2017年3月15日水曜日

消費者庁天下り問題② 元課長補佐 行政処分を指導にとどめた疑い濃厚

ジャパンライフに天下っていた消費者庁取引対策課の元課長補佐が、全国の消費生活センターなどに寄せられた同社の違反の疑いがある相談件数を少なく報告し、ほとんど相談者への聞き取りをしていなかったことが民進党への取材で分かった。本来なら行政処分すべき案件を、天下りを要求するために行政指導にとどめさせた疑いが濃厚になった。消費者庁が天下り要求を組織的に隠ぺいしようとしたのではないか。行政処分を遅れさせたのではないかという疑念も大きくなるばかりだ。消費者庁は、5カ月近くも天下りの調査をし、違反を認定できなかった理由に、「元課長補佐が在職中に同社トップに面会を求める文書を入手したが、同社職員が偽造したと供述し、その可能性が否定できなかった」ことを挙げていた。これに対し、内閣府再就職等規制監視委員会は「消費者庁が入手した証拠で、十分違反が認定できた」との見解を示している。 業務停止命令3カ月の行政処分は、7割が立入検査から6カ月以内で行われている。13カ月もかけ、違反認定が書面記載不備などの形式違反では、説明がつかない。

まずは経緯を分かりやすく示す
【消費者庁天下り要求問題の経緯】
2012年12月初旬※X職員●社に「2年で定年退職」
「顧問になるのはどうか」と発言 
2013年1月下旬※A課長がX職員を注意
◇消費者庁、再就職等監視委に報告せず
2014年7月4日< A課長2年で異動、B課長に>
8月※X職員ジャパンライフに接触開始
 何度も「最後の仕事」などと告げる    
12月初旬※ジャパンライフから再就職の誘い
12月下 ※行政指導の資料等持ち帰り
9月、10月◇ジャパンライフに文書で行政指導
2015年1~3月2016年12月の行政処分の違反認定は
この間の相談事例で行われている
 (X職員退職後に再調査) 
3月末 ※X職員定年退職
4月※出向元経産省で再任用
6月30日※再任用を退職
7月10日※X職員ジャパンライフ顧問に就任
8月28日<B課長不招請勧誘規制問題で突然異動、C課長に>
9月10日◇ジャパンライフ立入検査

X職員が同社顧問に就任していたことが発覚
10月7日
12月14日
12月24日
 監視委報告まで1カ月近くかかっていた
※消費者庁が再就職等監視委に報告
河野太郎前消費者相、徳島県での移転お試し方針
(消費者委特商法専門調査会報告書
 不招請勧誘規制、提案あったことすら盛り込まれず)
2016年2月1日※消費者庁「違反断定できない」と報告
2月4日※監視委が調査開始決定
2月9日
3月4日
3月14日 
3月24日
自民党消費者問題調査会で特商法改正骨子案
特商法改正案を国会提出
徳島県神山町で移転試行第一弾を実施
※監視委「天下り要求」認定公表
5月10日 X職員ジャパンライフ退職

5月25日
6月21日
   ←消費者庁が働きかけ
改正特商法国会成立
<C課長1年を待たず異動、D課長に>
7月4日D課長1カ月徳島県で行われた移転試行第2段に参加
7月29日 
9月2日 
12月16日
河野前消費者相、移転検討3年先送り方針
政府方針、徳島に新オフィス3年後に見直し
ジャパンライフを行政処分
 3カ月の一部業務停止命令
 (違反認定は、特商法は勧誘目的等不明示のみ)
 (預託法は概要書面、据え置き書類の記載不備のみ)
    ※印は再就職監視委の公表資料から

