3月14日から4日間、徳島県神山町で一部業務の「試行」を行った消費者庁の板東久美子長官は最終日の17日、テレビ会議で会見し、「セキュリティーが確保されたとしても、危機管理業務、国会対応業務は難しく、法執行業務はなじまない」との見解を示した。 テレビ会議システムについて「有用性もあるが、限界も感じた」と述べた。業務試行が行われたのは、ICT(情報通信技術)を活用したテレビ会議とウェブ会議システムのみ。消費者行政は一部視察が行われたに過ぎない。
行ったのはテレワークの業務「試行」
消費者行政の試行とはかい離
長官と若手職員ら10人が3月14日から、徳島県神山町の「神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス」に勤務し、業務の試行を行った。
とはいえ、行われたのは、「ICT(情報通信技術)を活用した業務試行」のみ。
消費者行政の試行でもなんでもない。
消費者行政については、一部視察が行われたのみだ。
神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックスとは
閉鎖された縫製工場を改修した共同の仕事場
徳島阿波おどり空港から徳島市までリムジンバスで約30分
レンタカーを借りて徳島市から西南西に山道を約1時間走ったところにある。
通信回線の速度が東京より5倍から10倍以上速いと言われている。
入り口から入って直ぐ左側、手前部分の一角に消費者庁のオフィスが用意された。
中央のだだっ広いオープンスペースには、さまざまなテーブルやいすが置かれ
マスコミ控室として使われた。この場で検索やメール送信を行ってみたが
さほどの違いは感じられず・・
人だかりの向こうに消費者庁のオフィス |
反対側の一角に長官室も準備された。
長官室の内部 |
13日午後10時半到着予定の長官を取材するために、多数の報道陣が雨の中長官到着を待った。
多くのマスコミに囲まれ、試行着手に向けブリーフィングに応じる板東長官 |
長官の到着する画像を撮ろうと雨の中、外で待ち続ける報道陣 |
一方、マスコミとは対照的に、徳島市内の街行く人や立ち寄り先の人々は冷静
「なんで徳島とか、関西の人たち人も言われているんでしょ」
「来るとは思えない」「何のメリットがあるのかよくわからない」という声の方が
「期待している」という声より多かった。
ICTを活用した業務試行は
パソコンを使ったウェブ会議と、テレビ会議の2つの方法で、
庁内の打ち合わせや記者会見、東京で開催される会議への参加などが行われた。
詰めかけた多くのマスコミの中で、ウェブ会議で打ち合わせをする消費者庁職員 |
川口康裕消費者庁次長とウェブ会議の調整 |
河野太郎消費者相とウェブ会議 |
飯泉嘉門徳島県知事とテレビ会議 |
最終日の17日、テレビ会議で会見する板東久美子消費者庁長官 |
「有用性もあるが、限界も感じた」17日最終日にテレビ会議で長官会見
17日、テレビ会議で会見した板東長官は、「有用性もあるが、限界も感じた」と報告。
●少人数の庁内の打ち合わせは、ウェブ会議で十分機能するが、記者会見では、声がひろえない、全体が把握できないなどの支障が出た。
●テレビ会議も20人程度の会議は有効だったが、大規模な会議では問題を感じた。個々の委員や全体の状況の把握が難しく、一定の規模以上の会議では有効ではない。
委員が遠くにいて出席できない場合は活用できると思うが、事務局、運営者側がテレビ会議を前提にこちらにいて、委員の大半が向こうというのは、なかなか難しいと感じた。
●他の省庁といろいろなやり取りをするには、各省が共通の保秘を確保したテレビ会議システムを確保することが必要と感じた。
「危機管理、国会対応業務は困難、執行業務なじまない」
●秘密が保持されるシステムを整備してもなお、「危機管理対応業務は消費者庁がテレワークシステムのみで出席するのは非常に難しい」「国会対応業務も難しく、法案担当の課長補佐は早々に業務を切り上げて帰京した」と話した。「景品表示法や特定商取引法などの法執行も、事業者のいるところに行って立入調査をし、意見を聞く必要がある。テレワークにはなじまない」との見解を示した。
●「特徴に応じて使い分けていくことで、テレワークの可能性が広がることは分かったが、万能というわけではない」と総括。消費者庁の外や各省庁、業者、消費者団体、自治体とのやり取りをする場合は、相手方を含めた基盤整備が必要になる。実際に全国に出かけ各地の生の行政の実態を見たり、一緒に話をすることは重要との認識も示した。
「交通ちょっと不便と正直感じた。全国に出ていく、全国からきていただくには課題」
●交通の利便性では、「事前のシュミレーションより難しい面があった」と報告。長官が長崎県大村市を午後4時に出発し、徳島駅に着いたのは午後9時半。職員が昼ころ青森に出張し、午後3時ころの飛行機に乗って青森に到着したのは午後9時過ぎだった。「ちょっと不便だと正直感じた。全国に出ていく、全国からきていただくには課題がある」と話した。
徳島県内の視察では、徳島県立城西高校の藍染を専攻している生徒の取り組みについて「生産者、消費者双方の立場から、倫理的消費の必要性を主張している点に非常に感銘を受けた。幅広い視点に立った消費者教育について大きな可能性を感じた」と評価した。
板野町消費生活相談所の取り組みについては、「消費者教育、地域の見守りネットワークの構築、そこを通した事例の検討分析などが着実に進められている取り組みに、新しい地域の体制整備の可能性を認識した」と述べている。
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