2017年4月10日月曜日

消費者庁天下り問題⑤ 衆議院消費者特で民進党が追及「国賠訴訟されても仕方ない不作為」

330日の衆議院消費者問題特別委員会で、民進党が消費者庁天下り問題を追求した。大西健介氏は、元課長補佐の天下りは、消費者庁が独自に違反認定できたとする内閣府再就職等監視委員会の答弁を引き出した。20159月に天下りが発覚した立入調査の直後には、ジャパンライフ社に商品がないことを知っていたのではないかと厳しく追及し、知っていて行政処分までに13カ月もかけたのは不手際があったのではないかと問題視した。井坂信彦氏は、預託法で“調査すべき本丸は、現物の存在”として、元課長補佐が担当した2014年に立入検査をしない合理的理由がどこにあるのかと追及。当時の調査記録と協議内容を国会に提出することを要請した。「行政処分が結果的に3年遅れたことで甚大な被害が拡大したということになれば、国家賠償訴訟をされても仕方がない不作為」と糾弾した。

 元課長補佐の調査記録提出要請

「天下り、消費者庁が認定できた」 再就職監視委事務局長が答弁

 
天下りした元課長補佐が消費者2人からしか聴取しなかった
のは手心を加えたと思わざるを得ないと追及した大西健介氏
同日、民進党の大西健介氏は消費者庁元課長補佐の天下り問題に関連して、まず、消費者庁が元課長補佐の天下りを見逃した責任を問うた。消費者庁は、元課長補佐の天下りを防ぐことができず、発覚後、5カ月もかけて調査をし、結局、違反を認定しなかった。

大西氏は、元課長補佐と消費者庁総務課人事担当職員とがやり取りしたメールの一部を公表。「いくら本人が否定しても怪しいと気づくはず」と指摘した。さらに、ジャパンライフ社トップに元課長補佐が面会を依頼する社内の決裁文書(伺い書)を入手しているに
「消費者庁の調査で天下りを認定すること
は可能だった」と答弁した塚田治・
内閣府再就職等監視委員会事務局長
もかかわらず、消費者庁は「元課長補佐とのやり取りで受けたストレスを解消するために偽造した」というジャパンライフ社職員の言い訳をうのみにして、これも見逃していると批判した。「小学生の言い訳みたいな話」と揶揄
(やゆ)し、「メールのやり取りや伺い書だけで、5カ月もかけずに違反を認定できたのではないか」と内閣府再就職等監視委員会に質問した。これに対し、監視委の塚田治事務局長は、「消費者庁の調査で天下りを認定することは可能だった」と答弁した。消費者庁が意図的に調査を引き延ばし、天下りを隠ぺいしようとしたことが明らかにされた。

元補佐、2人しか聴取せず
「手心加えたと思わざるを得ない」

 次は、元課長補佐が本来、行政処分にする事案を、行政指導にとどめたのではないのかと追求した。元課長補佐が担当した当時と、再調査をして行政処分したときとで、何人の消費者から聞き取りをしたかを聞いた。違反調査の対象期間の多くが重複している。
元課長補佐は「10人の消費者に協力を求め、契約者本人から1人、家族から1人」(東出 浩一審議官)からしか、聴取をしていなかった。201612月の行政処分では、「数十人からきちんとした供述を得て、6人の供述を違反の証拠として採用した」()と回答を得た。大西氏は、再調査時は数十人から意見聴取ができるのに、なぜ2人からしか聞き取らなかったのかを問題視。「手心が加えられていると思わざるを得ない」と糾弾した。

処分まで、立検から13カ月
7カ月ルール」大きく逸脱

立入検査から行政処分まで、なぜ13カ月かかったのか。この理由について、松本消費者相は「初の預託法違反事案で、特に慎重な調査が必要だった」ことを挙げた。大西氏は、過去、特商法の同水準の処分で1年を超えているのはわずか1件のみ。事案着手から公表まで7カ月というルールからすると、どう考えても長くかかり過ぎていると批判した。   
この13カ月の間に、特商法改正法案の国会審議や河野太郎元消費者相が言い出した徳島移転の試行があり、これらが影響した懸念もあると追及した。2回目の処分が2017316日に行われ、レンタルされているべき商品がないことが違反認定されたが、違反認定をした事案は20155月、7月、20161月、7月で、1回目の20161216日の処分時に十分違反認定はできたはずだ―との見解を示した。

「レンタルすべき商品がない」
201510月に知っていた
 
「レンタルされているはずの商品がないことを消費者庁は201510月頃には、気づいていたのではないのか」-。大西氏のこの質問は核心部分だ。20159月の立入検査で、財務関係書類やデータを持ち帰り、経理担当者から事情聴取を行っている。さらに、10月下旬には埼玉工場に立入検査をして確認もしているのではないかと追及した。
これに対し、消費者庁の川口康裕次長は「立入検査で収集した証拠のみでは、法違反の認定に至らなかった」と答弁。大西氏は、すかさず「消費者庁の処分が遅れれば、被害がどんどん拡大して国家賠償訴訟になると思うのが当然。内部でそういう検討をしていないのか。気づいたのはいつなのか」と再度追及。東出審議官は「かなり早い段階から調査の視野には入っていたが、立証に時間を要した。201612月の時点では証拠が十分固まっていなかった」などの答弁に終始している。