検証①
元課長補佐、見返り目的で行政処分を行政指導にとどめさせたのではないか


消費者からほとんど聞き取らず
違反の疑いある相談、少なく報告
全国の消費生活センターなどに寄せられたジャパンライフの相談件数は、この10年で1300件を超える。2013年度は156件。2014年度が165件。2015年度も165件ある。
問題の元課長補佐が、ジャパンライフを担当したのは20144月から20152月頃まで。この間、20149月と10月に文書による行政指導が行われていた。
 消費者庁が提出した相談内容の分析では、違反の疑いがあるとした相談件数は、2013年度は59件。2014年度は55件としている。この数字自体、すべての相談概要を見なければ、その正当性は判断できないが、当時、元課長補佐は違反の疑いを10件程度とし、わずか2件しか、消費者への聞き取りを行っていなかった。
 この理由について、消費者庁は「消費者庁による供述聴取に応じてくれる消費者を確保することが困難だった」と説明しているが、通常では考えられない。相談者の8割が70歳以上の高齢者だが、高齢者の家族からの相談も多く、家族から聞き取ることもできるはずだ。
 相談現場に取材すると、消費生活センターなど相談窓口への調査依頼は、原則、文書で行うこととされている。依頼文書が何件あるか明確にすべきだ。
 さらに、昨年1216日に3カ月の業務停止命令を出した行政処分では、20151月から3月の事案で違反を認定している。3件の事例で違反を認定しているが、このときは何件の調査依頼をし、何件契約者や関係者から聞き取り調査をしたのかも明らかにすべきだ。このときに聞き取りができたのであれば、行政指導ですませた当時でも聞き取りは可能だったはずだ。
しかも、昨年12月の行政処分で違反が認定された勧誘目的不明示(特商法)や書面記載不備(預託法)にとどまらず、不実告知や迷惑勧誘などでも違反が疑われる相談が一定数確認されている。
「違反が少しでも疑われる相談は、できるだけ広く相談者から聞き取って処分につなげる」くらいの姿勢があってしかるべき。天下りを要求するために、あえて、行政指導になるように違反の疑いがある相談件数を少なく報告し、意図的に聞き取りをしなかったのではないかと強く疑われる。
 また、昨年12月の行政処分では、預託法は、概要書面の記載不備、備えておくべき書類での同様の記載不備しか認定していない。これらの形式違反であれば、事業者から書面を提出させれば違反を認定できると考えられる。あえて、違反を認定しなかったのではないかという疑念もある。
国家公務員法では、「職務上の不正な行為」をしたり、「相当の行為をしなかったこと」で、営利企業に天下りを要求しその職に就いた場合は、懲役3年の罰則が規定されている。これらの刑罰に該当しないか、検証を求めたい。


検証②
消費者庁が、天下り要求を組織的に隠ぺいしようとしたのではないか

消費者庁 組織的隠ぺいに疑念
監視委「消費者庁の証拠で認定できた」
 次に、消費者庁は元課長補佐の天下り要求について、なぜ、5カ月近くも調査して違反を認定できなかったのか。組織的に隠ぺいしようとしたのではないかという2つ目の疑念も大きくなっている。
消費者庁は、5カ月近くもかけ違反を認定できなかった理由として、「現職中に元課長補佐がジャパンライフトップに面談を求める決裁文書(伺い書)を入手したが、この決裁文書はジャパンライフ職員が元課長補佐から受けたストレスを解消するために偽造したと供述し、その可能性は否定できないものだった」と回答。また、「幅広く聴取を行ったが、供述・証言に虚偽の内容が含まれている可能性があり、証人喚問権など強制権限がある委員会調査に委ねるのが適切と判断した」としている。
果たして、このような理由が通用するのか。この質問を内閣府再就職等監視委員会に投げたところ「同様の思いを持った。強制権限を使う必要はなく、消費者庁が収集した証拠で違反は十分認定できた」との見解を示した。
元課長補佐が、ジャパンライフの顧問に就任していたことが発覚したのは、2015910日。消費者庁が同社に行った立入調査だった。
 だが、消費者庁がこの事実を、内閣府再就職等監視委員会に報告したのは、2015107日。すでに1カ月近くも経っている。消費者庁が、国家公務員法に基づく「任命権者調査」に入り、「違反は断定できない」とする調査結果を報告したのは、201621日。立入検査から5カ月近く経過していた。
監視委が「委員会調査」を決定したのは、わずか3日後の24日。324日には違反認定を公表し、「調査に5カ月近くを要し違反を認定できなかったのは遺憾」と、異例の遺憾の意を表明している。
監視委の公表文書では、委員会調査を行った理由について、「違反の疑いは払しょくされず、その調査過程、証拠および事実認定に鑑み、特に必要があると認め」たことを挙げている。どのような調査過程で、どのような証拠を入手し、どのような事実認定をしたのか。監視委は公表資料で「面会のための伺い書が作成、採決された」、「トップとの面会を早すぎるとキャンセル」したことを認定しているが、その根拠となる資料や調査結果の公開を求めたい(現在、情報公開請求中)

