2016年7月21日木曜日

消費者庁徳島移転 試行第2弾始まる 職員約40人、予算2000万円超え


 74日から729日までの日程で、消費者庁の徳島お試し移転第2弾が始まった。初日に徳島入りしたのは課長3人を含む職員25人。徳島県庁10階で、業務試験を開始した。約40人の職員が参加し、予算は2000万円を超える見通しだ。テレビ会議の専用回線が整備されたのは、消費者庁と県庁のみ。消費者団体らが懸念を示したテレビ会議による各省庁や国会議員、政党、業界団体などとの折衝などは、想定すらされていない。特定商取引法と景品表示法の行政処分は、試行の対象から除外した。河野消費者相は7月6日、徳島県知事や県内の高校生、女子大生から歓迎を受けた席上で、「テスト自体に反対している抵抗勢力や抵抗マスコミがいる」と2度も強調し、クレッションマークを付けないといけないと述べた。しかし、これだけの消費者庁の予算を使い、職員に負担を強いて行っている試行が、消費者庁の機能を損なうことなく移転させることができるかどうかみるための試行になどなっていないことは、誰の目から見ても明らかではないのか。

特商法、景表法の行政処分は除外
専用回線は消費者庁と県庁のみ

初日に公開された消費者庁執務風景。職員よりマスコミが多い
業務試験の主な内容を整理しておく。

【参加人員】
数日参加を含め、延べ約40人
1カ月滞在する職員は課長2人を含む20人弱(初日に入った25人中18人が1カ月滞在)。
2週間滞在する職員は課長4人を含む20人弱。
数日滞在する職員は課長2人を含む数人。

ちなみに、消費者庁の9人の課長のうち、1カ月滞在するのは、消費者政策課長(総務省から出向)、消費者制度課長(唯一消費者庁プロパー)の2人。
2週間滞在する課長は、消費者教育・地方協力課長(内閣府から出向)、消費者安全課長(厚生労働省から出向)、取引対策課長(経済産業省から出向)、表示対策課長(公正路取引委員会から出向)。

職員1人当たりのスペースは県庁職員の何倍もある
数日滞在する課長は、食品表示企画課長(農水省から出向、加工食品の原料原産地表示、機能性食品の検討担当)、消費者調査課長(内閣府から出向。家庭を持つ女性課長)。
 総務課長(内閣府から出向)は、参加しない(予算要求担当。留守を守ると説明している)。
 9人の課長のうち3人は、他省から異動してきたばかりだ。

【執務室】
徳島県庁10階約800㎡。河に面した北側半分を県庁が提供。
1人当たりのスペースは県庁職員の何倍も広い。廊下には、警備員2人を常に配置。

【予算】
テレビ会議システムの専用回線敷設に約340万円。
6日には河野太郎消費者担当相も視察
徳島県側10台、消費者庁側15台分の機材のリースや使用料が約750万円。計1090万円。
このほか、職員の旅費や宿泊費が約1000万円程度必要。合わせると、2000万円を超える見通し。

【専用回線は県庁と消費者庁のみ】
・セキュリティーに配慮した、専用回線を整備したテレビ会議システムは、徳島県庁と消費者庁間のみしか配備されなかった

・官邸で毎週金曜日に開かれる次官等連絡会議には長官が出張扱いで東京に戻る
 (長官は、受けていた講演依頼もあり試行期間中6回東京に出張すると説明)

「ネゴシエーション(説得、各省庁にとって都合の悪い制度改正や法律の制定などの説得)はテレビ会議ではできない」というのが、
廊下には常に2人の警備員
消費者団体などが反対する大きな理由だ。
しかし、今回、これを試行する環境すら整えていない。
相手方の環境が整っていないものは、そもそも試行の対象になっていない。試行の対象から外されている。
・消費者庁は、公表一つとっても各省庁と連携する必要がある。各省庁とメールや電話でのやり取りはすると説明している

