2017年4月17日月曜日

消費者庁天下り問題⑦-2 ジャパンライフ業務停止命令後も被害拡大 参院で大門氏が追及

411日の参議院財政金融委員会、45日の参議院消費者問題特別委員会で、日本共産党の大門実紀史氏は、消費者庁が2度の業務停止命令を出した「ジャパンライフ」(東京都千代田区、山口隆祥会長)の問題を追及した。銀行預金や保険を解約させてお金を吸い上げるなど、消費者庁が公表していない悪質な勧誘の手口を明らかにし、業務停止命令が出された後も預託契約が行われレンタルオーナーが拡大している問題にどう対応するのかを厳しくただした。

大門氏が参院で追及した内容は、大きく①政治家や経産省・内閣府官僚OBの関与②悪質で巧妙なジャパンライフの勧誘の手口の2つ。2回目は②について報告する。

「減価償却10年間無税」と勧誘
現物なければ減価償却できない


11日の財政金融委員会では、ジャパンライフ元営業部員から入手したという勧誘に使われた資料が配布された。「8つのメリット」をうたっている。
4番目に「減価償却で10年間は無税」、8番目に「10年後も、物件の相続税評価額が100%免除」とある。
大門氏は「磁気ネックレスは、国税庁の耐用年数表によると、医療機器に当たり、主として金属製のものは10年となっている。毎年減価償却をして10年後にはゼロになるから100%免除ということだろうが、実際に現物のレンタルを行っていないペーパー商法で、で減価償却費は認めるのか」と国税庁に質問した。
 これに対し、国税庁の飯塚厚次長は、「現物がないという状態であれば、取得していない資産が減価償却資産になることはない。減価償却費を計上することはできない」と回答している。

60万円のベスト原価8千円
定期預金、生命保険を解約させる

5日の消費者問題特別委員会では、ジャパンライフ元社員の話として、時期の原価や勧誘の手口の詳細も明らかした。
60万円の磁気ベストの原価は、8千円~1万円」と報告。「おばあちゃんが大量に契約させられ、商品のやり取りは実際に行わず、『投資ですよ』と勧誘している」。「エステやマッサージをしてあげると親切に近づいて最初は100万円くらいのネックレスから、1年で8回も一気に1700万円も契約させている」。「レンタル料は6%、1千万円預ければ年間60万円の収入になるので銀行に預けるよりいいとジャパンライフ社員が銀行までついて行って定期預金を解約させる。生命保険も解約させてお金を吸い上げる」など、消費者庁が公表していない手口を明らかにした。
「レンタル料の6%は一応払うが、おばあちゃんから出させたお金から本人に渡しているだけ。いつかは破たんするスキーム」と述べた。

2回目の処分後も会員に新聞配布
「さらに拡大へ向けまい進」

同日、大門氏は、2回目の行政処分の翌日に発行された2017317日付の健康ジャーナル特別号を資料として配布した。
「健康産業のパイオニア企業」として山口会長のインタビュー記事が掲載され、「201510月から店舗販売に特化、訪問販売、連鎖販売取引、預託販売は一切行わない」「今後もスタンスは変わることなく さらに拡大へ向けて邁進」などの見出しが躍っている。
「この新聞は一般には配っていない。わざわざ独自に印刷をして、会員を安心させるために配っている」と説明した。

2度の行政処分後も営業
レンタルオーナー増やす

大門氏は、「山口会長が処分は不当だと主張し、通常営業を続け、各地の施設やホテルでセミナーを開催し、レンタルオーナーを増やしている」として、「消費者庁はどうするのか」とただした。
これに対し、消費者庁の川口康裕次長は「店舗販売を行ったこと自体は、命令に反しているとは考えていない」と答弁。見出しの1つについて、「201510月以降も同社が、預託取引、訪問販売、連鎖販売取引を行っていると判断した上で、201512月に行政処分を行った」と説明した。
大門氏は、「預託販売とは言わず、賃貸借契約に言い方を変えているだけ」と、再度業務停止命令に違反した場合の答弁を要請。川口次長は「消費者庁の業務停止命令に従わない場合は、警察などの捜査機関に対し、刑事告発を行うことになる」と答弁した。
本紙には、1回目の業務停止命令の後に、訪問販売で高額な預託契約を結ばせている事例が報告された。業務停止命令を出した後も被害が拡大している。消費者庁はこの状況を放置することは許されない。
大門氏は、「業務停止命令違反、契約者を安心させる会員への新聞配布なども含め、きちっと対応する」ことを要請した。

