2022年4月18日月曜日

③成年年齢引き下げ 2022国会審議中の契約取消権とは

 

成年年齢を引き下げる改正民法、2018年改正消費者契約法成立時に国会が課した宿題は

20206月までに

「高齢者、若年成人、障害者等の知識・経験・判断力の不足など、消費者が合理的な判断できない状況につけ込んだ場合の取消権」を創設することだった。

 では、消費者庁が今、2022年通常国会に提出している取消権はどんなものか。

 消費者契約法改正案4条3項4

当該消費者が当該消費者契約の締結について勧誘を受けている場所において、当該消費者が当該消費者契約を締結するか否かについて相談を行うために電話その他の内閣府令で定める方法によって当該事業者以外の者と連絡する旨の意思を示したにもかかわらず、威迫する言動を交えて、当該消費者が当該方法によって連絡することを妨げること(新設)

 「威迫を交え、その場で第三者に相談することを妨げた場合」の取消権が提案されている。

宿題が求めた内容とはあまりにかい離している。しかも施行は公布から1年。

 内閣府令では、電話のほか、電子メールやSNSなどの相談が対象にされると見られる。

 「もう大人なんだから相談しないで決めよう」などと言われたときに、消費者側が「威迫する言動を交えて妨害されたのか」を立証することができるのか。その場で相談したいと言ったことを消費者がどう立証できるのかが問われそうだ。

消費者契約法は、「立証責任は全て消費者側」にある。

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消費者庁の検討会報告書が提案した取消権

改正法案ではすべて立法化できず

消費者庁の検討会報告書が提案した取消権が、全く改正法案に盛り込まれていないことが、国会で問題になっている。

47日、その理由を与野党から追及され、繰り返し消費者庁が答弁されている内容が以下だが、4月12日の参考人質疑では、答弁内容が立法化できなかった本当の理由とは思えないことが浮き彫りになってきている。

消費者庁は啓発ばかりをやっているが、

若年成人に消費者被害にあわない自己防衛を呼びかける前に、

「消費者の脆弱性につけ込んで不当な行為を行った事業者に経済的不利益を与える取消権」を創設し、

公正な市場を作ることが求められている。

 

消費者の判断力に着目した取消権

【検討会報告書の提案内容】

判断力の著しく低下した消費者が、自らの生活に著しい支障を及ぼすような内容の契約を締結した場合の取消権

【立法化できなかった理由

<事業者の行為によって消費者の判断力が低下しているわけではないため、従来の取消権を超える側面がある>

 ⇚ すでに消費者契約法4条4項の過量販売取消権がある。事業者の行為で過量契約をした  わけではなく、消費者の判断力の低下があることを前提に取消権を認めていると、参考人は意見陳述している。

 ⇚ そもそも、消費者庁検討会の中では、民法の意思能力無効に類する規定の検討と説明されてきた。このような説明は、7カ月間行わた研究会、1年9カ月行われた検討会に関わってきた専門家に対しあまりに失礼。

 ⇚ 本当にそうであれば、当初からそのことを前提に別の検討をすべきだったはずだ。

<生活に著しい支障を及ぼす内容の契約となるかは、消費者の生活状況が一様ではないことから取消権として規定することは困難>

 ⇚ すでに規定がある過量販売取消権の過量の内容は、消費者の生活状況が一様ではないが規定されている。できない理由にはなっていない。

消費者の心理状態に着目した取消権

【検討会報告書の提案内容】

正常な商慣習に照らして不当に消費者の判断の前提となる環境に対して働きかけることにより、一般的・平均的な消費者であれば当該消費者契約を締結しないという判断をすることが妨げられることとなる状況を作出し、消費者の意思決定が歪められた場合の取消権

【立法化できなかった理由

<意見の隔たりがあり、幅のある形で報告書がまとめられた>

⇚ まとまっていない、幅があるとは考えていない。「考えられる対応」として結論は書かれている。議論の中で出た意見が、「なお」以降に書かれているが、両論併記ではない。検討会に委員を出している団体を代表する参考人のほか、複数の参考人がこう主張した。

