2016年3月27日日曜日

消費者庁移転「お試し」 相談員研修「鳴門」に移転すれば、8道県が前泊必要。24都道県で交通費増

3月14日、板東久美子消費者庁長官に同行し、消費生活相談員研修のお試し移転先である「鳴門合同庁舎」を見てきた。国民生活センター相模原事務所から移転させた場合、午後1時から研修を開催しても、8道県が前日宿泊が必要になり、24都道県で宿泊費を含めた交通費が増大する。5月からの試験移転に向け、460平方メートルある4階フロアを、数百万円をかけて間仕切りで仕切り、必要な機器や備品を配備。宿泊は1キロ程度離れたビジネスホテル6カ所を活用するという。改修費用は徳島県が負担するが、本当に数百万円もかけて工事をしてしまっていいのか。相模原の研修棟には、宿泊施設や討議室、談話室、図書資料館などが整っているのに、なぜ、こんな工事をしてまで移転する必要があるのか。なぜ、鳴門なのか。3月22日、佐竹敬久秋田県知事が「消費者庁がなんで徳島に関係あるんだ。東京は日帰りだが、徳島では2泊3日になる」と発言した。他の都道府県は声を上げなくて大丈夫なのか。



鳴門合同庁舎4階フロア、ここを仕切ってグループ討議用の部屋や受付などを作るという

相談員研修を、国民生活センター相模原研修棟から「鳴門合同庁舎」に移転させた場合

 午後1時開催でも、8道県は前日宿泊が必要24都道県で交通費増

本年1月、河野太郎消費者相の突然の発言で、国民生活センター相模原事務所が行う研修と商品テストの試験移転が決まった。来訪した飯泉嘉門徳島県知事にその場で提案し、消費者庁長官はじめ職員もだれもこの事実を事前に知らなかった。


5月から14回、消費生活相談員、行政職員向け研修を移転「試行」

鳴門号庁舎で5月から14回、消費生活相談員向けと行政職員向けの研修を実施する予定で、徳島県と国民生活センターが準備を進めている。

・インターネット・スマホトラブルなど消費生活相談員向けの事例検討講座
・行政職員向けの基礎、相談支援、広報啓発講座
・相談員・行政職員向けの消費者教育の講師養成講座
・地域の見守りネットワーク推進講座など

14回の講座が、鳴門合同庁舎で実施される予定だ。

【交通の便】
徳島阿波おどり空港からバスで約15分。
高速バス下車後、路線バスに乗り換えて1区間110円だと説明。

しかし、飛行機の便数は、羽田間1日往復11便、福岡間往復1便しかない。

板東消費者庁長官自ら3月17日のテレビ会議を使った会見で、
「交通の便に課題がある」と述べている。

長官は13日午後4時ころ長崎県大村市を出て徳島市に着いたのが午後9時
お試し移転に参加した職員が青森に出張したが、神山町を昼過ぎにでて
午後3時ころの飛行機に乗って青森に着いたのは午後9時だったと報告した。

一方、323日、衆議院消費者問題特別委員会で河野消費者相は
「各地の消費生活センターから鳴門合同庁舎に午後1時までに着くと仮定をした場合、前泊が必要になる都道府県は8都道府県、相模原事務所で実施するよりも宿泊費を含めて交通費が増えるところは24都道府県になる」ことを明らかにした。
民主党の本村賢太郎氏の質問に答えた。

相模原の研修施設であれば、前泊が必要になる都道府県はない。

消費生活相談員の多くが1人体制で窓口業務に携わっている。
研修の日数が増えるとそれだけ参加しにくくなる。

【鳴門合同庁舎、4階フロアを工事】

鳴門合同庁舎は1973年建設。相模原の研修棟より築年数が7年も古い。
 4階部分と別館の会議室を研修に使うという。
 4階は、フロア460
6つでグループ討議しているということで、間仕切りで6つに仕切る。
    国民生活センター職員の受付スペース、事務スぺースも作る。
    研修に必要な備品を置くところ、談話スペースもこの中に作る。
    ワイファイと複合機を設置する。
    
 会議室は、255㎡。別棟にある。

 宿泊は、ビジネスホテル、6カ所を活用する。

 4月からのお試し移転(研修と商品テスト)の費用は、
 2016年度徳島県当初予算で800万円が確保されている。
 商品テストは、既存の県や民間の機器を借りて行うため
 さほど予算はかからないと見られる。
 改修費用がいくらになるか詳細を取材したが明確な答えが返ってこない。
 