       ◇     ◇
消費者庁元課長補佐 20147月末の報告内容明らかに
「違反確認できなかった」「財務状況確認急がれる」
水庫元課長補佐が2014730日に、当時の課長に報告した内容が、5日の消費者特で明らかにされた。消費者からの聞き取りは2件しか行わず、「違反行為が確認できたものは皆無」と報告していた。これを踏まえて、20149月と10月に文書による行政指導が行われたと見られる。

ただし、この報告書には、「経営が悪化している」として、「財務状況を確認することが一方では急務」とただし書きがあったことを大門氏は明らかにした。

消費者庁天下り問題⑦-1 加藤一億総活躍相がジャパンライフの“広告塔” 参院で大門実紀史氏

 消費者庁元課長補佐が天下っていた「ジャパンライフ」(東京都千代田区、山口隆祥会長)の問題について、参議院では、財政金融委員会と消費者問題特別委員会で日本共産党の大門実紀史氏が取り上げた。加藤勝信・一億総活躍担当相が消費者庁から業務停止命令を受けた同社の“広告塔”の役割を果たしていると指摘した。消費者庁元課長補佐の天下りに加え、経産省や内閣府官僚0Bが同社顧問に再就職していることが、行政処分の遅れに影響したのではないかと追及した。「大きな闇がある」として、厳正に対処することを求めた。

説明を「大きな闇がある」として、厳正に対処する
ことを求めた日本共産党の大門実紀史氏

参議院で大門氏が追及した内容を2回に分けて報告しておく。

「加藤と山口会長が会食、ジャパンライフを高く評価」会員にチラシ配布

「だますという手口は明らか、厳正に対処すべき」
と答弁した麻生太郎財務相
411日の参議院財政金融委員会で、大門氏は、『113日、安倍内閣の重要閣僚の加藤(勝信・一億総活躍担当)大臣と山口会長が会食し、ジャパンライフの取り組みを非常に高く評価して頂きました』と記載されたチラシが、ジャパンライフ会員に配布されていることを明らかにした。
 
 ジャパンライフが行政処分を受けたのは20161216日と2017316日。
 
 大門氏は「1回目の行政処分の後、ジャパンライフの内部や、契約者本人が非常に動揺している時期に、加藤大臣の写真入りで安心してくださいとチラシがまかれている」とし、これは事実かと追及した。内閣府大臣官房の大塚幸寛審議官は「この場で答える立場にはない」として、回答を避けている。大門氏は、「1回ではなく2回会っている」とし、この問題をさらに追及する考えを示した。
 
 ジャパンライフは、100万円から600万円の磁気治療器を、高齢女性らに販売し、預かってレンタルして、月6%のレンタル料を支払うというレンタルオーナー商法を展開している。消費者庁は20159月の立ち入り検査から1年半をかけて、レンタルしているはずの商品がない違反を認定した。


大門氏は「いわゆる“現物まがい商法”、“ペーパー商法”。この問題はいつ表面化するかわからないが、規模からいえば被害額は数百億、1千億を超えるとも言われ、第二の豊田商事事件に匹敵する大問題になりかねない」と指摘した。

同社の山口隆祥会長は、マルチ商法が問題になった1975年に国会で参考人に呼ばれた人物。1985年には衆議院でジャパンライフの羽毛布団販売で集中審議まで行われているとして、麻生太郎財務相に対し、「こういう悪質商法が今現在も行われていることをどう思うか」と質問した。

