食品表示法の新基準づくり
加工食品の検討始まる 消費者委調査会
「表示責任者」の提案にNO
「製造者」「加工者」定義の整理を
加工食品の新たな表示基準を検討する消費者員会「加工食品表示調査会」の初会合が12月25日、開催された。
消費者庁は一括表示欄に、「表示責任者」「食品工場等」という新たな用語を使う案を提起したが、委員らは「さらに複雑で分かりにくくなる」として認めなかった。食品衛生法とJAS法で異なる「製造者」と「加工者」の定義を整理し直すことや、製造所固有記号の見直しを併せて検討することを求めた。
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消費者庁の提案 「表示責任者」 と「食品工場等」
←分かりやすい表示必要
現在、加工食品の一括表示欄には、JAS法では「表示内容に責任を有する者の氏名と住所」を書くこととされ、「製造者」「販売者」「加工者」「輸入者」のいずれかを記載することが義務付けられている。食品衛生法では、「実際に製造や加工をしている者と所在地」を書かなければならない。
消費者庁は同日、「表示内容に責任を有する者」として、「製造者」「販売者」「加工者」「輸入者」に加え、「表示責任者」と記載しても可とする案を提起。
その理由に、製造者と加工者のどちらにあたるか分かりにくく、表示責任者を判断するためのコストは最終的に商品価格に影響を及ぼすためと説明した。
「実際に製造や加工をしている者」については、「食品工場等」という用語を使う案を示した。理由には、「製造者」「加工者」の用語を使うと、表示責任者の「製造者」「加工者」と区別がつかなくなることを挙げた。
これに対し、立石幸一委員(JA全農 食品品質・表示管理部長)は、「製造者と加工者の概念があいまいなために苦しんでいる実態を見ていない。現場を知らない。コストを消費者が負担するという理由で屋上屋を重ねるのか」「コストとは何か」と質問。03年に「食品の表示に関する共同会議」(厚生労働省と農林水産省が共催)で問題提起されたものの、放置されたままになっている食品衛生法とJAS法の「製造者」と「加工者」の定義の違いを整理し直すことを求めた。
消費者庁は、表示責任者を判断するためのコストについて、「判断できない場合に行政などに確認するコスト」と答えた。
河野康子委員(全国消費者団体連絡会事務局長)は、「製造者と加工者は、主婦から見てよく分からない」と発言。消費者庁の案では選択肢が5つになりさらに複雑になるとして、表示、品質、衛生管理いずれの責任者を記載するのがふさわしいか議論することを求めた。
「表示責任者は表示だけに責任を持つということか意味するものが分かりづらい。諸外国にこういう定義はなく、日本独自のルールを作るべきではない」(鬼武一夫委員、日本生協連安全政策推進部長)、「害はあっても、メリットは感じられない。消費者にとってはシンプルが基本で分かりやすい。国際的な面からも制度をややこしくしてほしくない。製造者と加工者の整理を」(オブザーバー参加の板倉ゆか子氏、食品表示部会委員、消費生活アナリスト)、「製造者と加工者を明確にすべき」(石川直基委員、弁護士)などの意見が多く出され、製造者と加工者の定義を整理し直し、再度議論することになった。
食品衛生法とJAS法の製造者と加工者の定義の違い | ||
食品衛生法 | JAS法 | |
製造 | あるものに工作を加えて、その本質 | その原料として使用したものとは本質的に |
を変化させ、別のものを作り出すこと | 異なる新たなものを作り出すこと | |
加工 | ある物に工作を加える点では製造と | あるものを材料としてその本質は保持させ |
同様であるが、その物の本質を変え | つつ、新しい属性を付加すること | |
ないで形態だけを変化させること | ||
※食品衛生法の一部を改正する法律等 | ※加工食品品質表示基準Q&Aで定義 | |
の施行について(昭和32年9月18日付) | ||
通知で定義 | ||
参考:食衛法のみ加工食品に該当 | 参考:JAS法のみ加工食品に該当 | |
食肉、生かき、切り身またはむき身にした | 塩干・塩蔵魚介類、乾燥した野菜・果実・ | |
生鮮魚介類を凍結させたものまたは生食 | 魚介類・海藻類など | |
のもの |
現在のJAS法に基づく表示
製造業者、販売業者、加工包装業者、輸入業者のうち
「表示内容に責任を有する者の氏名または名称、住所」を記載
欄名に「製造者」「販売者」「加工者」「輸入者」と記載する
現在の食品衛生法に基づく表示
実際に製造や加工等をしている者と所在地を記載
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製造所固有記号合せて検討を
「食品工場等」の表記についても、「分かりにくい。製造所固有記号もまとめて整理してほしい」(河野委員)、「リスク管理責任は製造所、製造責任は製造者。分けて書く方がいい」(石川委員)、「製造所固有記号の整理を踏まえて検討すべき」(鬼武委員)、「製造所固有記号は、消費者から検索できず問題があると感じている。見直すべき時期にきている」(立石委員)などの意見が出た。製造所固有記号の見直しとセットにした検討を求めた。
まずは基本的事項を
この後、加工食品の表示基準の策定方針、加工食品の論点が議論された。
初回の親部会(昨年11月6日)で示された策定方針(原則、表示義務の対象範囲は変更しないなど5項目)に変更はない。立石委員から「義務の対象範囲を変更しないと言い切るのは問題」との意見が引き続き出されている。
