金や保険解約
不動産売って老後の資産つぎ込む
 各地のジャパンライフ被害対策弁護団と、悪質投資被害の救済に取り組む全国各地の弁護士らで組織する「先物取引被害全国研究会」(大植伸代表幹事)が実施した。
 
 東京弁護団(塚田裕二団長)19日に実施した110番には、66件の相談が寄せられた。ただし、東京都内からの相談はわずか3件に限られ、都内に住む契約者の子どもからの相談も含まれている。ほとんどが地方からの相談で、福島県が11件と最も多く、次いで北海道8件、埼玉県7件、宮城県、茨木県それぞれ4件と、全国各地から寄せられている。
 
 「定期預金や保険をすべて解約してジャパンライフに入れてしまい手元に一切現金がない。毎月の配当が約30万円あったが、10万円のみを生活費としてもらい、残りの20万円は再び投資のために戻すことを繰り返してきた。ジャパンライフからの毎月の支払いが止まったために一切生活費がなくなりこれからどう生活していっていいかわからない」。「マルチ商法で地域の人を勧誘してしまい、どうしてくれるんだ、お金を返せと責められていたが、昨日お風呂の中でなくなっていた」など、深刻で悲惨な相談も寄せられている。

全国各地でも、定期預金や保険を解約したほか、不動産を売却してジャパンライフと契約してしまい、お金が戻ってこなければ老後の生活に困る、配当が途絶えてどうすればいいのかなどの相談が多い。「死にたい」、「死ぬしかない」などの言葉を繰り返す相談者に、弁護士が長時間にわたって話を聞き、説得するケースも少なくないという。

いまだに家族には契約したことを知らせておらず、家族や周りの人に知られると困ると話す相談者もいる。

ジャパンライフは消費生活センターがあっせん交渉に入ると解約に応じ、訴訟で和解した場合にも守秘義務を要件としてきたため、被害が表面化してこなかった。契約者自身がマインドコントロール状態にあり、高齢者の相談が表面化しない典型例とも指摘されてきた。ようやく被害の実態が表面化してきた。
 
 中部弁護団が初めて110番を実施した昨年1225日以降、122日までに各地の110番に寄せられた相談件数は以下。中部83件、福井72件、東京66件、長野66件、京都51件、名古屋50件、岡山44件、新潟28件、富山28、静岡27件、大阪26件、神奈川23件、秋田22件、広島20件、兵庫18件、熊本18件、石川17件、仙台12件、千葉6件、宮崎2件。

26日には山形県、27日には北海道で110番が実施される。


ジャパンライフ被害110番 


山形県
 1月26日()10時~15
023-666-3053
北海道
1月27日(土)10時~19
011-221-7801



2018年1月17日水曜日

1月19日、ジャパンライフ全国一斉110番  秋田県は18日

 悪質投資被害の救済に取り組む全国各地の弁護士らで組織する「先物取引被害全国研究会」(大植伸代表幹事)は、119日を中心に全国一斉ジャパンライフ110番を実施する。

 ジャパンライフ被害対策弁護団は、中部、神奈川に続き、福井弁護団が15日に、岡山弁護団が1月9日(追加)、秋田弁護団が112日に設立を公表している。千葉と東京は準備中だ。


ジャパンライフ全国一斉110番
 長野県と岡山県を追加しました

秋田県 1月18日(木) 10時~15時  ☎018-864-5051
長野県 1月19日(金) 10時~17時 ☎026-217-8477 (長野)
      ☎0263-35-8501(松本)
      ☎0265-24-1730(飯田)
東京都 1月19日(金) 10時~16時  ☎ 03-3556-3371
神奈川県 1月19日(金) 10時~16時  ☎045-212-3611
愛知県 1月19日(金) 10時~16時  ☎052-223-2355
石川県 1月19日(金) 10時~16時  ☎076-260-7041
京都府 1月19日(金) 10時~17時  ☎075-211-0805
兵庫県 1月19日(金) 10時~15時  ☎078-371-1124(神戸)
      ☎079-283-7117(姫路)
広島県 1月19日(金) 10時~16時  ☎082-502-6018
岡山県 1月19日(金) 10時~16時  ☎086-234-5680
山口県 1月19日(金) 10時~16時  ☎083-920-8730
熊本県 1月19日(金) 10時~16時  ☎096-383-0999
富山県 1月22日(月) 10時~16時  ☎076-421-4855

