2017年12月28日木曜日

ジャパンライフ事実上破産 記者らにメモ投げ走り去った男性は社員?

「倒産しています」「弁護士にも申請、故意に発表遅らせる?」
26日朝9時15分頃、ジャパンライフ前で取材している記者らにメモを投げつけ走り去った男性がいた。開いてみると、マジックでこんな内容が書かれていた。時を同じくして、倒産情報誌TSR(商工リサーチ)が、ジャパンライフが2回目の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受けたことを報じた。事実上破産。とうとう来るべき時が来てしまった。

 逃亡を許すな!
 一般社員は、怒ってる
   家族は、泣いてるぞ  

 赤いマジックで強調して書かれている。
   
   29日午前、成田から香港へ〇〇と逃亡か
   銀行口座凍結前に大金を引き出しか
   
とも、なぐり書きされている。

思い余って投げたこの紙に書かれている内容は、社員や被害者の共通の思いではないか。
早急に銀行口座を凍結し、刑事事件として立件することを望んでいる。
捜査関係者が、この内容を把握してくれていると信じたい。

負債総額は2405億円
安愚楽牧場に次ぐ被害か

消費者庁の指導で同社が9月11日付けで顧客に通知した文書では、2016年度末時点の純資産は約338億円の赤字、契約残高は1843億円、預託者の数は2017年7月末時点で6855人としていた。

この根拠になる数字は、公認会計士による「合意手続報告書」(仕訳の根拠を示すことができない仕訳を取り消し修正された報告書)に記載され、それによると、2017年3月末時点の負債総額は2405億円に上る。

ジャパンライフと同様の現物まがい商法で2011年8月に破綻した安愚楽牧場の被害総額は4300億円(7万3000人)で、戦後最大の被害になった。1987年の豊田商事は2000億円(3万人)。2009年に破綻したL&G(円天)は1260億円(3万7000人)。合意手続報告書は正式な会計監査報告書ではないが、安愚楽牧場に次いで、戦後2番目の大きな被害になる可能性が出てきた。

桁外れに高額な老後の資金
70歳以上の高齢女性がほとんど

ただし、債権者の人数と額を比較してみると、契約者1人の契約金額が桁外れに大きいことが分かる。地方の1人暮らしの高齢女性らに、桁外れに高額な老後の資金をつぎ込ませているのが、ジャパンライフの特徴といえる。悪質性が極めて高い。

消費生活センターなどに相談した人の平均契約金額は1860万円、最高額は5億円(消費者庁が4回目の処分時に公表、12月5日までの過去3年間)だった。


農協や郵便局の定期預金、保険を解約させて契約させているケースも少なくない。
年末から年始にかけて帰省する人も多い。ジャパンライフと契約をしていないか確認し、契約していた場合も責めたり叱ったりせず、しっかり寄り添って丁寧に話を聞き、消費生活センターや弁護団、警察に相談してほしい。

「事実を伝えて、泣き寝入りしない」。「少しでも被害を回復してやるぞ」。「騙した方が悪い。悪いものは悪い」。そう考えて電話をしてほしい。

12月29日 ~ 1月3日 まで
国民生活センターに「ジャパンライフ専用ダイヤル」

☎ 03-5793-4110

   (10時~16時)

国民生活センターは以下を助言している

◇1人で悩まず家族や周りの人に相談する

◇飛び交うさまざまな情報に振り回されず、契約書類を整理し、契約内容を確認する

◇契約者を責めず、契約の内容など状況の把握に協力する

◇ジャパンライフにこれから入金を予定している人は、支払わず、状況を確認する
 解約を希望する人は、解約の意思を示す書面を作って事業者に送付する。
 その際、書面の写しを保存しておく

◇「被害を回復する」「優先的に返金する」「被害回復のために調査する」などといって
 お金を払わせる話を絶対信じない。2次被害を防ごう

◇国民生活センター、消費者庁から情報を発信する最新の情報を入手する





2017年12月25日月曜日

ジャパンライフ本社社員だれも来ず、中部弁護団「店舗代表者も提訴」へ

 12月25日、ジャパンライフ本社(東京都千代田区)には、朝から社員は誰も来なかった。
いよいよ来るべき時が来てしまった。「営業停止」「1回目の資金ショート」などの報道が続く中で、老後の高額な資金をつぎ込んでいる1人暮らしの高齢者が、お正月を前にどれほど不安なときを過ごしているか、心配でならない。ジャパンライフ被害対策中部弁護団が実施した同日の110番には、全国各地から54件の相談が寄せられた。杉浦英樹弁護団長は「自殺者が出ることを恐れている。少しでも希望を持ってもらえるよう、私たちは、山口会長親娘とともに店舗の代表者も共同不法行為者として提訴することを検討している」と話している。

ジャパンライフ本社、朝から社員だれも来ず
債権者が中をのぞいて、帰っていく


ジャパンライフ本社ビルを売却したという倒産情報誌TSR(東京商工リサーチ)の報道を知り、22日夕方以降本社に電話しても、電話はつながらない。
ジャパンライフ本社前で取材する記者たち

25日朝、8時半ころ本社前を訪ねると、調査会社の人や見慣れた消費者庁記者クラブの記者らが数人玄関前にいた。「この時間に社員が来ないのはおかしいと掃除のおじさんが話している」と、その1人が教えてくれた。

営業時間の9時を過ぎても、社員は誰も来ない。

宅配業者がインターホンを押しても中から反応はなく、帰っていく。いつも通り生け花を届けたという花屋さんも、帰って
夜になると自動的に灯りがつくが、誰もいない
行った。同社の山口隆祥会長は10時ころに来るというが、その時間を過ぎても会社の関係者は誰1人来ない。時折、債権者がやってきて、インターホンを押し、中をのぞきこんで帰っていく。埼玉の工場まで行ってみると話す債権者もいた。銀行、自動車リース会社、派遣会社、情報システムなどさまざまだ。派遣社員が訪れ、いつもなら朝には入っている給与が入っておらず、様子を見に来たという。

電話がつながらない巣鴨店も見てきた。とげぬき地蔵通りに面したビルの1階、2階にあるが、
ジャパンライフ巣鴨店は、先週金曜日から営業していない
休業中の紙が貼られ、閉まっている。「刑事告発のニュースが流れた次の日、先週の金曜日から閉まっている」と、商店街理事長。「地元の人は問題があることはよく知っている。韓国や地方からのツアーの客が多く来ていた」という。ビルの持ち主は、「何も聞いていない。わからない」と話した。

夕方、再度本社前を訪れると、ずっと玄関前で取材を続けている調査会社の記者さんが「訪れた債権者は10組程度」と教えてくれた。

12月7日、8日には返金滞る
業務中止まで、わずか2週間

ジャパンライフからの返金は毎月10日に行われているが、12月はこの日が日曜ということもあり、12月7日、8日には、お金が入っていなかったという情報が把握できた。

「7日に入金がなく、次に入金すると言われた1週間後にも入金がなかった」「8日に振り込まれるはずのお金が、振り込まれていなかった」「資金繰りに時間が要するので3カ月先になるといわれた」など。

消費者庁取引対策課元課長補佐の同社への天下りを昨年の正月号で明らかにして以降、消費者庁の後手後手の対応のまずさを指摘し続けてきた。

①この課長補佐はなぜ行政指導で済ませたか ②立入検査が遅れたのではないか ③立入検査で、現物まがい商法で自転車操業であることが分かっていたはずではないのか ④1回目の処分は遅く不適切 ②2回目の処分も甘く公表に問題がある ③3回目の処分は、業務停止命令違反を放置し、事業者の主張通りレンタルオーナー商法ではなくモニター商法で違反を認定したのでは遅い ④4回目の処分は、違反事例4事例のうち3事例は3回目と同じで2回に分けたのは疑問 ⑤3回目、4回目の処分時には、ジャパンライフは同様の取引を「リース債権譲渡販売」として拡販しており、被害拡大を結局止められていないーなど。