【試行する業務】
・5日に徳島県入りした板東久美子消費者庁長官は、
事業者名を扱う特定商取引法や景品表示法に基づく行政処分は除外した
 ことを明らかにした

その理由には、①そもそも事業者を処分するかどうかは非常に限定した人員でしか議論していない②事業者名のやり取りは、セキュリティーの面で問題がある③立入調査など出張が必要になる事業者の7割が東京圏にあること-などを理由に挙げている。


徳島県庁の10階に入った
テレビ会議でのやり取りは、「日程の公表文書や検討状況など、漏れても自分たちに迷惑がかかるだけでおさまるものにとどめる」「漏えいした場合に相手に迷惑がかかるようなものはやり取りをしていない」とも消費者庁は説明している。

試行では、
①テレワークやテレビ会議を活用した業務に支障がないか
②なぜ徳島か、県内の消費者行政の状況の把握
③霞ヶ関全体の業務改革につながる試行―の3点に取り組むと長官は説明している。

・試行する業務内容は、
  課長のマネジメントが機能するか、通常業務が可能かなど
 具体的な通常業務の内容には、
  地方消費者行政の強化、消費者教育、消費者志向経営の事業者調査、
  食品関係のリスクコミュニケーション、食品ロスの啓発、食品表示の普及、
  適格消費者団体や公益通報者保護制度の普及などを挙げている。

【職員の暮らし】

  10人弱が県庁から徒歩17分の場所にあるウイークリーマンションに滞在
  (単身者が多いが、家庭がある職員もすべて単身赴任)
  ほかの職員は、県庁や徳島駅周辺のホテルなどに滞在
  徳島駅前から県庁まで徒歩で約20分、バスで7分から10分程度
  勤務時間は、県庁の職員に合わせて1時間繰り上げ、815分から1715

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消費者庁職員にあいさつする飯泉知事
7月4日、消費者庁職員を出迎えた飯泉嘉門徳島県知事は、「テレワークをはじめ霞ヶ関の働き方改革の先駆者として、大いに成果を上げてほしい。霞ヶ関では通勤時間が平均1時間50分かかると聞いている。ワークライフバランスも見直してほしい」と激励。全面的にサポートする考えを示した。

7月6日、県庁を訪問した河野太郎消費者相には、630日に徳島県議会が賛成多数で採択した「消費者庁、消費者委員会、国民生活センターの徳島移転の早期実現を求める意見書」、地方創生挙県一致協議会の移転実現を求める要請文、8団体の徳島移転を強く求める要望書などが手渡された。

河野消費者相あいさつ
「試行に反対する抵抗勢力、抵抗マスコミがいる」

徳島県の歓迎を受ける河野消費者相
河野消費者相は、徳島商業高校の生徒がカンボジアの学校を再開させるために現地でカンボジアの生徒たちと共同で開発したというお菓子を堪能。テレビ会議システムを用いてその説明を受けた。
その後、四国大学短期大学部の女子大学生が「公務員を目指しているが、公務員の採用数が少なくて困っている」と訴え、「ぜひ、消費者庁を移転させてください」とお願いした。

これを受け、河野消費者相は
国家公務員制度も所管している。霞ヶ関の公務員は著しく首都圏の大学に偏りつつある。中央官庁が移転すれば、その地域で有能な人材を採用することができるようになる。消費者庁から他の官庁に出向していただき、回すことができるようになれば、国家公務員の採用の多様化にもつながると期待しているところもある。消費者庁の勤務ぶりを皆さん見ていただいて、一員になりたいという徳島県の人を増やしていただければ一つの成果」と答えた。
公務員の採用数が少なくて困っている訴えた女子大生と


また、河野消費者相は冒頭
「いよいよ本拠地で1カ月試験を行う。しっかり状況を見極めて、次につながっていくものならば、しっかりつなげてまいりたい」と、あいさつ。「消費者庁としての機能を損なわずに、徳島県にしっかり機能を移せるかどうかしっかり見ていきたい」と話した。