【現在使われている国民生活センター相模原研修棟の設備】

国民生活センター相模原事務所の研修棟は1980年に建設された。

  講堂 180人 284㎡、中会議室 50人 92㎡、研修室A 80人、研修室B 30人、討議室3室各12人、談話室A 14人、応接セット、談話室B応接セット、食堂、教養娯楽室A、B各30人、同C 18人、宿泊室72室、講師用3室、図書資料館、ランドリーアイロン室、簡易調理室、ロッカー室等が整っている。

行革の対象とされ一時閉鎖されていた経緯がある(これもほぼ突然の決定、民主党が抜擢した福嶋消費者庁長官が主導したと言われている)が、

耐用年数50年とし、今後15年を試算。外部施設を利用するより研修施設を利用した方が節約できるとして再開された。

宿泊施設や研修施設併設で、研修後もグループワークや受講者の交流・情報交換できる

研修室や討議室などを利用した事例検討型、参加体験型の研修、宿泊施設があることで研修終了後の自主的なグループワークなどもでき、受講者同士の交流や情報交換が促進されることも高く評価された。

なぜ、これだけの施設の利用を再開し、ようやく軌道に乗りかけたときに、鳴門で移転試行しなければならないのか。まったく、移転の「大義名分」がない。

消費者庁が地方強化作戦の中で掲げた政策目標の1つである研修参加率100%を達成していない自治体では、消費者行政活性化基金の残金で交通費と宿泊費を100%補助してもらうことができる。

基金が使えなくなる2017年度以降も、国は交通費を出し続けるのか。
仮に国が支援したとしても、交通費の費用が増えた分は税金の無駄遣いということになる。宿泊費も相模原事務所だと1泊4000円だ。

22日決定、政府機関移転の基本方針では、
研修地に全国的にすぐれた取組と汎用性求める

政府が22日に公表した政府機関移転の基本方針では、研修は、その地ならではの研修内容(全国的にみてすぐれた取り組みとして認知され、かつ全国に汎用性があるもの)を勘案して検討するとしている。

例えば、教育研修センターでは、「全国の教員にとって参考となる先進校を有し、地元の学校でのフィールドワーク等を活用した研修を実施することが可能なもの」が移転の対象になっている。

徳島県の相談員の研修参加率全国で45位、相談員数43人にも疑問

徳島県の相談員の研修参加率は、全国で45位 69.8%(全国平均89.9%)
全国平均を大きく下回っている。

県内の消費生活相談員数は43人としているが、これも疑問符が付く。
県センターに9人。前24市町村のうち13市町(地域協定を結んでいるため、実質12市町)に32人の相談員がいると消費者庁には報告されている。
このうち有資格者は24人(資格保有率全国40位)としている。

しかし、実際に取材をしてみると、
5人と報告していたある町は、合併前の5支所の職員(兼務)それぞれ1人を相談員として報告していた。(本来は有資格者、あるいは有資格者と同等の能力があると首長が認めた人を相談員として報告する必要がある)

また、消費者協会への委託で登録者5人と報告している(登録者はすべて報告して可)町で、実際に相談窓口が開設されるのは月に2回、それぞれ2時間ずつ1人の相談員が相談に応じているに過ぎなかった。

6人と報告している町でも、月に2回、3時間ずつ2人が担当しているに過ぎない。
町の職員は、ご親切に、「さほど専門家ではないので、難しい案件は県センターに相談した方がいいですよ」と助言してくれた。

