判断力不足につけ込まれて契約してしまっても、取り消せない
「認知症の高齢女性に、着物や宝石を次々購入させていた」
「認知症気味の母が、健康食品を大量に購入していた」
「父が認知症のため勧誘しないよう文書で通知したにもかかわらず、また新聞を契約させていた」
高齢化が進み、高齢者の相談が急増しているが、判断力不足につけ込んで購入させた場合は、取り消しの対象になっていない。
現在、消費者契約法で契約を取り消すことができるのは、5つの場合に限られている(消費者契約法①参照)。
消費者委専門調査委会の中間報告
「認知症の高齢者等など合理的に判断を行うことができない事情を利用して不必要は契約をさせた」場合の取り消しが、中間報告で提起されている。
適用範囲の明確化を図りつつ消費者を保護する観点から規定を設けることについて、
引き続き実例を踏まえて検討 としている。
適用範囲の明確化を図りつつ消費者を保護する観点から規定を設けることについて、
引き続き実例を踏まえて検討 としている。
事業者側委員から、
本人の能力を何を持って判断するのか、
「合理的に判断できない事情」では不明確(主観的要素と呼ばれる)、
客観的に見て「不必要な契約をさせた」ではまだ懸念がある(客観的要素と呼ばれる)
などの意見が出ている。
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民法90条の暴利行為は、
他人の窮迫、軽率、無経験を利用して(主観的要素)、
過当な利益を獲得する(客観的要素)場合が対象とされている。
今回の検討では、金額の過大性を問題とするのではなく、不要な契約の締結を問題として示しているのが特徴だ
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裁判では、
認知症の高齢女性に不必要な着物や宝石を購入させ、3000万円から4000万円あった預金が底をついていた事例、
70代後半の女性に半年の間に115点1000万円を超える装飾品を次々に販売した事例、
一人暮らしの高齢女性に700万の価値があると知っていた不動産を150万円で売却させた事例などは、
民法の公序良俗違反で無効とされている。
判断力の不足、知識・経験の不足だけでなく、心理的な圧迫状態、従属状態などを利用して不必要な契約をさせられている判例あり
夫が死亡し精神的に不安定な状態にあった女性に、異常に高額な易学受講契約を結ばせた事例、
呉服店従業員に売上目標を達成させるために支払い能力を超える着物の立替払い契約をさせた事例なども、公序良俗違反で無効とされている。
「街で男性に声をかけられ、アンケートに答えると、もう一度君に会いたいと何10通もメールがきて絶対に必要なジュエリーがあると勧められ、ダイヤのネックレスを買ってしまった」
「婚活サイトで知り合った男性に勧められ、投資用マンションを契約した」
「悩みを相談するために出向いた。お金を払えず息子が手首を切った人がいると言われ水晶の置物などを購入してしまった」など
男女の関係や、職場の上司・クラブの先輩など従属的な状況、弱っている人につけ込んだこんな相談事例はどうするのか。
中間報告では、考え方の背景にあるとしていた「適合性の原則」という言葉が、事業者側委員の反対で削除された。
実質的に同様の内容である「判断力が低下している消費者に対して、事業者は、その知識、経験、財産状況等に適合した勧誘が求められるという考え方がある」との表現が残ったことで、消費者側委員も了承したが、考え方があるという記載にとどまった。
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威迫による取り消しの追加
「粗野・乱暴」に限定か
困惑させて契約させた場合の取り消しで、「威迫による困惑」の追加が検討されている。
現在、困惑させて契約した場合の取り消し
困惑類型は、①不退去②監禁―の2つのみ。
事業者側委員は
「粗野または乱暴な言動を交えて威迫した」場合を要件とすることを提案している。
消費者側委員は、執ような勧誘や粗野・乱暴な言動を伴わない威迫行為、
パソコン画面に警告表示した場合などもあり、
その提案では、限定されすぎると反論している。
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