 埼玉県、中部弁護団(愛知県),福井県,岡山県、大阪府(15)、新潟県(15)、静岡県(13日、2回目)にすでに実施済みで、兵庫県は2回目の実施になる。

 福井弁護団は15日に110番を実施。6日から8日まで継続して実施した結果、72件、契約総額約294000万円にのぼる相談が寄せられた。

福井、岡山、秋田で弁護団結成
千葉、東京は準備中
 
 ◇ジャパンライフ被害対策福井弁護団
   野条泰永事務局長 0776238840
 
 ◇ジャパンライフ被害対策岡山弁護団
   河田英正団長
   原田隆事務局長  ☎086-224-2628 

◇ジャパンライフ被害対策秋田弁護団
近江直人団長
事務局 山本尚子弁護士 018-888-0621
 
 ◇ジャパンライフ被害対策東京弁護団(準備中)
   問い合せ先 佐藤千弥弁護士 0335563607

ジャパンライフ被害対策千葉弁護団(準備中)
   相談受付事務局 清田友洋弁護士 0434414400   


ジャパンライフ 定期預金も保件も解約させ、巧妙に身ぐるみはがす

 地方に住む高齢者の買い物や通院の送り迎えをして信頼させ、定期預金や保険を解約させ、老後のために蓄えた資産のほとんどをジャパンライフ(千代田区、山口隆祥会長)につぎ込まさせる悪質な手口も明らかになってきた。心配した子どもが定期預金の通帳を貸金庫に預けて金庫のカギを持ち帰り、銀行の担当者に定期預金を解約しないよう申し入れてあったにもかかわらず、別の支店で、定期預金の通帳を紛失したと再発行を求め解約させていた。保険も解約させ、毎日、銀行のATMに車で送り迎えをし、引出限度額の50万円を連日引き出させてジャパンライフに入金させていた。契約総額は約6000万円。こつこつ貯めた老後の資金のほとんどがなくなっていた。今、老夫婦は寒くても暖房をつけずに過ごしている。

買い物・通院で、高齢者の足替わり
昨年4月から8カ月で約6000万円

東北地方の80歳代の女性が勧誘されたのは、昨年4月。2度目の消費者庁の業務停止命令を受けた直後だった。子どもたちは心配して契約しないよう言い残して関東圏に帰っていったが、7月に帰郷した時には、わずか4カ月で、2700万円の契約をしてしまっていた。磁気治療器のレンタルオーナー契約のレンタル料(年額購入価格の6%、レンタルオーナー契約=業務提供誘因取引は業務停止命令期間中)が、月額活動費に変わったころだ。ジャパンライフは、購入した商品の体験や宣伝のための活動費と説明しているが、母親は元本が減らない利回りの良い投資だと認識していた。いつでも解約できると言われていた。

レンタルすると言いながら、商品が手元にいくつもある。「どう考えても経営として成り立つはずがない」「怪しいものに手を出してはいけない」と何度説得しても、母親は聞く耳を持たなかった。

月々15万円近くの活動費が入っていた。さらに、友人を紹介して50万円を手にし、もうかったと思い込んだ(業務停止命令が出ていたマルチ取引が行われている)。50万円を追加して100万円の磁気ネックレスを契約させられているため、手元のお金が増えたわけではない。

ジャパンライフの担当者が、高齢者の足替わりになって、車で買い物や通院の送迎をし、薬をもらい終わるまでそばで待ち付き添っていた。親切な対応に、担当者を信じ切ってしまっていた。「消費者庁の行政処分は、的外れ」「過去の業務で、今やっているものとは関係ない」「高齢者の幸せのためにやっているから経営が成り立つ」。そんな説明をされれば、ひとたまりもなかった。
 
定期預金や保険の証書を貸金庫に預け、高齢な母親が簡単には解約できないような措置を講じたが、8月から9月にかけて、複数入っていた保険がすべて解約されていた。郵便局や、警察から問い合わせがきていたことが後で分かったが、本人が必要なお金だと主張していた。200万円から300万円の保険がすべて解約され、その額の総額は約1300万円。解約のたびに毎日50万円ずつ車でATMに連れて行かれ、残高がなくなるまで連日引き落としジャパンライフに渡していた。