とても、全国の相談員の研修をするにふさわしい「全国的にみてすぐれた取り組みとして認知され、かつ全国に汎用性がある」地とは言い難い。

なぜ、研修を鳴門に移転しようなどという発想が出てくるのか。
どう説明すれば、他の地域の理解が得られるのか。疑問でしかない。

佐竹秋田県知事
「消費者庁が何で徳島に関係あるんだ。東京は日帰り、徳島では2泊3日」

322日、秋田県の佐竹敬久知事は
「消費者庁がなんで徳島に関係あるんだ。東京は日帰りで行けるが、徳島なら2泊3日になる」と定例会見で発言した。

徳島県は、何百万円もかかる工事をしてしまって大丈夫なのか。
この費用は徳島県が出すが、徳島県民は、この税金の使われ方に疑問を抱かないのか。

秋田県知事の発言以外、他の都道府県からの意見が出ていないが、本当に研修を移転して、今後、これまでと変わりなく、相談員や行政職員を研修に参加させるのか。

消費生活相談員、消費者行政担当職員は声を上げなくて大丈夫なのか。私は問いたい。


写真
①鳴門合同庁舎。正面の建物4階部分と左の建物の大会議室が研修に活用される

間仕切り用の図面、4階フロアの中に国民生活センター受付スペースも作られる



徳島県の職員から説明を受ける板東消費者庁長官

④別棟にある大会議室

⑤大会議室のある別棟に移動する一行

⑥冷暖房や給湯などの世話をする鳴門号庁舎職員が使うことになる部屋

⑦トイレ



2016年3月13日日曜日

消費者庁徳島での「試行」14日から4日間、長官ら10人。経費は約114万円。


 消費者庁の徳島県神山町での「試行」が14日から4日間行われる。板東久美子長官ら職員10人が徳島県内の視察、テレビ会議を活用した事務打ち合わせ、東京で開催される会議出席、記者会見などを行う。3月10日に行われた民主党・維新の党統一会派消費者・食品安全合同部門会議のヒアリングで、滞在にかかる消費者庁側の経費は、事前準備も含め約114万円かかることが明らかにされた。参加した議員からは「楽しそうな旅行に見える」「100万円もかけて実施する必要があるのか」などの意見が出ている。

国の経費は約114万円

 同日明らかにされた経費は、交通費約55万円、宿泊費約30万円、日当約4万円、施設利用料と警備員配置費等約10万円、事前準備費用(事前の現地視察2人分、交通費約12万円、宿泊費約2万円、日当約7000)。総額1137000円。このほか、消費者庁が持ち込む端末の通信費等がかかる。

 神山町と県庁、東京を結ぶテレビ会議システム一式、執務のための備品などは徳島県が負担する。徳島県が負担する経費の額について、消費者庁は「詳細は把握していない」と回答した。徳島県では、今回の試行のための予算200万円を2015年度補正で措置している。

長官、広報室長ら職員10人が参加

 板東久美子長官のほか、総務課広報室長、総務課、消費者制度課、消費者教育・地方協力課、消費者調査課、消費者安全課、表示対策課から課長補佐級以下の職員9人が参加する。当初予定より1人増えた。

 徳島県内の視察、テレビ会議を活用した事務打ち合わせ、東京で開催される会議出席、記者会見などを行う。

次官連絡会議へのテレビ会議参加は見送り

 毎週金曜日に官邸で開かれている次官連絡会議への長官のテレビ会議参加は、秘密保持への懸念があることから見送られた。帰京して通常通り長官が出席する。

日程の詳細は以下。

14日】神山町の神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックスからテレビ会議で徳島県知事と面会▽現地職員との打ち合わせ▽神山町長と面会▽テレビ会議で消費者庁職員と事務打ちあわせ▽鳴門合同庁舎視察▽鳴門教育大学学長と面会▽板野町消費生活相談所視察・町長と面会▽徳島県立城西高校視察

15日】徳島県消費生活審議会(徳島県庁で開催、テレビ会議)▽定例記者会見(ウェブ会議・消費者庁会見室に配信)▽機能性食品検討会(三田共用会議所開催、テレビ会議)

16日】プラット・イーズ(えんがわオフィス)視察▽神山町のテレビ会議で副大臣、政務官と打ち合わせ

17日】長官記者会見(テレビ会議、神山町から徳島県東京本部)▽徳島大学学長と面会▽徳島経済同友会訪問▽徳島県消費者情報センター視察▽鳴門市長と面会▽徳島県立徳島商業高等学校視察▽徳島県庁視察・徳島県教育委員会委員長、知事と面会



民主党・維新の党統一会派消費者・食品安全合同部門会議での
その他のヒアリング内容を紹介しておく。

Q 滞在中に実施する試行の具体的内容は?

A テレビ会議システムを活用した打ち合わせ、会議への出席、記者会見等の実施
  テレワーク、ペーパーレス環境での業務実施
  教育機関、地元自治体等の取り組みや体制の把握

Q 検証・確認しようとしている課題は?

