ジャパンライフは消費者庁の措置命令に従わず、債務超過であることを解約のおそれがある顧客に通知しないよう、わざと間違った住所に送ったり、会社に協力的な活動者にまとめて送るよう本社が指示していたことが、元社員の証言で明らかになった。高齢者の顧客が読めないように、わざと一番薄いモードでコピーをして送付し、消費者庁の指摘で再度印刷し直して再発送していたことも確認できた。解約を阻止するよう本社が求め、解約阻止額を各店舗の入金実績として競わせ、返金阻止額の1%の報奨金を出す社内規定も整備されていた。
本社が指示、間違った住所に送付
読めないよう薄く印刷
消費者庁は同社に対し4度の業務停止命令を出しているが、2017年3月16日に2度目の業務停止命令を出した際に、預託法に基づき「レンタルしているはずの一部商品が大幅に不足しているにもかかわらず、故意に告げていなかった」「2014年度の賃借対照表で負債額を過少に記載していた」違反を認定。①違反認定の内容をすべての預託者に通知し、その結果を4月17日までに消費者庁長官に文書で報告する②公認会計士による監査を受けその結果を5月1日までに消費者庁長官に文書で報告する③監査結果を預託者全員に速やかに書面で通知し、通知した結果を5月31日までに報告する―などの措置命令を出していた。
これに対し、ジャパンライフ3月31日付で送付したのは、消費者庁が認定した違反事実が誤りであるかのような措置命令とは真逆の内容の文書。5月13日付で送付されたのは、「3月度は初の月間売上30億円達成できました」「4月度はさらに売り上げを更新」などと説明する驚くべき内容の文書だった。一覧表に赤字で「3月度売上実績30億558万円」「4月度35億5849万円」などと記載されていた。
その後、消費者庁の指導で、ようやく8月28日付で「2015年度末時点の純資産額が約266億円の赤字」であること、9月11日付で「2016年度末時点の純資産額が約338億円の赤字」であることが通知されるが、この通知を顧客に届かないよう本社が指示していたことが分かった。
これらの通知が届くと解約のおそれがある、不安を感じるおそれがある顧客の住所を、社員の住所など別の住所に差し替えて、戻ってくるようにした。さらに、会社に協力的な活動者のところに、解約のおそれがある顧客の通知も何通かまとめて送って、直接本人に届かないようにした。「消費者庁にばれないよう、少人数に分けて活動者に送った」と元社員は証言する。
通知の内容が読めないよう、コピー機の一番薄いモードで通知文書をコピーして発送したこともあった。「顧客から『読めない』『全く見えない』などのクレームが入り、消費者庁からも突っ込まれ、結局再印刷して再発送し、2度手間だった」と元社員は振り返った。
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解約阻止を本社が指示
金券で解約思いとどまらせる
債務超過の通知が顧客に届き、解約希望が出始めると、解約を阻止するよう会社から指示が出ていたことも、社員の証言で明らかになった。1カ月解約を遅らせた場合に、100万円につき1万円の金券(ジャパンライフの商品を購入できる)を出した。1000万円の解約を1カ月ずらすと顧客は10万円分の金券がもらえる仕組みだ。社員に対しても、返金を取り下げるとその額の1%の報奨金がでる社内規定もあった。
社員に返金阻止額1%の報奨金
社内規定で明記
「勝手に報道しているだけで、ジャパンライフは悪くない」「今まで問題なくやってきたから大丈夫」-。何度も顧客宅に足を運び、こう説得した。返金を阻止すれば、その返金阻止額が店舗の入金実績になった。報奨金も出る。社内規定の名称は、「返金取下げ継続奨励金支給規定」。返金取り下げに協力したチームリーダーやチームメンバーに、返金を取り下げた額の1%を報酬として支払われる。3000万円をチーム5人が協力して返金を取り下げさせた場合は、全員に6万円ずつ計30万円が支給されることが明記されていた。
「内心、センターに駆け込んでほしい」
弁護士、センター介入で解約できた
しかし、「毎日ストレスを感じながらも、消費生活センターに駆け込んでほしいと願っていた」とも元社員は本音をあかす。消費生活センターがあっせんに入る、あるいは、弁護士に解約を依頼した場合は、すべて担当が本社に変わり店舗では対応できなくなる。その場合は、ほとんど解約に応じていたのではないかと元社員は話した。