これに対し、麻生財務相は、「山口さんは、マルチが出てきた最初の頃からの有名人。高齢者が現預金で9百何十兆も持っている。うまい話はふつう眉に唾をつけて聞かねばならない。だますという手口は明らか、厳正に対処すべき」との考えを示した。

経産省官僚OBも顧問に再就職 行政処分の遅れに影響か
 
 4月5日の消費者問題特別委員会では、経済産業省や内閣府の官僚OBがジャパンライフ顧問に再就職し、深くかかわってる問題を追及した。
 
 2016年、2017年の同社会社案内には、元経済企画庁長官秘書官や通商産業大臣秘書を務めた松尾篤氏や、元内閣府大臣官房長、内閣府国民生活局長を務めた永谷安賢氏が顧問として名を連ねている。消費者庁の水庫孝夫元課長補佐の後任には、通産省(現経産省)知的財産政策室初代室長、経産省貿易経済局長を務めた中嶋誠・元特許庁長官が顧問に就任している。
 
 「消費者庁元課長補佐はノンキャリだが、顧問に再就職しているのはキャリア組で、しかも大物」と大門氏。ジャパンライフへの1回目の行政処分までに、20159月の立入検査から1年3カ月もかかったのは、消費者庁元課長補佐が天下りしていたほか、同社顧問に就任しているの大物の存在が影響しているのではないかと糾弾した。

元内閣府国民生活局長 NPO法人「活生ライフ」代表にも就任

中でも、元内閣府国民生活局長の永谷氏は同社顧問だけでなく、ジャパンライフと関係が深いNPO法人「活生(いきいき)ライフ」の理事長にも就任している。

このNPO法人は、ジャパンライフ近くに本部所在地はあるが、NPO法人の看板はなく、全国の支店の電話番号は、すべてジャパンライフの支店と同じ番号になっている。お年寄りの人生最後の時期をサポートするとして、身元保証や遺言書作成、財産管理をうたっている

大門氏は「親族が気付くと相談しているが、気付かずに亡くなったお年寄りの遺言書作成や財産管理をして、預かり金を処理しているのではないか」「お年寄りをレンタルオーナーシステムに巻き込んで、食いものにするパートナーではないのか」と追及した。

このほか、ジャパンライフ関係者から入手したお中元リストには、麻生財政相、安倍信三首相をはじめ与野党議員の名前が連なっているとし、元文科相の下村博文氏が10万円の献金(下村氏が支部長の自由民主党東京都第11選挙区支部へ10万円、2014年)を受けていることを明らかにした。大きな闇があるとして、厳正に対処することを求めた。

 
 松本純消費者担当相は「話は承った。しっかり正面から受け止めて適切な対応をしていきたい」と答えた。

2017年4月10日月曜日

消費者庁天下り問題⑥ 「消費者庁は天下り認定できた」情報公開請求で再就職監視委の調査結果明らかに

消費者庁元課長補佐の現職中の求職規制違反を認定した内閣府再就職等監視委員会調査報告書の内容が329日、明らかになった。情報公開請求に応じた。消費者庁は5カ月も調査して違反を認定できなかったと報告していたが、監視委の調査報告書には、「消費者庁が調査で得た資料のみで、違反認定は可能と思われる」と明記されていた。元課長補佐が在職中にジャパンライフ社トップに面会を求める伺い書は、2通あった。さらに、元課長補佐のメールの中には、面会をうかがわせる予定表が含まれていたが、本人やジャパンライフ職員への聴取に活用していなかったことも明らかになった。元課長補佐が消費者庁総務課人事担当者に3度メールで相談をしていたが、報告書は、3度目のメールは具体的な違反が察知でき調査や指導を行うべきで「不適切と言わざるを得ない」と指摘。行政指導後の対応を1人でさせたり、電子データで業務資料を持ち出させたりするなど、管理義務への注意を怠った不作為は「違反行為を助長する」としていた。消費者庁は、違反が認定できる証拠を入手していたにもかかわらず、組織的に隠ぺいしようとし、いたずらに、調査を引き延ばしていた。行政処分の引き延ばしへの影響も懸念される。