A ①テレビ会議やテレワークによる業務試行で、
   意思の疎通や業務遂行が円滑に行えるか
    (機能の維持、行革や働き方改革等の視点)
  
  ②先駆的な施策推進を図るための実証フィールドとしての
   現地の消費者行政実情把握
    (機能の向上、移転先以外を含めた理解が得られるか等の視点)

Q なぜ誘致先の徳島県庁、鳴門合同庁舎ではなく、神山町に滞在するのか?

A 神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックスが
  民間企業のサテライト・オフィス等に活用されてきた実績があり、
  ネットワーク環境などの業務環境が整っているため

  徳島県庁舎で、消費者制度課、表示対策課の職員がウェブ会議による打ち合わせ
  テレワーク、ペーパーレス環境での業務試行も行う

 参加した議員からは
 「移転のお試しに資する内容なのか」
 「全国でも卓越した取り組みがなされているのか」
 「楽しそうな旅行に見える」などの質問が出された。

 消費者庁は
 「機能が維持できるのか。機能の向上に役立つことがあるかを検証する」
 「徳島県が実証フィールドとして優れていると主張しているので、見てくる」と回答

  これに対し、「視察をして、優れていないとは言いづらい」
        「そんな失礼なことは言えないよね」
        「100万円もかけてやる必要があるのか」などの指摘が出ていた。

2016年3月8日火曜日

消費者庁徳島移転問題 検討過程に透明性、公平性、公正性欠落

 「危機管理業務や国会対応業務、関係省庁と調整が不可欠な企画・立案業務は、移転検討対象外」-。中央省庁の地方移転を検討してきた有識者会議は3月3日、こんな内容の基本的な考え方をまとめた。消費者庁は、まさにこれら移転対象外の業務を担っている。なぜ、消費者庁のみが、移転の「試行」をすることが決まっているのか。中でも、具体的なお試し対象となった商品テストと消費生活相談員などの研修は、道府県が招致を提案できる締め切り後に、突然誘致対象とされた国民生活センター相模原事務所の業務だ。米軍キャンプ跡地にあり、相模原市の地元優先利用を犠牲にし国の政策に協力してきた経緯もあることから、地元からも移転反対の声が上がっている。検討の透明性、公平性、公正性が欠落していないか。
 

「政府関係機関移転に関する有識者会議」が示した基本的な考え方は以下

1.地方創生に資するか
2.地方移転で、機能の維持・向上が期待できるか
  ①現在と同等以上の機能が期待できるか
  ②「なぜ、そこか」移転先以外を含めた理解が得られるか
  ③危機管理等官邸や関係機関との連携、国会対応に支障が生じないか
  ④効率的な業務運営や行政サービスの低下を招かないか
       ↓
    ・「危機管理業務や外交関係業務、国会対応業務」⇒移転検討対象外
    ・「政策の企画・立案業務」
      関係省庁との調整が不可欠な政策の企画・立案業務⇒移転検討対象外
      移転対象の執行業務と密接不可分な企画・立案業務⇒移転
    ・「施策・事業の執行業務」
      地方を対象とする施策・事業の執行業務
      ⇒できる限り現場(地方)に近い所で実施することが適切
    
      検討に当たって
       (ア)「なぜ、そこか」移転先以外を含めた理解得られるか
       (イ)ICT(テレビ会議等)活用による業務改善、人材確保など
          で、機能確保が可能か
       (ウ)移転コスト増大や組織の肥大化を避ける
       (エ)地元の受け入れ態勢は整っているか
        ※国家公務員全般の業務体系見直しの意義は大きい
         働き方改革という点でワークライフバランスに結びつく
         ⇒実証実験による取り組みを積極的に推進していく必要ある
3.費用の増大や組織肥大化につながらないか
  地元の協力・受け入れ態勢が整っているか


消費者庁は移転検討対象外の業務を担っている 

消費者庁は、移転検討対象外とされた以下の業務を担っている。組織の肥大化は認めないというのであれば、当然、検討対象から外れてしかるべき

 緊急対応業務;中国ギョーザ農薬混入事件の反省から
        緊急対応を要する事案が起きれば、閣僚級の緊急対策本部、
         局長級の消費者情報総括間会議を立ち上げなければならない