本来は、厳正な処分に基づき、預託法違反、特商法違反と詐欺、業務停止命令違反で刑事告発し、早急に決着させるべき案件だった。

消費者庁の後手後手の対応が被害を拡大させてきたことは、紛れもないが、
返金されなくなってから、同社と連絡が取れなくなるまでの期間が、あまりに短かった。

高齢な女性に悪質性が周知され始めた段階で、もう、取引から退出できる状況がなかった。預託取引は破たんするまで被害が顕在化しない点が、本当に恐ろしい。

老後の資金、契約額が桁違いに高額
「戻らなかったら、首くくるしかない」

契約者の4分の3が70歳以上で、ほとんどが女性。契約金額は平均1860万円(12月15日時点)と、消費者被害の中でも桁違いに高額だ。

5月に都内のホテルで開催された国際大会では、2億円以上契約したミレニアム会員24人が紹介され、表彰された。顧客に宣伝用に通知されているミレニアム会員名簿では、1億円以上の契約者が300人を超え、最高額は12億円。どこまで本当かは定かではないが、農協や郵便局の定期預金、保険を解約させて契約させているケースも少なくない。老後の大切な資金をつぎ込まされている。

「お金が戻らなかったら、首をくくるしかない」。そんな悲痛な叫びも聞こえてくる。
高額な契約をした高齢女性が、これから正月に向け、どれほど不安な思いで日々を過ごしているのか、心配でならない。

ジャパンライフ110番に54件
平均額4500万円、最高契約額3億円

ジャパンライフ被害対策中部弁護団が同日実施した110番には、全国各地から54件の相談が寄せられた。

1人暮らしの80歳代の女性は、家族を含めて約3億円の契約をさせられ、解約を求めて店舗を訪れると鍵がかかって中に入れなかった。保険を解約させられたり、全財産をつぎ込んだという人もいた。

「自殺者が出ないか恐れている」
「希望持ってもらえるよう提訴の検討急ぐ」

「本日以降、被害者の方の不安が高まっている。お正月に向け自殺者が出ないか心配している。多少なりとも希望をもって緊張感を維持してもらえるよう、提訴の検討を急ぐ」と杉浦弁護団長。「本社への損害賠償請求とは別に、同社山口隆祥会長、山口ひろみ元社長親子と店舗の代表者も共同不法行為者として、2月にも提訴したい」と話している。


2017年12月23日土曜日

「ジャパンライフ被害対策110番」12月25日、中部弁護団 + 神奈川弁護団発足

ジャパンライフ被害対策中部弁護団(杉浦英樹団長)1225日、「ジャパンライフ被害対策110番」を実施する。3回線で、弁護士11人が無料で電話相談に応じる。12月以降、ジャパンライフからの返金が行われていないという事例が、多く把握され、相談者は不安を抱えながら不安定な状況に陥っている。全国の消費生活センターなどに相談した人の平均契約金額は1860万円、最高額5億円(1215日時点)と高額で、その多くが70歳以上の高齢女性を占めているためだ。孤独や将来の金銭的な不安、健康への不安など心の隙間を巧妙についた勧誘が行われてきた。叱ったり責めたりは決してせず、家族や身近な人がしっかり寄り添って、身近な消費生活センターや警察、弁護団などに相談することを勧めたい。

叱ったり責めたりせず
家族がしっかり寄り添って相談を

 購入代金の年6%の見返りをうたって100万円から600万円もの磁気ネックレスや磁気ベストなどを販売してきた「ジャパンライフ」(東京都千代田区)。消費者庁から4度目の行政処分を受けてもなお、『リース債権譲渡販売』として同様の取引を続けてきた。セミナーでリース債権譲渡販売の説明をされ、その日のうちに契約してしまった事例を同弁護団は把握している。被害の拡大が止まらないことから1220日、同弁護団は、同社と経営者親子を愛知県警に刑事告発した。

1222日には、倒産情報誌TSR(東京商工リサーチ)が、1212日にジャパンライフが本社不動産を売却し、娘の山口ひろみ社長が15日付で取締役(会長は父親の山口隆祥氏で、2人で代表取締役を務めていた)を辞任していたことを報じた。さらに、1221日午後になり、ジャパンライフと連絡が取れなくなった。22日朝には同社と取引していた取引先からも「連絡が取れない」という問い合わせが急増し、債権者10人が本社にたたずんでいたなどの取材ルポがネット上に流れたことで、一気に緊迫した状況になっている。
TSRは、本社不動産の売却先は、千代田区の不動産会社とし、「根抵当権の極度額は当初の12億円から今年630日に6億円に変更されたばかりだった」とも報じている。

消費者庁は、同社が破綻した場合の想定被害額をこれまでも明らかにしてこなかったが、消費者庁が指導をして911日付で同社から顧客に通知された文書では、2016年度末時点の純資産額は約338億円の赤字、契約残高は1843億円、預託者の数は20177月時点で6855人としていた。
豊田商事や安愚楽牧場の破綻で、甚大な被害が出た預託商法は、破綻するまで被害が顕在化しにくいという大きな特徴があり、恐ろしい点でもある。

これまで記事を書き続けてきたが、残念ながら、12月に入ってからは、消費者への返金が滞っている。消費生活センターでの返金交渉は困難と思われるが、解約の意思表示をすることをあきらめず、これまでの契約内容を整理する上でも、まずは身近な消費生活センターに相談することを勧めたい。

そして、解約に応じてもらえなかった場合は、警察ジャパンライフ被害対策弁護団に相談しよう。現時点では、中部と神奈川弁護団の2つだが、全国各地で立ち上げの検討が進んでいる。

被害財産の散逸を防止するための仮差押えや、消費者被害の集団的被害回復訴訟を提起できる特定適格消費者団体「消費者機構日本」にも、その情報を伝えてほしい。

◇最寄りの消費生活センター 「188

◇ジャパンライフ被害対策中部弁護団の「110番」
12月25日(月)10時~16
0564-64-1880
 弁護団の事務局は、☎0566-73-0770 
https://japanlifehigai-chubu.amebaownd.com/

◇特定適格消費者団体「消費者機構日本」
情報提供は、当機構ウェブサイトへの書き込み http://www.coj.gr.jp/consumers/higai.html 
☎03-5212-3066 ファックス03-5216-6077

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ジャパンライフ被害対策神奈川弁護団発足
「資産隠しは犯罪になることを警告せよ」
 
 ジャパンライフ被害対策神奈川弁護団(石戸谷豊弁護団長)1220日、発足した。ジャパンライフ被害者の救済、被害の拡大防止のための活動に取り組む。
 石戸谷豊弁護団長は、「消費者庁は、資産隠しは犯罪になることを警告するとともに、預託法・特商法の指示処分は返金措置を含め広範囲な内容が可能となっているため、この指示処分を活用すべきだ」と話している。

ジャパンライフには横浜店があり、神奈川県内でも営業活動を展開してきた。被害者の多くが高齢者で、よく理解しないまま契約している人がほとんどと考えられ、被害が顕在化しにくい状況があることから、神奈川県弁護士会の有志らが弁護団を組織した。ジャパンライフ被害対策中部弁護団とともに、全国各県での弁護団の立ち上げを働きかけ、連携して活動していく方針だ。

石戸谷弁護団長は、「預託法は、豊田商事のような事件の再発防止を掲げて立法されたが、安愚楽牧場、ジャパンライフと大型の消費者被害を続発させており、被害防止のためには根本的に見直しが必要」とも指摘している。
 
 石戸谷豊弁護団長 港共同法律事務所 ☎045-212-3517

「東京投資被害弁護士研究会」でもジャパンライフの相談窓口が設置されている

 ☎03-3556-3607(相談受付窓口:佐藤千弥弁護士)

