2017年5月28日日曜日

今年12月から、1カ月、5万円を超える脱毛・しみしわ取りなどにクーリング・オフ。中途解約も可に

本年121日から、契約期間が1カ月、契約金額が5万円を超える美容医療が、クーリング・オフや中途解約、うその説明があった場合などは契約取り消しの対象になる。脱毛、しみやしわ取り、痩身(そうしん)、歯のホワイトニングは対象だが、豊胸や薄毛治療、歯の矯正などは対象になっていない。美容医療の一部が商取引として規制されることは画期的な第一歩といえるが、相談が多い包茎や、糸を使った顔のリフトアップ手術など1回限りの手術や注射が対象にならないので、知っておきたい。特定商取引法の政省令改正案が公表されているので、少し専門的だが紹介しておくしわとたるみの軽減に、音波や光の照射が入っていないことから、ハイフ(高密度焦点式超音波)機器を用いたリフトアップやレーザーを使ったしわ取りなどが対象から外れる懸念がある。5月28日まで意見募集が行われている。

【追記】

特定商取引法施行令の改正政令案が627日、閣議決定された。意見募集案からの修正は1カ所。美容医療の契約解除に併せて契約を解除することができる「関連商品」に、歯の漂白剤が追加された。改正特商法の施行期日を定める政令案も同日閣議決定され、改正特商法、改正政令は今年121日から施行される。

54件の意見

個人36人、13団体・法人などから54件の意見が寄せられた。「歯のホームホワイトニングに用いられるキットは医療機器に該当するため対象にならないのではないか。キットの中心をなす漂白に用いられる薬剤も明確に規定してほしい」との意見を踏まえ、「歯牙の漂白剤」を追加した

本紙では、高密度焦点式超音波機器 (ハイフ)を用いたリフトアップや、レーザーを用いたしわ取りなどが対象から外れる懸念があると指摘したが、修正はされていない

消費者庁は、「しわ、たるみ取りと言いつつも、実際はその被害の実態として皮膚の活性化に使われている場合は、当然対象になり得る。その治療実態をよく見て考えていく」と説明している。柔軟に追加しやすい省令で規定した点は評価でき、すき間に落ちる事例が多発する場合は、迅速な対応が求められる。

寄せられた意見の中には、「省令で定める方法に限定せず、美容を目的とするもの全般を規制対象とすべき」「1カ月を超えない契約であっても、被害の発生状況を把握し適切な規律がされるよう求める」などがあった。これに対し、消費者庁は「消費者委員会特商法専門調査会報告書に基づき、政令案を規定した」「特定継続的役務提供は、『政令で定める期間を超える期間にわたり提供する』ものとされ、消費者委員会特商法専門調査会の議論も踏まえ、期間を『1カ月』と規定した」と回答している。

1カ月、5万円を超える美容医療 特商法の規制対象に 施行は本年12月1日から
脱毛、にきび・しみ・そばかす、しわやたるみ、痩身、歯の漂白

 訪問販売などを規制する特定商取引法の「特定継続的役務」に、1カ月、5万円を超える美容医療を追加する。
 役務とは、サービスのこと。これまでは、①エステティック(1カ月、5万円を超えるもの)②語学教室(2カ月、5万円を超えるもの)③家庭教師(同)④学習塾(同)⑤パソコン教室(同)⑥結婚相手紹介サービス(同)これまでは、エステティックサロン、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスの-6つが規制されていた。

 今回、追加する1カ月、5万円を超える美容医療は、①脱毛②にきび、しみ、そばかす、ほくろ、入れ墨などの除去や皮膚の活性化③しわやたるみ軽減④脂肪の減少⑤歯の漂白囲み参照)-を対象にすることが規定された。

クーリング・オフ 中途解約可
契約取り消し、契約書面交付義務

 特定継続的役務提供の対象になった美容医療は、契約書面を受け取った日から8日間以内であれば、書面によりクーリング・オフができる。クーリング・オフ期間を過ぎても、理由にかかわらず中途解約ができる。契約取り消し(不実告知や重要事項不告知があった場合)が可能になるほか、誇大広告などが禁止される。契約内容の概要を記載した概要書面や契約書面の交付も義務付けられる。

 ただし、省令で定められた方法に限定されているので、詳細を見ておこう。

【施行令(政令)
特定継続役務提供に以下を追加(別表四)
人の皮膚を清潔にしもしくは美化し、体型を整え、体重を減じ、または歯牙を漂泊するための医学的処置、手術およびその他の治療を行うこと(美容を目的とするものであって、主務省令で定める方法によるものに限る)
 【施行規則(省令)
一 脱毛 光の照射または針を通じて電気を流すことによる方法
二 にきび、しみ、そばかす、ほくろ、入れ墨その他の皮膚に付着しているものの除去または皮膚の活性化 光もしくは音波の照射、薬剤、医薬品もしくは医薬部外品(第三号から第五号までにおいて「薬剤等」という)の使用または機器を用いた刺激による方法
三 皮膚のしわまたはたるみの症状の軽減 薬剤等の使用または糸の挿入による方法
四 脂肪の減少 光もしくは音波の照射、薬剤等の使用または機器を用いた刺激による方法
五 歯牙の漂白 薬剤等の塗布による方法