 国会対応業務;今国会には特定商取引法改正案、消費者契約法改正案が提出された
        
        09年9月の消費者庁創設後、10本の法律・改正法を成立させた
        例:4月からはうそつき表示など景品表示法で措置命令を受けた事業者に
          売上(5000万円以上)の3%の課徴金がかかる
          10月からは消費者に代わって消費者団体が消費者被害に遭った
          被害を取り戻す損害賠償請求訴訟ができるようになる
 
各省庁と調整不可欠な企画・立案業務:
          上記立法、法律改正は調整不可欠
          消費者契約法は法務省、経産省、農水省、金融庁、警察等9省庁
          現在、見直しが検討されている公益通報者保護法は
          15省庁以上との調整が必要
          
          30本の法律を所管・共管しているが、他の消費者関連法は200本
          他省庁が所管する法律には、勧告が出せる
          法律のすき間事案には自ら対応する仕組みだ。

          5カ年計画で政府がなすべき消費者政策を盛り込む
          「消費者基本計画」は、全省庁の消費者政策に関与

  
  ※ 消費者庁は、他省庁に働きかけ
          
      「明治以来産業育成の視点で作られた法律や制度を
       国民・消費者の視点から見直す」ために創られた。
          
       他省庁に働きかけることが「大前提」の役所
          
     1月19日に日本弁護士連合会が主催したシンポでは、多くの政治家や元官僚、
     消費者庁に出向経験がある弁護士らが、どれほど他省庁と調整が必要か
     「テレビ会議ではその調整が困難だ」と、具体的な事例を挙げて
     詳細を報告している。     
 


国民生活センター相模原事務所 突然の後出し提案
 
               旧米陸軍キャンプ淵野辺返還跡地にあり
               地元相模原市の理解と協力で建設されたもの

道府県からの提案締め切りは昨年8月だったが、河野消費者相が飯泉嘉門徳島県知事とテレビ会議をした1214日、国民生活センター相模原事務所も移転対象とすることが突然明らかにされた。まち・ひと・しごと地方創生本部への提案は12月18日。同本部からの地元相模原市や神奈川県への正式な通達は、1カ月後の今年115日だった。

  同センターは、旧米陸軍キャンプ淵野辺返還跡地に建設されている。昭和52年に国から要望があり、国の消費者問題の緊急課題解決のために市議会等で何度も議論し、地元市民への施設利用開放などを条件に相模原市が受け入れてきた経緯がある。長年の基地負担に苦しむ市が、地元優先利用を犠牲にして国の施策に協力してきた。
相模原市では、他の移転施設とは大きく異なる経過があるにもかかわらず、地方創生の名のもとに、基地負担のない徳島県に移転させることは、市と県が合意し国が決定した跡地利用計画との整合性を崩し、地元の意思をないがしろにするものと強く批判。方針が出され3月末まで期間が限られる12月の段階で移転検討対象になったのは本来の手続きとかけ離れており、地元自治体を軽視した移転は、必ず禍根を残すと指摘している。

商品テスト 相談員の研修の試行
「大義名分なし」

【商品テスト】

例えば、「子どもが雑誌付録のマニニュアを使って爪がはがれたので調査してほしい」
「消費生活センターに製品事故でケガをしたという相談が入っている。製品自体に問題がないか調べてほしい」

国民生活センター相模原事務所商品テスト棟では、こんな要望に応えて、商品のテストが実施されている。

消費者から提供された事故品は事業者に渡さない。
国民生活センターが消費者から信頼されているゆえんだ。

総合病院のようにまず何が原因か最初は分からなくても、さまざまな自前の機器を使って、どこに問題があるか、その都度考えながら、テストを進めている。環境室、家庭内事故解析棟があり、生活実態に合わせたテストをやっているのが強みだ。

これだけの環境と自前の設備が整っているのに、徳島県の複数の施設の機器を借りてお試しをさせようとしている。最先端の機器なら別だろうが、最先端の機器であれば、東京の方がそろっているのではないのか。なぜ、徳島県の施設や、徳島県内の民間事業者の機器を借りて実施する必要があるのか。機器によって癖もある。前回何を試験したか自前の機械なら把握できている。情報が民間事業者に漏れる心配だって出てくる。

何のために、私たち消費者にどんなメリットがあって、試行するのか。

大義名分が何もない。

【研修】

消費生活相談員、行政職員、事業者向け、消費者教育などが、相模原事務所の宿泊施設併設の研修棟で実施されている。

民主党政権下で、稼働率が低いことを理由に、突然廃止が決定されたものの、結局売却することもできず、結局維持費ばかりがかかり税金が無駄になっているという理由で
自民党政権が復活させた。