消費者庁天下り問題⑰ ジャパンライフを「詐欺」で刑事告発  被害対策中部弁護団

ジャパンライフ被害対策中部弁護団は1220日、「ジャパンライフ」(東京都千代田区、山口隆祥会長、山口ひろみ社長)が行った一連のレンタルオーナー商法と業務提供誘引販売は、預託法違反、特定商取引法違反、出資法違反のみならず、詐欺に該当するとして、同社と経営者親子に対する刑事告発状を愛知県警に提出した。
杉浦英樹弁護団長は「消費者庁は、取引対策課課長補佐の同社への天下り問題などで的確な処分を行えず、4回の処分が繰り返されても、なお、被害の拡大が止まらない。財産の隠匿と散逸を食い止め、被害の拡大を防ぐために、消費者庁に代わって刑事告発に踏み切った。警察の早急な捜査と厳正な処分を求めたい」と話している。

4回の処分でも、被害拡大止まらず
消費者庁に代わって、刑事処分求める

告訴状によると、告発事実に、①レンタルするとしていた磁気ネックレスが大幅に不足し、負債額が過少に計上されているなどの「預託法違反」(消費者庁が違反を認定)②2016年度末時点で338億円の赤字だったにもかかわらず、事実を故意に告げずに契約をした「特定商取引法違反」()③元本と年率6%の利回りを保証すると説明し、不特定多数の人から、磁気治療器の販売代金名目で、業として預かり金を受け取った「出資法違反」大幅な債務超過で、契約残高が1843億円(2016年度末)に上り、同社の事業自体継続性がなくいずれ破綻が必至という状況で、レンタル―オーナー契約や業務提供誘引販売契約の代金を支払わせる「詐欺」-を挙げている。

911日付で、同社が消費者庁からの指導を受けて顧客に送付した通知によると、2016年度末時点の純資産額は約338億円の赤字、契約残高は1843億円、預託者の数は、20177月時点で6855人としていた。

愛知県内の70歳代の男性は今年1015日、同社が主催するセミナーで、同社の山口隆祥会長、山口ひろみ社長から、「生命保険を解約してジャパンライフの商品を購入した方が有利だ」と説明された。1030日には、同社従業員から「資産がたくさんあるので、活動費(年率6)の支払いは大丈夫だ」と言われ、同社の財産状態には問題がないと誤認して1031日に業務提供誘引販売取引契約をし、2680万円を支払った。

愛知県警は、1人の被害者では会社ぐるみで違反行為が行われたか定かではないなどを理由に、現時点では告発状を受理していない。
 
 杉浦団長は、「ジャパンライフは、消費者庁から4回の業務停止命令を受けてもなお『リース債権譲渡』などと名称を変更して顧客から金銭を募る活動をやめようとしておらず、被害を防止し拡大を防ぐには、警察による実態解明と厳正な刑事処分が必要」と訴えている。
 消費者庁の岡村和美長官は同日、「被害者が全国多数にわたる重大案件で、さまざまな方たちが被害防止拡大救済のために動いてくださることは行政としても大変ありがたいと思っている」と話している。
 
 しかし、本来は、刑事告発は消費者庁のなすべき仕事ではないのか。1214日には「先物取引被害全国研究会」が消費者庁にジャパンライフへの刑事告発を申し入れているが、消費者庁には、ジャパンライフを刑事告発する義務がある。4回も行政処分をしなければならないこと自体問題があるが、4回処分をしても、今なお、被害が拡大している現状がある。

 消費者庁は同社への立入検査を行っており、刑事告発のための材料をどこよりも入手し、被害事例も弁護団より持っているはずだ。消費者庁自ら現場レベルでの勧誘行為の「故意性」まで認定しておきながら、放置することはできまい。
 
 なぜ、消費者庁は刑事告発をしないのか。消費者庁取引対策課では、「個別事案については捜査の支障になる恐れがあるため、告発をしているかどうかも含め明らかにしない」としか回答しない。

 これまでも5月の東京国際大会など業務停止命令違反の可能性を指摘してきた。遅ればせながら4回目の行政処分は、業務停止命令違反の状態だと消費者庁自ら認めた内容に他ならない。これで告発していないのであれば、あまりに情けない。過去、国の事案に関して刑事告発の事実を公表した例は複数ある。刑事処分にも時間を要する。刑事告発を行うことは当然として、消費者庁が告発したという事実を速やかに公表することが不可欠ではないのか。

消費者庁天下り問題⑯ 消費者庁ジャパンライフ4回処分しても、まだ被害拡大止められず

消費者庁が1215日に行ったジャパンライフ(東京都千代田区)への4回目の行政処分のポイントを整理しておく。預託取引(レンタルオーナー商法)、連鎖販売取引(マルチ商法)に再度1年間の業務停止命令を出したことで、レンタルオーナー商法とマルチ商法、モニター商法(1117日に1年間の業務停止命令)を押さえた。ただし、同社は111日から「リース債権譲渡販売」に移行させているため、4回処分をかけてもまだ被害の拡大は止めらない状況がある。4回も処分しなければならないこと自体、過去の処分時期や内容、公表に問題があったことを露呈しており、本来は業務停止命令違反、刑事告発で決着させるべき事案といえる。事業者側のさまざまな準備に、十分すぎる時間を与えてしまった。

「リース債権譲渡販売」放置されたまま

今回の処分は、4回も処分をしてもなお、同様の業務が継続できる点が最大の課題といえる。ジャパンライフが今年11月から開始したと自ら広報する「リース債権譲渡販売」は、例えば、これまで100万円で販売してきた磁気ネックレスを70万円で販売し、これまでと同様の販売価格の6%を5年間で30万円を支払うという内容だ。

どれほど、現金を必要としているかがわかる契約内容になっている。

同社のセミナーで説明され、その日のうちに契約してしまったという相談事例が、ジャパンライフ被害対策中部弁護団に寄せられている。
ジャパンライフは4回目の処分のあと、自社のホームページで「2年以上も前にやめた業務に対しての停止処分ですから、現在の業務には一切関係ありません」と、山口隆祥会長名で反論しているが、これまでと同様の契約を、名称を変えて継続できる状況をまた残してしまった。
  
業務停止命令の流れ
  2回目 2017年 316日 訪問販売・連鎖販売取引・預託取引     9カ月
  3回目 20171117日 業務提供誘引販売取引(預託取引から移行)  1年間
  4回目 20171215日 連鎖販売取引・預託取引          1年間
  <解説>
1217日から訪問販売は再開できるが、実質的に連鎖・預託・業務提供
誘引販売は停止されているため、単純に布団などを販売することしかできない。
   ※100万円から600万円の磁気ネックレスや磁気ベストを、年利6%で売る商法
     預託取引(レンタルオーナー商法)→業務提供誘引販売(モニター商法)
     →「リース債権譲渡販売」ここは手付かず放置
3回目に処分したモニター商法はマルチでもあった
   ※4回目の処分は、モニタ―商法と
    してきたものにマルチ商法が含ま
    れてきたとして、連鎖販売(マルチ商法)に業務停止命令1年を出した。ただし、違反認定事実5事例のうち4事例が3回目と全く同じ。預託法の備え置き書面はこれまでは債務の過少計上、今回は公正と認められる書類を備え置いていない違反を認定したとして業務停止命令1年を出している。3回目の処分と4回目の処分を分ける必要があったのかどうか。また、そもそもなぜ業務停止命令違反だと認定・公表しないのか、疑問がある。
 
