2015年9月28日月曜日

消費者契約法専門調査会中間報告の内容一覧(専門的で分かりにくいけど・・消費者契約法)覧)

消費者契約法の見直し

首相から内閣府消費者委員会に検討が諮問されたのは14年8月

諮問内容は
「施行後の消費者契約に係る苦情相談の処理例及び裁判例等の情報の蓄積を踏まえ、情報通信技術の発達や高齢化の進展を始めとした社会経済状況の変化への対応等の観点から、契約締結過程および契約条項の内容に係る規律等の在り方」の検討

10月、消費者委員会の下に消費者契約法専門調査会(座長、山本敬三・京都大学大学院法学研究科教授、14人)を設置。

11月から検討を開始、17回の検討会を経て15年8月7日、中間報告をまとめた。

衆参両院の付帯決議には、施行後(2001年4月1日)5年をメドに「見直しを含めた適切な措置」を講じることが盛り込まれていたが、14年間改正されないままだ。

消費者団体が消費者に代わって不当な契約条項を差し止める訴訟ができる消費者団体訴訟制度創設のための改正は2006年に行われている。

性急な検討という批判は当たらない
事業者の委員が少ないという批判も当たらない

07年に国民生活審議会消費者契約法評価検討委員会、08年に内閣府不当条項研究会が報告をまとめたがその後の検討は進まなかった。

消費者庁・消費者委員会創設後、13年に消費者委員会の調査作業チームが改正に向けた論点を整理。14年には、消費者庁が収集した750件以上の裁判例から見直しの検討に必要な164件を抽出、相談事例233件も併せて抽出し、課題を整理していた。

消費者契約法専門調査会は、学識経験者7人(大学院法学研究科教授4人、同法学政治学研究科教授1人、同経済学研究科教授1人、大学法学部准教授1人)、事業者団体3人、消費者団体3人、弁護士1人の計14人で組織されている。

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中間報告は、ほとんどの論点が継続検討

正式名称は
消費者契約法専門調査会「中間とりまとめ」


1.「消費者」の概念 基本的には法の解釈・適用で対処
         法を改正して消費者の集まりにすぎない団体などへの拡張も考えられる
  明確な基準が設定できるかどうかを含めて引き続き検討
2.事業者の情報提供努力義務 義務違反への損害賠償は、慎重に検討
まずは、一定の事項の不告知による意思表示の取り消しの規律を検討した上で、必要に応じ、さらに情報提供義務違反の効果を損害賠償と定める規定を設けるべきがどうか検討することが必要
3.契約条項の平易明確化 条項使用者不利の原則(契約条項の解釈が複数ある場合、事業者に不利に解釈)で検討
4.消費者の努力義務 削除しないことが適当
     (提供情報の活用、内容の理解)
契約締結過程
5.勧誘要件のあり方

広告等を一般的に勧誘に当たらないとするのではなく、そのうち事業者が、「当該事業者との間で特定の取引を誘引する目的をもってする行為をしたと客観的に判断される場合、そこに重要事項の不実告知等があり、これにより消費者が誤認したときは、意思表示を取り消すことが考えられるが、適用対象となる行為の範囲については、事業者に与える影響等も踏まえ、引き続き検討
6.断定的判断の提供
  ① 「必ず痩せる」
  ② 「必ず成績が上がる」
  ③ 「運勢が良くなる」

