2016年3月8日火曜日

消費者庁徳島移転問題 検討過程に透明性、公平性、公正性欠落

 「危機管理業務や国会対応業務、関係省庁と調整が不可欠な企画・立案業務は、移転検討対象外」-。中央省庁の地方移転を検討してきた有識者会議は3月3日、こんな内容の基本的な考え方をまとめた。消費者庁は、まさにこれら移転対象外の業務を担っている。なぜ、消費者庁のみが、移転の「試行」をすることが決まっているのか。中でも、具体的なお試し対象となった商品テストと消費生活相談員などの研修は、道府県が招致を提案できる締め切り後に、突然誘致対象とされた国民生活センター相模原事務所の業務だ。米軍キャンプ跡地にあり、相模原市の地元優先利用を犠牲にし国の政策に協力してきた経緯もあることから、地元からも移転反対の声が上がっている。検討の透明性、公平性、公正性が欠落していないか。
 

「政府関係機関移転に関する有識者会議」が示した基本的な考え方は以下

1.地方創生に資するか
2.地方移転で、機能の維持・向上が期待できるか
  ①現在と同等以上の機能が期待できるか
  ②「なぜ、そこか」移転先以外を含めた理解が得られるか
  ③危機管理等官邸や関係機関との連携、国会対応に支障が生じないか
  ④効率的な業務運営や行政サービスの低下を招かないか
       ↓
    ・「危機管理業務や外交関係業務、国会対応業務」⇒移転検討対象外
    ・「政策の企画・立案業務」
      関係省庁との調整が不可欠な政策の企画・立案業務⇒移転検討対象外
      移転対象の執行業務と密接不可分な企画・立案業務⇒移転
    ・「施策・事業の執行業務」
      地方を対象とする施策・事業の執行業務
      ⇒できる限り現場(地方)に近い所で実施することが適切
    
      検討に当たって
       (ア)「なぜ、そこか」移転先以外を含めた理解得られるか
       (イ)ICT(テレビ会議等)活用による業務改善、人材確保など
          で、機能確保が可能か
       (ウ)移転コスト増大や組織の肥大化を避ける
       (エ)地元の受け入れ態勢は整っているか
        ※国家公務員全般の業務体系見直しの意義は大きい
         働き方改革という点でワークライフバランスに結びつく
         ⇒実証実験による取り組みを積極的に推進していく必要ある
3.費用の増大や組織肥大化につながらないか
  地元の協力・受け入れ態勢が整っているか


消費者庁は移転検討対象外の業務を担っている 

消費者庁は、移転検討対象外とされた以下の業務を担っている。組織の肥大化は認めないというのであれば、当然、検討対象から外れてしかるべき

 緊急対応業務;中国ギョーザ農薬混入事件の反省から
        緊急対応を要する事案が起きれば、閣僚級の緊急対策本部、
         局長級の消費者情報総括間会議を立ち上げなければならない

 国会対応業務;今国会には特定商取引法改正案、消費者契約法改正案が提出された
        
        09年9月の消費者庁創設後、10本の法律・改正法を成立させた
        例:4月からはうそつき表示など景品表示法で措置命令を受けた事業者に
          売上(5000万円以上)の3%の課徴金がかかる
          10月からは消費者に代わって消費者団体が消費者被害に遭った
          被害を取り戻す損害賠償請求訴訟ができるようになる
 
各省庁と調整不可欠な企画・立案業務:
          上記立法、法律改正は調整不可欠
          消費者契約法は法務省、経産省、農水省、金融庁、警察等9省庁
          現在、見直しが検討されている公益通報者保護法は
          15省庁以上との調整が必要
          
          30本の法律を所管・共管しているが、他の消費者関連法は200本
          他省庁が所管する法律には、勧告が出せる
          法律のすき間事案には自ら対応する仕組みだ。