 同様の現物まがい商法で破綻した安愚楽牧場は、元社長
200万円で販売されている磁気ベスト
と元役員が預託法の故意の不実告知で実刑判決を受けている。ジャパンライフも、消費者庁から預託法と特商法で直罰が規定されている違反の認定を受けている。業務停止命令違反も含め、本来は刑事告発をして公表すべき。消費者庁は「個別案件について捜査に支障があり、告発しているかどうかを含め明らかにしない」と説明しているが、刑事告発を公表している前例はあり、この対応自体に疑問がある。ジャパンライフを行政指導した消費者庁取引対策課の元課長補佐の同社への天下り問題以降、消費者庁は後手後手の対応で被害を拡大させてきた。


 ジャパンライフ社は今回の行政処分について「真摯に受け止めるが、違反事実に該当するものがない。違反認定事実は3回目と全く同じ内容で、であれば、同時にご指導いただければと思う。預託法の備え置き書面についても、消費者庁の指導に基づき正式なものは6月末でなければ出せないという文書を出したが、処分をされた」と話している。

解約阻止すると報奨金 社内に「返金取下げ継続奨励金支給規定」

同日の処分時の会見で、新たに明らかにされたのは、契約者から解約の申し出があった場合に、解約を阻止して返金を取り下げさせると、その額の1%の報奨金を出すという社内規定の存在だ。

「返金取下げ継続奨励金支給規定」と銘打ち、
解約を阻止した場合の報奨金規定
返金取り下げに協力したチームリーダーやチームメンバーに、返金を取り下げた額の1%を報酬として支払うことが明記されている。

3000万円をチーム5人が協力して返金を取り下げさせた場合は、全員に6万円ずつ計30万円を支給することなどが明記されている。短期レンタルオーナー契約は、いつでも解約できることを契約書にうたっており、経営状況がかなり緊迫していたことがうかがえる。

公表された文書は2つで、その日付は722日付、926日付と、3回目の行政処分よりもかなり以前に出されている。本来なら3回目の処分でいち早く公表し、消費者に伝えるべきではなかったのか。

消費者庁天下り問題⑮ 全国先物研 消費者庁にジャパンライフの刑事告発申し入れ


悪質投資被害の救済に取り組む弁護士らで組織される「先物取引被害全国研究会」(代表幹事、大植伸弁護士)は1214日、消費者庁に対し、行政処分を繰り返すだけでは被害の拡大を防ぐことができないとして、ジャパンライフ(東京都千代田区)に対し、刑事告発を求める申し入れを行った。「ジャパンライフは消費者庁から行政処分を受けているにもかかわらず、『リース債権販売』と称して営業活動を継続し、現在も日々被害者が増大している。到底放置することはできず、刑事告発が必要」と指摘している。

行政処分では被害止められず
破綻まで被害顕在化しにくい

この時点で、消費者庁は同社に対し3回の業務停止命令を出しているが、違反認定をした預託法の故意による事実不告知や書面交付義務違反、特定商取引法の故意による事実不告知などには、刑事罰が直接規定されている。また、行政処分に従わなかった場合も刑事罰が規定されている。
 
 先物研では、刑事訴訟法239条2項は「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない」と定めており、消費者庁は告発する義務を負っていると指摘。
刑事告発が必要な理由に、①ジャパンライフに対しては、行政処分を行っても効果がないこと②被害が顕在化しにくいこと③現在も被害が続いている―の3つを挙げている。

    訪問販売、預託取引、連鎖販売の業務停止命令期間中の2016516日に、都内のホテルで約1000人を集めこれまでと同様の勧誘を行っていたことが国会審議で明らかにされ、消費者庁も「訪問販売に入り得る該当する」と答弁している。ジャパンライフに対しては、業務停止命令等の行政処分は効果がないことが明らかというべき

    ジャパンライフは、顧客を拡大することで既存の顧客に対し、経済上の利益供与を継続する商法を取っているため、破綻するまで被害が顕在化しにくい。弁護士が介入し、代金の返還を求めると、守秘義務条項を付けて和解(返金)に応じることから、大きな問題になりにくい

    行政処分を受けても、同社はホームページで違反認定事実を否定し、業務改善の姿勢が全く見られない。今年1114日付の広告チラシでは、111日から「リース債権販売」を開始したとするなど、行政処分を巧みにかわすような方法で営業活動の継続を図っている―としている。

1215日には、消費者庁は同社への4回目の行政処分を行い、預託取引と連鎖販売取引に再度1年の業務停止命令を出したが、「リース債権販売」は、継続して営業されている現状がある。

預託法違反では、安愚楽牧場の元社長が懲役26カ月、経理や顧客管理などを補佐していた元役員が懲役2年の実刑判決を受けている(20141016日東京高裁判決)。ジャパンライフと同様に、現物まがい商法で、預託法の故意による事実不告知が認められて処罰された事案であることも紹介している。


この申し入れに対し、消費者庁取引対策課は、「個別事案については捜査の支障になる恐れがあるため、刑事告発をしているかどうかも含め明らかにしない」とコメントしている。



2017年11月27日月曜日

消費者庁天下り問題⑭ ジャパンライフ3度目の業務停止命令 2度の処分後、新規契約2000人120億円

 2度の業務停止命令出しても、停止された磁気治療器のレンタルオーナー商法ではなく、磁気治療器を購入して体験し、拡販宣伝する業務提供誘引販売取引(モニター商法)だとして、同様の契約を続けてきたジャパンライフに対し、消費者庁は1117日、ようやく、業務提供誘引販売取引も1年間停止する3度目の業務停止命令を出した。消費者庁は事業者の主張を是として処分をしたが、2度目の行政処分以降、新規契約者は約2000人、契約額は120億円(事業者報告)に上った。ジャパンライフは8月末には業務提供誘引販売を中止したとし、今度は同様の取引を「リース債権譲渡販売」として拡販するための説明会を全国各地で展開している。消費者庁取引対策課元課長補佐の同社への天下りが発覚する前後から、消費者庁は後手後手の対応で、消費者被害を拡大させてきた。今回の処分は、2016年度末の純資産額が338億円の赤字であることを顧客に通知した同事業者の破綻につながるのか。それともまた、イタチごっこを繰り返すのか。行政処分は、新たな消費者被害の防止が最大の目的だが、対応の遅れは致命的といえる。業務停止命令違反を問うには刑事告発が必要だが、消費者庁は刑事告発をしているかどうかも、明らかにしていない。

後手後手対応では、被害抑止できず
レンタルオ―ナー  業務提供誘引販売取引 ➡今度は「リース債権販売」

ジャパンライフの業務提供誘引販売のチラシ
 ジャパンライフは、磁石がびっしり埋め込100万円から600万円もする磁気治療器(ネックレスやベルト、ベストなど)を販売し、レンタルするとして、1年間に販売価格の6%を「レンタル料」として支払ってきた。業務停止命令を受けた後は、拡販宣伝をするという名目で「月額活動手当」として、これまでと同様、年6%を支払う契約を続けていた。

 1度目(20161216)と、2度目(2017316)の行政処分で、1年間の業務停止命令が出されたのは、訪問販売と預
託取引、連鎖販売取引(マルチ商法)。ジャパンライフは、業務停止命令の対象にならない業務誘引提供販売取引だと主張してきた。
上記写真の磁気ベルトは320万円。購入して装着して
体験し、友人や家族などに紹介するという名目で、
月額1万6000円の「月額活動手当」がもらえる仕組み