脱毛はレーザーも対象
歯の表面加工も対象

脱毛は、光の照射と針を刺して電気を流す方法の2つが定められた。
医療機関で実施される脱毛には、①レーザー脱毛②光脱毛③電気脱毛の3つがあるが、レーザーは波長が短い光線で、光の照射として対象になる。

歯の漂白は、薬剤を塗る方法のみが規定された。歯のホワイトニングには、薬剤を塗る方式と表面加工があるが、表面加工も、「歯の表面を削った後に薬剤を塗るため、対象になる」と消費者庁取引対策課は説明している。

高密度超音波使うリフトアップ
レーザーによるしわ取り不明確

しみ、そばかすなどの除去と皮膚の活性化、痩身は、光と音波の照射、薬剤による方法が規定されているが、しわやたるみ軽減は、薬剤と糸の挿入による方法に限定されている。

このため、ハイフ(高密度焦点式超音波)機器を使ったリフトアップや、レーザーを用いたしわ取りなどが対象から外れる懸念がある。

ハイフ(HIFU)とは、超音波を体内の特定部位に集束させることで加熱し、熱変性を生じさせる技術。美容医療の分野では、脂肪細胞に熱損傷を与えて人体のラインを整えるほか、顔の内側の細胞に熱損傷を加え、傷が治るときに組織を硬縮化させることで、顔を引き上げる効果があるとされている。痩身は、新しい技術が登場していることから、今後リフトアップに用いられることが多くなると見られる。

国民生活センターによると、今年2月、東海地方に住む40代の女性は、ほほとフェイスラインへのハイフによるリフトアップを希望して美容医療クリニックに出向いたところ、キャンペーン価格と言われ10万円で顔全体の施術を契約した。頭が痛くなり、顔の左側に水ぶくれのような症状が出たことで、痕が残るのではないかと相談している。

昨年12月、近畿地方の70歳代の女性は、安価なしわ取りの広告を見てエステサロンに出かけたところ、「近隣の美容クリニックで、レーザーで顔のしわが取れる」と勧められた。美容クリニックで、2回分を約60万円で契約し、銀行のカードで支払った。1回目の施術の後で、「モニター価格で半額になっているため、施術前と後の写真をホームページに掲載する」と言われ、相談している。

これらの事案が、皮膚の活性化や皮膚に付着しているものの除去で対象にできるのかという問題がある。拡大解釈とされる懸念もあり、現時点で発生しているトラブルにはきちんと対応できるよう、光や音波の照射によるしわやたるみの軽減も省令で規定しておくべきだろう。

脂肪溶解注射
複数回でも1回契約
脂肪溶解注射は、12980円など少量の価格で広告されているが、実際の契約額は高額で、効果がないと相談するケースが少なくない。複数回打っている事例が多いが、1回契約とされた場合にどこまでが対象になるのかという問題もある。
 
 今年2月、40歳代の南関東に住む女性は、「モニターになれば価格も安く、より効果が高い薬剤がある」と言われ、約120万円の契約をした。その日のうちに腹部に1本を打ち、1カ月後に太ももの注射1本を打つ予約して帰ってきた。しかし、腹部への効果はなく、明日は太ももの注射の予約日だが、写真を掲載されるのは不本意で、モニターを断りたいと相談している。

201612月、妊娠出産で太ももが太くなったことが気になっていた20歳代の北関東の女性は、モニターになれば安くなるという広告を見て、美容クリニックの無料カウンセリングに行った。「自分の力では絶対に細くならない。モニター価格ならば約80万円」と脂肪溶解注射を勧められた。高いと断わると約60万円のコースもあると言われた。帰りたいと伝えたところ、院長という医師が出てきて、「あなたは太ももが太い、注射をしなければだめだ」と言われ結局、約90万円の契約をさせられた。「今日は受けたくないので帰らせてほしい」と3回主張したが即日注射を打たれ、1回で約90万円と説明された。打った後で「あなたの場合は4回注射が必要で、薬を飲んだり、夕食をダイエット食にする必要もある」と説明されたが、受け入れられないと相談している。

前者の場合は明らかに対象だが、後者の場合、対象となるのか。実態に即した運用をすると消費者庁は説明しているが、このような悪質なケースが広く対象にできる運用を明確化することが求められる。

豊胸、薄毛、歯の矯正は対象外
薄毛治療 ローン申請でうその申告
豊胸や薄毛、歯の矯正は対象にしなかった。消費者庁はその理由に、豊胸や薄毛は「現時点では相談件数が多くない」、歯の矯正は「さまざまな合併症を引き起こすかみ合わせの異常や、顎関節の異常など、医療目的のものが多い」ことを挙げている。