図書室や談話室、討議室を活用した自主学習や夜間ゼミ、人数を絞った小規模研修が高く評価されている。今年は約5000人の参加が見込まれようやく軌道に乗りかけた。

こんな施設があるのに、なぜ、徳島でホテルを借りて実施する必要があるのか。

所要時間、交通費の地域別詳細比較、無駄になる税金はないのか、
試行の前にまず示すべき。
徳島に移転して、稼働率は今より上がるのか。
事前に何の検討すらされていない。

昨年度から地方消費者行政交付金が単年度交付金に変わっている。
これまで積み立ててきた地方消費者行政活性化交付金の残高が限られてきた。
研修参加率100%の目標が達成できていない自治体はここから研修参加旅費を出すことができる。

国は、徳島に移転した場合、研修参加のための交通費等を出すのか。
そして、将来打ち切ることなく継続できるのか。
それもまず示す必要がある。
ただし、今よりも増えた額は税金の無駄遣いということになる。

「徳島に研修が移ったら行けなくなる」
地方の相談現場から、心配する多くの声が聞こえてくる。
交通費や宿泊費を自治体が出せるのかという問題もあるが、
「1人体制の相談員が多い」。
1日宿泊が増えると行けないという。

実施後の感想は調査するよう河野消費者相は指示をしているが、
実際に利用している相談員らのアンケート調査をなぜ事前にしないのか。
次々に新しい取引手段や技術が出てくる、悪質商法も巧妙化してくる中で
相談員の研修は不可欠だ。


なぜそこか「通信回線の速度の速さ」
消費者行政移転の理由になり得ず


 石破茂地方創生相は、予算委員会分科会で「河野消費者相が実際にやってみなければ分からないという考え」とし、「なぜ徳島かというと、通信回線の速度が速い。全国民の利便が低下しないか、消費者庁の責務が減殺されることはないか試す考え」とその経緯を説明している。

「通信回線の速度の速さ」は、消費者行政のなぜそこへの理由にはなり得ない。
全省庁に共通することだ。

 なぜ、働き方改革のための試行を、消費者庁や国民生活センターがしなければならないのか。

 徳島県は「通信情報政策研究所」「森林技術総合研修所」「農林水産研修所」「農業・食品産業技術総合研究機構(うち食品総合研究所)」についても提案していた。なぜ、後出しの国民生活センターが具体的業務で実証をする必要があるのか。

 地方から提案があり、長年移転の要望があり、日本の精神文化の軸の一つが京都にあるという理由で移転が検討されている文化庁以外、中小企業庁、特許庁、観光庁、気象庁、総務省統計局は、なぜ、検討対象外の業務について試行をしないのか。

徳島県の消費生活相談員有資格率は40位
      相談員の研修参加率は45位

徳島県の県内自治体への相談員配置率は全国47都道府県中36位、
相談員の資格保有率は40位、
相談員の研修参加率は45位、
地方の相談体制を強化するために消費者庁が掲げた政策目標達成状況は、全国で下位に位置している。

国民生活センターの常勤職員は120人。非常勤職員130人。このうち消費生活相談員が111人を占める。
 経験豊富なベテランの消費生活相談員資格保有者が、相談業務や研修、裁判外紛争解決など各種業務で雇用されている。相談業務では、各地の消費生活センターの相談員向けに、解決困難な事案について経由相談を実施している。
国民生活センターの相談員1人当たりの年間相談件数は450件(東京・神奈川と同程度)。徳島県の120件に比べると大きな開きがある。国民生活センターの相談員の約6割が、採用前に東京・神奈川などで5年以上相談業務を経験している。


弱い消費者庁と国民生活センターは「人身御供」?

国家公務員担当相、行革担当相を、消費者担当相と兼務させたことへの弊害が出ている。
なぜ、安倍政権は兼務させたのか。

経済界と対立することが多い煙たい消費者庁の機能を弱めたいと考えているのか。

票につながらない、いまだに弱い消費者庁や国民生活センターが
人身御供にされているように見える。
検討過程があまりに不透明。公正性、公平性を欠いている。

消費者行政が犠牲にされるのではたまらない。。