別会社への天下り要求報告せず
元補佐、人事担当に再三相談
再就職等監視委は、民進党消費者・食品安全部門会議(29)のヒアリングで、遺憾の意を表明した理由に①長期にわたり調査をし、違反が認定できなかった②201412月にも、別の会社に天下り要求をしている情報があったにもかかわらず、委員会に報告しなかった③違反者が消費者庁人事当局に再三相談して求職活動をうかがわせる情報を入手しているにもかかわらず、十分な対応をせず現職中の違反を未然に防ぐ機会を逸した-の3点を挙げた。
監視委は、元課長補佐が201412月、別の会社に対し「あと2年で定年退職」「御社の顧問になるかどうか」と発言したことを認定し、公表している。
なぜ報告しなかったのか。その理由について、消費者庁は「本人が冗談だと供述したことなど」を理由に挙げ、「証拠はなかった」と回答している。では、なぜ監視委はこの発言を認定して公表資料に入れたのか。それも明らかにする必要がある。
さらに、監視委の公表資料では、元課長補佐が消費者庁人事担当職員に求職規制などについて3回相談したとしている。監視委が指摘しているような求職活動をうかがわせる内容だったかどうかも公表すべきだ。
人事担当者がもみ消したのではないのか。意図的に調査を長期化させ、隠ぺいしようとしたのではないかという疑念は、大きくなるばかりだ。


検証③ 立入検査から行政処分までになぜ1年3カ月もかかったのか。意図的に送らさせたのではないか

立入検査から処分まで13カ月
意図的に遅らせた疑念ぬぐえず
 3つ目の疑念は、立入調査から行政処分まで、なぜ13カ月もかかったのか。これも意図的に遅らせたのではないのかという疑念が大きくなっている。
 2014年度以降、国(経済産業局含む)が業務停止命令3カ月を出した事業者は、ジャパンライフを除くと26事業者ある。このうち、7割を超える19事業者は、立入検査から6カ月以内に処分が行われている。
 6カ月から1年以内が6事業者。1事業者のみ1年以上かかっている。
消費者庁では、消費者被害の拡大防止に向け、迅速に調査、処分するための目標として、調査着手から処分までの期限を掲げた「〇カ月ルール」があるという。この目標からすると、立入検査から公表までに13カ月を要したというのは、大幅にルールを逸脱していると言える。
消費者庁は、これまで処分の経験がない預託法で処分したことを理由に挙げているが、預託法での違反認定は、概要書面の記載不備と備え置き書類の記載不備の2つに過ぎない。
事業者に書類提出を求めれば違反認定ができるような形式違反では、説明になっていない。
立入検査後に早急に決着しなければ、違反の内容が変わるおそれがある。さらに相手方事業者がいろいろな手を講じてくることが予想され、時間をかけるほど処分が困難になる。