50歳代の娘は、残っていた定期預金の通帳を貸金庫に預け、「万が一、施設に入らなければならなくなったら必要になるお金だから」と言い聞かせて、今度は金庫のカギを持ち帰った。取引銀行の担当者には、母親と父親名義の定期預金は絶対解約しないようお願いした。

にもかかわらず、銀行の別の支店で定期預金の通帳を紛失したと説明して再発行させ、解約させていた。約1000万円の同様の契約していた。消費者庁の3回目の行政処分が出る直前のことだった。11月に父親が入院し、「病院に同行して医者の説明を一緒に聞いて相談に乗ってくれ、断れなかった」と母親は話した。保険が解約されたため入院費は一切出ず、契約総額は約6000万円に上っていた。

NHKの報道で「目覚めた」
なぜ、もっと早く

1215日、消費者庁の4回目の業務停止命令がNHKで大きく報道され、20日に中部弁護団が告発をすることが分かったことで、ようやく母親も納得して1219日に解約手続きを行った。しかし、結局、返金はされないままだ。

「消費者庁がもっと厳しい処分をして、早くテレビで放送してくれていたら、もっと早く目が覚めていたよね」。母親は、今頃になって後悔している。


ジャパンライフの説明会に母親に代わって参加した娘は、「消費者庁とマスコミが会社をつぶそうとしている、一部の社員が陥れ倒産騒ぎになったなど、よくこんなうそが言えると思うが、高齢者の中には信じてしまう人がいる。破産したらお金は戻らないと恫喝されれば、資産のほとんどをつぎ込んでいる高齢者は了承するしかない。6000万円は戻らないのだろうが、消費者庁の2回目の行政処分から3回目の行政処分が出るまでのわずか8カ月の出来事。なぜ、大きく報道されることもなく、3回目の処分までに時間がかかったのかと考えてしまう」と、早く解約手続きができなかったことを自問自答している。

2018年1月16日火曜日

ジャパンライフが各地で説明会 被害の連鎖生まないのか

 2度の不渡りを出して銀行取引停止処分を受けているジャパンライフ(千代田区、山口隆祥会長)は、年明けから全国各地で顧客や加盟店を集めて説明会を開催している。消費者庁の的外れの業務停止命令と思い込みの報道で資金繰りができずにこのような事態に陥ったが、「倒産はしていない」と説明した。「破産に追い込まれたら、1円も戻らない。弁護団に依頼したら、皆さんのためにやった結果しかたがないで手じまいにされる。消費者団体が何かしてくれるのか」と話し、別会社を設立して磁気治療器を格安で販売してその半分を返金し、同社は製造メーカーに徹する方針を示した。腕輪タイプ8000本、ネックレスタイプ1000本の在庫があるとし、販売価格の7割から8割で仕入れて販売する人を募っている。本社を訪ねて取材を申し入れているが取材に応じず、在庫商品の存在や製品が製造されているかどうか確認できない。被害の連鎖を生むことにならないのか。全額返金されない状況で手元にある商品を返還することや、新たにお金を出すことは絶対に避けてほしい。先物取引被害全国研究会は119日を中心に、全国一斉ジャパンライフ110番を実施する。

銀行取引停止処分のジャパンライフ

別会社で磁気治療器販売


 説明会は16日の盛岡店を皮切りに22日まで全国18店舗で行われる。8日に浦安店で行われた説明会では、同社の幹部と、加盟店を中心に設立される新会社「KEN-SHIN」の社長が、会社の状況や経緯、新会社の事業・返済計画などを説明した。

 まず、山口会長の謝罪文が朗読された。11月までは22億円から23億円の入金があった」「消費者庁と報道で、予定の入金が一気に無くなり、このような事態になった」と釈明。「人生すべてをかけて、必ず返済する」としている。

 少なくとも「度重なる消費者庁の的外れの業務停止命令と報道が、活動者も社員も本当に苦しめた」「消費者庁からの度重なる嫌がらせ、弁護団の報道など、風評被害がいろいろあったが、