<取消権は強い効果と、事業者の行為規範の機能を持つため、消費者の使いやすさ、事業者の予見可能性、要件の明確性の要素が全て満たされることで十全に機能する>

⇚ 予見可能性は必要だが、過剰。実現できない説明にはなっていない。

<消費者が慎重に検討する機会を奪う行為を捉える考え方が示されたが、困惑させる行為との区別が難しいときもあるのではないかという指摘もされた>

⇚ 慎重に検討する機会を奪うことで、一定の心理状態にあることにつけ込んで契約させた場合の取消権を置くことは可能。 意味不明な答弁。

困惑類型の受け皿となる脱法防止規定

【検討会報告書の提案内容】

現行法で取消対象になる不退去、退去妨害、契約前に契約内容を実施、契約を目指した活動をして交通費などを請求した場合と、実質的に同程度の不当性を有する行為について、脱法防止規定を設ける

【立法化できなかった理由

<意見の隔たりがあり、幅のある形で報告書がまとめられた>

⇚ 同上。当初は、困惑類型の中の強迫類似型と漬け込み勧誘型に分けて、それぞれ脱法防止のための受け皿規定が検討されたが、報告書は強迫類似型のみの提案になっている。

<取消権は強い効果と、事業者の行為規範の機能を持つため、消費者の使いやすさ、事業者の予見可能性、要件の明確性の要素が全て満たされることで十全に機能する>

⇚ 同上。受け皿規定は、不当条項を無効とする類型では、すでに契約法10条がある。できない理由にはなっていない。

改正法案では、受け皿規定は盛り込まれず、以下の新しい取消権と、現行の取消権の一部修正が追加されている。

消費者契約法第4条3項3号 

当該消費者に対し、当該消費者契約の締結について勧誘をすることを告げずに、当該消費者が任意に退去することが困難な場所であることを知りながら、当該消費者をその場所に同行し、その場所において当該消費者契約の締結について勧誘をすること。(新設)

⇒ 勧誘目的を告げずに退去困難な場所へ同行し勧誘した場合 の取消権

消費者契約法第4条3項9号

 当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該消費者契約を締結したならば負うこととなる義務の内容の全部若しくは一部を実施し、又は当該消費者契約の目的物の現状を変更し、その実施又は変更前の原状の回復を著しく困難にすること (下線部分を追加)

⇒ 勧誘前に目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にした場合

  現行法では、竿竹を切ってしまって物干し竿の売買契約をさせた場合だけでなく、パッケージを破いてしまった場合なども明確化する。

本来は、退去、退去妨害だけでなく、深夜まで勧誘する、断っても執拗に勧誘する、契約しないと怒るなど、同程度の悪質な勧誘行為を捉える受け皿規定が求められたが

個別具体的な取消権が追加されたに過ぎない。

厳格な要件の取消権が、後追い的に追加され、救済できる被害が限定される問題が指摘され法律のすき間から抜け落ちる被害を救うための包括的な規定の導入を検討会報告書は求めたが、結局、課題は解決せず、さらに問題を増幅させる結果となった。

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「20~24歳」と「18、19歳」の相談件数を国民生活センターに提供してもらい分析した。その結果、マルチ商法は、2020年度2021年度ともに6倍、エステティックサービスはそれぞれ5倍、4.4倍、美容医療は3.3倍、3倍、情報商材は2.5倍、2.9倍だった。副業・情報商材やマルチなどの"もうけ話"、エステや美容医療などの"美容関連"、「金」と「美」に関連する相談が増えることが懸念される。

今回の改正を経ても、法整備が十分とはいい難い。今後の展望が現時点では見えない。

【参考】消費者契約法 現行法の契約取消権

誤認して契約した場合の取消権                            ①重要事項について事実と異なることを告げた場合                                ②消費者の利益となる旨を告げながら、重要事項について不利益になる事実を故意に告げなかった場合(重大な過失を2018年改正で追加)                     ③将来の変動が不確実な事項について確実であると告げた場合

困惑して契約した場合の取消権                           ①帰ってくれと言っても帰らない場合                        ②帰りたいと言っても帰してくれない場合                         ③就職セミナー商法等(消費者が社会生活上の経験が乏しいっことから、願望の実現に不安を抱い知恵ることを知りながら不安をあおり、契約が必要と告げた場合) 2018年改正で追加                ④デート商法等(消費者が社会生活上の経験が乏しいことから、勧誘者に好意の感情を抱き、かつ、勧誘者も同様の行為を抱いていると誤信していることを知りながら、契約しなければ関係が破綻すると告げた場合)                            ⑤加齢や心身の故障により判断力が著しく低下していることから、現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、不安をあおり、契約が必要と告げた場合                                                                   ⑥霊感等の特別な能力により、消費者がそのままでは重大な不利益が生ずると不安をあおり、契約が必要と告げた場合                            ⑦契約前に契約内容の全部または一部を実施し、実施前の原状回復を著しく困難にした場合                 ⑧契約のための事業活動をし、これにより生じた損失補償を請求した場合 