          5カ年計画で政府がなすべき消費者政策を盛り込む
          「消費者基本計画」は、全省庁の消費者政策に関与

  
  ※ 消費者庁は、他省庁に働きかけ
          
      「明治以来産業育成の視点で作られた法律や制度を
       国民・消費者の視点から見直す」ために創られた。
          
       他省庁に働きかけることが「大前提」の役所
          
     1月19日に日本弁護士連合会が主催したシンポでは、多くの政治家や元官僚、
     消費者庁に出向経験がある弁護士らが、どれほど他省庁と調整が必要か
     「テレビ会議ではその調整が困難だ」と、具体的な事例を挙げて
     詳細を報告している。     
 


国民生活センター相模原事務所 突然の後出し提案
 
               旧米陸軍キャンプ淵野辺返還跡地にあり
               地元相模原市の理解と協力で建設されたもの

道府県からの提案締め切りは昨年8月だったが、河野消費者相が飯泉嘉門徳島県知事とテレビ会議をした1214日、国民生活センター相模原事務所も移転対象とすることが突然明らかにされた。まち・ひと・しごと地方創生本部への提案は12月18日。同本部からの地元相模原市や神奈川県への正式な通達は、1カ月後の今年115日だった。

  同センターは、旧米陸軍キャンプ淵野辺返還跡地に建設されている。昭和52年に国から要望があり、国の消費者問題の緊急課題解決のために市議会等で何度も議論し、地元市民への施設利用開放などを条件に相模原市が受け入れてきた経緯がある。長年の基地負担に苦しむ市が、地元優先利用を犠牲にして国の施策に協力してきた。
相模原市では、他の移転施設とは大きく異なる経過があるにもかかわらず、地方創生の名のもとに、基地負担のない徳島県に移転させることは、市と県が合意し国が決定した跡地利用計画との整合性を崩し、地元の意思をないがしろにするものと強く批判。方針が出され3月末まで期間が限られる12月の段階で移転検討対象になったのは本来の手続きとかけ離れており、地元自治体を軽視した移転は、必ず禍根を残すと指摘している。

商品テスト 相談員の研修の試行
「大義名分なし」

【商品テスト】

例えば、「子どもが雑誌付録のマニニュアを使って爪がはがれたので調査してほしい」
「消費生活センターに製品事故でケガをしたという相談が入っている。製品自体に問題がないか調べてほしい」

国民生活センター相模原事務所商品テスト棟では、こんな要望に応えて、商品のテストが実施されている。

消費者から提供された事故品は事業者に渡さない。
国民生活センターが消費者から信頼されているゆえんだ。

総合病院のようにまず何が原因か最初は分からなくても、さまざまな自前の機器を使って、どこに問題があるか、その都度考えながら、テストを進めている。環境室、家庭内事故解析棟があり、生活実態に合わせたテストをやっているのが強みだ。

これだけの環境と自前の設備が整っているのに、徳島県の複数の施設の機器を借りてお試しをさせようとしている。最先端の機器なら別だろうが、最先端の機器であれば、東京の方がそろっているのではないのか。なぜ、徳島県の施設や、徳島県内の民間事業者の機器を借りて実施する必要があるのか。機器によって癖もある。前回何を試験したか自前の機械なら把握できている。情報が民間事業者に漏れる心配だって出てくる。

何のために、私たち消費者にどんなメリットがあって、試行するのか。

大義名分が何もない。

【研修】

消費生活相談員、行政職員、事業者向け、消費者教育などが、相模原事務所の宿泊施設併設の研修棟で実施されている。

民主党政権下で、稼働率が低いことを理由に、突然廃止が決定されたものの、結局売却することもできず、結局維持費ばかりがかかり税金が無駄になっているという理由で
自民党政権が復活させた。