「消費者庁の調査で違反認定できた」
再就職規制監視委 報告書に明記

情報公開請求で開示された内閣府再就職等
監視委員会の「
委員会調査報告書」
調査報告書は29ページ。一部黒塗りで提供された。28日から38日までに元課長補佐をはじめとする消費者庁職員人20人、関係者1人に計25回聴取し、供述や証言を裏付ける96点に及ぶメールや関係資料などから違反を認定していた。
 消費者庁は5カ月も調査して違反を認定できなかった理由として、「元課長補佐が在職中に同社トップに面会を求める文書を入手したが、元課長補佐から受けたストレスを解消するために同社職員が偽造したと供述し、その可能性が否定できなかった」と、民進党に回答していた。

J社トップ面会伺い書「2通」
本紙 情報公開請求で明らかに

しかし、報告書からは、面会を求めるうかがい書は、2通あったことが読み取れる。
1通目は「●月●日付で民間企業との再就職活動が可能になります。顧問契約をするに当たり・・・下記日程でご面会をお願い致したくお伺い申し上げます」と、書かれていたとある。報告書は以下に続く。しかし、その期間に会うのは再就職規制の関係で早すぎると考え、「会うのは早すぎる」旨を伝え、面会する約束を断った。再度、別の日に面会を約束する伺い書を提出し、同日決済を受けている。「下記日程でご面会をお願い致したくお伺い申し上げます」として、1カ月後の面会が決定された。2通も伺い書を偽造するというのか。

元補佐メールにも面会予定表
消費者庁、J社担当者の聴取に活用せず
 
 さらに、これに加え、元課長補佐のメールの中には、①ジャパンライフ担当者に私用メールアドレス等を知らせたもの②面会予定を有していたことをうかがわせる予定表―が入っていたが、元課長補佐やジャパンライフ担当者の聴取にこれらの資料を活用していなかった。
 報告書の最後には、「任命権者調査により得た資料のみによっても求職規制違反を認定することが可能であると思料するが、さらに、消費者庁において、上記メールを精査していたならば、任命権調査においても求職規制違反の認定に至った可能性が高いことを付言する」と明記されていた。

元補佐3回メールで相談
人事担当者の対応不適切 
 

消費者庁総務課人事担当者と天下りした
元課長補佐とのメールのやり取り
(3月30日の衆議院消費者特で大西健介氏が公表)
また、元課長補佐は求職活動について、消費者庁総務課人事担当者に3回もメールで相談していた。監視委は、2回目のメールの回答は「適切とはいえず、違反が進行していた行為者に対し、制度を認識不足であった状態で対応していたと指摘せざるを得ない」と報告。3回目のメールでは、「具体的事実の進行を察知し、求職規制に違反することがないよう調査または指導を行うべきであった」とし、「利害関係企業に該当するか判断しなければならず、その回答としては、不適切なものであったと言わざるを得ない」としている。
 330日の衆議院消費者特で、3回目のメールの一部が公表された。人事担当者は、元課長補佐に「具体的な相手方がある程度見込まれている状況であるであろうと推察しています」と返信しており、このときすでに、違反が進行していることを察知していたことがうかがえる。

顧問職のために資料持ち出し
不正許可申請でDVD書き込み

 
 このほか、元課長補佐は、利用目的や使用場所の虚偽の報告をして、CD、DVDドライブへの書き込み許可申請を不正に受け、業務関連資料データを自宅に持ち帰っていた。監視委は、「職務には全く不要で、離職後、顧問職遂行に備えた内容というべき」とも指摘している。黒塗りで詳細は分からないが、法令関係などの多くの資料も持ち出しており、ジャパンライフ顧問としてのアドバイス業務に使うことが目的だったと見るのが相当としていた。
 消費者庁元課長補が、ジャパンライフの顧問に就任したことが発覚したのは、2015910日。同社への立入調査で判明した。
 消費者庁が違反の疑いを内閣府再就職等監視委員会に報告したのは107日。すでに1カ月近くが立っている。任命権者調査(消費者庁の調査)に入り、「違反は断定できない」とする調査結果を報告したのは201621日。5カ月近くをかけていた。
再就職等監視委が委員会調査を決定したのは、報告から3日後の24日。324日には違反を認定し公表している。