豊胸はこの10年で500件程度、育毛発毛増毛サービスでは250件程度の相談が寄せられている。相談件数自体は多くはないが、一定の相談件数がある。

薄毛治療の相談では、20歳代の男性に1年間の注射治療100万円を個別ローンで契約させ、年収や持家かどうかうその申告をさせている相談なども見られる。


「関連商品」に医薬品・医薬部外品
クーリング・オフ、中途解約と併せて、解約可

クーリング・オフや中途解約など、美容医療の契約解除に併せ、サービスを提供するために必要と説明されて契約した関連商品も同様に契約が解除できる。
関連商品には、①健康食品②化粧品③マウスピース(歯の漂泊に用いられるものに限る)④美容を目的とする医薬品・医薬部外品-が規定されている。

【追記】意見募集を踏まえ、赤字部分追加

関連商品(施行令別表五) 
( 美容医療の契約解除と併せて関連商品も契約解除できる)
イ 動物および植物の加工品(一般の飲食の用に供されないものに限る)であって、人が摂取するもの
ロ 化粧品
ハ マウスピース(歯牙の漂泊のために用いられるものに限る)、歯牙の漂白剤
二 医薬品および医薬部外品(医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律第二条第二項の医薬部外品をいう)であって、美容を目的とするもの



中途解約可、損害賠償額の上限
5万円か契約残額20%の低い額

事業者が消費者に請求できる損害賠償額の上限は、サービス開始前の解約は「2万円」、サービス開始後に解約した場合は、「5万円または、契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額」とした。

一部美容医療の特定継続的役務提供への追加は、政省令改正で対応できるが、63日に公布された改正特商法と併せて121日から施行される。改正政省令は意見募集結果を踏まえて、6月に公布する方針だ。         (詳細は日本消費経済新聞5月15日号)
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高密度超音波によるそう身、リフトアップ
エステサロンで熱傷、神経損傷、みみず腫れ

国民生活センターは、エステサロンでハイフ(高密度焦点式超音波)機器によるそう身やリフトアップの施術を受け、「熱傷になり治るまでに半年かかった」「神経の一部を損傷した」「顔に熊の爪で引っかかれたような3本のみみず腫れができた」「熱傷を負い、顔に傷痕が残った」など、身体に危害を負ったという相談事例を公表。エステティシャンがハイフ機器を用いて施術することは医師法に抵触するおそれがあるとして、「エステサロンでハイフ機器を使った施術を受けてはいけない」と呼びかけている。

ハイフ(HIFU、高密度焦点式超音波)は、超音波を人体の特定部位に集束させ熱変性を生じさせる治療法。

エステサロンのホームページでは、ハイフ機器を用いて皮膚の下の脂肪細胞や筋膜の内部に熱作用を加えることで痩身や顔の引き締めに効果があるとしているが、脂肪細胞を破壊する、筋膜の熱による収縮・ダメージをうたっているところもある。
 
 国民生活センターでは、ハイフ技術による侵襲行為は、医師の医学的知識や技能を必要とする施術で、「医師以外の者による施術を絶対に受けてはいけない」と警告している。「メリットだけでなく、リスクについても事前に十分に説明を受ける」ようアドバイスしている。

脱毛でもやけどや腫れ、色素沈着
国民生活センターが注意呼びかけ


脱毛で報告されている身体への危害は「毛穴に針を刺す電気脱毛で足が赤く腫れ上がり、皮膚科で治療したが3年半たっても痕が残った」「レーザー脱毛でやけどを負った」「色素沈着が残った」など。20124~2016年2月までの約5年間に、964(うちエステサロンが680件、医療機関が284)の相談が寄せられている。
 
 高い脱毛効果を得るためには、毛包幹細胞を破壊する必要があるが、医療機関でしか行えない。エステサロンで行うことができるのは、光照射で一時的な除毛や減毛などをする施術のみとされている。医療機関で行われる脱毛には、①レーザー脱毛②光脱毛③電気脱毛がある。「レーザー脱毛」は広い範囲で行え、皮下の黒い毛のメラニン色素に吸収されて熱を持つことで、毛乳頭などを破壊する。ただし、日焼けや色素沈着がある部位には使えない。「光脱毛」は多数の波長の可視光線を照射することで毛乳頭などを破壊する。「電気脱毛」は毛穴に針を通して電流を流すことで毛乳頭を破壊するが、痛みがあるため麻酔を使う。同センターが、過去3年間に脱毛を受けたことがある1000人にアンケート調査をした結果、4分の1がやけどや痛みなどが生じた経験があった。7割以上が事前にリスクの説明を受けていない。

美容医療の一部が特定商取引法の規制対象になることで、誇大広告は禁止され、契約のトラブルは解決しやすくなるが、身体への危害が生じていることを十分に認識して、自ら情報を収集し、リスクを知った上で慎重に検討することが大切だ。

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特定商取引法が規制する「特定継続的役務提供」とは
 役務(えきむ)は、サービス。一定期間以上、一定の金額を超える金額を支払い継続的にサービスの提供を受ける取引。身体の美化、知識・技術の向上などの目的で誘引され、その目的の実現が確実でないものが、政令で指定されている。これまで、①エステティック(1カ月、5万円を超えるもの)②語学教室(2カ月、5万円を超えるもの)③家庭教師(同)④学習塾(同)⑤パソコン教室(同)⑥結婚相手紹介サービス(同)―の6つが指定されていた。今回、美容医療(1カ月、5万円を超えるもの)を追加する。

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