  ③〜⑧は2018年改正で追加 (➄⑥は、消費者庁が③④に報告書になかった社会生活上の経験が乏しい要件を追加したため、衆議院の修正協議で追加された)

過量契約取消権 通常の分量を著しく超える分量を勧誘


 

②成年年齢引き下げ 使えない「デート商法取消権」

 消費者庁は今国会で、消費者契約法2018年の改正時に、「若者に発生している被害事例を念頭に対応策を講じてきた」と答弁している。

では、

20186月の消費者契約法改正(施行20196月)で、

20196月から使えるようになった若年者被害に対応する新た契約取消権とはどんなもなのか。

 悪質業者には知られたくないため、あまり書きたくないが

◇消費者契約法43項4号

当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること     (下線部分は消費者委員会の答申から変更されて実現した部分)

①消費者が、社会生活上の経験が乏しい

②勧誘者に好意の感情を抱いている

③かつ、勧誘者が消費者に同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら

④勧誘者が、契約しなければ関係が破綻すると告げた

4つの要件を満たさなければ、契約を取り消すことができない

マッチングアプリで知り合った女性と会うことになり、アクセサリー関連の職場に連れていかれて、断り切れず、消費者金融のATMに連れていかれて数十万円のダイヤの指輪やネックレスを購入させられた

 というのが典型事例だが、  ~④の要件が厳格すぎて、なかなか要件を満たず取り消せないのが実情だ。

毛 悪質業者は巧妙で、契約しなければ関係が破綻するなんて言わない。

しかも、消費者契約法は、立証責任はすべて消費者側にある。相手が知りながらの要件を消費者側が立証するのは難しいい。この要件を満たさなければ何をやってもいいと言わんばかりの取消権と批判されている。

マッチングアプリで知り合った男性に勤務先のダイビングショップに連れていかれ、潜水のための講習料15万円、資格を取るための講習料40万円、20歳の誕生日を機にダイビング機材一式70万円と次々に契約させられる事例も目立つ。

ロマンス投資詐欺の被害も急増している。

「SNSで知り合った男性から、教えてあげるから投資を一緒にやろうと誘われ、暗号資産に50万円、80万円、100万円と次々に500万円程度を入金してしまったが、税金を払わないと出金できないと言われた」(20223月東海地方40歳代女性)

「婚活アプリで知り合った男性に一緒にマンションを買おうと誘われて暗号資産に投資したが出金できない。結婚の話もされて一緒に住むマンションを買おうと言われ、10回以上1000万円を超える投資してしまった」(20221月南関東地方50歳代女性)

詐欺の場合、連絡が取れなくなった相手の特定が困難で交渉すらできない。


デート商法の相談件数は

2019年6月以降も増え続け、相談者の平均年齢が上がっているのが現状だ。

「社会生活上の経験不足」

答申になかった要件を消費者庁が勝手に追加

123回の検討を経て消費者委員会消費者契約法専門調査会がまとめた報告書の提案内容は、「勧誘に応じさせる目的で、密接な関係を新たに築き、契約しなければ関係が維持できないと告げた」場合の取消権を提案していた。

 「社会生活上の経験不足」の要件は、成年年齢引き下げに対応する口実のために、消費者庁が独自に要件と追加したとしか考えられない。

この要件がなくても、非常に厳格だ。この要件を追加したことで、30歳代以上の中高年の救済が難しくなっている問題もある。

国会は、この要件が追加されたことで紛糾。当時の福田照消費者担当相が、本会議答弁での社会生活上の経験不足の解釈をひっくり返したことで、初めて衆議院消費者問題特別委員会の審議が止まった経緯もある。当時から、消費者庁の答弁はあまりにお粗末でひどい。

【参考】本会議答弁では、「例えば、霊感商法等の悪徳事業者による消費者被害については、勧誘の態様に特殊性があり、通常の社会生活上の経験を積んできた消費者であっても、一般的には本要件に該当する」としていた。

この部分を、削除し「社会生活上の経験が乏しい」要件に該当するのは、「若年者」とし、「若年者でない場合でも、民法により救済される」に改めると発言した。

撤回はしたものの、衆議院消費者特では「若年者でない場合であっても、就労経験等がなく、外出することも めったになく、そして他者との交流がほとんどないなど、社会生活上の経験が乏しいと認められる者については、本要件に該当し得る。これは例示で、ほかの例も排除しない」。「消費者が若年者で ない場合であっても、社会生活上の経験の積み重ねにおいて、これと同視すべきものは本要件に該当し得るということで整理した」と発言していた。

