2016年4月4日月曜日

消費者庁長官、徳島県に「相談員資格保有率、研修参加率引き上げ」要請

3月15日、移転試行でテレビ会議で徳島県消費生活審議会に出席した板東消費者庁長官は、消費者庁が掲げる地方消費者行政強化作戦の政策目標が達成できていないとして、徳島県に消費生活相談員の資格保有率と研修参加率の引き上げ、消費生活センターの設置促進に尽力することを要請した。徳島県の相談員の資格保有率は、55.8% (全国平均79.0%)と全国47都道府県中40位、相談員研修参加率は、69.8% (全国平均89.9%)と45位と、全国平均を大きく下回っている。「資格保有率を75%以上にする」「研修参加率100%を実現する」という消費者庁の目標に大きく及ばない。消費生活センターも、8151村の計24市町村のうち、6市町にしか設置されていない。人口5万人以上の3市にはセンターがあるが、人口5万人未満の21市町村では3市町にしか設置されていない。「50%以上」の目標にははるかに及ばない。

徳島県消費生活審議会に、神山町からテレビ会議で出席した板東久美子消費者庁長官
徳島県 地方消費者行政の現況(2015年度)

市町村への相談員配置率   54.2% (全国平均73.6%)  36位 
相談員資格保有率      55.8% (全国平均79.0%)  40
相談員研修参加率      69.8% (全国平均89.9%)  45

人口5万人以上の自治体のセンター設置率 100%(全国平均82.4%100%20府県
人口5万人未満の自治体のセンター設置率 28.6%(全国平均34.7%23

人口千人当たり消費者行政予算  238円 (全国平均138円)3
人口千人当たり相談件数     7.34件 (全国平均8.2件)33位 
人口千人当たりあっせん件数   0.56件 (全国平均0.68件)34
人口千人当たりあっせん率    7.6%  (全国平均8.3%28位 

人口10万人当たり相談員数  5.5人   (全国平均2.6人)1位 
総数43人中有資格者24人(東京都総数288人中有資格者288人)
人口10万人当たり行政職員数  8.6人 (全国平均4人) 3
総数67人(専任職員14人)東京都総数352人(専任職員204人)
人口10万人当たり資格保有者数 15.3人(全国平均18人) 11位  
総数119人(1位東京都4459人、2位神奈川県2783人)
 ※ 徳島県の人口77万6567人 44位 1位の東京都の人口1329万7585人

この状況からして、決して消費者行政先進県とは言い難い。

全国で約3000人いる消費生活相談員のうち、徳島県の43(うち有資格者24)
人口10万人当たりにすると全国1位だと主張しているのだが

その相談員の数も、この数はいないことが取材で明らかになった。

・支所の職員を1人ずつ数えて相談員5人と報告している町があった。
 (有資格者あるいは有資格者と同等と首長が認めた相談員を報告する必要あり)
・委託契約をしている相談員の数としては5人と報告しているが、
実際には月に22時間1人しか相談に応じていない
 (報告すること自体は問題ない)
6人と報告している自治体でも、実質的には月23時間2人で相談に対応している

というのが実情だった。

県の組織、係レベル                
生活安全課には「生物多様性センター」の看板

 都道府県の組織
(2015年度消費者庁調査) 
専管の部局レベル 1
   課レベル  18
   室レベル  5
  係レベル  22

徳島県の消費者行政を担当するのは生活安全課。課の前には「とくしま生物多様性センター」の大きな看板がかかっていた。

2017年度から生物多様性担当と併せて生活安全課ができたが、課長、副課長のほかは、猿やイノシシ対策などを行う生物多様性担当が6人、交通安全5人、消費者行政担当者は6(うち2人は消費者庁移転問題で増員)に過ぎない。消費者行政のみを扱う部や課を設置している都道府県が19あることからすると、先進的な県とは言い難い。徳島県の組織は係レベルに位置付けられる。