事業者の言い分「是」
業務提供誘引取引を1年間停止
 3度目の今回、消費者庁は、この業務提供誘引販売取引に1年間の業務停止命令を出した。
消費者庁は、事業者の主張通り、新しいビジネスとして、「商品を購入し、商品を自ら装着して体験をし、友人、知人、家族に紹介をして、宣伝拡販すると業務提供利益を得られる」業務提供誘引販売取引をしていたとして、行政処分を行った。
業務提供利益(対価)は、購入した商品の定価の6%。写真の磁気ベルトの定価は320万円。
これを購入して装着して体験すると、拡販宣伝費の名目で、年間16000円の月額活動費が入る仕組みだ。
業務提供誘引販売の概要書面。
これが整備されたのは2017年
6月以降と見られる
ノルマや出来高払いなどは一切なく、自ら装着するだけの契約者もいた。取材では商品が開封されないまま、月額活動手当が支払われているケースも確認できた。
契約期間は、最長20年。商品については一部支店で預かっているものもあるが、ほぼ、提供されていたとみられる。
購入した磁気治療器のその後の扱いについて、契約の概要書面には何の記載もない。

338億円の赤字、故意に告げず
解約、複数の従業員が面接し妨害
 認定した違反事実は、①勧誘目的等不明示(「エステやマッサージが受けられる」などと、勧誘目的を告げていない)②故意の事実不告知(20177月に公認会計士から取締役会に約338億円の大幅な債務超過があることが報告されたにもかかわらず、判断に影響を及ぼす大幅な債務超過があるという事実を故意に告げていない)③契約書面不交付(契約書面を交付していない)④迷惑解除妨害(解約を申し出た人に、複数の従業員との店舗での面接を強い、解約を妨げた)4つ。

業務停止命令と併せて、2度の業務停止命令以降に契約した顧客に、1218日までに業務停止命令の内容や2016年度末時点の純資産額が338億円の赤字(債務超過)であることなどをわかりやすく通知し、同日までに消費者庁長官
説明11月14日付で顧客に発送された
「リース債権販売開始」のお知らせを追加
に報告することを指示した。

70歳以上高齢者75
地方の高齢女性がターゲット
 全国の消費生活センターなどに寄せられたジャパンライフへの相談件数は、497件(20154月以降171013日登録分、2度の業務停止命令以降は160件)。70歳以上の高齢者が75%を占め、地方の高齢女性がターゲットになっている。相談者の最高契約金額は5億円、平均契約金額は約1850万円に上る。
  2度の業務停止命令後に、新たに業務提供誘引販売で契約した人の数について、佐藤朋哉取引対策課長は、月末時点で「約2000人、契約額は120億円」と報告したが、「あくまで会社の報告で、確認したわけではない」と説明した。
10

「財務状況知って、契約の妥当性判断を」
消費者庁の佐藤朋哉取引対策課長
顧客に預託法に基づいてジャパンライフから送付されている20177月末時点の「月次保有状況表」によると、レンタルオーナーの数は6855人、契約個数は132964個(契約額171470354000円)、実際にレンタルされている商品は2万6559個(契約額10077253000円)とされていた。この預託者数がどう変化したかを問う質問には「減っている傾向にあるが、正確な数字は分からない」としか、回答していない。なぜ破綻しないのかとの質問にも「わからない」とし、消費者に向けて「2016度末の段階で338億円を超える債務超過状態にあるという財務状況を理解して、判断することが重要。数年間にわたって年6%を払う契約の妥当性について判断いただく必要があるのではないか」と、佐藤課長は話した。

ジャパンライフHPで反論
「事実無根、経営上の心配ない」
リース債権の購入に転換したと
説明し、全国各地でリース債権
販売開始の説明会を開催している
一方、今回の処分に対し、ジャパンライフは「業務提供誘引販売は8月末ですでに営業を終了している。そのため、通常通り営業を行っている。今後については、顧問弁護士に対応を確認している」とコメントした。
同社のホームページでは、「業務提供誘引販売契約は8月末で終了し、現在一切行っていない」とし、「仕分けの考え方の相違で、経営上の心配はない」「解除妨害は一切行っていない」などと説明。「消費者庁の杜撰な調査と事実無根の一方的な思い込みで、こういう処置を取ったことに対し、当社は大変憤りを感じ、早速当社の顧問弁護士に法的処置を依頼した」と、山口隆祥会長名で反論している。
ただし、実際は9月の段階でも業務提供誘引販売で契約をさせていることが確認できた。今回の行政処分の違反認定でも、9月に契約した事例が示されている。

「リース債権」として販売開始
全国34店舗で説明会
ジャパンライフは1114日付で、「レンタルユーザー契約」から「5年物リース購入契約」に転換したとするお知らせを顧客に送付していたことが分かった。111日から装着タイプ磁気治療器リース債権の販売がスタートしたとして、19日から26日にかけて全国34店舗で説明会を開催している。参加者全員に6000円相当のノニジュースがプレゼントされるという。
届いたお知らせの「リース債権収入例」を見ると、額面100万円のリース債権を70万円で買い、月々5000円を5年間計30万円を受け取った後、ジャパンライフが売り渡した債権を、5年後の債権価格70万円で買い取るとしている。債権総額を約1295000万円に限定し、契約者数を約3700人としている。
このリース債権譲渡販売は特定商取引法の適用対象になるのか。1122日の長官会見で岡村和美消費者庁長官は、「個別案件のため回答できない」としか答えなかった。金融庁は「金融商品に該当しない」、経産省は「リース契約には該当しないと考えられる」と答えている。消費者庁は、特商法の役務を広く解釈し、迅速に対応することが求められる。

消費者庁は、2度も業務停止命令をかけてなお、約2000人約120億円の新たな契約をさせてしまった。3度目の業務停止命令を出してもまた新たな取引で説明会が行われている。一体いつになったら、新たな消費者被害を止めることができるのか。