同法逐条解説では「社会生活上の経験が乏しいか否かは、年齢によって定まるものではなく、中高年のように消費者が若年者でない場合であっても、社会生活上の経験の積み重ねにおいてこれと同様に評価すべき者は、本要件に該当し得る」としているが、事例は「実家暮らしの20 歳の大学生」しか書かれていない。

中高年の被害が救済できるかどうかは事業者の対応次第、後は裁判所が判断することになる。

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もう一つ、30年改正で追加された取消権がある。就活セミナー商法(「自己流の対策では就活に失敗する」などと不安をあおられた場合)などでは活用できているが、要件が厳しく適用される場面がこれも限定されている。

◇過大な不安をあおる告知(43項3号)

当該消費者が社会生活上の経験が乏しいことから次に掲げる事項に対する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該願望を実現するために必要である旨を告げること。

(イ) 進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要な事項

(ロ) 容姿、体型その他の身体の特徴又は状況に関する重要な事項

                 (下線部分は消費者委員会の答申から変更された部分)

 消費者委員会の答申では、「消費者の不安を知りながら、損害等を回避するために、必要だと正当な理由なく強調して告げた」場合と、全世代を対象に霊感商法なども想定した取消権が提案されていた。

野党は「社会生活上の経験が乏しい」の削除を求めたが、与党はこれを拒否。

以下の取消権を追加することで修正され決着した。

分かりにくく、厳格な要件を満たせないすき間で、救済できない被害が多く発生する問題が出てきた。民法の特別法としての役割を果たしていないという批判が出ている。

修正で追加された取消権は以下

◇著しい判断力不足につけ込み過大な不安あおる(435号)

当該消費者が、加齢又は心身の故障によりその判断力が著しく低下していることから、生計、健康その他の事項に関しその現在の生活の維持に過大な不安を抱いていていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、当該消費者契約を締結しなければその現在の生活の維持が困難となる旨を告げること

◇霊感商法等(436号)

当該消費者に対し、霊感その他の合理的に立証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること

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この法律の成立時に、国会が課した宿題は以下。その対応がどうされたかは「③成年年齢引き下げ、2022国会審議中の契約取消権とは」で。

消費者契約法の一部を改正する法律案に対する付帯決議          

三 消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における取消権の創設について、要件の明確化等の課題を踏まえつつ検討を行い、本法成立後二年以内に必要な措置を講ずること。

            (平成30523日 衆議院消費者問題に関する特別委員会) 

 四 高齢者、若年成人、障害者等の知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)の創設について、消費者委員会の答申書において喫緊の課題として付言されていたことを踏まえて早急に検討を行い、本法成立後二年以内に必要な措置を講ずること。

            (平成3066日 参議院消費者問題に関する特別委員会)

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参考】消費者契約法 現行法の契約取消権

誤認して契約した場合の取消権                            ①重要事項について事実と異なることを告げた場合                                ②消費者の利益となる旨を告げながら、重要事項について不利益になる事実を故意に告げなかった場合(重大な過失を2018年改正で追加)                     ③将来の変動が不確実な事項について確実であると告げた場合

困惑して契約した場合の取消権                           ①帰ってくれと言っても帰らない場合                        ②帰りたいと言っても帰してくれない場合                         ③就職セミナー商法等(消費者が社会生活上の経験が乏しいっことから、願望の実現に不安を抱い知恵ることを知りながら不安をあおり、契約が必要と告げた場合) 2018年改正で追加                ④デート商法等(消費者が社会生活上の経験が乏しいことから、勧誘者に好意の感情を抱き、かつ、勧誘者も同様の行為を抱いていると誤信していることを知りながら、契約しなければ関係が破綻すると告げた場合)                            ⑤加齢や心身の故障により判断力が著しく低下していることから、現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、不安をあおり、契約が必要と告げた場合                                                                   ⑥霊感等の特別な能力により、消費者がそのままでは重大な不利益が生ずると不安をあおり、契約が必要と告げた場合                            ⑦契約前に契約内容の全部または一部を実施し、実施前の原状回復を著しく困難にした場合                 ⑧契約のための事業活動をし、これにより生じた損失補償を請求した場合 

  ③〜⑧は2018年改正で追加 (➄⑥は、消費者庁が③④に報告書になかった社会生活上の経験が乏しい要件を追加したため、衆議院の修正協議で追加された)