新設課は消費者庁移転問題に対応

324日、組織改編で「消費者行政推進課」新設が公表されたが、これは消費者庁移転問題に対応するための課だった。消費者行政の担当者は生活安全課の4人に過ぎなくなる。

苦情処理委員会機能していない
適格消費者団体目指す消費者団体なし

 苦情処理委員会(ADR、裁判外紛争解決機能)も機能していない。
ADR機能を果たすための「消費生活専門会議」の設置が、同日了承された。

消費者に代わって不当な契約約款の差止訴訟ができる適格消費者団体育成も目指すという。

四国では、愛媛県と香川県に適格消費者団体を目指す団体があるが、
徳島にはまだ存在しない。

徳島県の消費者行政体制を全国並みに引き上げる努力は歓迎されるが、地道にこれまで取り組んできた人たちを支援し、本質的に相談体制やあっせん処理機能の向上を目指す取り組みであることを切に望んでいる。               

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消費者教育や啓発は実績あり

一方で、消費者教育や啓発は、実績がある。1988年から消費者大学校(毎週土曜日8日間4時間)を開講し1000人を上回る卒業生を輩出。2006年には消費者大学院(資格取得目指す専門コースと地域啓発手法を学ぶ実践コース、5日間4時間) を設置し、300人を輩出している。県消費者情報センター等からの情報を身の回りの人に伝えるくらしサポーターを390人、14団体、くらしのサポーターに活躍の場を提供する消費生活コーディネーター37人を認定している。功労者に知事が自ら11人賞状を手渡している。

注目すべき先進例あり
県センターに現役教員が勤務

徳島県で全国に例のない取り組みがある。県センターへの現役教員の配置だ。

徳島県では、現役の県立学校教員が毎年1人、県消費者情報センターに勤務している。1年間、自ら消費者教育の教材を作成し、県下全域の小・中・高校、特別支援学校、大学・専門学校などに出前講座を届けている。全国に例のない取り組みだ。「学校の先生が発達段階に応じた授業を組み立ててくれ、分かりやすく効果的」と評価も高い。

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徳島県が消費者庁と消費者委員会を誘致を提案しているのは徳島県庁の9、10階


徳島県庁は 昭和61531日竣工
     鉄骨鉄筋SRC地上11階、地下2
 9階 3316(執務室部分1022)
 10階 同      合計 6632
   10階に145人が収容できる会議室あり
   297



9階には教育委員会が入っている

↓10階会議室

 ただし、現在9階も10階も埋まっていて通常に業務をしている。
   「他の階に移る、あるいは既存の県の施設に移す」と説明したが
   施設に移すか決まっていない。
  
9階 教育委員会の教育長室、副教育長室、教育次長室、教育委員室、教育総務課、施設整備課、教育文化政策課、教職員課、特別支援教育課、学校政策課、人権教育課(いじめ問題等対策室)、生涯学習政策課(教育相談室)、学校体育完全課、福利厚生課、会議室2つ

10階 企業局局長、副局長、次長室、同電力課、同工務課、同経営企画戦略課、総務課、同局会議室、県民スポーツ課、病院局総務課、経営企画課、施設整備推進課、病院局会議室、収用委員会事務局、収用委員室、公共入札室、市町村課分室、県職員退職会などが入っている。

10階展望室から撮影
11階 食堂、労働委員会、防災・情報通信室、展望者ロビー、講堂、会議室が6個、入札室1、研修室1
11階の食堂

食堂で食べた徳島ラーメン。おいしかった

消費者庁徳島「業務試行」で 「危機管理、国会対応業務は困難、執行業務なじまない」長官発言

314日から4日間、徳島県神山町で一部業務の「試行」を行った消費者庁の板東久美子長官は最終日の17日、テレビ会議で会見し、「セキュリティーが確保されたとしても、危機管理業務、国会対応業務は難しく、法執行業務はなじまない」との見解を示した。テレビ会議システムについて「有用性もあるが、限界も感じた」と述べた。業務試行が行われたのは、ICT(情報通信技術)を活用したテレビ会議とウェブ会議システムのみ。消費者行政は一部視察が行われたに過ぎない。


行ったのはテレワークの業務「試行」
消費者行政の試行とはかい離


長官と若手職員ら10人が3月14日から、徳島県神山町の「神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス」に勤務し、業務の試行を行った。

とはいえ、行われたのは、「ICT(情報通信技術)を活用した業務試行」のみ。

消費者行政の試行でもなんでもない。
消費者行政については、一部視察が行われたのみだ。

神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックスとは

閉鎖された縫製工場を改修した共同の仕事場

徳島阿波おどり空港から徳島市までリムジンバスで約30分
レンタカーを借りて徳島市から西南西に山道を約1時間走ったところにある。



通信回線の速度が東京より5倍から10倍以上速いと言われている。

入り口から入って直ぐ左側、手前部分の一角に消費者庁のオフィスが用意された。














中央のだだっ広いオープンスペースには、さまざまなテーブルやいすが置かれ
マスコミ控室として使われた。この場で検索やメール送信を行ってみたが
さほどの違いは感じられず・・