・①や②のような客観的効果・効能が問題になる場合は、不実告知で捉えられる場合もある
・③のような客観的でない効果・効能が問題になる場合は、消費者の心理状態を利用して不必要な契約をさせた場合が多いことから、「つけ込み型勧誘」で対応できる規定を検討することが適当                        その上で、なお財産上の利得に影響しない事項や「将来における変動」が問題とならない事項も対象とする必要性があると考えられる場合には、その方策を検討すべき
その際には、立法的は措置のほか、現行法の文言を維持した上で、財産上の利得への影響に限定されないことを逐条解説等に適切に記載することも考えられる
7.不利益事実不告知 不実告知型と不告知型に類型化して(←分けて)検討するのが適当
  ①不実告知型 故意要件を削除するのが適当
  ただし書きは、引き続き検討
  ②不告知型 不告知が許されない範囲を画した上で、先行要件削除が考えられる
  この場合、重要事項の概念は拡張しないのが適当
  不告知が許されない事実の範囲について、引き続き事例を踏まえ検討
8.重要事項 「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」
を追加列挙することで、事業者が消費者に対して契約を締結する必要があると誤認させるような不実告知を行う場合も契約の取り消しを可能にすることが適当
消費者に有利であることを裏付ける事情、消費者に生じる危険に関する事項を列挙するほか、列挙事由を例示として位置付けることも考えられ、引き続き検討
9.不当勧誘行為その他の類型  
 (1)困惑類型の追加  
  ①執ような電話勧誘 特商法の検討を注視しつつ、必要に応じ検討
  ② 威迫による勧誘 適用範囲を明確にしつつ、取り消し事由として規定することが適当
 (2)不招請勧誘 特商法の検討を注視しつつ、必要に応じ検討
 (3)判断力不足につけ込む勧誘 必要性に異論なし
事例を踏まえて、引き続き検討
10.第三者による不当勧誘  
  ①劇場型勧誘など 事業者が第三者の不当勧誘行為により、消費者が誤認・困惑し意思表示をしていることを知っていた場合に、取消権を認めることを引き続き検討
知ることができた場合にも取消権を認めるべきか否かについても検討
  ②媒介 勧誘の委託が、該当する可能性があることを適切に逐条解説等に記載
11.取消権の行使期間 引き続き事例を調査した上で検討
(追認から6カ月、契約から5年)
12.法定追認の特則 消費者契約で特に問題と考えられる民法125条1号「全部または一部の履行」のみ民法の追認規定を適用しないこととするか、取消権があることを知った後でなければ法定追認の効力が生じないこととするか、当否も含め引き続き検討
13.取り消しの効果 特商法クーリング・オフの清算規定を参考に消費者契約一般にそのような規律を設ける、消費者が商品を費消して利益を享受した後も、意思表示を取り消して代金を求めることの当否について、慎重に検討                  少なくとも、新民法施行後も返還義務の範囲を引き続き「現存利益の限度」とするためには、特則を設ける必要が考えられ、引き続き検討
←新民法で変更(有償行為取り消しに原状回復義務)
契約条項  
14.事業者の損賠賠償責任を免除する条項  
 (1)人身損害の軽過失一部免除 人身損害について、当該消費者契約の目的・種類・性質・内容その他の事情や免責の内容・態様・程度等の要素を考慮して無効とするほか、生命に生じた損害については一律に一部免除条項を無効にすることが考えられ、不当条項類型の追加と併せ引き続き検討
 (2)「民法の規定による」要件 民法に限定されず、削除することが適当
15.損害賠償の予定・違約金条項  
 (1)「解除に伴う」要件 契約解除に伴わない損害賠償額の予定条項についても実質的に契約が終了する場合には規律の対象となるよう規定を見直すことを検討
 (2)「平均的な損害の額」の立証責任 同種事業者の平均的な損害の額を超える部分を当該事業者の平均的な損害の額を超える部分と推定する規定を含め、検討
16.消費者の利益を一方的に害する条項  
 (1)前段要件 当該条項がない場合と比べて消費者の権利を制限し、または義務を加重するものかどうか判断する規定が適当。具体的な規定を引き続き検討
 (2)後段要件 特に見直さないのが適当
17.不当条項の類型の追加  
 (1)消費者の解除権・契約権を放棄 させ・制限する条項 ①放棄させる条項は、実務への影響などを勘案しつつ、これを例外なく無効とする規定を設けることについて引き続き検討
②制限する条項は、どのような場合に無効とする
か、実務への影響などを勘案しつつ、引き続き検討
 (2)事業者の解除権・解約権の要件を緩和する条項 どのような場合に無効とするか、実務への影響などを勘案しつつ、引き続き検討
 (3)消費者の意思表示があったと擬制する(みなす)条項 どのような場合に無効とするか、実務への影響などを勘案しつつ、引き続き検討
 (4)契約文言の解釈権限を事業者にのみ与える条項等 ① 解釈権限付与条項は、②と区別を明確にすることができるかどうか否かを踏まえた上で、実務への影響などを勘案しつつ、解釈権限付与条項は例外なく無効とする規定を設けることについて、引き続き検討
② 決定権限付与条項は、実務上の必要性
や実務への影響などを勘案しつつ、一定の場合に無効とする規定を設けることを含め、引き続き検討
 (5)サルベージ条項(本来無効となる条項に「法律で許容される範囲で一切責任追わない」など規定) 事例を調査した上で、引き続き検討
その他の論点
18.条項使用者不利の原則      (契約条項の解釈が複数ある場合、事業者に不利に解釈) 定型約款の条項に規律を設けることが考えられる                        事業者が一方的に作成した条項や個別交渉を経なかった条項についても適用すべきとの意見もあったことを踏まえ、引き続き検討
19. 抗弁の接続、複数契約の無効・取り消し・解約 慎重に検討する必要あり
20.継続的契約の任意解除権 慎重に検討する必要あり

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