知っていて処分まで13カ月
不手際あったのではないか

これらの答弁に対し、大西氏は、「201510月頃には、ジャパンライフが自転車操業であるということを分かっていたのではないか」と糾弾。「にもかかわらず、気づいていて13カ月もかかったのであれば、不手際があったのではないか。その間に消費者被害が拡大したとすれば重大な問題」と憤りをあらわにした。

J社レンタル収入5000万円
オーナーへの支払い額56億円?
また、関係者の話として、「レンタル収入が毎月5000万円、レンタルオーナーへの支払額が5億円~6億円。毎月少なくとも20億円程度の新規契約があり、被害総額が一説には1400億円」との数字を明らかにし、「大変なことになる」と訴えた。「そもそもこんな会社に消費者庁取引対策課の人間が天下りしていたこと自体が、消費者行政の信頼を揺るがす深刻な問題」とし、「破たんした場合は国家賠償訴訟になるおそれがある」と述べた。
同日大西氏が明らかにした数字について、松本消費者相は、「今回認定した違反行為を構成する事実ではないため、今は回答できない」と説明しているが、この数字が事実か、いつ把握したのか。知っていてなぜ、勧誘目的不明示や概要書面記載不備などの形式違反の認定に13カ月もかけたのかが、今後の追及の焦点になる。

なぜ2014年に立入検査しない
調査の本丸は「現物の存在」

“調査すべき本丸は、現物の存在”として、2014年に立入検査
をしない合理的な理由がどこにあるのかと追及した井坂信彦氏


 井坂信彦氏は、「預託法は、豊田商事や安愚楽牧場のような“現物まがい商法”、“現物なき詐欺商法”から、高齢者を守るためにできた」と冒頭、こう切り出した。「調査すべき本丸は、預託物が存在するかどうか」。天下りした元課長補佐が担当した2014年に、なぜ立入検査をしなかったのかを追求した。
これに対し、松本消費者相は「十分な具体性のあるきちんとした供述をしてくれる消費者を十分に確保することが困難だったこともあり、法違反の認定が困難だった。このため9月と10月に文書による行政指導を行った」と答弁した。しかし、多くの違反の疑いのある相談が寄せられているにもかかわらず、元課長補佐が消費者1人、家族1人からしか聞き取り調査をしておらず、元課長補佐退職後の再調査では数十人から聞き取りが行われていたことが、大西氏の質問で明確になっている。
井坂氏は、調査の本丸を疑ったら、立入検査をするしかない。立入検査が必須ではないのかとさらに追及。20139月に預託法の政令を改正し、家庭用治療機器を同法の適用対象に追加したのは、ジャパンライフ社が大きな理由だったのではないかとも指摘した。「7カ月ルールに照らせば、元課長補佐が担当して3カ月調査した時点で、普通だったら立入検査に入るべき事案との見解を、多くの関係者、専門家が示している」と、再度、立入検査をしなかった理由をただした。
これに対し、東出審議官は「担当者が管理職に報告し、課長を含めた議論の結果、書類、書面の記載不備、備え置き義務違反について、行政指導で対処する処理方針が決まった」と回答。立入検査をしなかった理由の詳細は、「今後の調査への支障が懸念される」として答えず、一般論として「立入検査をするに十分な疑いを持って臨むことが重要」との答弁にとどめた。

元補佐の調査結果、提出を要請
立入検査しない合理的理由あるのか
「一生懸命取り組んでいきたい」と
答弁した松本純消費者担当相

井坂氏は「(相談者の)ほとんどが70歳以上の高齢者、平均契約金額が約1500万円、2010年度以降毎年150件前後の相談が相次いでいるような会社に、立入検査をしない合理的な理由があるのか」と語気を強め、①2014年に立入検査ではなく指導にとどめた事前調査結果②当時の協議記録-を国会に提出することを求めた。
「短期レンタルオーナー契約という1年限りの契約、しかも同社が販売している一番安いネックレスのみを調べても287億円の契約がある。これがもし詐欺だったら、287億円もの被害が、まさにのちにジャパンライフに天下りをする課長補佐がいた時期に起きている。他にも480万円のベストや600万円のベルトもレンタルされている。20年の長期契約もある」と指摘。
「本来はジャパンライフ社の調査を3カ月やって立入検査や報告徴収をすべきだったにもかかわらず、しなかったのはあまりにも不自然。処分まで結果的に3年遅れたことで甚大な被害が拡大したということになれば、国家賠償訴訟をされても仕方がない不作為ではないか」と厳しく追及した。            
これに対し、松本消費者相は「会社そのものが他の業務についてまだ営業している状況もあり、今後、どういう方向に歩んでいくのかということを適切に見極めていくことが大事なんだろうと思う。一生懸命取り組んでいきたい」と述べた。


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最高契約額5億円
平均契約金額2800万円に


全国の消費生活センターなどの寄せられるジャパンライフの相談のうち、最高契約額が5億円になった。国民生活センターでは、個人が特定されるため相談内容は公表できないとしている。
43日時点での2016年度の相談件数は153件。このうち代金を払った相談は82件で、平均契約金額は2830万円に上る。2014年度は1230万円(相談166件中既払い71)2015年度は1830万円(166件中既払い77)と年々高額になっている。

2回目の業務停止命令が出された316日に公表された相談件数は、2016年度は133(228日末までの登録分)。データーベースに入力するため、時差はあるが、テレビで業務停止命令がほとんど放送されていないこともあり、相談件数はさほど増えていない。70歳代以上の高齢者が8割以上を占め、4分の3を女性が占めている。

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