特定商取引法の改正
徳島移転問題、影響か
さらに、消費者庁が特定商取引法改正や徳島移転問題で、過去に経験のない危機的な状況に直面していたことが、大きく影響していると考えざるを得ない。
消費者庁取引対策課では、特定商取引法の改正の検討を進めていたが、20158月末、訪問販売や電話勧誘を事前に拒否した消費者への勧誘規制に積極的だった同課課長が突然異動した。読売新聞社長が出した意見書をきっかけに日本新聞協会との対立が鮮明になった。
異動は、消費者委員会特商法専門調査会が「勧誘規制については共有認識には至っていない」との中間報告をまとめた直後だった。20151224日にまとめた報告書では、訪問販売や電話勧誘を事前に断った人への勧誘規制は、導入を求める意見があったことすら盛り込まれなかった。改正は、行政処分の強化を目玉とする内容で決着した。
くしくも同年1214日には、当時の河野太郎消費者担当相が消費者庁全面移転を求めた徳島県を訪問し、徳島県神山町での移転お試しを突然発言。消費者庁は徳島移転対応で奔走させられることになる。
消費者庁が、元課長補佐の天下り要求の調査を行ったのは、20159月から201621日まで。特商法改正法案の骨子案が自民党に報告されたのが29日、特商法改正法案が閣議決定され、国会に提出されたのは34日だった。
消費者庁は314日から5日間、消費者庁移転のための試行第一弾を徳島県神山町で実施。再就職等監視委が、元課長補佐の天下り要求認定を公表したのは324日。公表後も元課長補佐がジャパンライフ顧問を辞任していないことから、消費者庁が働きかけをし、辞任を確認したのが510日。改正特商法が国会で成立したのは525日だった。
特商法成立に影響しないよう、ジャパンライフへの行政処分を意図的に放置して遅らせたのではないのか。
そして、また、6月末には、着任して1年もしない課長が交代。行政処分経験のない異動してきたばかりの課長が7月4日から約1カ月実施された徳島県への移転試行第2弾に参加することになる。テレビ会議では極秘事項は扱えず、徳島での試行が、行政処分をさらに遅らせたことは想像に難くない。
ジャパンライフの立入検査から13カ月。ジャパンライフ処分のための作業を適正に進めていたとは考えにくい。
 再三気づくチャンスがありながら、消費者被害に直結する天下りを防ぐこともできず、発覚後に毅然と対応することもせず、漫然とその処分を遅らせたのか。だとしたら、あまりに情けない。

検証④ 行政処分の内容は適正なのか

昨年12月の処分内容適正なのか
商品はレンタルされているのか
昨年1216日の処分は果たして適正だったのか。4つ目の疑念も残されたままだ。
レンタルオーナーが購入してレンタルしている商品の数と、レンタルされている商品の数が大きく見合っておらず、自転車操業だった場合、わずかな処分の遅れが、甚大な被害の拡大に直結する。安愚楽牧場の破たんで学んだはずだ。
 ジャパンライフの相談件数は、この10年間、毎年100件近く寄せられ、2010年度以降は、150件前後で推移していたことを再記しておく。平均契約額約1700万円という数字を過去に見たことがない。安愚楽牧場の破たんを受け、20139月に政令を改正して家庭用治療機器を追加したのは、同社レンタルオーナー制度のレンタルの実態を早急に調査するためではなかったのか。
レンタルの実態が明らかにされたときに、4つ目の疑念への答えも自ずと明らかになる。万が一、預託している商品とレンタルされている数が大きく見合っていなかった場合は、消費者庁は責任を問われることになるだろう。消費者被害の拡大防止は、消費者庁の使命だ。甚大な被害が顕在化した後で、その実態が明らかになることがないよう願うばかりだ。
(313日、日本消費経済新聞315日号から)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
国家公務員法第百十二条  
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役に処する。ただし、刑法 (明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法 による。
 職務上不正な行為(第百六条の二第一項又は第百六条の三第一項の規定に違反する行為を除く。次号において同じ。)をすること若しくはしたこと、又は相当の行為をしないこと若しくはしなかつたことに関し、営利企業等に対し、離職後に当該営利企業等若しくはその子法人の地位に就くこと、又は他の役職員をその離職後に、若しくは役職員であつた者を、当該営利企業等若しくはその子法人の地位に就かせることを要求し、又は約束した職員


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


日本消費経済新聞2月15日号から、民進党が追及「行政処分に手心加えていないか」
の記事を追加しておく。
 以下の部門会議で、中根康浩事務局長は部門から出す質問に文書で回答することを要請した。消費者庁は質問項目に文書で回答し説明している。この回答や説明内容に基づき、多方面を取材し3月15日号の記事を構成した。