組織的隠ぺいは明らか
調査引き伸ばし、行政処分に影響か

本来なら、違反の疑いを報告する107日時点で、違反を認定してもおかしくない事案に見える。監視委は報告書の中で、消費者庁に調査手法の助言を行う中で、「(証拠の)提出を促し続けてきたが、委員会調査開始決定後にようやく提出されたという状況だった」と指摘している。この指摘が、消費者庁の体質を如実に物語っている。

消費者庁は元課長補佐の天下りを未然に防ぐ機会があったにもかかわらず、そのチャンスを逃し、違反発覚後もその事実を組織的に隠ぺいしようとし、調査を長引かせたことは明らかだ。天下り調査の引き延ばしが、ジャパンライフへの対応策検討の遅れにも影響したと考えられ、行政処分を遅らせ被害を拡大さえていないか、今後、さらに検証が求められる。

消費者庁天下り問題⑤ 衆議院消費者特で民進党が追及「国賠訴訟されても仕方ない不作為」

330日の衆議院消費者問題特別委員会で、民進党が消費者庁天下り問題を追求した。大西健介氏は、元課長補佐の天下りは、消費者庁が独自に違反認定できたとする内閣府再就職等監視委員会の答弁を引き出した。20159月に天下りが発覚した立入調査の直後には、ジャパンライフ社に商品がないことを知っていたのではないかと厳しく追及し、知っていて行政処分までに13カ月もかけたのは不手際があったのではないかと問題視した。井坂信彦氏は、預託法で“調査すべき本丸は、現物の存在”として、元課長補佐が担当した2014年に立入検査をしない合理的理由がどこにあるのかと追及。当時の調査記録と協議内容を国会に提出することを要請した。「行政処分が結果的に3年遅れたことで甚大な被害が拡大したということになれば、国家賠償訴訟をされても仕方がない不作為」と糾弾した。

 元課長補佐の調査記録提出要請

「天下り、消費者庁が認定できた」 再就職監視委事務局長が答弁

 
天下りした元課長補佐が消費者2人からしか聴取しなかった
のは手心を加えたと思わざるを得ないと追及した大西健介氏
同日、民進党の大西健介氏は消費者庁元課長補佐の天下り問題に関連して、まず、消費者庁が元課長補佐の天下りを見逃した責任を問うた。消費者庁は、元課長補佐の天下りを防ぐことができず、発覚後、5カ月もかけて調査をし、結局、違反を認定しなかった。

大西氏は、元課長補佐と消費者庁総務課人事担当職員とがやり取りしたメールの一部を公表。「いくら本人が否定しても怪しいと気づくはず」と指摘した。さらに、ジャパンライフ社トップに元課長補佐が面会を依頼する社内の決裁文書(伺い書)を入手しているに
「消費者庁の調査で天下りを認定すること
は可能だった」と答弁した塚田治・
内閣府再就職等監視委員会事務局長
もかかわらず、消費者庁は「元課長補佐とのやり取りで受けたストレスを解消するために偽造した」というジャパンライフ社職員の言い訳をうのみにして、これも見逃していると批判した。「小学生の言い訳みたいな話」と揶揄
(やゆ)し、「メールのやり取りや伺い書だけで、5カ月もかけずに違反を認定できたのではないか」と内閣府再就職等監視委員会に質問した。これに対し、監視委の塚田治事務局長は、「消費者庁の調査で天下りを認定することは可能だった」と答弁した。消費者庁が意図的に調査を引き延ばし、天下りを隠ぺいしようとしたことが明らかにされた。

