2016年3月27日日曜日

消費者庁移転「お試し」 相談員研修「鳴門」に移転すれば、8道県が前泊必要。24都道県で交通費増

3月14日、板東久美子消費者庁長官に同行し、消費生活相談員研修のお試し移転先である「鳴門合同庁舎」を見てきた。国民生活センター相模原事務所から移転させた場合、午後1時から研修を開催しても、8道県が前日宿泊が必要になり、24都道県で宿泊費を含めた交通費が増大する。5月からの試験移転に向け、460平方メートルある4階フロアを、数百万円をかけて間仕切りで仕切り、必要な機器や備品を配備。宿泊は1キロ程度離れたビジネスホテル6カ所を活用するという。改修費用は徳島県が負担するが、本当に数百万円もかけて工事をしてしまっていいのか。相模原の研修棟には、宿泊施設や討議室、談話室、図書資料館などが整っているのに、なぜ、こんな工事をしてまで移転する必要があるのか。なぜ、鳴門なのか。3月22日、佐竹敬久秋田県知事が「消費者庁がなんで徳島に関係あるんだ。東京は日帰りだが、徳島では2泊3日になる」と発言した。他の都道府県は声を上げなくて大丈夫なのか。



鳴門合同庁舎4階フロア、ここを仕切ってグループ討議用の部屋や受付などを作るという

相談員研修を、国民生活センター相模原研修棟から「鳴門合同庁舎」に移転させた場合

 午後1時開催でも、8道県は前日宿泊が必要24都道県で交通費増

本年1月、河野太郎消費者相の突然の発言で、国民生活センター相模原事務所が行う研修と商品テストの試験移転が決まった。来訪した飯泉嘉門徳島県知事にその場で提案し、消費者庁長官はじめ職員もだれもこの事実を事前に知らなかった。


5月から14回、消費生活相談員、行政職員向け研修を移転「試行」

鳴門号庁舎で5月から14回、消費生活相談員向けと行政職員向けの研修を実施する予定で、徳島県と国民生活センターが準備を進めている。

・インターネット・スマホトラブルなど消費生活相談員向けの事例検討講座
・行政職員向けの基礎、相談支援、広報啓発講座
・相談員・行政職員向けの消費者教育の講師養成講座
・地域の見守りネットワーク推進講座など

14回の講座が、鳴門合同庁舎で実施される予定だ。

【交通の便】
徳島阿波おどり空港からバスで約15分。
高速バス下車後、路線バスに乗り換えて1区間110円だと説明。

しかし、飛行機の便数は、羽田間1日往復11便、福岡間往復1便しかない。

板東消費者庁長官自ら3月17日のテレビ会議を使った会見で、
「交通の便に課題がある」と述べている。

長官は13日午後4時ころ長崎県大村市を出て徳島市に着いたのが午後9時
お試し移転に参加した職員が青森に出張したが、神山町を昼過ぎにでて
午後3時ころの飛行機に乗って青森に着いたのは午後9時だったと報告した。

一方、323日、衆議院消費者問題特別委員会で河野消費者相は
「各地の消費生活センターから鳴門合同庁舎に午後1時までに着くと仮定をした場合、前泊が必要になる都道府県は8都道府県、相模原事務所で実施するよりも宿泊費を含めて交通費が増えるところは24都道府県になる」ことを明らかにした。
民主党の本村賢太郎氏の質問に答えた。

相模原の研修施設であれば、前泊が必要になる都道府県はない。

消費生活相談員の多くが1人体制で窓口業務に携わっている。
研修の日数が増えるとそれだけ参加しにくくなる。

【鳴門合同庁舎、4階フロアを工事】

鳴門合同庁舎は1973年建設。相模原の研修棟より築年数が7年も古い。
 4階部分と別館の会議室を研修に使うという。
 4階は、フロア460
6つでグループ討議しているということで、間仕切りで6つに仕切る。
    国民生活センター職員の受付スペース、事務スぺースも作る。
    研修に必要な備品を置くところ、談話スペースもこの中に作る。
    ワイファイと複合機を設置する。
    
 会議室は、255㎡。別棟にある。

 宿泊は、ビジネスホテル、6カ所を活用する。

 4月からのお試し移転(研修と商品テスト)の費用は、
 2016年度徳島県当初予算で800万円が確保されている。
 商品テストは、既存の県や民間の機器を借りて行うため
 さほど予算はかからないと見られる。
 改修費用がいくらになるか詳細を取材したが明確な答えが返ってこない。
 


【現在使われている国民生活センター相模原研修棟の設備】

国民生活センター相模原事務所の研修棟は1980年に建設された。

  講堂 180人 284㎡、中会議室 50人 92㎡、研修室A 80人、研修室B 30人、討議室3室各12人、談話室A 14人、応接セット、談話室B応接セット、食堂、教養娯楽室A、B各30人、同C 18人、宿泊室72室、講師用3室、図書資料館、ランドリーアイロン室、簡易調理室、ロッカー室等が整っている。

