2度の不渡りを出して銀行取引停止処分を受けているジャパンライフ(千代田区、山口隆祥会長)は、年明けから全国各地で顧客や加盟店を集めて説明会を開催している。消費者庁の的外れの業務停止命令と思い込みの報道で資金繰りができずにこのような事態に陥ったが、「倒産はしていない」と説明した。「破産に追い込まれたら、1円も戻らない。弁護団に依頼したら、皆さんのためにやった結果しかたがないで手じまいにされる。消費者団体が何かしてくれるのか」と話し、別会社を設立して磁気治療器を格安で販売してその半分を返金し、同社は製造メーカーに徹する方針を示した。腕輪タイプ8000本、ネックレスタイプ1000本の在庫があるとし、販売価格の7割から8割で仕入れて販売する人を募っている。本社を訪ねて取材を申し入れているが取材に応じず、在庫商品の存在や製品が製造されているかどうか確認できない。被害の連鎖を生むことにならないのか。全額返金されない状況で手元にある商品を返還することや、新たにお金を出すことは絶対に避けてほしい。先物取引被害全国研究会は1月19日を中心に、全国一斉ジャパンライフ110番を実施する。
銀行取引停止処分のジャパンライフ
別会社で磁気治療器販売
説明会は1月6日の盛岡店を皮切りに22日まで全国18店舗で行われる。8日に浦安店で行われた説明会では、同社の幹部と、加盟店を中心に設立される新会社「KEN-SHIN」の社長が、会社の状況や経緯、新会社の事業・返済計画などを説明した。
まず、山口会長の謝罪文が朗読された。11月までは22億円から23億円の入金があった」「消費者庁と報道で、予定の入金が一気に無くなり、このような事態になった」と釈明。「人生すべてをかけて、必ず返済する」としている。
少なくとも「度重なる消費者庁の的外れの業務停止命令と報道が、活動者も社員も本当に苦しめた」「消費者庁からの度重なる嫌がらせ、弁護団の報道など、風評被害がいろいろあったが、
「的外れの業務停止命令と報道」
「破産したら1円も戻らない」
ジャパンライフの幹部は、会社の状況について「倒産はしていない」「会社としては倒産ではない」と説明。①一部本社の社員によって間違った連絡がされ、倒産したという騒動が起きてしまった②思い込みの報道でこうなった③不渡りは、社会保険の分割の支払いを交渉していた担当者が仕事を放棄したためで、今回の事件とは関係ない―などを理由に挙げた。
新会社の社長は、「破産に追い込まれたら、我々には1円も戻ってこない。弁護士に確認すると、破産したら皆さんには0.01%も戻らないと話していた」「過激な報道で、2400億円、1800億円などの数字が出ているが、会社の説明が正しい」「会長は本社にいる」と説明した。
顧客「老後の資金すべて入れた」
「なんで元本を大切にしなかったのか」
顧客からは「幹部が社員をだまし、社員が私たちをだましたのではないか。一時的に私たちを安心させるために話しているのではないか。多少なりとも返金されなければ、まったく信用できない」「老後の資金のすべてを入れた。税金がかかると言われ保険も解約して契約をし、活動手当と年金で回っていた。預けている金額の大きさに初めて気づいた。なんで元本を大切にしなかったのかと。預金をしている感覚だったが、商品を買わせていることが分かっていない。ジャパンライフの契約は複雑で分からない」などの意見が噴出した。
これに対し、会社側は「意図的に仕組んだ人がいる。関連している社員は相応の罰を受けていただくことになる。こういうことが起きて初めて被害者が出た。今回で悪になった」「我々も何かあれば生活保護。現実的には、生きるの死ぬのという話になる。消費者団体に頼んでだれか何かしてくれるか。弁護団の思惑通り進めたら、破産して皆さんのためにやりましたが、結果しようがないで手じまいにされて終わる。それでは困るからこの会議をしている。今さら、契約が複雑という話をされても、話にならない」と反論。再建計画の説明に入った。
新会社、3~5年で完済?
