第23回参議院選挙が7月4日、公示され、21日の投開票まで1週間を切った。
参院選マニフェストに、各党はどのような消費者政策を盛り込んでいるのかを確認しておこう。
自民党
司令塔、監視、センターオブセンター機能それぞれ強化
一般健康食品の機能性表示を追加
「日本を、取り戻す」と銘打った自民党の「参議院選選挙公約2013」には、「消費者」、「生活者」という言葉は出てこない。
J‐ファイル2013総合政策集の中で、安心を取り戻す施策の一つとして「消費者保護・育成施策の充実」が掲げられている。
●司令塔(消費者庁)、監視機能(消費者委員会)、センターオブセンター(国民生活センタ ー)、それぞれの機能を充実
●少額多数の被害者の救済策として「集団的被害者救済制度」を整備
●食の安全・安心を図るため、食品表示の一元化
●一般健康食品について機能性表示を可能とする仕組みを整備
●「消費者教育」を推進
●高等学校で、社会参加や消費者教育等の推進を図るため、新科目「公共」を設置
●上限金利規制、総量規制といった小口金融市場に対する規制を適正化 など。
・民主党政権下で、国民生活センターの廃止を含めた検討、直接相談と研修施設の廃止が10年 12月、閣議決定された。
その年の4月に行われた行政刷新会議の公開の議論とは、全く異なる内容だった。消費者庁の幹部と国セン幹部のみで組織するタスクフォースが、消費者庁への移行を決定した。
消費者委員会から支障が出るのではないかと懸念する意見、消費者団体からの痛烈な批判と反対を受け、当時の細野豪志・消費者相は検証会議の設置を決断。
検証会議は中間報告をまとめる段階で、最後まで紛糾し、事務局が作った報告案を書き換えて、国への移行が現実的としつつ、政府から独立した法人を検討の選択肢に残した。
この時の山岡賢次・消費者相は、同センターを国への移行することを決断、閣議決定した。のちの国会で公明党がこの問題を追求し、報告案が変更されたことが山岡消費者相に伝えられていなかったことが判明している。
新たな検討会議で、国への移行を前提とした検討がなされ、「特別の機関」として消費者庁に移行することとされた。検証会議のメンバーは一部検討会の委員に選任されたが、反対した委員は選ばれなかった。なぜ、検証会議を途中で閉じ、新たな検討会議で検討する必要があったのか。
(消費者庁創設後の政策、消費者庁関連3法の付則、付帯決議を検証する上でこの問題は肝になる。とても書き切れないので、詳細は別に書き直しますね)
自民党は政権交代後、「国民生活センターの消費者庁への移行は13年度は行わない」こととし、大臣自らが意見交換会を主催し、見直しを行っている。
以下の意見から、問題の根深さが伝わるはずだ。一部紹介する。
「自由な意見表明を遮断するための道具として閣議決定が使われた。足かせになった」
「検証会議では独法改革が絶対で、国民生活センターが縮小されてしまうと説明された。仕方なく国への移行が現実的と判断した委員もいたのではないか」
「消費者庁は政府の中で各省と調整が求められ、消費者目線に達することはできない」
「消費者庁は、この議論に注力し人的資源を割き、消費者被害防止対策が遅れたのではないか」
「この問題で消費者庁と消費者委員会の意見が異なりあつれきを生んだ。教訓として生かされず、対立しないよう行政内部で教訓化された疑いがある」
・食品表示では、自民党は「一元化を進める」ことに、「一般健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備」が追加している。
政府の規制改革実施計画に沿って、企業の責任で機能性を表示できる仕組みを14年度に実施することとされている。個々の企業のデータでは科学的評価は不十分ではないか。消費者庁が認定する特保の仕組みとの併用で分かりにくくなるなどの意見書が消費者団体から出ている。「さあ、安全を取り戻そう」のスローガンにふさわしい施策といえるかが問われる。
・消費者政策の最重点課題である、地方消費者行政への記述がない。骨太の方針には以下の記載がある。
参考
6月14日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針、「骨太の方針」から抜粋
消費者の安全・安心の確保は消費の拡大と成熟した社会の形成にとって大前提となる。地方における消費者教育や消費者が安心して相談できる環境の整備等を推進することにより、消費者の安全・安心を確保する。
高齢者の消費者被害が増加の一途をたどっている。規制改革を進める上でも、車の両輪として消費者政策は位置付けられるべきもの。本来は重点施策を盛り込んだ公約2013の中に消費者政策を記述をしていただきたいものだ。
公明党
地方活性化基金の「恒久化」
加工食品原産地表示の充実