消費者庁天下り問題
「行政処分に手心加えていなのか」
民進党、消費者部門会議で追及
「天下りの見返りに、行政処分に手心を加えたのではないのか」-。天下り要求をした消費者庁取引対策課の元課長補佐が、行政処分された「ジャパンライフ」の顧問に就任していたことが発覚した問題を受け、民進党は29日、消費者・食品安全部門会議(座長、相原久美子・民進党ネクスト内閣府特命大臣)を開いた。出席した国会議員からは、①天下り要求が、元課長補佐が担当した行政指導に影響していないか②組織的な隠ぺいで、その後の行政処分を遅らせたのではないかなど-を追求する質問が相次いだ。これに対し、消費者庁は個別事案を理由に、詳細な回答を避け、疑念を払しょくできる内容にはなっていない。相原座長は「監督官庁がどういう姿勢で臨むかが問われている。疑念を払しょくしなければ、消費者の安全安心は守れない」と述べ、部門として提出する質問に再度文書で回答することを要請。回答を踏まえてさらに同問題を検討する方針を示した。同社への相談の内容をすべて公表することも求めている。(相川優子)
監督官庁の姿勢問われる
相談内容の公表求める
 本紙11日号(20161228日発行)で、消費者庁が昨年末に一部業務停止命令を出した「ジャパンライフ」の顧問に、内閣府再就職等監視委員会が在職中に“天下り要求”をしたと認定した元消費者庁取引対策課課長補佐が就任していたことが分かったと、報道した。
20159月、消費者庁がジャパンライフへ立入検査をした際に、元課長補佐が同社の顧問に就任していることが発覚していた。行政処分が行われたのは、それから13カ月後の20161216日。特定商取引法で3カ月の一部業務停止命令を出したが、違反が認定されたのは勧誘目的等不明示のみという異例の内容(預託法は、概要書面記載不備、備え置き書面記載不備で3カ月の一部業務停止命令)だった。元課長補佐が担当した行政指導の時期を消費者庁は明らかにしないが、20148月から12月の間に行われている(内閣府再就職等監視委員会の公表資料より)
消費者庁によると、ジャパンライフは、磁石を埋め込んだネックレスやベルトなどを100万円から600万円で販売し、レンタルすると毎月6%の利益が得られるとするレンタルオーナー契約を、訪問販売やマルチ商法で勧誘していた。
行政処分案件を
指導にしていないか
 同日の部門会議で、副座長の大西健介衆議院議員は、「行政処分に手心を加えて指導にするから、退職したら受け入れろということをやっていたなら大問題」と指摘した。「天下り要求をした時期と、行政処分の時期は重なっていないのか」「元課長補佐が指導していた時期にも、違反があったのではないのか」「本来は、処分案件があったものを、行政指導で済ませたのではないのか」と質問した。
これに対し、消費者庁取引対策課の佐藤朋哉課長は「個別事案の具体的内容は詳細に言えないが、一般論でいうと、適正な手続きで収集できた証拠に基づいて処分するのが基本」と回答。「今回、20152月、3月の具体的な事例で法違反が認定できたため、それに基づいて処分を行った」と説明した。
「ここは、核心部分。一般論では、疑いが晴れない」と、さらに追及したのは井坂信彦衆議院議員。「おねだりと引き換えに、見逃したと疑うのが当たり前。そのチェックをしていないのか」と発言。①元課長補佐はやるべきことをやっていたのか②20148月~12月までに処分に足る事実はなかったのか③2014年には、ジャパンライフは勧誘目的等不明示の違反は一切やっていなかったのか-などを、厳しく質問した。
佐藤課長は「いつ調査に着手したかは言えないが、担当者任せにせず、上司に報告して組織としてどうするか決定している。当時、どのようなことをしていたか、当然把握しているが、個別案件で今後に障ることもあるので申し上げられない」と回答。「同じ違反事実があったとしても、どの程度継続的に行われていたかを踏まえて、処分内容を決定するのが一般的」と述べるにとどまった。
消費者庁の回答では
「疑念払しょくできない」
井坂氏は「それでは、全く疑いが晴れない」と憤慨。「上司に報告しなかったのではないかという疑問もある。違反を見逃したのではないのか」と述べ、形式的な違反がいつからあったか、どんな違反があったか、なぜ、処分に至らかなかったかなどについて、文書で回答することを要請した。