図書室や談話室、討議室を活用した自主学習や夜間ゼミ、人数を絞った小規模研修が高く評価されている。今年は約5000人の参加が見込まれようやく軌道に乗りかけた。

こんな施設があるのに、なぜ、徳島でホテルを借りて実施する必要があるのか。

所要時間、交通費の地域別詳細比較、無駄になる税金はないのか、
試行の前にまず示すべき。
徳島に移転して、稼働率は今より上がるのか。
事前に何の検討すらされていない。

昨年度から地方消費者行政交付金が単年度交付金に変わっている。
これまで積み立ててきた地方消費者行政活性化交付金の残高が限られてきた。
研修参加率100%の目標が達成できていない自治体はここから研修参加旅費を出すことができる。

国は、徳島に移転した場合、研修参加のための交通費等を出すのか。
そして、将来打ち切ることなく継続できるのか。
それもまず示す必要がある。
ただし、今よりも増えた額は税金の無駄遣いということになる。

「徳島に研修が移ったら行けなくなる」
地方の相談現場から、心配する多くの声が聞こえてくる。
交通費や宿泊費を自治体が出せるのかという問題もあるが、
「1人体制の相談員が多い」。
1日宿泊が増えると行けないという。

実施後の感想は調査するよう河野消費者相は指示をしているが、
実際に利用している相談員らのアンケート調査をなぜ事前にしないのか。
次々に新しい取引手段や技術が出てくる、悪質商法も巧妙化してくる中で
相談員の研修は不可欠だ。


なぜそこか「通信回線の速度の速さ」
消費者行政移転の理由になり得ず


 石破茂地方創生相は、予算委員会分科会で「河野消費者相が実際にやってみなければ分からないという考え」とし、「なぜ徳島かというと、通信回線の速度が速い。全国民の利便が低下しないか、消費者庁の責務が減殺されることはないか試す考え」とその経緯を説明している。

「通信回線の速度の速さ」は、消費者行政のなぜそこへの理由にはなり得ない。
全省庁に共通することだ。

 なぜ、働き方改革のための試行を、消費者庁や国民生活センターがしなければならないのか。

 徳島県は「通信情報政策研究所」「森林技術総合研修所」「農林水産研修所」「農業・食品産業技術総合研究機構(うち食品総合研究所)」についても提案していた。なぜ、後出しの国民生活センターが具体的業務で実証をする必要があるのか。

 地方から提案があり、長年移転の要望があり、日本の精神文化の軸の一つが京都にあるという理由で移転が検討されている文化庁以外、中小企業庁、特許庁、観光庁、気象庁、総務省統計局は、なぜ、検討対象外の業務について試行をしないのか。

徳島県の消費生活相談員有資格率は40位
      相談員の研修参加率は45位

徳島県の県内自治体への相談員配置率は全国47都道府県中36位、
相談員の資格保有率は40位、
相談員の研修参加率は45位、
地方の相談体制を強化するために消費者庁が掲げた政策目標達成状況は、全国で下位に位置している。

国民生活センターの常勤職員は120人。非常勤職員130人。このうち消費生活相談員が111人を占める。
 経験豊富なベテランの消費生活相談員資格保有者が、相談業務や研修、裁判外紛争解決など各種業務で雇用されている。相談業務では、各地の消費生活センターの相談員向けに、解決困難な事案について経由相談を実施している。
国民生活センターの相談員1人当たりの年間相談件数は450件(東京・神奈川と同程度)。徳島県の120件に比べると大きな開きがある。国民生活センターの相談員の約6割が、採用前に東京・神奈川などで5年以上相談業務を経験している。


弱い消費者庁と国民生活センターは「人身御供」?

国家公務員担当相、行革担当相を、消費者担当相と兼務させたことへの弊害が出ている。
なぜ、安倍政権は兼務させたのか。

経済界と対立することが多い煙たい消費者庁の機能を弱めたいと考えているのか。

票につながらない、いまだに弱い消費者庁や国民生活センターが
人身御供にされているように見える。
検討過程があまりに不透明。公正性、公平性を欠いている。

消費者行政が犠牲にされるのではたまらない。。


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