公明党も、参院選重点施策の中に消費者政策は盛り込まれていない。政策集の中で、「生活者が主役の消費者行政」のための施策を掲げた。
●『地方消費者行政活性化基金』の恒久化と相談員の待遇改善
●不当な収益の散逸やはく奪から被害者を救済する制度の実現
●加工食品の原材料原産地表示や遺伝子組み換え食品の表示厳格化、食物アレルギーのアレルゲンとなる原材料含有表示など、できるだけ消費者に分かりやすい食品表示の適正化
●食品の不正・虚偽表示対策を強化、加工食品等の原産地表示の充実
●食品へのトレーサビリティーシステム(生産流通情報把握システム)の導入を促進
●消費者教育を推進、学校教育などあらゆる機会の活用や消費者教育を担う人材育成への財政措置を含めた支援策などを消費者教育推進法に基づいて推進
●模造品の取り引きの防止に関する協定(ACTA)の早期発効を目指す など
民主党
地方へ継続的な財源確保
相談員雇止め抑止へ法整備
民主党は、「参議院選挙重点政策」の中で「食の安全・消費者」の項目を設け、施策を示している。
●地方消費者行政の強化、消費生活相談員の機能充実・強化
●食品トレーサビリティの促進、原料原産地表示の拡大、食品添加物、遺伝子組み換え 食品の表示、アレルギー表示の推進
●「集団的消費者被害回復のための訴訟制度」を早期に整備。悪徳業者が違法に集めた 財産を没収する制度を創設
●消費者教育を学校、職場、地域などで推進する
政策集の中で
●地方消費者行政を継続的に下支えする財源の確保
●専門性の高い消費生活相談員の処遇改善と雇い止めを抑止する為の法整備等の検討 など
共産党
集団的被害回復訴訟制度 使いやすく改善
国セン直接相談復活、PL法、特商法、契約法改正
共産党は、「2013年参院選挙政策」にもっとも多くの消費者政策を盛り込んでいる。
●地方消費者行政活性化基金の継続・拡充、相談員処遇改善への活用
●食品表示の抜本改定による消費者のための表示制度実現
●行政として食品の安全検査を徹底して行う
●輸入食品の検査体制について、食品衛生法を強化、改定する
●消費者庁、消費者委員会、国民生活センターの3つの機関の役割発揮を
国民生活センターは、直接相談の復活、事業の「関連性」、各省庁からの「独立性」、事故や被害にたいする「迅速性」の担保が必要。人員体制や組織体制の整備、予算の増額がどうしても必要
●集団的消費者被害回復訴訟制度の創設
消費者団体が使いやすい制度に改善する
適格消費者団体に、行政が入手した情報の提供や財政的援助を強化
NPOへの活動資金の助成や活動に必要な施設・設備の提供、寄付が受けやすくする制度への改善など、支援を強化
●公的機関による消費者教育の充実、自主的な消費者教育運動への支援を強化
●製造物責任法(PL法)、特定商取引法、消費者契約法の改正、消費者安全調査会の体制強化、重大製品事故報告制度の対象から除外されている食品、医薬品なども対象とする など
食の安全の視点からTPP反対を表明。「アベノミクス」の急激な円安で公共料金の値上げが相次いでいるとして、根拠となる情報公開が必要としている。
社民党
集団被害回復法案 施行前の被害適用を
加工食品の原産地表示 大幅拡大
社民党は、「参議院選公約2013総合版」に消費者政策を盛り込んでいる。
●集団的消費者被害回復制度の早期実現
施行前の被害は適用できるようにする
訴訟を担う適格消費者団体や、消費者相談を行っている消費者団体への国の財政支 援、税制上の優遇措置を講じる。
●消費生活センターの人員増や相談員の処遇改善、基金の延長
●昨年10月に発足した「消費者安全調査委員会」の体制整備
●外食・中食産業などで原料原産地表示を義務化し、加工食品の原料原産地表示を大幅に拡大
●すべての食品への放射性物質検査などに取り組む
●消費者教育を体系的に実施
TPPに反対し、食の安全基準の緩和や変更、米国産牛を原料とするゼラチンやコラーゲンの輸入解禁は認めない。
生活の党
食の安全、原産地表示拡大
みんなの党
放射能汚染原則全品検査
生活の党は重点公約に食の安全を掲げ、TPP断固反対を表明。政策集の中で、「原料原産地表示の拡大」「遺伝子組替食品等の表示を義務化」「輸入食品の検査及び動植物の検疫の強化・充実」をうたっている。
みんなの党は、「みんなの政策アジェンダ2013」の中で、「放射能汚染が疑われる食品の原則全品検査」「放射線測定結果の詳細公表」を掲げている。電力を自由化し、消費者が自由に小売業者を選べるようにするための「料金メニュー提示等を義務化」も挙げている。
みどりの風の「みどりの風の約束」政策集では、TPP交渉から撤退し、「日本の食の安全、日本のスタンダードを世界に広める」としている。
日本維新の会の参院選公約には消費者施策、食の安全分野での記述は見られない。