2017年12月15日、消費者庁が4回目の業務停止命令を出したときの会見で、「返金取下げ継続奨励金支給規定」の存在が明らかにされた。日付は7月22日付、9月26日付。2017年11月17日に3回目の業務停止命令を出したときに迷惑解除妨害の違反を認定しているが、本来はこのときに公表すべき資料だった。
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天下りで対応後手
消費者庁の責任大きい
2回目(2017年3月16日)の業務停止命令の違反認定は、本来は1回目(2016年12月16日)に行なわれてしかるべき内容だ。そもそも、消費者庁は粉飾決裁だと自らの処分の中で指摘しておきながら、このような事業者に対し、措置命令で、公認会計士等による監査を受け報告を求めたこと自体に問題があった。粉飾決済を消費者庁自ら違反認定し、現物まがい商法でレンタルオーナーとレンタルユーザーの数が大幅に見合っていないことを公表して分かりやすく周知していれば、これほど被害を拡大させることはなかったはずだ。
2015年9月10日の立入検査時に消費者庁取引対策課に在籍していた公認会計士が2016年7月に契約の任期が切れて退職しているが、せめて、この間に厳正な行政処分を行うべきだった。消費者庁取引対策課元課長補佐や複数の大物官僚OBが同社の顧問に天下ったことで、この事案への立入検査自体が遅れ、それ以降の行政処分も遅れた可能性を本紙は指摘し続けてきた。安愚楽牧場の破たんを受けて、政省令を改正した直後からしっかり取り組み、厳正処分、業務停止命令違反による刑事告発を早急に行うべき案件だった。
行政処分は時期、内容、周知が適切であって初めて意味をなすが、消費者庁は帳尻を合わせるかのような後手後手の対応に終始してきた。ここまで被害を拡大させた消費者庁の責任は大きい。
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消費者庁の行政指導、機能しているのか
「的はずれな消費者庁の業務停止命令」
⇒指導後「中部弁護団の的なずれな間違った発表」に
消費者庁は1月12日付で、ジャパンライフに対し行政処分の内容等について正確な説明を行うよう指導したことを明らかにしたが、その後の説明会で配布された山口会長のお詫び文は、「『たび重なる的はずれな消費者庁の業務停止命令』に本当に苦しみました」としていた部分が『たび重なる中部弁護団の的はずれの当該業務に対する間違った発表』に変更されたにすぎなかった。
1月17日の消費者庁長官会見で、岡村和美長官は12日に①行政処分の内容、認定された会社の商品の保有状況や財務状況等に関する事実について正確な説明を行うこと②顧客からの解約返金請求について法令に従い適切に対応すること―を指導したことを明らかにした。
16日、17日の説明会で配布された文章では、消費者庁の表記は「消費者庁からのたび重なる嫌がらせ」も含めて削除されたが、「たび重なる業務停止命令や報道など、風評被害がいろいろあった」などの表現もそのまま残っていた。説明の中でも、一部社員が陥れたために事実上倒産に追い込まれたという内容はなくなったものの、消費者庁の職員が天下ってからおかしくなった、分かっているマスコミはいい商品で顧客が満足していることを分かっているなど、これまでと同様の説明を繰り返していたという。
1月17日の長官会見で同様の文書が配布されていることが指摘され、1月20日以降の説明会からこれらの表記が削除されたお詫び文に修正されている。
消費者庁の行政処分や指導が機能していない。説明会では、これまで新しい会社を作るとしてきたが、新たな会社の登記は行わず、販売組合として加盟店が商品を販売する内容に変更されてきている。
同社は、これまでも、営業を継続したり、顧客に虚偽の通知をするなどの命令に反する行為を繰り返してきた。法律に基づき罰則もある行政処分ですら機能しているとはいえず、任意の要請である行政指導が機能するのか。本紙は、会計監査など同社任せにする消費者庁の姿勢が事態の泥沼化を招いていると指摘してきたが、事実上倒産となった今でも、泥沼化は続いている。この事態に、消費者庁が次に打つ手はあるのか。