さらに、「今回のテストはテストですと言っているのに、テストそのものに反対だという抵抗勢力や抵抗マスコミがいる。おかしな話で、今の日本が東京一極集中になっているのは皆理解し、それを止めて地域と一緒に発展するかを考えないといけないときに、ろんな試みを結果がどうなるも見ずにテストしようという動きにまで反対する一部の抵抗勢力、抵抗マスコミには、やはり少しクレッションマークを付けないといけないと思う。テストの結果を見て、やれるところはしっかり次につなげていきたいと思っている。さまざま障害、阻害要因があると思っている。問題は、その阻害要因をどのように取り除くことができるか。知恵を出していくかということだと思っている。試験は7月いっぱいだが、8月末に向け、さまざまな知恵をお借りしながら今回のテストを進めてまいりたい」と述べた。

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消費者庁移転の試行になど、なっていない

河野消費者相から、抵抗マスコミとご指摘をいただいたとすれば、光栄な限り。

はっきり言って
今回の試行は、機能を損なわずに消費者庁を移転することができるかどうかを確認するための試行になどなっていない。

各省庁との専用回線が引けなかった段階で、消費者庁移転の試行はできないことは明らかだ。自民党との専用回線すら引くことができなかった。東京一極集中の是正は全省庁が取り組むべき課題で、消費者庁を人身御供に出せばいいというような問題ではない。
なぜ、各省は専用回線を整備しないのか。相手がある問題なのでと3月の第一弾のお試しのときに、長官が既に指摘していた。

消費者庁を何のために創設したのか。
産業育成省庁が嫌がる法律や制度でも、消費者のために作る
(本紙単独インタビューでの中本日弁連会長の発言を引用させていただく。とても分かりやすい)
消費者、国民の目線から、各省庁に必要な制度改正や法改正をさせる。
それこそが、一番消費者庁に求められている役割だ。

産業育成省庁、国会から消費者庁のみ遠ざけられれば、これらの機能が弱体化するのはだれの目にも明らかだから、消費者団体や日弁連などは反対している。

啓発や周知、リスコミなどの業務が地方でできたからと言って消費者庁移転の試行になどなりはしない。
テレビ会議やウェブ会議の得意、不得意はすでにネット上で相当の報告がある。

テレワークによる働き方改革。
テレビ会議によるマネジメントができるか。
テレビ会議でどこまで仕事ができるか。

それは、本来、消費者庁がやるべき試行ではない。

総務大臣になって、総務省にやらせるべき仕事だ。
総務省の独法の移転提案を徳島県は行っていたはずだ。

なぜ、少ない消費者庁の予算を使って
少ない消費者庁の職員を使って、やらせる必要があるのか。

消費者庁の機能が損なわれないかどうかをみるための
試行など、行われていない。試行により機能が損なわれているように見える。

消費者庁新規採用、本年度は8人
幹部含めほとんどが他省庁から出向組

また、消費者庁職員約300人のうち、ほとんどが他省庁からの出向者。数年で経産省や農水省、厚労省、公正取引委員会、内閣府などに戻っていく。消費者庁採用のプロパー職員は40人になったばかりだ。本年度の新規採用は8人に過ぎない。国民生活センターも例年、新規採用は3、4人だ。

9人の課長は、1人を除き、各府省からの出向者。審議官4人も、出向先が内閣府1人、経産省1人、公正取引委員会1人、農水省1人と固定されている。

各府省が消費者庁に出向させる人、出向させた人を戻す人事異動について、消費者庁には原則、人事権はない。消費者庁で数年働いて本省に帰ったときに、消費者庁が行った勤務評価がどう反映されているか分からないというのが現状だ。

公務員制度改革担当相には、そもそも、これらの状況こそ見直してほしかった。でなければ、各省庁に消費者庁が牙をむくことなどできまい。
地方に移転させれば、さらに優秀な人材が他省庁から出向してこなくなる懸念の方が現時点では大きい。まず、移転を検討すべき省庁に消費者庁はふさわしくないことは、この点からも指摘できる。



          

1 件のコメント:

  1. 先ず、丁寧な調査とその報告に感謝します。プリントして拝読します。
    白井 一 

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