「的外れの業務停止命令と報道」

「破産したら1円も戻らない」


ジャパンライフの幹部は、会社の状況について「倒産はしていない」「会社としては倒産ではない」と説明。①一部本社の社員によって間違った連絡がされ、倒産したという騒動が起きてしまった②思い込みの報道でこうなった③不渡りは、社会保険の分割の支払いを交渉していた担当者が仕事を放棄したためで、今回の事件とは関係ない―などを理由に挙げた。

新会社の社長は、「破産に追い込まれたら、我々には1円も戻ってこない。弁護士に確認すると、破産したら皆さんには0.01%も戻らないと話していた」「過激な報道で、2400億円、1800億円などの数字が出ているが、会社の説明が正しい」「会長は本社にいる」と説明した。


顧客「老後の資金すべて入れた」

「なんで元本を大切にしなかったのか」


顧客からは「幹部が社員をだまし、社員が私たちをだましたのではないか。一時的に私たちを安心させるために話しているのではないか。多少なりとも返金されなければ、まったく信用できない」「老後の資金のすべてを入れた。税金がかかると言われ保険も解約して契約をし、活動手当と年金で回っていた。預けている金額の大きさに初めて気づいた。なんで元本を大切にしなかったのかと。預金をしている感覚だったが、商品を買わせていることが分かっていない。ジャパンライフの契約は複雑で分からない」などの意見が噴出した。

これに対し、会社側は「意図的に仕組んだ人がいる。関連している社員は相応の罰を受けていただくことになる。こういうことが起きて初めて被害者が出た。今回で悪になった」「我々も何かあれば生活保護。現実的には、生きるの死ぬのという話になる。消費者団体に頼んでだれか何かしてくれるか。弁護団の思惑通り進めたら、破産して皆さんのためにやりましたが、結果しようがないで手じまいにされて終わる。それでは困るからこの会議をしている。今さら、契約が複雑という話をされても、話にならない」と反論。再建計画の説明に入った。


新会社、3~5年で完済?

3年の返済目標280億円



新会社は、ジャパンライフの加盟店が中心になって販売会社を作る。加盟店は115社になり、今後も増やす。これまで400万円で販売してきた磁気ベルトを70万円、200万円で磁気ベストを40万円、100万円の磁気ネックレスは30万円などの価格で、現金で販売する。「最低限の運営をし、販売コストを目いっぱい削減することでここまで価格を下げられる」と説明した。

 加盟店の下に5から10人のセンター長を置く。年の売上目標は約80億円(加盟店数100社、センター数500人、活動者数2500)で、約40億円を返金に当てるとしている。2019年は売上目標は約180億円(加盟店数150社、センター数750人、活動者数3750)で、返金目標100億円。2020年が売上目標約240億円(加盟店数200社、センター数1000人、活動者数5000)で、返金目標は140億円としている。「3から5年で完済する」という。


在庫が腕輪タイプのエレックスが8000(20万円のもの10万円、40万円のものを15万円で販売)、磁気ネックレス1000(元の販売価格では10億円分と説明)あると説明。仕入れ値は、加盟店は販売価格の7割、センターは8割として、販売者を募った。

説明会に参加した顧客らは「年末の説明では倒産したが破産にもっていかないようにしようと説明され、今回は倒産していないという。信用できない」「会社のいうことを鵜呑みにしてしまった。欲が深いからこうなった。」「貯金がほとんどない。欲をかいたのだと思うが、希望があれば信じたい」「倒産でなくてよかった」「販売をやるしかない」など、さまざまな受け止めをしているようだった。


2016年度末の契約残高1843億円

20173月期総負債額2405億円


消費者庁の指導で同社が911日付けで顧客に通知した文書では、2016年度末時点の純資産は約338億円の赤字、契約残高は1843億円、預託者の数は20177月末時点で6855人としていた。この根拠になる数字は、公認会計士が同社に報告した「合意手続報告書」(仕訳の根拠を示すことができない仕訳を取り消し修正された報告書)に記載され、それによると、20173月期の負債総額は2405億円に上る。

返済計画によると3年間の返済目標は280億円。3から5年で返済しているとしているが数字があまりにかけ離れている。

的外れの行政処分、思い込みの報道、意図的に仕組んだ社員がいるなど、驚くべき説明がされているが、自転車操業で、新たな消費者被害によって既契約者の支払いが行われていた実態が浮かび上がっている。