行革の対象とされ一時閉鎖されていた経緯がある(これもほぼ突然の決定、民主党が抜擢した福嶋消費者庁長官が主導したと言われている)が、

耐用年数50年とし、今後15年を試算。外部施設を利用するより研修施設を利用した方が節約できるとして再開された。

宿泊施設や研修施設併設で、研修後もグループワークや受講者の交流・情報交換できる

研修室や討議室などを利用した事例検討型、参加体験型の研修、宿泊施設があることで研修終了後の自主的なグループワークなどもでき、受講者同士の交流や情報交換が促進されることも高く評価された。

なぜ、これだけの施設の利用を再開し、ようやく軌道に乗りかけたときに、鳴門で移転試行しなければならないのか。まったく、移転の「大義名分」がない。

消費者庁が地方強化作戦の中で掲げた政策目標の1つである研修参加率100%を達成していない自治体では、消費者行政活性化基金の残金で交通費と宿泊費を100%補助してもらうことができる。

基金が使えなくなる2017年度以降も、国は交通費を出し続けるのか。
仮に国が支援したとしても、交通費の費用が増えた分は税金の無駄遣いということになる。宿泊費も相模原事務所だと1泊4000円だ。

22日決定、政府機関移転の基本方針では、
研修地に全国的にすぐれた取組と汎用性求める

政府が22日に公表した政府機関移転の基本方針では、研修は、その地ならではの研修内容(全国的にみてすぐれた取り組みとして認知され、かつ全国に汎用性があるもの)を勘案して検討するとしている。

例えば、教育研修センターでは、「全国の教員にとって参考となる先進校を有し、地元の学校でのフィールドワーク等を活用した研修を実施することが可能なもの」が移転の対象になっている。

徳島県の相談員の研修参加率全国で45位、相談員数43人にも疑問

徳島県の相談員の研修参加率は、全国で45位 69.8%(全国平均89.9%)
全国平均を大きく下回っている。

県内の消費生活相談員数は43人としているが、これも疑問符が付く。
県センターに9人。前24市町村のうち13市町(地域協定を結んでいるため、実質12市町)に32人の相談員がいると消費者庁には報告されている。
このうち有資格者は24人(資格保有率全国40位)としている。

しかし、実際に取材をしてみると、
5人と報告していたある町は、合併前の5支所の職員(兼務)それぞれ1人を相談員として報告していた。(本来は有資格者、あるいは有資格者と同等の能力があると首長が認めた人を相談員として報告する必要がある)

また、消費者協会への委託で登録者5人と報告している(登録者はすべて報告して可)町で、実際に相談窓口が開設されるのは月に2回、それぞれ2時間ずつ1人の相談員が相談に応じているに過ぎなかった。

6人と報告している町でも、月に2回、3時間ずつ2人が担当しているに過ぎない。
町の職員は、ご親切に、「さほど専門家ではないので、難しい案件は県センターに相談した方がいいですよ」と助言してくれた。

とても、全国の相談員の研修をするにふさわしい「全国的にみてすぐれた取り組みとして認知され、かつ全国に汎用性がある」地とは言い難い。

なぜ、研修を鳴門に移転しようなどという発想が出てくるのか。
どう説明すれば、他の地域の理解が得られるのか。疑問でしかない。

佐竹秋田県知事
「消費者庁が何で徳島に関係あるんだ。東京は日帰り、徳島では2泊3日」

322日、秋田県の佐竹敬久知事は
「消費者庁がなんで徳島に関係あるんだ。東京は日帰りで行けるが、徳島なら2泊3日になる」と定例会見で発言した。

徳島県は、何百万円もかかる工事をしてしまって大丈夫なのか。
この費用は徳島県が出すが、徳島県民は、この税金の使われ方に疑問を抱かないのか。

秋田県知事の発言以外、他の都道府県からの意見が出ていないが、本当に研修を移転して、今後、これまでと変わりなく、相談員や行政職員を研修に参加させるのか。

消費生活相談員、消費者行政担当職員は声を上げなくて大丈夫なのか。私は問いたい。


写真
①鳴門合同庁舎。正面の建物4階部分と左の建物の大会議室が研修に活用される

間仕切り用の図面、4階フロアの中に国民生活センター受付スペースも作られる



徳島県の職員から説明を受ける板東消費者庁長官

④別棟にある大会議室

⑤大会議室のある別棟に移動する一行

⑥冷暖房や給湯などの世話をする鳴門号庁舎職員が使うことになる部屋

⑦トイレ




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