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解説 
   
新たな契約、いつ止められるのか
業務停止命令違反、絵に描いた餅なのか
今回の行政処分は、手をこまねいたまま、1216日までの1年の業務停止命令期間を終えるという最悪の事態は、回避したとはいえる。
しかし、レンタルしている商品が大幅に不足している現物まがい商法で、既契約者への6%の支払いを新たな契約で賄っている自転車操業であることを、消費者庁は20159月と10月に行った同社への立入検査で、把握していたはずだ。
当時の担当者はほとんど異動させられてしまったのかもしれないが、いまだに新たな契約を拡大させている現状への危機感を共有できているのか、今一度問いたい。本当に、この時期まで何もできなかったのか
今回、故意の事実不告知で、「20177月に公認会計士から大幅な債務超過があることが報告されたにもかかわらず、故意に告げていない」ことを認定した。
しかし、今年3月の2度目の処分で、消費者庁が公認会計士等による外部監査結果の報告を求めたのは、51日まで。5月末までに顧客に通知することを指示していた。にもかかわらず、2015年度末での純資産額が約266億円の赤字、2016年度末時点の純資産額が338億円の赤字である通知がジャパンライフから顧客に発送されたのは、828日付と911日付だ。
その後で、消費者庁長官は長官会見の質問の中で、約339億円の赤字であったことを回答したが、自ら公表したわけでもない。
今回の指示処分の内容も、①公認会計士の監査意見は「意見不表明」だったこと②会計監査の完了時期は20196月末の予定だが、過去の決算整理仕訳のうち根拠を示すことができない仕分けを取り消して公認会計士の確認を受けた結果が約339億円の赤字だったことを、わかりやすく伝えることを求めている。しかし、このような内容では、高齢者に、わかりやすくなど伝えられない。
「仕分けの考え方の相違。経営上の心配はない」というジャパンライフの説明の方が、よほどわかりやすい。
ジャパンライフは、2度の業務停止命令を受けた後も、4月の売り上げが過去最高の35.6億円、7月の売り上げが約39億円もあるなどの分かりやすい資料を顧客に送ったり、説明したりしてきた。この額は正しいのかとの質問にも、消費者庁は「違反認定には入っていない。公認会計士からの報告は債務超過」としか回答しなかった。読んでも理解できない高齢女性に、いまだに判断を委ねている。マッサージをしてあげるなどと勧誘員と日常的に接している状況があり、どこまで伝わるのか懸念される。
そもそも、公認会計士の外部監査を受けて報告を求めるような指示しか出せなかった前回の処分に問題がある。消費者庁自らが粉飾決算であることを認定していれば、こんなことにはなっていない。せめて不正調査を命じ、早い段階で公表することはできなかったのか悔やまれる。
20159月の同社への立入検査で元消費者庁取引対策課課長補佐の天下りが発覚して以降、取引対策課の歯車が狂ってしまったように見える。天下りの影響で立入検査自体が遅い。さらに1度目2度目の処分で、同社の商法が、約2000億円の消費者被害を出した豊田商事事件と同様の現物まがい商法だったことがきちんと周知できていれば、こんなことにはなっていない。再三の質問にレンタルオーナーとレンタルユーザーの数すら答えず、テレビはどこも放映しなかった。最初に適切な行政処分を行っていれば、2度、3度の行政処分など必要なかった。失策を取り戻すには、相当の覚悟でのぞむしかない。消費者被害の防止は消費者庁の最大の使命だ。
豊田商事事件では、投資した高齢者は世間から「欲ぼけ老人」と、非難された。勧誘者が高齢者に巧みに近づき、高齢者を「お父さん、お母さん」と呼び、掃除や洗濯、炊事などまでして信用させていたが、その実態が伝えられなかったためだ。
なぜ、高齢者はジャパンライフと高額な契約をしてしまうのか。なぜ、信用して契約を重ねてしまうのか。本来は、それが一般の人に理解できるように違反を認定し、その手口を公表すべきだ。過去3回の行政処分の違反認定では、無料でマッサージやエステをしてもらうために店舗や大会に参加したことしか伝わらない。勧誘段階での、不実告知は認定できないのか。
5月の段階では、ジャパンライフの申込書は業務提供誘引販売取引になっていなかったことが確認できた。6月以降、ジャパンライフが業務提供誘引の取引形態を整備するのを待って、その後の違反を認定したのでは、あまりに時間がかかる。
さらに、本紙では今年2月の段階で月額活動費の名目で、訪問販売で新たな契約をさせた事例を、契約書を示して報道した。5月には都内のホテルで国際大会と銘打って約1000人を集めて、「腰痛や膝痛が治る」「すべての病気の原因は血行。全部解決するのがジャパンライフの装着タイプ磁気治療器」などと言って、大規模な勧誘を行っていたことを報じた。共産党の大門実紀史参議院議員が国会で取り上げ、音声記録と映像を入手したとして消費者庁に提供するとまで述べていた。消費者庁もこのホテルでの勧誘は「訪問販売に入り得る」と答弁していた。なぜ、業務停止命令違反を認定し、刑事告発をしないのか。
12月に改正施行される特定商取引法は、悪質事業者への執行強化、罰則強化が目玉だ。業務停止命令違反の罰則が「懲役2年または300万円以下または併科」から「懲役3年または300万円以下または併科」に引き上げられる。罰則の強化は絵に描いた餅に過ぎないのか。次の一手に期待したい。

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 契約の取り消し可
クーリング・オフも
 
消費者庁取引対策課が1117日に、各地の消費
11月17日付で取引対策課が、各地の消費生活センター宛てに出した文書
生活センター宛てに出した文書を紹介しておく。今回の行政処分で、業務提供誘引販売取引の契約をした人に、どのようなあっせんや助言ができるか、わかりやすく説明されている。
 判断に影響を与える故意の重要事項不告知が認定されているため、契約の取り消しが可能だ。
 契約書面不交付が認定されているため、必要な記載がない契約書面が交付された場合や、契約書面が交付されていない場合は、業務提供誘引販売のクーリング・オフ期間である契約書面を交付された日から20日間が過ぎても、クーリング・オフができる。
 業務提供誘引販売取引の同社の契約概要書面を見ると、「定価」契約はレンタルオーナー契約の短期契約が移行したものとみられ、契約期間の最長は3年間、契約書面受領日から365日が経過するまでは解除できるとしている。「割引」契約は、レンタルオーナー契約の長期契約が移行したものとみられ、契約期間の最長は20年。契約書面受領日から20日が経過するまでは解除できるとされている。
契約書面が交付されていない場合や記載内容に不備があった場合は、いずれの契約も、いつでもクーリング・オフができる。
ジャパンライフでは、解約に応じることで国民生活センターや消費生活センターとトラブルになることを避けてきたとみられる。ただし、最近では、分割払いにされたり、値切られたり、支払われない事例が出てきている。

                        日本消費経済新聞11月25日号から

2017年11月19日日曜日

葛の花「飲むだけでは痩せない」機能性表示食品16社に景表法措置命令

摂取するだけで、だれでも容易に痩せられると誤認させる表示をしたとして、消費者庁は117日、葛の花由来イソフラボンを有効成分とする機能性表示食品を販売している16社に、景品表示法に基づく措置命令(優良誤認)を出した。機能性表示食品への措置命令は初めて。機能性の根拠を示す論文の中から、一部の数字のみを強調して痩身効果を期待させたり、ズボンがぶかぶかになるほど痩せた写真を掲載して購買意欲をあおっているが、試験結果では、ウエストが90㎝を超える肥満の人が、1日の摂取カロリーを2000㎉程度に制限し、毎日通常より2000歩も多い8000歩から9000歩歩いて12週間飲み続け、ウエストがわずか1㎝、体重が1㎏程度しか減っていない。消費庁は「約1㎏減、ウエスト約-1㎝は、通常1日の変動範囲」との見解を専門家の意見として示した。どの程度の効果があるか、自分にも効果が期待できるのかは、消費者の商品選択の必須要件だが、消費者に伝えられていない。販売を中止したのは3社。販売した対象商品全品を返金したのはニッセン1社にとどまる。多くの事業者が、希望あるいは強い希望があれば返金すると回答しているが、「ヘラスリム」「シボヘール」をインターネット上で販売している2事業者は、取材に応じない。


 措置命令を受けた16社の19商品 販売状況と返金対応
会社名 商品名 販売状況 返金対応
太田胃散 葛の花イソフラボン貴妃 中止(6月) 申し出者に返金
  葛の花イソフラボンウエストサポート茶    
オンライフ slimfor(スリムフォ ー) 継続 返金していない
CDグローバル 葛の花イソフラボン 青汁 検討中 返金するが要望ない
全日本通教 葛の花減脂粒 継続 申し出者に返金
ありがとう通販株 青汁ダイエットン 中止(8月) 申し出者に返金
ECスタジオ イージースムージー グリーン 継続 申し出あれば検討
協和 ウエストシェイプ  継続 申し出者に返金
スギ薬局 葛の花ウエストケア タブレット 販売一時中止 申し出者に返金
  葛の花ウエストケアスムージー 要望ある人に  
  葛の花プレミアム青汁 は継続  
ステップワールド ヘラスリム 取材に応じず
テレビショッピ ング研究所 葛の花サプリメント 検討中 申し出者に返金
Nalelu 葛の花ヘルスリム2 7 継続 申し出者に返金
ニッセン メディスリム(12 粒) 中止(5月) 全品返金済み
日本第一製薬 お腹の脂肪に葛の花 イソフラボンスリム 継続 相談内容に応じ返金
ハーブ健康本舗 シボヘール 取材に応じず
ピルボックスジャパン onaka(おなか) 継続 返金するが要望ない
やまちや 葛の花由来イソフラ ボン入り きょうの 青汁 継続 申し出者に返金
                        上から4社は、一般消費者への誤認排除、再発防止、不作為を命令
                   残りの12社はすでに一般消費者への誤認排除措置を講じているため、再発防止と不作為を命令