元補佐、2人しか聴取せず
「手心加えたと思わざるを得ない」

 次は、元課長補佐が本来、行政処分にする事案を、行政指導にとどめたのではないのかと追求した。元課長補佐が担当した当時と、再調査をして行政処分したときとで、何人の消費者から聞き取りをしたかを聞いた。違反調査の対象期間の多くが重複している。
元課長補佐は「10人の消費者に協力を求め、契約者本人から1人、家族から1人」(東出 浩一審議官)からしか、聴取をしていなかった。201612月の行政処分では、「数十人からきちんとした供述を得て、6人の供述を違反の証拠として採用した」()と回答を得た。大西氏は、再調査時は数十人から意見聴取ができるのに、なぜ2人からしか聞き取らなかったのかを問題視。「手心が加えられていると思わざるを得ない」と糾弾した。

処分まで、立検から13カ月
7カ月ルール」大きく逸脱

立入検査から行政処分まで、なぜ13カ月かかったのか。この理由について、松本消費者相は「初の預託法違反事案で、特に慎重な調査が必要だった」ことを挙げた。大西氏は、過去、特商法の同水準の処分で1年を超えているのはわずか1件のみ。事案着手から公表まで7カ月というルールからすると、どう考えても長くかかり過ぎていると批判した。   
この13カ月の間に、特商法改正法案の国会審議や河野太郎元消費者相が言い出した徳島移転の試行があり、これらが影響した懸念もあると追及した。2回目の処分が2017316日に行われ、レンタルされているべき商品がないことが違反認定されたが、違反認定をした事案は20155月、7月、20161月、7月で、1回目の20161216日の処分時に十分違反認定はできたはずだ―との見解を示した。

「レンタルすべき商品がない」
201510月に知っていた
 
「レンタルされているはずの商品がないことを消費者庁は201510月頃には、気づいていたのではないのか」-。大西氏のこの質問は核心部分だ。20159月の立入検査で、財務関係書類やデータを持ち帰り、経理担当者から事情聴取を行っている。さらに、10月下旬には埼玉工場に立入検査をして確認もしているのではないかと追及した。
これに対し、消費者庁の川口康裕次長は「立入検査で収集した証拠のみでは、法違反の認定に至らなかった」と答弁。大西氏は、すかさず「消費者庁の処分が遅れれば、被害がどんどん拡大して国家賠償訴訟になると思うのが当然。内部でそういう検討をしていないのか。気づいたのはいつなのか」と再度追及。東出審議官は「かなり早い段階から調査の視野には入っていたが、立証に時間を要した。201612月の時点では証拠が十分固まっていなかった」などの答弁に終始している。

知っていて処分まで13カ月
不手際あったのではないか

これらの答弁に対し、大西氏は、「201510月頃には、ジャパンライフが自転車操業であるということを分かっていたのではないか」と糾弾。「にもかかわらず、気づいていて13カ月もかかったのであれば、不手際があったのではないか。その間に消費者被害が拡大したとすれば重大な問題」と憤りをあらわにした。

J社レンタル収入5000万円
オーナーへの支払い額56億円?
また、関係者の話として、「レンタル収入が毎月5000万円、レンタルオーナーへの支払額が5億円~6億円。毎月少なくとも20億円程度の新規契約があり、被害総額が一説には1400億円」との数字を明らかにし、「大変なことになる」と訴えた。「そもそもこんな会社に消費者庁取引対策課の人間が天下りしていたこと自体が、消費者行政の信頼を揺るがす深刻な問題」とし、「破たんした場合は国家賠償訴訟になるおそれがある」と述べた。
同日大西氏が明らかにした数字について、松本消費者相は、「今回認定した違反行為を構成する事実ではないため、今は回答できない」と説明しているが、この数字が事実か、いつ把握したのか。知っていてなぜ、勧誘目的不明示や概要書面記載不備などの形式違反の認定に13カ月もかけたのかが、今後の追及の焦点になる。