3年の返済目標280億円
新会社は、ジャパンライフの加盟店が中心になって販売会社を作る。加盟店は115社になり、今後も増やす。これまで400万円で販売してきた磁気ベルトを70万円、200万円で磁気ベストを40万円、100万円の磁気ネックレスは30万円などの価格で、現金で販売する。「最低限の運営をし、販売コストを目いっぱい削減することでここまで価格を下げられる」と説明した。
加盟店の下に5から10人のセンター長を置く。年の売上目標は約80億円(加盟店数100社、センター数500人、活動者数2500人)で、約40億円を返金に当てるとしている。2019年は売上目標は約180億円(加盟店数150社、センター数750人、活動者数3750人)で、返金目標100億円。2020年が売上目標約240億円(加盟店数200社、センター数1000人、活動者数5000人)で、返金目標は140億円としている。「3から5年で完済する」という。
在庫が腕輪タイプのエレックスが8000本(20万円のもの10万円、40万円のものを15万円で販売)、磁気ネックレス1000本(元の販売価格では10億円分と説明)あると説明。仕入れ値は、加盟店は販売価格の7割、センターは8割として、販売者を募った。
説明会に参加した顧客らは「年末の説明では倒産したが破産にもっていかないようにしようと説明され、今回は倒産していないという。信用できない」「会社のいうことを鵜呑みにしてしまった。欲が深いからこうなった。」「貯金がほとんどない。欲をかいたのだと思うが、希望があれば信じたい」「倒産でなくてよかった」「販売をやるしかない」など、さまざまな受け止めをしているようだった。
2016年度末の契約残高1843億円
2017年3月期総負債額2405億円
消費者庁の指導で同社が9月11日付けで顧客に通知した文書では、2016年度末時点の純資産は約338億円の赤字、契約残高は1843億円、預託者の数は2017年7月末時点で6855人としていた。この根拠になる数字は、公認会計士が同社に報告した「合意手続報告書」(仕訳の根拠を示すことができない仕訳を取り消し修正された報告書)に記載され、それによると、2017年3月期の負債総額は2405億円に上る。
返済計画によると3年間の返済目標は280億円。3から5年で返済しているとしているが数字があまりにかけ離れている。
今後、商品を格安で現金販売するとしているが、在庫について、腕輪タイプの磁気治療器エレックス1000本を加盟店に配布したことは確認できたが、残りの商品の存在は確認できていない。新たに商品を製造できるのか、商品の原価や利益率、販売価格の6%の見返りがない商品の販売見通し、本当に顧客の返金に回されるのか、この間に顧客の返金に当てるべき資産が散逸されていないのかなど、不明確な点ばかりだ。
消費者庁 行政指導で対応
正確な説明、適切な返金を
1月11日、消費者庁の岡村和美長官はこの問題について、「必ずしも事実ではない説明を行っているという情報に接している。事実だとすれば甚だ遺憾」と述べ、同社と連絡がつき次第、①顧客に消費者庁の同社に対する行政処分の内容、認定された事実に基づき正確な説明を行うこと②顧客からの解約や返金請求に対し法令に従い適切に対応することを改めて指導する―と述べた。「消費者庁の行政処分は正しい事実認定、法令適用に基づき適切に行われたこと」を強調。消費者に正確な事実関係を把握し、不明な点があれば消費生活センターに問い合わせること求めた。
これまでに過去4回の業務停止命令が出されても、同社は顧客に的外れの行政処分で、すでに行っていない業務のものと説明し、それを信じて多くの人が契約を続けてきた。この姿勢は、現在各地で行われている説明会でも変わっていない。
これまでの行政処分でも顧客への通知などで指示を出してきたが、同社は命令に反する内容の通知を繰り返してきた。また、本紙は、会計監査についてなぜ事業者任せにするのか、実効性のない業務停止命令を繰り返すばかりでなくなぜ業務停止命令違反として厳格な対応を取らないのか、消費者庁の後手後手の対応のまずさを指摘してきた。
このような消費者庁の消極的な姿勢が、今日まで事態を泥沼化させている要因であることは疑いようがない。消費者庁は指導するというが、その効果はどこまで期待できるのか疑問がある。
「返金措置で指示処分を」
石戸谷豊・神奈川弁護団長
昨年12月から施行された改正特定商取引法では、返金措置などを含め「消費者利益の保護のために必要な措置を指示できる」ことが明確にされた。同法改正の検討に消費者委員会委員としてかかわったジャパンライフ被害対策神奈川弁護団の石戸谷豊団長は、「返金請求への対応や顧客に支払うべき資産の勝手な処分を禁じる指示処分が出せる。違反の罰則も引き上げられており、悪質な違反があれば速やかに警察が動くことができる。改正法の趣旨を踏まえ積極的に活用すべき」と指摘している。
「なぜ、刑事告発しない」
大門実紀史・参議院議員(共産)
ジャパンライフ問題を追及してきた共産党参議院議員の大門実紀史氏は「消費者庁の的外れの業務停止命令、度重なるいやがらせなどといわれ、さらに引き延ばしをしている状況で、なぜ刑事告発をしないのか」と話している。
◇ ◇ ◇
資産の散逸防止は破産が有効
向来俊彦・先物取引被害全国研究会事務局長の話
ジャパンライフの資産の散逸を防ぐためには、早期に破産を申し立て、破産管財人を選任して資産を管理してもらうことがベストであると考える。破産管財人が選任されれば、資産の散逸を防止できるほか、ジャパンライフでは大きな赤字を隠し黒字と偽って営業を続けてきていたので、払いすぎた税金の還付申請をすることも考えられる。なにより透明で公平な処理が期待できる。また、破産申立てと並行して、役員や従業員らに対して責任追及することも考えられる。
すでにジャパンライフは、消費者庁から4度にわたって行政処分を受け、大幅な債務超過が明らかにされ、2度の不渡りを出している。契約者から集めたお金を使い果たしていると考えられ、破産してもほとんどお金が返ってこないというのは、残念ながらそのとおりであると思われる。しかし、このまま別会社での営業を継続させれば、これまでの経緯から、被害の連鎖を生む可能性が大きい。
ジャパンライフの説明が間違っていたこと、法律に違反していることは、消費者庁から何度も指摘されているのであって、これ以上新たな被害を生まないようにすることが肝要である。
日本消費経済新聞1月15日号から
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