「言えないのでは、話にならない」と、事務局長の中根康浩衆議院議員。「2015年に違反を認定していることが、2014年にもあったのではないかというのは、率直な疑問。現に2014年度の相談は165件もある。確認していないのか」とただした。佐藤課長は「一部の形式的な違反は、それ以前にも認められたが、それだけで処分するのが妥当か判断した上で、当時は処分に至らなかったと思っている」と回答している。
指導時に違反なかったのか
すべての相談内容示せ
矢田稚子参議院議員は「3年間で486件もの相談がある」として、相談の中身をすべて示すことを求めた。この問題には、①天下り要求②消費者庁が本来業務をしたのか③組織ぐるみで隠ぺいしたのではないか-3つの問題があると指摘。疑いを払しょくするためにもきちんと相談の中身を出すことを要請した。
井坂氏は、さらに認定した違反が「概要書面の付属明細書に、主要株主への貸付金を書いていなかった」、「無料のエステやマッサージに行くと勧誘目的を告げなかった」など、形式的な違反にとどまっている点にも、疑問を投げかけた。「私が勝手に疑っている違反とは違う。本丸ではないような気がする」と指摘し、「えびの養殖で養殖場がないケースがあったが、本当にレンタルはされているのか」と質問。佐藤課長は「今回の処分には含まれていない。個別事案で詳細説明はできないが、継続的にウォッチし、証拠に基づいて認定できれば、きちっと処分する」と答えている。
立検から処分まで13カ月
組織的に遅らせたのではないか
大西氏は、立入検査から行政処分までに13カ月を要した点にも、長く時間がかかり過ぎたのではないかと、疑問を投げかけた。
その理由として、①当該職員が顧問を辞めるまで待ったのではないか②特定商取引法の改正に影響することを恐れ、法改正が終わるまで引き延ばしたのではないか③ジャパンライフは訪問販売を止めているということだが、業務停止命令を受けても影響が出ない時期まで時間稼ぎをしたのではないかー3つの懸念があると指摘した。
これに対し、佐藤課長は「ケースバイケースで、さまざまな場合がある。本件は非常に難しい事案で、さまざまな観点から調査する必要があった」と答弁。大西氏は「懸念は払しょくできない」として、他の事例で、立入検査から処分まで1年以上かかった事例を示すことを求めた。
2012年の天下り要求
消費者庁、監視委に報告せず
大西氏は、天下り要求があった事実を、消費者庁が長期にわたって調査し、違反ができなかった点に加え、事前に情報があったにもかかわらず、未然に防ぐことができなかったことも問題視した。
同日のヒアリングで、内閣府再就職等監視委員会は、①5カ月近くも調査し、違反が認定できなかった②2012年にも天下り要求をした情報があったにもかかわらず、監視委に報告しなかった③(ジャパンライフの違反認定期間中に)何度も元職員が消費者庁人事当局に求職規制などについて相談しているにもかかわらず、十分な対応をせず現職中の違反を未然に防ぐことができなった-3点について問題があった報告した。同委の公表資料では、201412月以降20153月までに、元職員が3回消費者庁人事当局に相談したとしている。
大西氏は、①なぜ5カ月もかかり、その結論が問題ないということになったのか②職員が求職について何度も相談しているにもかかわらず、なぜ見逃したのか―などについて質問した。
これに対し、消費者庁総務課の坂田進課長は「監視委員会の助言を受けながら調査したが、強制調査権限がないので供述に虚偽が含まれていた場合に限界があった。広い範囲の供述を求めたが、審議が不明な証言が多々あり、裏付けに難航を極めた」と回答。職員が相談したことについては「仮定の話ということで、何度も具体的な話があるのかと質問したが、具体的な会社名は一切出てこなかった。突っ込み不足があったと反省している」と、答弁している
2012年の天下り要求は証拠がなかったのか、この問題の調査期間中に取引対策課の課長が4人も交替しており、どのようにかかわったのかなどについても、文書で回答することを求めた。
相原座長は「消費者庁が消費者の立場に立ってどう安心安全を確保するかということに対し、天下りで影響があったのではないかという疑念が出ているのが一番の問題。疑念を払しょくしなければ、特定商取引法を改正しても、消費者の安全安心は守られない」と述べ、これから部門として出す質問に対し誠実に回答し、疑念を払しょくすることを求めた。



0 件のコメント:

コメントを投稿