運動や食事制限、条件示さず
 わずかな効果を過大に強調

 同日、措置命令を受けたのは、太田胃散(東京都文京区)、全日本通教(同杉並区)、協和(同福生市)、スギ薬局(京都市)、ステップワールド(東京都渋谷区)、テレビショッピング研究所(同大田区)、ニッセン(京都市)、ハーブ健康本舗(福岡市)など16社の19商品。タブレット状のものがほとんどだが、お茶や青汁なども含まれている。一部は店舗でも販売されていたが、ほとんどが通信販売で提供されていた。
 
 消費者庁によると、201510月~20178(各社で異なる)にかけて、自社のウェブサイトや新聞、雑誌、テレビ、一部ラジオなどで、「摂取するだけで、だれでも容易に、内臓脂肪や皮下脂肪が減少し、見た目でも変化が分かるほど腹部の痩身効果が得られる」と誤認させる表示をしていた。消費者庁がその表示を裏付ける合理的な根拠の提出を求めたが、各社の提出資料は合理的な根拠とは認められなかった。
 
16社19商品の違反認定事実
「あたかも、対象商品を摂取するだけで、だれにでも容易に、内臓脂肪(および皮下脂肪)の減少による、外見上、身体の変化を認識できるまでの腹部の痩身効果が得られるように示す表示をしていた」

実験結果への消費者庁の見解(専門家の意見)
BMI2530の者が対象
●運動と食事制限により、摂取エネルギーを消費エネルギーが上回る状態を維持することが必要
(運動では、12週間平均で約80009000/日、これは通常より約2000/日多い)
●実験結果の約1㎏減、ウエスト約-1㎝は、通常1日の変動範囲

「食品食べ痩せることはまずない」
消費者庁 大元慎二課長
 
 消費者庁表示対策課の大元慎二課長は、「試験結果のデータをしっかり見ておけば、このような表示は当然できない。内臓脂肪を減らすのを助ける効果を超えた部分に関しては、根拠はない」と指摘。試験結果からは「運動と食事制限により、摂取エネルギーを消費エネルギーが上回る状態を維持することが必要」と、専門家の意見を踏まえた消費者庁の見解 (上記参照)を示した。
「食品を食べて、痩身効果を得ることはまずありえない。痩身効果を求めるのであれば、消費エネルギーが摂取エネルギーを上回る状況を作ることが重要で、食品を食べただけで痩せることはまずない」と話した。もともと届け出た表示に痩身効果は含まれておらず、痩身効果はうたえない。

消費者庁のデータベース検索
消費者、試験の前提条件把握できず
 違反が指摘された広告表示では、腹部の脂肪をつまんだ写真とともに、「運動×食事制限しなくても、皮下脂肪、内臓脂肪に強力にアプローチ」などと掲載。ズボンがぶかぶかになり、ウエストが細くなったことを強調する写真とともに「12週間でウエスト-0.8㎝」「試験で実証!お腹の脂肪の断面積が12週間で20㎠減少!」などと大きく記載されている。
機能性表示食品は20154月から、政府の規制改革会議主導で導入された制度だ。機能性や安全性の根拠を事業者の責任で届け出る。消費者庁のデータベースで機能性の根拠となる論文が示されているはずだが、公表されている資料からは、消費者が効果の程度を知るためには必要不可欠な「試験の対象者や前提条件」を把握することができない現状があった。

最終製品用いた臨床試験
対象者のウエスト平均約96
 
 「ヘラスリム」(届け出ステップワールド)と「メディスリム」(同ニッセン)2商品については、消費者庁に届け出た機能性の科学的根拠として、最終製品による臨床試験結果が添付されている。ただし、その論文は英語で、英語が苦手な人は読む気になれない。
 
 試験の対象者は、BMIが2530の人たち。日本ではBMIは25から肥満とされ、平均身長約165㎝、平均体重約75㎏、平均ウエスト約96㎝、平均年齢約44歳の肥満の人たちで試験は行われている。標準体重はBMIが22の体重とされている。例えば、ウエストが細くなりたいと、身長158㎝、体重55㎏の人が摂取したとしても、BMI=体重(kg) ÷ {身長(m) ×身長(m)}22。試験と同様の効果は期待できない。

19000歩の運動量で試験
通常より2000歩多い
 
 しかも、試験期間中、試験対象者は毎日8000歩から9000歩を歩き、摂取カロリーは2000 kcal/日前後に抑えられている。

2016年国民健康・栄養調査結果」によると、一日あたりの平均歩数は男性で6984歩、女性で6029歩。2064 歳の歩数の平均値は男性7,769 歩、女性6,770 歩で、65 歳以上では男性5,744歩、女性4,856 歩とされている。肥満の人たちのデータは公表されていないが、消費者庁は専門家の意見を踏まえて、通常より2000歩程度多いとの見解を示している。

摂取カロリー12000 Kcal
消費エネルギー下回る

「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、3049歳男性の推定エネルギー必要量が2,650 kcal/日、女性は2,000kcal/日とされている。男女平均でしか摂取カロリーが記載されていないこと自体疑問だが、消費者庁は「運動と食事制限で、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回る状況を維持することが必要」という専門家の見解を示している。

効果の程度は、12週間摂取しても、外見上ウエストが細くなるほどの差は出ていない。肥満の人たちを3つのグループに分け、①葛の花抽出物を毎日300(うちイソフラボン54㎎ そのうちテクトリゲニン類42 mg)摂取する グループ(男性14人女性14)。②200㎎(同36㎎、テクトリゲニン類28mg)を摂取するグループ(男性13人女性15)。③比較対象の葛の花抽出物を含まないプラセボ(偽薬)を摂取するグループ(男性12人女性13)で、比較している。

内臓脂肪減らすのを助ける
総脂肪面積12週間で4.9%減 

 その結果、①のグループで内臓脂肪面積(試験前内臓脂肪面積の平均116.4)が、8週間目と12週間目にそれぞれ-8.9(7.6%減)、-15.3(13.1%減)減少し、総脂肪面積(試験前平均327.3)は-8.8(2.7%減)、-16(4.9%減)減少。BMIが-0.5、-0.8減少したという内容だ。試験前の平均95.9㎝のウエストや平均75.3㎏の体重がどの程度減ったのかは、折れ線グラフで読み取るしかなく、正確な数字は示されていない。

ただし、③のプラセボ群でも、数値の減少は見られる。8週間後、2週間後で内臓脂肪面積は(試験前平均95.3)はそれぞれ-1.5(1.6%減)、-4.1(4.3%減)、総脂肪面積(試験前平均323.5)は-5.4(1.7%減)、-2.6(0.8%減)減っている。BMIは折れ線グラフから読み取るしかないが、-0.2から-0.3は減少していると見られる。

臨床試験の結論は、皮下脂肪面積では有意な減少は見られなかったが、内臓脂肪面積の減少ではプラセボ群と比較して有意な差があったとしている。

「肥満の人が、通常より多めに運動をし、食事制限をした状況下で、内臓脂肪を減らすのを助ける機序が推論できる」という内容で、一定程度必ず減ると保証するものではない。

グラフで差を大きく見せる
消費者、効果を過大に誤認
 
 他の17商品については、最終製品の臨床試験ではなく、機能性関与成分に関する「研究レビュー」で、機能性が評価されている。上記論文を含めた同じグループの人たちの4つの論文を総合的に解析している。

今回、問題とされた広告では、研究レビューで解析に用いられた1つの論文から、折れ線グラフを用いて、大きな差があるように見せるグラフが作成されている。

12週間で体重が1㎏減少し、お腹の脂肪の断面積が20㎠減少し、ウエストが0.8㎝細くなることが、折れ線グラフを用いて大きな差があるように表現されている。しかも、どんな人がどのような条件で試験したかが、全く示されていないために、消費者に、自分にも大きな効果があるように誤認させている。

