2016年1月25日月曜日

消費者庁徳島移転問題② 大臣自らゲリラ戦法「3月末時点ではゴー」

消費者庁、消費者委員会、国民生活センターの徳島移転問題は、河野太郎消費者相が独断で4月以降の国民生活センターの商品テストや研修のお試しを決め、4月以降お試しをする必要がなくなるので、3月末時点では「ゴー」「ノーとは言わない」と発言している。消費者庁 地方移転を明記 政府方針」の見出しの記事まで飛び出した。まさに、無茶苦茶なゲリラ戦法だ。なぜ、こんなやり方をする必要があるのか。移転することで全国の消費者にどんなメリットがあるのか、なぜ、徳島なのか、皆が納得いく理由を示せないからではないのか。
 
気象庁、観光庁、総務省統計局、中小企業庁、特許庁を所管する各大臣は、国会や各省庁との対面業務や危機管理対応、全国を対象としていることなどを理由に、移転に難色を示している。この理由、長官が次官連絡会議メンバーで各省と横並びの扱いである消費者庁は、より当てはまるのではないのか。

「日本の精神文化の軸は京都」。文化庁を担当する馳浩文科相は、移転の理由を明確に示した。しかし、河野消費者相の口からは、どの分野にも共通する「テレワークによる人材活用」以外、明確な答えは未だもらえていない。
 
なぜ、4月以降、消費者庁だけが実証試験をするのか。 その実証試験が、移転を検討するに必要十分な内容なのか。具体的な内容や手法、だれがどう検証・評価するのかすら示されていない。
 
政府有識者会議の増田寛也座長は、「中央省庁は検討していない(論点整理のみ)。招致側の道府県、対象省庁を呼んで同時にヒアリングをし、それを踏まえて検討する」と話していた。このヒアリングすら行われていない段階で、石破茂地方創生相との話し合いだけで、こんなことが決まっていいのか。

09年国会で、90時間以上も審議して超党派合意で創設を決めた消費者庁の移転を、国会審議も経ずに内部の調整で、閣議決定事項として決める手法自体、あまりに問題があると私は考える。
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15日、河野消費者相「ノーとは言わない」

15日の閣議後会見で、河野消費者相は、

「3月末にノーですと言ったら、テストをやる必要がなくなるため、
3月末時点では消費者庁が移転はしませんということにはならない」

「(移転)するかしないかを考えようと言えば、しないほうが楽だから、しないことになっちゃう。徳島に消費者庁が移転するという前提でいろんな物事を考えて、課題を抽出するためのテストをやって、それが解決できれば移転をする。そこは何の変わりもない」と説明。

石破さんには、こういうテストをやりますよということは申し上げて、それはしっかりやってくれというお話をいただいている」とも述べている。

石破創生相 「公正・公平・的確な行政+さらに質高められるか」

一方、石破茂地方創生相は15日、地方移転の検討状況を問われ、

「有識者会議の意見を経て、ひと・まち・しごと創生本部が決定する」

「民間と行政が違うのは、日本国すべてで公正な行政、公平な行政、的確な行政を当然行政の使命として確保しなければならない。それに加えてそれぞれのものを、さらに質の高いものとして展開できるかどうかがポイント」と答えている。

自民党消費者問題調査会で反対意見が相次いだ点に(※詳細、後で別記)

「徳島でも、懸念に対してきちんと答えて行政ができるという実論ができるか。その議論の課程を広く国民の皆様方にご判断いただくことが大事だ」と指摘。

消費者行政、地方に行ったらこんなことができない。国民にとって決定的によくない。

反対論は、そのことをよくわかっておっしゃっていると思うが、どの主張が正しいのか常に国民が見ていることを忘れないでほしい」とも、述べている。
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消費者庁は、生産者の立場で作られた法律や制度を国民本位に改めるために創設された

消費者庁は、「これまでの生産者・供給者の立場から作られた法律、制度、さらには行政や政治を、国民本位のものに改める」(08年1月、福田康夫首相の施政方針演説)ために、作られた。

森まさ子消費者相の下で実現した、消費者団体が消費者に代わって消費者被害に遭ったお金を取り戻す訴訟ができるようにする消費者被害集団的回復裁判手続き特例法(本年10月施行)

景品表示法への課徴金制度導入(本年4月施行)は、その代表的な例といえるだろう。

しかし、今国会に提出予定の特定商取引法改正案では、高齢者被害が増え続けている訪問販売や電話勧誘の勧誘規制は惨敗。消費者契約法改正案では、インターネットなどの広告表示を対象にするかどうかが最大の焦点だったが、中間報告の後、議論に入ることなく断念した。
ハッキリ言って、上記2本の法律に比べ「できが悪い」。(※後で別記)

牙をむく」(河野消費者相の年頭訓示)どころか、牙を抜かれている。

同じデータを見ても意見が真っ向から対立、規定ブリも消費者側と事業者側では受け止め方がまったく違った。さまざまな業界団体からさまざまな懸念や過剰な心配も出され、十分に説明すらできていないこともうかがえた。人も足りていない。苦情相談を分析する手法や体制にも課題が残った。

テレビ会議で対応できるというが、例えば、同一企業の中で、同じ価値観を持つ人たち、同じ方向、同じ目的に向かって進む人たち、面識がある人たちの会議では、有効だろう。

しかし、同じ言葉を話しても受け止め方が全く違うような状況で、徳島の地から何をどう説得できるというのか。テレビ会議のテーブルについてくれるかどうかすら分からない。

消費契約法は事業者と消費者の契約すべてが対象だ。すべての各種団体に対応しなければならない。そのほとんどが東京にある。

しかも、産業育成の立場の各省庁とも利害が対立する。各省庁、内閣法制局との調整、国会議員への説明、族議員の説得、国会対応、どれ一つとっても産業育成省庁より困難を極める。景表法への課徴金導入で、経済産業省が自ら資料を作って国会議員に反対の要請をしていたことは前にも触れた。