人だかりの向こうに消費者庁のオフィス












反対側の一角に長官室も準備された。


長官室の内部













13日午後10時半到着予定の長官を取材するために、多数の報道陣が雨の中長官到着を待った。

多くのマスコミに囲まれ、試行着手に向けブリーフィングに応じる板東長官


長官の到着する画像を撮ろうと雨の中、外で待ち続ける報道陣
 
一方、マスコミとは対照的に、徳島市内の街行く人や立ち寄り先の人々は冷静
「なんで徳島とか、関西の人たち人も言われているんでしょ」
「来るとは思えない」「何のメリットがあるのかよくわからない」という声の方が
「期待している」という声より多かった。


ICTを活用した業務試行は
パソコンを使ったウェブ会議と、テレビ会議の2つの方法で、
庁内の打ち合わせや記者会見、東京で開催される会議への参加などが行われた。

詰めかけた多くのマスコミの中で、ウェブ会議で打ち合わせをする消費者庁職員

川口康裕消費者庁次長とウェブ会議の調整

河野太郎消費者相とウェブ会議
飯泉嘉門徳島県知事とテレビ会議
最終日の17日、テレビ会議で会見する板東久美子消費者庁長官

「有用性もあるが、限界も感じた」17日最終日にテレビ会議で長官会見

17日、テレビ会議で会見した板東長官は、「有用性もあるが、限界も感じた」と報告。

●少人数の庁内の打ち合わせは、ウェブ会議で十分機能するが、記者会見では、声がひろえない、全体が把握できないなどの支障が出た。

●テレビ会議も20人程度の会議は有効だったが、大規模な会議では問題を感じた。個々の委員や全体の状況の把握が難しく、一定の規模以上の会議では有効ではない。
委員が遠くにいて出席できない場合は活用できると思うが、事務局、運営者側がテレビ会議を前提にこちらにいて、委員の大半が向こうというのは、なかなか難しいと感じた。

他の省庁といろいろなやり取りをするには、各省が共通の保秘を確保したテレビ会議システムを確保することが必要と感じた。

「危機管理、国会対応業務は困難、執行業務なじまない」

●秘密が保持されるシステムを整備してもなお、「危機管理対応業務は消費者庁がテレワークシステムのみで出席するのは非常に難しい」「国会対応業務も難しく、法案担当の課長補佐は早々に業務を切り上げて帰京した」と話した。「景品表示法や特定商取引法などの法執行も、事業者のいるところに行って立入調査をし、意見を聞く必要がある。テレワークにはなじまない」との見解を示した。

●「特徴に応じて使い分けていくことで、テレワークの可能性が広がることは分かったが、万能というわけではない」と総括。消費者庁の外や各省庁、業者、消費者団体、自治体とのやり取りをする場合は、相手方を含めた基盤整備が必要になる。実際に全国に出かけ各地の生の行政の実態を見たり、一緒に話をすることは重要との認識も示した。

「交通ちょっと不便と正直感じた。全国に出ていく、全国からきていただくには課題」

●交通の利便性では、「事前のシュミレーションより難しい面があった」と報告。長官が長崎県大村市を午後4時に出発し、徳島駅に着いたのは午後9時半。職員が昼ころ青森に出張し、午後3時ころの飛行機に乗って青森に到着したのは午後9時過ぎだった。「ちょっと不便だと正直感じた。全国に出ていく、全国からきていただくには課題がある」と話した。
 

 徳島県内の視察では、徳島県立城西高校の藍染を専攻している生徒の取り組みについて「生産者、消費者双方の立場から、倫理的消費の必要性を主張している点に非常に感銘を受けた。幅広い視点に立った消費者教育について大きな可能性を感じた」と評価した。
板野町消費生活相談所の取り組みについては、「消費者教育、地域の見守りネットワークの構築、そこを通した事例の検討分析などが着実に進められている取り組みに、新しい地域の体制整備の可能性を認識した」と述べている。