なぜ2014年に立入検査しない
調査の本丸は「現物の存在」

“調査すべき本丸は、現物の存在”として、2014年に立入検査
をしない合理的な理由がどこにあるのかと追及した井坂信彦氏


 井坂信彦氏は、「預託法は、豊田商事や安愚楽牧場のような“現物まがい商法”、“現物なき詐欺商法”から、高齢者を守るためにできた」と冒頭、こう切り出した。「調査すべき本丸は、預託物が存在するかどうか」。天下りした元課長補佐が担当した2014年に、なぜ立入検査をしなかったのかを追求した。
これに対し、松本消費者相は「十分な具体性のあるきちんとした供述をしてくれる消費者を十分に確保することが困難だったこともあり、法違反の認定が困難だった。このため9月と10月に文書による行政指導を行った」と答弁した。しかし、多くの違反の疑いのある相談が寄せられているにもかかわらず、元課長補佐が消費者1人、家族1人からしか聞き取り調査をしておらず、元課長補佐退職後の再調査では数十人から聞き取りが行われていたことが、大西氏の質問で明確になっている。
井坂氏は、調査の本丸を疑ったら、立入検査をするしかない。立入検査が必須ではないのかとさらに追及。20139月に預託法の政令を改正し、家庭用治療機器を同法の適用対象に追加したのは、ジャパンライフ社が大きな理由だったのではないかとも指摘した。「7カ月ルールに照らせば、元課長補佐が担当して3カ月調査した時点で、普通だったら立入検査に入るべき事案との見解を、多くの関係者、専門家が示している」と、再度、立入検査をしなかった理由をただした。
これに対し、東出審議官は「担当者が管理職に報告し、課長を含めた議論の結果、書類、書面の記載不備、備え置き義務違反について、行政指導で対処する処理方針が決まった」と回答。立入検査をしなかった理由の詳細は、「今後の調査への支障が懸念される」として答えず、一般論として「立入検査をするに十分な疑いを持って臨むことが重要」との答弁にとどめた。

元補佐の調査結果、提出を要請
立入検査しない合理的理由あるのか
「一生懸命取り組んでいきたい」と
答弁した松本純消費者担当相

井坂氏は「(相談者の)ほとんどが70歳以上の高齢者、平均契約金額が約1500万円、2010年度以降毎年150件前後の相談が相次いでいるような会社に、立入検査をしない合理的な理由があるのか」と語気を強め、①2014年に立入検査ではなく指導にとどめた事前調査結果②当時の協議記録-を国会に提出することを求めた。
「短期レンタルオーナー契約という1年限りの契約、しかも同社が販売している一番安いネックレスのみを調べても287億円の契約がある。これがもし詐欺だったら、287億円もの被害が、まさにのちにジャパンライフに天下りをする課長補佐がいた時期に起きている。他にも480万円のベストや600万円のベルトもレンタルされている。20年の長期契約もある」と指摘。
「本来はジャパンライフ社の調査を3カ月やって立入検査や報告徴収をすべきだったにもかかわらず、しなかったのはあまりにも不自然。処分まで結果的に3年遅れたことで甚大な被害が拡大したということになれば、国家賠償訴訟をされても仕方がない不作為ではないか」と厳しく追及した。            
これに対し、松本消費者相は「会社そのものが他の業務についてまだ営業している状況もあり、今後、どういう方向に歩んでいくのかということを適切に見極めていくことが大事なんだろうと思う。一生懸命取り組んでいきたい」と述べた。


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最高契約額5億円
平均契約金額2800万円に


全国の消費生活センターなどの寄せられるジャパンライフの相談のうち、最高契約額が5億円になった。国民生活センターでは、個人が特定されるため相談内容は公表できないとしている。
43日時点での2016年度の相談件数は153件。このうち代金を払った相談は82件で、平均契約金額は2830万円に上る。2014年度は1230万円(相談166件中既払い71)2015年度は1830万円(166件中既払い77)と年々高額になっている。

2回目の業務停止命令が出された316日に公表された相談件数は、2016年度は133(228日末までの登録分)。データーベースに入力するため、時差はあるが、テレビで業務停止命令がほとんど放送されていないこともあり、相談件数はさほど増えていない。70歳代以上の高齢者が8割以上を占め、4分の3を女性が占めている。