各省庁は東京に残り、消費者庁だけ移転させるなど、とんでもない。どの省庁より移転はふさわしくない。

消費者庁の徳島移転は、全国の消費者にとって決定的によくない結果になると、私は考える。

むしろ、アベノミクスに都合の悪い消費者庁を、十分機能しないように追いやってしまうのではないかという懸念すら抱かざるを得ない。

消費者にとって安全で安心な公正な市場こそが経済を発展させる(消費者庁はこう主張し続けている)のではないのか。

消費者庁は各省庁に勧告が出せ、法律のすき間には自ら対応

消費者庁創設と同時に作られた消費者安全法には、他省庁が所管する分野で問題がある場合は他省庁に勧告することができ、どこも対応していない法律のすき間には、自ら対応する仕組みが盛り込まれている。

消費者庁が持つ特定商取引法の適用対象かどうかですら、消費者安全法を担当する部局と調整しなければ明確でない場合が少なくない。法律の解釈で各省庁が持つ法律で対応できるかどうかが異なる。日常的に各省庁とやり取りが行われている。

中国ギョーザ事件や事故米などに対応するための、危機管理対応も重要な役割として位置付けられている。


国民生活センターも各省庁や事業者団体に要望。消費者委員会は建議、提言

昨年の国会で、スマホや光回線、プロバイダーなどで増え続けているトラブルに対応するため、電気通信事業法が改正された。

「電気通信事業法に特定商取引法並みの規制を」入れるよう最初に要望したのは、国民生活センターだった。これを受け、消費者委員会が提言を出し、法改正に結びついている。

国民生活センターは行政機関や事業者団体への要望を公表している。

ただし、独立行政法人に、強い権限があるわけではない。各省庁に出向いて苦情相談情報の分析結果や相談事例を基にねばり強く交渉し、要望事項として公表することを了承してもらっている。
期待したい機能だ。

民主党政権下の行革で、国民生活センターを消費者庁に吸収するための検討が行われた。国民生活センターに要望する権限などないという主張も出されたが、消費者団体などが大反対し、現在もこれらの要望が継続できている。

同じ閣内にあって、法改正を消費者庁が他省庁に勧告するのは、ハードルが高いようだ。現実的に勧告は一度も出されていない。国民生活センターの消費者目線に立った要望が重要な役割を果たしている。これらの要望が、徳島に行ってできるのか。私はこれもできなくなると心配している。

事業者に任意で来てもらっているあっせん交渉、ADR(裁判外紛争手続き)も心配だ。
徳島に事業者が来てくれるのか。
消費者からの苦情相談を解決するために、事業者と直接折衝するのがあっせん交渉だ。
年間約500件のあっせん交渉のうち、昨年は約200件、事業者にきてもらっている。
商品テストでも35件、事業者にきてもらっている。

ADRは約200件のうち、148件事業者が来てくれた。
これも、テーブルに着くかどうかは事業者の任意だ。
テーブルに着かない場合、事業者名を公表することができるが、徳島まで来ないからといって
事業者名を公表することができるのか。


電話でのあっせんではらちが明かないからきてもらっている。本人やセンターの交渉で不調に終わっている。そんな事業者と直接話すためにきてもらっている。テレビ会議で可能なのか、それ以前に、テレビ会議システムを事業者が用意してくれるとは思えない。テレビ会議のあるところまで来てくれるのか。これも、とても心配だ。
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4月以降のお試しを決め、
だから3月末時点ではノーとは言わないというゲリラ戦法には、
以下4つの問題点がある。

まずは、この4つに明確に答えることが必要と考える。

① 消費者庁の移転は、創生本部が示した基準に適合するのか
   「検討に当たっては、危機管理にかかるものでないこと、国会や他省庁との対面業務が必須でないこと、政策の企画・立案実施に効果が期待できるもの、こうしたことを総合的に判断して検討する」(菅義偉官房長官) →(※まち・ひと・しごと創生本部に設置された有識者会議が示した検討の視点、検討状況は別途後述)
  
② 移転しない中央省庁5機関と消費者庁は何が違うのか
   (※石井啓一国交相、高市早苗総務相、林幹雄経済産業相の発言詳細別途後述)
  
③ 「日本の精神文化の軸は京都」文化庁がなぜ京都に移転するのか理由が明確に示されている。なぜ、消費者庁は徳島に移転するのか、その理由は何なのか。政策の企画・立案でデメリットを上回るどんなメリットがあるのか

④ 実証というが、商品テストや研修の一部をお試しで実施できたからといって
  どうして移転の実証ができるというのか。
  テレビ会議も同様、一般の会議で活用できても何ら実証になどならない。
  上記懸念に答えるだけの実証試験の内容、そして、その結果をだれが評価・検証するのか


  参考:徳島県が提案した「通信情報政策研究所」「森林技術総合研修所」「農林水産研修所」「農業・食品産業技術総合研究機構(うち食品総合研究所)」は、今後の検討の対象外とされている。その理由には「省庁の近隣以外の立地では効果・効率の確保・向上が期待しにくい」「本省との連携のため、本省の近傍に所在することが必須」などとされている。これらはテレワークでは難しいと判断されたということか。
   


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