鬼武委員は、消費者庁が作成した表示基準統合(現行の58本を統合)のイメージ図は分かりにくいとし、横断的事項を押さえた上で、一部加工食品に個別的事項を補足するイメージ図を自ら作成して提出した。「(消費者庁のイメージ図は)個別品表を何とか盛り込もうというクラクラする内容。横断的なものをまず抑えるのが分かりやすい」(河野委員)。「横断的事項は分かりにくい。ますは基本的事項を決め、基本的事項と細目に」(石川委員)などの意見が出ている。再度新たなイメージ図が消費者庁から提出される。
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「日本の表示では、品質選択できない」
「品質選択できる表示必要」 板倉氏
板倉氏は、個別品質表示基準について、「個別品表に規定されている名称の定義は原則として存置する」とした点に、一貫性のない名称のルールを整理することを要請。具体例として、食用植物油脂は、個別品質表示基準のない一般の加工食品では、「食用」の文字が使用できないが、マーガリンやドレッシングには「食用」と記載できる▽ゆで大根を仕入れてレトルトパウチ食品を作った場合、原材料は「大根」と表示するが、加工食品のおでんの原材料は「ゆで大根」と表示する▽「デンプン」は、食品衛生法上では、片仮名、平仮名何を使ってもよいが、JAS法では、「でん」は平仮名、「粉」は漢字で書くこととされている―などを挙げ、ミスを招かない表示方法の検討を求めた。
鬼武委員は、農林物資規格調査会が13年3月に、調理冷凍食品のフライの衣の率(冷凍カツレツ55%以下、食用油脂で揚げたもの65%以下等)などを定めたJAS規格(日本農林規格)の廃止を決めたことに関連し、「整理できるものは整理してもらいたい」と要請した。
板倉氏は、「そもそも、全体の半分が衣でも衣の率を書かずに販売できる」緩いルールが問題とし、今の日本の表示では「消費者が品質の良いものを選ぶことはできない」と指摘した。
今の調理冷凍食品の品質表示基準では、冷凍カツレツは衣の率が55%以下(食物油脂で揚げたものは65%以下)、えびフライは衣の率が50%以下えび重量6グラム以下の場合は60%以下(同65%以下)、コロッケ30%以下(同40%以下)冷凍シュウマイは皮の率が25%以下、冷凍ギョウザ45%以下、冷凍春巻50%以下(食用油脂で揚げたものは60%以下)の場合、衣の率や皮の率を表示しなくてもよいとされている。
農林物資規格調査会は13年3月22日、調理冷凍食品のJAS規格(日本農林規格)は、「規格が利用されておらず、利用率等の改善が見込めない」として廃止を決定。13年11月12日に官報で告示され、同年12月12日に施行された。
同調査会が調査した品質の実態は、JAS格付品の流通はなく、非JAS品187件を調査した結果、「衣の率」で魚フライ9件、えびフライ11件、いかフライ3件、かきフライ4件、コロッケ11件、「皮の率」でシュウマイ1件、ギョウザ1件などがJAS規格の基準値から外れていたとしている。
例えば、えびフライのJAS規格は、品質表示基準で表示対象外とされる基準と同様の「衣率50%以下、えび重量6グラム以下の場合60%以下、食用油脂で揚げた場合65%以下」、コロッケは「衣率30%以下、食用油脂で揚げた場合40%以下」などだった。13年1月から約1カ月意見募集がされたが、4人から「廃止するのではなく周知や浸透を図ることが大事ではないか」「廃止ではなく適正な内容に改正し存続させるべき」などの意見が寄せられている。
板倉氏は「海外に比べて日本の表示を見ると、主原料のパーセント表示もなく、水増しをされ水の量が多い場合も水の原材料表示はない」とも指摘。「消費者が安全性のみではなく品質面から商品を選択できる表示」の必要性を強く訴えた。
調理冷凍食品の品質表示基準
◇冷凍魚フライ、冷凍えびフライ、冷凍いかフライ、冷凍かきフライ、冷凍コロッケ、冷凍カツレツは、製造者等が容器・包装に、衣の率を表示する。ただ し以下の場合はこの限りでない。
●冷凍魚フライ 50%以下(食用油脂で揚げたもの60%以下)
●冷凍えびフライ 50%以下(同65%以下)
※食用油脂で揚げたもの以外のもので頭胸部、甲殻を除去し、また は尾扇を除去したえびの重量が6g以下のものは60%以下
●冷凍いかフライ 55%以下(同60%以下)
●冷凍かきフライ 50%以下(同60%以下)
●冷凍コロッケ 30%以下(同40%以下)
●冷凍カツレツ 55%以下(同65%以下)
◇冷凍シュウマイ、冷凍ギョウザ、冷凍春巻は、製造業者等がその容器・包装に皮の率を表示する。以下の場合はこの限りでない。
●冷凍シュウマイ 25%以下
●冷凍ギョウザ 45%以下、
●冷凍春巻 50%以下(食用油脂で揚げたもの60%以下)
昨年6月28日に公布され、2年以内に施行しなければならない「食品表示法」の新たな表示基準の検討が始まっている。消費者委員会食品表示部会の下に①栄養表示②生鮮・業務用食品の表示③加工食品の表示‐に関する3つの調査会が設置され、加工食品表示調査会の1回目の検討が同日行われた。座長は、宇理須厚雄・藤田保健衛生大学医学部教授。食品表示部会16人の委員のうち9人で組織されている。座長代理には、安達玲子・国立医薬品食品衛生研究所代謝生化学部第三室長が指名された。
次回は1月23日14時から。栄養表示調査会の2回目の検討が22日10時から行われる。生鮮食品・業務用食品表示調査会の初会合は24日10時から開催される。
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