今後、商品を格安で現金販売するとしているが、在庫について、腕輪タイプの磁気治療器エレックス1000本を加盟店に配布したことは確認できたが、残りの商品の存在は確認できていない。新たに商品を製造できるのか、商品の原価や利益率、販売価格の6%の見返りがない商品の販売見通し、本当に顧客の返金に回されるのか、この間に顧客の返金に当てるべき資産が散逸されていないのかなど、不明確な点ばかりだ。


消費者庁 行政指導で対応

正確な説明、適切な返金を


111日、消費者庁の岡村和美長官はこの問題について、「必ずしも事実ではない説明を行っているという情報に接している。事実だとすれば甚だ遺憾」と述べ、同社と連絡がつき次第、①顧客に消費者庁の同社に対する行政処分の内容、認定された事実に基づき正確な説明を行うこと②顧客からの解約や返金請求に対し法令に従い適切に対応することを改めて指導する―と述べた。「消費者庁の行政処分は正しい事実認定、法令適用に基づき適切に行われたこと」を強調。消費者に正確な事実関係を把握し、不明な点があれば消費生活センターに問い合わせること求めた。

これまでに過去4回の業務停止命令が出されても、同社は顧客に的外れの行政処分で、すでに行っていない業務のものと説明し、それを信じて多くの人が契約を続けてきた。この姿勢は、現在各地で行われている説明会でも変わっていない。
これまでの行政処分でも顧客への通知などで指示を出してきたが、同社は命令に反する内容の通知を繰り返してきた。また、本紙は、会計監査についてなぜ事業者任せにするのか、実効性のない業務停止命令を繰り返すばかりでなくなぜ業務停止命令違反として厳格な対応を取らないのか、消費者庁の後手後手の対応のまずさを指摘してきた。
このような消費者庁の消極的な姿勢が、今日まで事態を泥沼化させている要因であることは疑いようがない。消費者庁は指導するというが、その効果はどこまで期待できるのか疑問がある。


「返金措置で指示処分を」  

石戸谷豊・神奈川弁護団長


昨年12月から施行された改正特定商取引法では、返金措置などを含め「消費者利益の保護のために必要な措置を指示できる」ことが明確にされた。同法改正の検討に消費者委員会委員としてかかわったジャパンライフ被害対策神奈川弁護団の石戸谷豊団長は、「返金請求への対応や顧客に支払うべき資産の勝手な処分を禁じる指示処分が出せる。違反の罰則も引き上げられており、悪質な違反があれば速やかに警察が動くことができる。改正法の趣旨を踏まえ積極的に活用すべき」と指摘している。


「なぜ、刑事告発しない」  

大門実紀史・参議院議員(共産)


ジャパンライフ問題を追及してきた共産党参議院議員の大門実紀史氏は「消費者庁の的外れの業務停止命令、度重なるいやがらせなどといわれ、さらに引き延ばしをしている状況で、なぜ刑事告発をしないのか」と話している。

   ◇    ◇    ◇


資産の散逸防止は破産が有効

向来俊彦・先物取引被害全国研究会事務局長の話

  
 ジャパンライフの資産の散逸を防ぐためには、早期に破産を申し立て、破産管財人を選任して資産を管理してもらうことがベストであると考える。破産管財人が選任されれば、資産の散逸を防止できるほか、ジャパンライフでは大きな赤字を隠し黒字と偽って営業を続けてきていたので、払いすぎた税金の還付申請をすることも考えられる。なにより透明で公平な処理が期待できる。また、破産申立てと並行して、役員や従業員らに対して責任追及することも考えられる。
 すでにジャパンライフは、消費者庁から4度にわたって行政処分を受け、大幅な債務超過が明らかにされ、2度の不渡りを出している。契約者から集めたお金を使い果たしていると考えられ、破産してもほとんどお金が返ってこないというのは、残念ながらそのとおりであると思われる。しかし、このまま別会社での営業を継続させれば、これまでの経緯から、被害の連鎖を生む可能性が大きい。
ジャパンライフの説明が間違っていたこと、法律に違反していることは、消費者庁から何度も指摘されているのであって、これ以上新たな被害を生まないようにすることが肝要である。

                       日本消費経済新聞1月15日号から