消費者庁に届け出された研究レビューには、元の論文が添付されておらず、消費者は試験の対象者の詳細や前提条件を知ることはできない。その論文はネット上では検索できず、雑誌を取り寄せたり、国会図書館などに出向いたりしなければ、読むこともできなかった。制度上あまりに問題がある。

12週間でウエスト0.8㎝減 
実は、元のウエスト92.8

 元の論文によると、被験者群のBMIは2530未満、平均体重は73.7㎏、平均ウエスト92.8㎝、平均腹部総脂肪面積は314(内臓脂肪面積112㎠、皮下脂肪面積237)だった。
平均身長の記載はない。

ちなみに、プラセボ群のBMIは25以上30未満、平均体重は73.5㎏、平均ウエスト92.9㎝、平均腹部総脂肪面積323(内臓脂肪面積114㎠、皮下脂肪面積224)だった。

19000歩前後の運動(英文の論文より多い)とエネルギー摂取量1日2000 kcal前後という通常より多い運動をし、エネルギー摂取量が制限された条件で行われている。

試験の結果は、葛の花イソフラボンの成分であるテクトリゲニン類を134.9㎎摂取した被験者群が、12週間で体重が1.1㎏減り、プラセボ群は0.1㎏減って、その差が1㎏。ウエストは被験者群が0.9㎝減、プラセボ群が0.1㎝減で、その差が0.8㎝。腹部総脂肪面積は、被験者群が36㎠減り、プラセボ群が15㎠減り、その差が20㎠だったという内容だ。

体重が約74㎏、ウエスト約93㎝ある人が毎日9000歩歩き、1日の摂取カロリーを2000 Kcalに制限して12週間飲み続け、体重が1.1㎏、ウエストが0.9㎝減った。その差は1日の誤差の範囲であると、試験結果が適切に伝えられた場合に、消費者はこの商品を果たして選択するのだろうか。

トクホ関与成分で許可
ウエスト気になる方の許可疑問

 東洋新薬からの申請に基づき、葛の花エキスを関与成分としたトクホ (特定用保険食品)201632日に許可され、「お腹の脂肪が気になる方、お腹周りやウエストサイズが気になる方、体脂肪が気になる方、肥満が気になる方に適した食品」とされている。

トクホの場合は根拠資料が公表されていないが、根拠資料が上記の論文だった場合は、なぜ、ウエストサイズが気になる方への表示が許可されているのか疑問が残る。肥満でなくてもウエストサイズを気にしている人は多い。肥満ではない人のデータはない。

機能性表示食品への届け出が行われた後で、東洋新薬からトクホの許可申請が出され、現在東洋新薬の8商品でトクホが許可されている。しかし、実際には販売されておらず、販売予定も示されていない。機能性表示食品として、45商品が販売されている。

「機能性成分の効果の程度」
消費者分からないまま商品選択

 政府の規制改革会議は、事業者の届け出資料の簡素化の検討を求めているが、消費者庁のデータベースを検索しても、公表されている届け出資料から、一般消費者は、試験の対象者の詳細や前提条件を知ることすらできない現状がある。商品選択に不可欠な機能性関与成分の効果の程度が分からない。

さらに、一般消費者が消費者庁のデータベースを検索してから、商品を選択することは想定しがたい。

事業者の責任で、機能性関与成分の効果をうたって販売している商品に、機能性関与成分の効果の程度や、どのような人を対象としている商品かが、正しく記載されないまま販売されているおかしな現状がある。

しかも、ウエスト90㎝を超える人たちの試験結果しかないにもかかわらず、自分にも効果があるように誤認させている。期待した効果がないものを買わされたのでは、金銭被害につながる。日本の食への信頼を揺るがしかねない。制度の見直しが求められる。

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ニッセン、太田胃散

ありがとう通販は 販売中止

 措置命令を受けた16社のうち、ニッセンと太田胃散、ありがとう通販はすでに販売を中止している。スギ薬局は、販売を一時中止し、要望がある人には販売を続けている。

 テレビショッピング研究会とCDグローバルは、今後の販売について「検討中」と回答している。返金対応では、販売した商品全品を返金する措置を講じたのはニッセン1社にとどまっている。

 ニッセンは「顧客に真摯に適切に対応する」との方針から、91日から6日かけて購入者全員 1136人 に会社から連絡をし、全額返金する措置を取った。商品も本年5月に販売を中止している。

全品返金ニッセン1
返金対応に各社で差 

太田胃散も6月には販売を中止し、「顧客から要望があった場合は返金する」と話している。

ありがとう通販は今年2月に新規顧客への販売を中止し、8月末にはすべての販売を打ち切った。希望者への返金にも対応している。「措置命令を真摯(しんし)に受け止め、反省している」とし、「機能性関与成分がトクホの関与成分ということもあり、消費者利益に資するものをということで手がけた経緯があり、困惑・混乱しながら対応した。根拠論文の精査まで事業者が対応するのは難しく、より良い方向に行くきっかけになってほしい」と話す。
 
 多くの事業者は申し出た顧客には返金に応じると回答しているが、それぞれの対応には差がある。申し出た顧客にはすべて返金すると回答した事業者、原則未開封の商品に対応するとした事業者、商品自体に問題はないため、説明しても納得できない場合や強い希望があった場合に返金すると回答した事業者など、事業者によって、受け止めや返金の対応に差があった。

ステップワールド、ハーブ健康本舗
取材に応じず

「ヘラスリム」を販売するステップワールドは、電話取材には応じずメールでの対応を求めたが、メールで質問を送付し何度回答を求めても1週間たっても回答は着ていない。

「シボヘール」を販売しているハーブ健康本舗は、「今は担当者がおらず、終日帰ってこない」「担当者がいつ帰るかわかる人間がいない」などの回答を連日繰り返し、その対応がマニュアル化されている。これら2社の対応は、過去に取材してきた悪質業者と酷似している。

さまざまな事業者が機能性表示食品を取り扱っている状況があることがうかがえた。
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「個人の感想」「個人差あり」 表示の効果打ち消せず

 今回の措置命令では、「ウエスト53㎝のパンツがはけたときは、本当に驚き」「ウエストが細くなった!友人からも大絶賛」などの個人の感想を掲載し、「※個人の感想です」「効果を保証するものではありません」などと記載しても、その表示から受ける認識を打ち消すものではないとして11社の違反を認定している。

11社で違反を認定
「打消し表示」の考え方実践

違反が認定されたのは、「ウエストが細くなった!友人からも大絶賛されました。ウエストが細くなっていくのを実感できるんですよ。本当にびっくりしました」などの感想の後に「※個人の感想であり、実感には個人差がございます」と記載した場合。

「夢のワンサイズダウン」「もう隠さなくて大丈夫」「毎月1㎏ずつ減ってきているんです。ぽっこり、ぶよぶよだったお腹にくびれが・・・」と個人の感想を記載した後に「※使用感には個人差があります」と記載した場合。
くびれのある細見のウエストの写真とともに「ズボンをスラっと履けるのが、こんなに快感だったなんて!」と記載し「※2:上記臨床試験結果は平均値であり、すべての方に効果を保証するものではありません」等と記載した場合など。
 
 消費者庁は7月に「打消し表示に関する実態調査報告書」をまとめ、この中で、体験談を用いる場合の留意事項を示していた。食事や運動など必要な事項がある場合や、BMIが25以上など特定の条件の者しか効果が得られない場合、体験談を用いることで、だれでも効果が得られるような認識を抱くとして、事業者が行った試験の被験者の数や属性、体験談と同じような効果や性能等が得られた人が占める割合、得られなかった人が占める割合などを明瞭に表示すべきとしていた。

今回の措置命令は、実態調査報告書で消費者庁が示した景品表示法上の考え方を、個別の行政処分に初めてつなげた事例ともいえる。今後も、この考え方に沿って、広く個別事案の処理につなげていくことが期待される。

                        日本消費経済新聞11月15日号から