2017年4月10日月曜日

消費者庁天下り問題⑥ 「消費者庁は天下り認定できた」情報公開請求で再就職監視委の調査結果明らかに

消費者庁元課長補佐の現職中の求職規制違反を認定した内閣府再就職等監視委員会調査報告書の内容が329日、明らかになった。情報公開請求に応じた。消費者庁は5カ月も調査して違反を認定できなかったと報告していたが、監視委の調査報告書には、「消費者庁が調査で得た資料のみで、違反認定は可能と思われる」と明記されていた。元課長補佐が在職中にジャパンライフ社トップに面会を求める伺い書は、2通あった。さらに、元課長補佐のメールの中には、面会をうかがわせる予定表が含まれていたが、本人やジャパンライフ職員への聴取に活用していなかったことも明らかになった。元課長補佐が消費者庁総務課人事担当者に3度メールで相談をしていたが、報告書は、3度目のメールは具体的な違反が察知でき調査や指導を行うべきで「不適切と言わざるを得ない」と指摘。行政指導後の対応を1人でさせたり、電子データで業務資料を持ち出させたりするなど、管理義務への注意を怠った不作為は「違反行為を助長する」としていた。消費者庁は、違反が認定できる証拠を入手していたにもかかわらず、組織的に隠ぺいしようとし、いたずらに、調査を引き延ばしていた。行政処分の引き延ばしへの影響も懸念される。

「消費者庁の調査で違反認定できた」
再就職規制監視委 報告書に明記

情報公開請求で開示された内閣府再就職等
監視委員会の「
委員会調査報告書」
調査報告書は29ページ。一部黒塗りで提供された。28日から38日までに元課長補佐をはじめとする消費者庁職員人20人、関係者1人に計25回聴取し、供述や証言を裏付ける96点に及ぶメールや関係資料などから違反を認定していた。
 消費者庁は5カ月も調査して違反を認定できなかった理由として、「元課長補佐が在職中に同社トップに面会を求める文書を入手したが、元課長補佐から受けたストレスを解消するために同社職員が偽造したと供述し、その可能性が否定できなかった」と、民進党に回答していた。

J社トップ面会伺い書「2通」
本紙 情報公開請求で明らかに

しかし、報告書からは、面会を求めるうかがい書は、2通あったことが読み取れる。
1通目は「●月●日付で民間企業との再就職活動が可能になります。顧問契約をするに当たり・・・下記日程でご面会をお願い致したくお伺い申し上げます」と、書かれていたとある。報告書は以下に続く。しかし、その期間に会うのは再就職規制の関係で早すぎると考え、「会うのは早すぎる」旨を伝え、面会する約束を断った。再度、別の日に面会を約束する伺い書を提出し、同日決済を受けている。「下記日程でご面会をお願い致したくお伺い申し上げます」として、1カ月後の面会が決定された。2通も伺い書を偽造するというのか。

元補佐メールにも面会予定表
消費者庁、J社担当者の聴取に活用せず
 
 さらに、これに加え、元課長補佐のメールの中には、①ジャパンライフ担当者に私用メールアドレス等を知らせたもの②面会予定を有していたことをうかがわせる予定表―が入っていたが、元課長補佐やジャパンライフ担当者の聴取にこれらの資料を活用していなかった。
 報告書の最後には、「任命権者調査により得た資料のみによっても求職規制違反を認定することが可能であると思料するが、さらに、消費者庁において、上記メールを精査していたならば、任命権調査においても求職規制違反の認定に至った可能性が高いことを付言する」と明記されていた。

元補佐3回メールで相談
人事担当者の対応不適切 
 

消費者庁総務課人事担当者と天下りした
元課長補佐とのメールのやり取り
(3月30日の衆議院消費者特で大西健介氏が公表)
また、元課長補佐は求職活動について、消費者庁総務課人事担当者に3回もメールで相談していた。監視委は、2回目のメールの回答は「適切とはいえず、違反が進行していた行為者に対し、制度を認識不足であった状態で対応していたと指摘せざるを得ない」と報告。3回目のメールでは、「具体的事実の進行を察知し、求職規制に違反することがないよう調査または指導を行うべきであった」とし、「利害関係企業に該当するか判断しなければならず、その回答としては、不適切なものであったと言わざるを得ない」としている。
 330日の衆議院消費者特で、3回目のメールの一部が公表された。人事担当者は、元課長補佐に「具体的な相手方がある程度見込まれている状況であるであろうと推察しています」と返信しており、このときすでに、違反が進行していることを察知していたことがうかがえる。

顧問職のために資料持ち出し
不正許可申請でDVD書き込み

 
 このほか、元課長補佐は、利用目的や使用場所の虚偽の報告をして、CD、DVDドライブへの書き込み許可申請を不正に受け、業務関連資料データを自宅に持ち帰っていた。監視委は、「職務には全く不要で、離職後、顧問職遂行に備えた内容というべき」とも指摘している。黒塗りで詳細は分からないが、法令関係などの多くの資料も持ち出しており、ジャパンライフ顧問としてのアドバイス業務に使うことが目的だったと見るのが相当としていた。
 消費者庁元課長補が、ジャパンライフの顧問に就任したことが発覚したのは、2015910日。同社への立入調査で判明した。
 消費者庁が違反の疑いを内閣府再就職等監視委員会に報告したのは107日。すでに1カ月近くが立っている。任命権者調査(消費者庁の調査)に入り、「違反は断定できない」とする調査結果を報告したのは201621日。5カ月近くをかけていた。
再就職等監視委が委員会調査を決定したのは、報告から3日後の24日。324日には違反を認定し公表している。

組織的隠ぺいは明らか
調査引き伸ばし、行政処分に影響か

本来なら、違反の疑いを報告する107日時点で、違反を認定してもおかしくない事案に見える。監視委は報告書の中で、消費者庁に調査手法の助言を行う中で、「(証拠の)提出を促し続けてきたが、委員会調査開始決定後にようやく提出されたという状況だった」と指摘している。この指摘が、消費者庁の体質を如実に物語っている。

消費者庁は元課長補佐の天下りを未然に防ぐ機会があったにもかかわらず、そのチャンスを逃し、違反発覚後もその事実を組織的に隠ぺいしようとし、調査を長引かせたことは明らかだ。天下り調査の引き延ばしが、ジャパンライフへの対応策検討の遅れにも影響したと考えられ、行政処分を遅らせ被害を拡大さえていないか、今後、さらに検証が求められる。

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