過量契約取消権 通常の分量を著しく超える分量を勧誘





 

2022年4月17日日曜日

①成年年齢引き下げ 18歳19歳で失った未成年取消権

 成年年齢引き下げで想定される若年者の消費者被害に対応するための法整備は、あまりにお粗末だ。消費者庁、政府の責任は大きい。現在も国会で審議中だが、なぜ法整備ができないのか。情けない答弁が繰り返されている。状況を報告しておく。

202241日、改正民法が施行され、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた。

18歳で失ったものがある。

「未成年取消権」

 「(正確には法定代理人)が、同意していなければ、

事業者の行為が不当かどうか関係なく、契約を親か本人が、取り消すことができる」。

 消費者被害の鉄壁の防波堤。消費者被害救済の特効薬と呼ばれている。

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成年年齢を引き下げる改正民法が成立したのは2018613日。

このときに、国会は宿題を出していた。

成立後2年以内に

知識・経験・判断力の不足など合理的な判断をすることができない状況に、つけ込んで契約させた場合の取消権」を創設せよ

でも、2年はとうに過ぎ

4年を過ぎようとしているが、取消権はできていない。

民法の一部を改正する法律案に対する付帯決議

 一 成年年齢引下げに伴う消費者被害の拡大を防止するための法整備として、早急に以下の事項につき検討を行い、本法成立後二年以内に必要な措置を講ずること。

1 知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)を創設すること。

                    (平成30612日 参議院法務委員会)

【参考】未成年取消権の詳細

 以下の要件をすべて満たした場合に、未成年者の契約を取り消すことができる

◇契約時の年齢が18歳未満

◇契約当事者が婚姻の経験がない

◇法定代理人が同意していない

(多くは親。父母の同意が必要で、一方の同意は取り消し可)

(父母が離婚している場合は、親権を有している親。親権者がいないときは未成年後見人)

◇法定代理人から、処分を許された財産(小遣い)の範囲内でない

◇法定代理人から許された営業に関する取引でない

◇未成年者が詐術を用いていない

 (成年者、親の同意があると偽って、相手方が誤信をした場合。誤信させるための詐欺的手段をいい、単に成年であると言ったり、同意を得ていると言っただけでは「詐術」にはあたらない)

◇法定代理人の追認がない

 (代金を支払うなど債務の履行をしたり、履行の請求等をしたとき)

◇取消権が時効になっていない

 (未成年者が成年になったときから5年間、または、契約から20年間)

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【経緯】

成年年齢の引き下げは、1876年明治初期の太政官布告以来

 2007年   「日本国憲法の改正手続きに関する法律」が成立。

        満18歳以上で投票権を有する ことを規定。

        法律の付則で、公職選挙法と民法等の法制上の措置を求めた。

20082月  法務大臣が法制審議会に成年年齢を引き下げるべきかどうかを諮問。

200910月  法制審議会「民法の成年年齢の引き下げについての意見」を答申。

    民法の成年年齢の引き下げについての意見(法制審議会、20091028日)

民法が定める成年年齢を18歳に引き下げるのが適当である。

ただし、現時点で引下げを行うと、消費者被害の拡大など様々な問題が生じるおそ      れがあるため、引下げの法整備を行うには、若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現されることが必要である。

民法の定める成年年齢を18歳に引き下げる法整備を行う具体的時期については関係施策の効果等の若年者を中心とする国民への浸透の程度やそれについての国民の意識を踏まえた、国会の判断に委ねるのが相当である。

 20156月    公職選挙法改正案 成立。

20169月    法務省が成年年齢を引き下げる民法改正法案を国会に提出する方針。

2018313日 成年年齢を引き下げる民法改正案を国会に提出。

2018613日 成年年齢を引き下げる改正民法が成立。

           自民、公明、日本維新の会、希望の党、国民の声などが賛成

立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党、希望の会、沖縄の風などは反対した。

          参考人質疑では、学識経験者や弁護士から、

        「消費者被害の予防、救済策が全く不十分。制審議会が指摘する条件を無視するもの」

        「高校では、今回の法改正によってどのようなリスクがあるのか、一部の熱心な先生方を除いてほぼ全くと言っていいほど理解されていない」

        「今般の消費者契約法改正では、十分な対応をしていただいていない」などの反対意見が噴出していた。

          改正法付帯決議は、改正法成立後の2年以内の法整備を求めたが、

4年近く経った202241日時点で、実現していない。